ホスト異世界へ行く

REON

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第十四章 変化

解放

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食事を終えて執務室に顔を出した総領やエミーと領地のことや能力を取り戻すための今後の鍛錬について話し、二人が帰ったあとは交代で風呂(屋敷の大浴場)に入った。

「本当に一緒に寝るのか?部屋は用意したのに」
「当然一緒に寝る」

キッパリ答えて俺の寝室のベッドに座る魔王。
昼の時点で暫く地上に居ると言ってたから自由に使って貰えるよう来賓室と寝室を用意して貰ったのに、風呂から上がった魔王はそちらの寝室には行かず俺の寝室にやって来た。

「記憶を取り戻すためにも以前と変わらず過ごす」
「以前は一緒に寝てたってこと?」
「魔界に帰らない日はそうしていた」

ほんとに?とエドとベルを見ると頷かれる。

「たしかにフラウエルさまがこちらに宿泊された際には同衾しておりましたし、入浴する際にも一緒でした」
「風呂も?」
「はい。エドと私が湯浴みのお世話をしておりました」

どうやら嘘ではないようだ。
しかも風呂まで一緒に入ってたとは。

「魔族の半身とは精霊族の夫婦と同じだ。夫婦が一緒に湯浴みをして一緒の寝具で寝ることのなにがおかしい」
「それはまあそうだけど」

夫婦が一緒に風呂に入ろうが寝ようがおかしくない。
それはそうなんだけど、魔王とのあらゆる記憶を失ってる今の俺にはそのの感覚がないから。

「半身は記憶を取り戻したくないのか?」
「ううん。思い出したい」
「それなら以前と変わらず過ごそう。なにかをきっかけにふと思い出せることもあるかもしれないのだから」

以前と同じ行動をとっていれば何か思い出せるかもというのは可能性として有り得ること。
ただ、ベッドの真ん中に陣取って一人でゆっくり寝たい派の俺はあまり人と寝るのが好きじゃないんだけど。

「分かった。そうする」

思い出せなくても『まあそうだろうな』とだけの話。
少しでも可能性があるなら試す価値はあるだろう。

「私どもは失礼いたします。ごゆっくりお休みください」
「ありがとう。二人も休んでくれ。おやすみ」
「「おやすみなさいませ」」

エドとベルが出て行った後は二人きりに。
ベッドに座っている魔王から手招きされて隣に座る。

「体調はどうだ?」
「体調?」
「昼に魔力神経を拡げる鍛錬をしただろう?その影響で身体に痛みが出たり発熱していないかと気になってな」

質問した魔王は俺の額に額を重ねる。
そう言えばアルク国王も最初は治療の影響で熱が出たな。

「心配してくれてありがとう。でも何ともない」

そもそも病にかからない俺に治療の影響は出るんだろうか。
外部から受ける攻撃では怪我をするし死にもすると考えれば、魔王の魔力を体内(魔力神経)に流されてこじ開けられたという状況はにあたるのかもしれないけど。

「もし体調を崩した時は言え。回復をかけてやる」
「回復したら拡げた魔力神経も治っちゃうと思うけど」
「体調を治すのが優先だ」

心配が伝わる魔王の表情を見てくすりと笑う。
どうやら俺の恋人は心配症らしい。

「分かった。辛い時はお願いする」

能力を取り戻したいから痛みだろうと熱だろうと限界まで我慢するけど、本当に辛くなった時は。

「お前はいつも自分の命を犠牲にするような無理をする。血を吐こうが大怪我をしようが誰かを救おうとするお前は英雄と呼ばれるに相応しい人物なんだろうが、半身の俺からすればお前が傷を負い死にかける度に肝が冷える。今は記憶を失っているから改めて言っておくが、一人で無理せず俺を呼べ」

エミーが言っていた。
魔王は何度も地上に駆けつけて俺を助けてくれていたと。
あの話は事実だったんだと、魔王の言葉で実感できた。

「約束する」

もっとも能力を失った今の俺は無理する事も出来ないけど。
でも魔王が心から心配してくれてることは充分伝わった。

「異世界の指切りというヤツだったか」

右手の小指を見せると小指を絡めてくる。
この世界にはない『指切り』も知っているとは、少なくとも以前の俺と付き合いがあった人というのは間違いない。

「さあ、寝よう」
「うん」

二人で広いベッドに入り横になると当たり前のことのように腕の中におさめられる。

「……あれ?何か気持ちいい。不思議と落ち着く」
「お前と俺は魂で繋がっているからな。当然だ」
「そうなんだ?」
「半身とはそういうものだ。以前もこうして寝ていた」

一人でゆっくり寝たい派なのに魔王の腕の中が思いのほか心地よくて言うと、そう教えてくれる。
温かくて心地よくて安心するのを肌で感じて、その言葉に嘘はないと分かった。

「今日は俺もゆっくり眠れそうだ」
「眠れてなかったってこと?」
「半身と引き離され冷静で居られる魔族は居ない。だが俺はお前と地上と魔界に分かれて暮らすことに慣れていたことと、生存を感じとれていたことで何とか正気を保てていた」

そこまでかと罪悪感を覚える。
魔王にとってここ1ヶ月は『何とか正気を保てていた』というレベルの苦痛な日々だったのに、記憶を失った俺はそんなことなど露知らず自分のことしか考えてなかったんだから。

「ごめん」

今日だけで何度謝ったのか。
話を聞けば聞くほど罪悪感が湧いてくる。

「謝罪してほしくて話した訳ではない。魔族にとって自分の半身というのはそれほど重要な存在だということを知っておいてくれればいい。言っただろう?忘れたならもう一度最初から始めればいいだけだと。こうしてまた会えたのだから」

優しい声と体温に胸がギュッと締め付けられる。
忘れてしまった罪悪感と同時に魔王が俺のことを心から大切に思ってくれていることの嬉しさで。

「俺と出会ってくれてありがとう。嫌いにならずに居てくれてありがとう。助けに来てくれてありがとう」

罪悪感と嬉しさと照れくささ。
こういう感情を何と表せばいいのか分からないけど、複雑に絡んだそれらの感情で魔王の胸に顔を埋めながら感謝を呟く。

「お前と俺はツイの存在なのだから巡り会って当然だ。幾度肉体が滅びようと、どのような姿に生まれ変わろうと、幾年月が経とうと、例えお前が俺を忘れていようとも、必ず俺がお前を見つけ出してみせる。古から続く縁を切らせはしない」

ベッドを軋ませ俺に覆いかぶさるように体勢を変えた魔王は真っ直ぐに目を合わせると口元を笑みで歪ませる。

「……重すぎるな」
「重くないよう身体は支えているが?」
「体重の話じゃない」

ベッドに両腕を付いて俺に体重をかけてないのは知ってる。
少し天然なのか真顔で言われて笑い声が洩れる。

「体重じゃなくて、愛が重い」

俺は恋愛という面では人を愛すことが出来ない。
だから人にも恋愛感情での愛は求めてない。
移ろい易くすぐに色褪せてしまうそんなものは不要だと思っていたのに、魔王の重い愛情は嫌じゃない。
むしろ心地いいとすら思う。

「フラウエルに出会う運命だったから‎他の人を愛せなかったのかと思うくらいに、不思議と重い愛を受け入れられてる」

整った顔に両手を添えてそっと撫でる。
今まで数々の美男美女は見てきたし、少なくとも好ましく思える相手から言われたら付き合ってもきたけど、重い愛情を煩わしくも重荷にも思わない相手には初めて出会った。

「それを言うなら俺も同じだ。三百年以上の年月を重ねて見目麗しい者や魂色の美しい者にも出会って来たが、半身にしたいと思ったのはお前が初めてだった」

運命に導かれて出会った二人。
この星に来て運命に導かれるまま縁者と出会ってきたけど、魔王ともきっとそうなんだろう。

「改めて、忘れてしまったことは謝っておきたい。本当にごめん。それから、恋人の記憶を失った酷い俺を変わらず愛そうとしてくれてありがとう。感謝してる」

謝罪と感謝。
今日だけで何度言ったのかと思うくらいに言ったものの改めて伝えておきたくて言うと、魔王は微笑する。

「半身が一筋縄ではいかないのは以前から。だからこそお前と生きるのは面白い。七色の魂色を持つ美しい半身。過去も現在も未来も永遠にお前は俺のかけがえのない存在だ」

頭を撫でられ口付けられる。
優しく頭を撫でる手のひらからも重なった唇からも愛おしさが伝わってきて、胸がぎゅっと締め付けられる。
記憶を失っていてもそう感じるのはきっと、俺の中から魔王のことが全て消えた訳じゃないからなんだろう。

雌性の姿の俺には大きなその手や身体が安心する。
きっとそれは魂が繋がった半身だからという理由と、俺の身体が魔王の感触を覚えているから。
記憶は失っても感触は失われていない。

媚薬効果があるという体液の影響か、俺の身体が覚えているからか、はたまたその両方か、口付けだけで息があがる。
たかがキスなのに、昼の鍛錬の時に引き続き、能力を失ってから感じることがなかった性的欲求で身体が熱くなる。

「……するの?」

寝衣の上から胸を軽く掴まれ首筋に唇が触れ、このままするのかと確認する。

「イヤか?」
「ううん。イヤじゃないけど」
「けど?」
「なんか……緊張する」

イヤじゃないし、以前と変わらず過ごすと言ってこの流れになったんだから肉体関係はあったということだろうけど、魔王を忘れている俺にとっては初めてとも言える。

おかしいな。
性根からビッチなはずの俺が何故か緊張している。
魔王との性行為は記憶になくとも初体験でもないのに心臓が騒がしくなっている自分が恥ずかしい。

「初めてこの手の行為をした雄性体の時もだが、初めて雌性体になった時でも緊張する様子も恥じらう様子もなかったというのに、今更になって緊張されるとは」

そう言って魔王はフッと笑う。
俺としてもそっちの自分の方が通常運転なんだけど。

「今日は優しくしてやろう」

緊張している身体を触る手は優しい。
元は同性だからこそ(今の本体は両性だけど)、傷つけないよう最大限に気を使ってくれているのがわかる。
ということは違うということなんだろうけど、魔王のことを全て忘れてしまった俺への気遣いなんだろう。

「ま、待った」

時間をかけ緊張も解れすっかり受け入れ体制になった頃、魔王の(比喩)に目が行ってぎょっとする。

「そのサイズは無理。入らない」

身体がデカいからアレもデカいとは限らないけど、魔王の場合は身体もアレもデカい。
今は雌性体だからなおさら、人族の中でも小柄な方に分類される俺の身体にとって凶器でしかない。

「初めて閨を共にした際も同じことを言っていたな」

そう言って魔王はくつくつ笑う。

「安心しろ。忘れても何度でも教えてやる」

口付けながら中に入ってくる感覚に眉を顰める。

「……ん??」

絶対に痛いと覚悟していたのに痛みがない。
魔王が前戯に時間をかけてくれたから充分受け入れ体制になっていたのは間違いないけど、凶器でしかないサイズのソレがなぜ小柄な自分の中に痛みもなく入るのか。

「痛みは?」

しっかり入ってから口を離した魔王は俺と目を合わせると薄笑いを浮かべながら問う。

「ない。怪我しても痛みを感じてないだけ?」

存在感はたっぷりだけど、不思議と痛みはない。
魔王の体液は痛みを抑える効果があるらしいから怪我をしていても分からないだけかと聞き返す。

「怪我などしていない。お前の記憶からは俺の記憶が消えていても、この身体は俺を覚えているようで何よりだ」

ああ、そうか。
今の俺には記憶にないというだけで、俺の身体にとっては魔王のソレも既に受け入れ慣れたサイズなのか。

「俺が閨の最中にお前の身体を傷付けたことはない。俺の体液には元から治癒効果も含まれているし、それでも追いつかず怪我をさせないよう魔回復ダークヒールも併用しているからな」

ふっと笑ってゆっくり動いた魔王。
痛みは全くないけど刺激は強い。
動いても痛みがないことを確認させるためだったのか、ゆっくりと少し動いただけなのに。

「ここまでにしておこう。今日はまだ俺が半身のお前を傷付けることはないとだけ知ってくれたらそれでいい」
「え?止めるの?」

上半身を起こして抜こうとした魔王に驚く。
その気にしてお終いとか蛇の生殺しにも程がある。

「止めてほしくないのか?」
「逆にその気にさせて止めるとか酷くね?」
「珍しく緊張していただろう?」
「緊張してる相手とは出来ないってこと?」
「大切な半身を怖がらせたくない」
「怖くないけど?たしかに自分でもらしくないと思うほど緊張してたし、小柄な雌性体にそのサイズはさすがに入らないだろとは思ったけど、見る前も今も怖いとは思ってない」

お互いに少し首を傾げる。
痛い覚悟や怪我をする覚悟はしたけど怖がってはない。

「フラウエルが俺の恋人ってのが事実なら、自分の恋人が快楽に弱いクズ野郎なのは知ってるんじゃないの?」

笑って俺の方から口付ける。
どうやら俺の恋人は心配症で心優しい男らしい。
極悪そうな『魔王』という立場の王様のはずなのに。

「知っている。お前を誰よりも知っているのは俺だ」

真っ直ぐに目を合わせた魔王は口元を笑みで歪ませて言うと俺の腰を掴んで奥深くまで侵入してくる。

「夕凪真。お前は俺の半身だ。それも今世が終わるまでの愛を神に誓った恋人や伴侶とだけではない。古から続く縁で結ばれているツイの者だ。過去も未来もお前と俺は二人で一つ。忘れる度に何度でも教えよう。生まれ変わる度に必ずお前を見つけて教えよう。俺が如何にお前を愛しているか」

重過ぎる愛の告白。
快楽で身体が満たされるだけでなく、失われた記憶の空白がその重過ぎる愛の告白で満たされる。
能力を失って英雄の役目を果たせなくなった役たたずの自分にも心から必要として愛してくれている人が居るんだと。

「私の***。愛している」

魔王が聞き取れない言葉を囁いたと同時に心臓がドクンと震えて快楽が今まで以上に高まり身体が熱くなる。
身体の芯から焼かれているかのような熱を感じながらも、絶えず押し寄せる強い快楽に抗えず「待って」という一言さえも紡ぐことが出来ない。

開いた口から洩れるのは荒い呼吸だけ。
言葉にならない嬌声だけ。
自分の身体なのに自分で制御ができない。

魔王に、自分の半身にされるがまま。
それに不快感も屈辱感もなく、ただ流されるまま。
そうすることが当然かのように。

強い快楽と同時に魔王の全てが心地よかった。





「半身。夕凪真」

何時間経ったのか、魔王の動きが止まって瞼をあげる。

「すまない。無理をさせた」

申し訳なさそうに謝った魔王にフッと笑う。

「フラウエルの愛は充分伝わった」

そう答えた俺の声は少し掠れていて、少し眉を顰めすぐに抜いた魔王は異空間アイテムボックスからグラスを出して魔法で水を注ぐと俺の背中に手を添え身体を起こし口元にそれを寄せる。

「本当にすまなかった。年甲斐もなく自制できなかった」

年甲斐って、若者だろうに。
いや、三百歳を超えてるんだったな。
グラスを受け取り乾いた喉を水で潤しながら思い出す。

「魔族の寿命ってどのくらい?」
「平均は七、八百年くらいだ」

それを聞いて飲みかけの水でゴフッと噎せる。

「じゃあフラウエルの三百歳ってまだ若者?」
「三百年も生きていれば自分では若者という感覚はないが、千歳を超えている者からすればまだ俺も小僧だろうな」
「せ、千歳」
「能力の高い魔族ほど寿命も長い」

魔族の寿命、とんでもなく長ぇ。
精霊族の何十倍生きるんだ。

「能力が高い人は寿命が長いってことは、魔族の王さまのフラウエルなんて何千歳まで生きるんだよ」
「天地戦で勝てばな」

異世界から勇者を召喚しないと倒せないような存在なんだから千年どころの寿命じゃなさそうと思って言うと、そんな返事が返ってくる。

「魔王の平均寿命は天地戦の勝敗次第だ。勝って数千年と生きた魔王もいれば、俺を作った先代魔王のように四百年程度で平均寿命にも達することなく敗北して死んだ魔王も居る」

そうか。
魔王は天地戦が始まれば死ぬか生きるかの二択。
死なないよう隠れるとか逃げるという選択肢はない。
千歳を超えている魔族というのは前回の天地戦で生き残ることができた魔族ということだ。

「敵対する者同士ではあるが、魔王と勇者というのはそういう存在だ。勝利した者だけが寿命を迎えることができる」

同胞のヒカルたち勇者か俺のツイの者らしいフラウエルか。
魔王と縁が出来た俺は天地戦で必ずどちらかを失うことが既に決まっているということ。

「半身」

俺の頬にそっと手のひらを添えた魔王。
その表情には苦笑を浮かべている。

「勇者が覚醒したら開戦する。その時俺は魔族が一人でも多く生き残れるよう勇者と戦わなければならない。それが大切な半身のお前を傷付けることになっても、魔族の王として」

分かってる。
その時がくれば同胞か半身かのどちらかを失うと分かっているけど、改めてそれを言葉にされると胸が痛い。

「……記憶を失う前の俺はそれをどう思ってたんだろう」
「さあな。お前がハッキリと俺に言ったことはなかった。ただ天地戦の話題になると辛そうな顔で笑っていた」

じゃあ以前の俺も胸が痛かったんだろう。
魔族や魔王の記憶を失っている今の俺より遥かに。

「本音を話しておこう。お前は能力を取り戻したいようだが、俺はこのままでもいいという思いが拭えない。能力を取り戻せばお前も英雄として天地戦に立つことになるのだから。能力がなければ少なくともお前は天地戦に立たずに済む。戦う力のない者たちと共に身を隠していれば天地戦に立つ者より生き残れる可能性が高くなる。俺はお前に生きてほしい」

真剣な顔で本音を吐露した魔王。
以前からそう思っていたのか、俺が記憶と一緒に能力を失ったことで思うようになったのかは分からないけど。

「魔王の素質を持って誕生した時から覚醒した時には自分が勇者と戦うことになると受け入れていた。勝利することだけを考え肉体や能力を鍛えてもきたが、同時に敗北した時の覚悟も出来ていた。前回の天地戦で敗北した先代魔王に続いて今代の俺が敗北したとしても魔族が滅びることがないよう、魔族の数を増やすことや復興させることに尽力してきたつもりだ」

前回の天地戦で生き残った魔族のために、今回の天地戦で生き残る魔族のために、今代魔王として。
そのために人生を捧げてきたということなんだろう。

「今でも魔族のために戦って死ぬ覚悟はある。だが、半身のお前には生きてほしい。俺が敗北して居なくなったとしても、お前は生き残った者たちと手を取り生きてくれたらと」

どんな返事をすればいいのか分からない。
魔族や魔王の記憶を失って『魔族は精霊族の敵』としか思ってなかった俺なら魔王が望むような耳障りのいい取り繕った返事ができたかもしれないけど、今の俺には無理だ。

「同じ地球から召喚されたヒカルたち勇者は生きてほしい。それと同じくらいフラウエルにも生きてほしい。いつか寿命を迎えることになってもそれまでは一緒に生きてほしい」

それが今の俺の本心。
どちらもなんて無理だと分かっているけど、ヒカルたち勇者も魔王にも死んでほしくない。
それが出来ないことを誰よりも理解しているだろう魔王に言う俺は酷い奴だと分かっているけど。

「泣かないでくれ。半身に泣かれるとどうしたらいいのか分からなくなる。俺だって寿命を迎えるまでお前と生きたい。お前と子を作って共に育てたいと思っている」

そう言って抱きしめられる。
まだ見ぬ終戦後の未来。
その未来に希望を抱いているのは精霊族も魔族も同じ。

「フラウエル」

どうして魔王と出会ってしまったのか。
本で読んだり話に聞いただけの極悪非道な魔王や魔族の姿が事実だったら精霊族の敵として戦えたのに。
魔王はで、他の魔族も精霊族と同じく良い人も居れば悪い人も居ると知ってしまった今はもう戦いたくない。

「この星の人は馬鹿だ。同じ星に生きる生命なのに種族で敵や味方を判断して天地戦を繰り返す。それを懲りもせず何千年何万年と繰り返してるんだから馬鹿だ。ただ知恵を与えられたというだけで自分たちがこの星の頂点だとでも思ってるのか、自分たちが天地戦を繰り返していることで星や人型種以外の生命も傷付け続けてることは考えない」

いや、この星の人だけじゃない。
地球でも人種で差別をして争う人は居た。
同じ星に暮らす人間同士で戦い武器を使って星や動物を傷付けていた。

「ああ。極論を言えば、知恵を与えられた生命が滅びた星こそがそれ以外の生命にとっての楽園になるんだろう」

魔王は俺の涙を拭いながら苦笑する。
本能で生きる動物だけが残った星はきっと大自然が広がる美しい世界になるんだろう。

「……それでも俺はヒトが好きだ。だから滅びてほしくない。精霊族も魔族も滅びてほしくない。魔物はもちろん、生命を育むこの星も。みんなに生きてほしい」

俺はこの星が好きだ。
創造神両親が最初に創ったこの星が好きだ。

「フラウエルも好きだ。だから生きてほしい」

まだ記憶は戻らないけどそれだけは言える。
俺はこの人に死んでほしくない。

「俺もお前を愛している。共に生きたい」

口付けたあとまた抱きしめられる。
力が強くて痛いくらいなのに、その腕の中は心地いい。

俺を愛してくれている親切で優しい人。
俺の半身で俺のツイの人。
一緒に居たいし、一緒に生きてほしい。

「……え?」

部屋に降る黄金色の雪。
俺の声で気付いたのか、魔王は少し腕を緩めると部屋を見て天井を見上げる。

「なんだ、これは」
「わ、分からない」

開いた魔王の手のひらに落ちた雪はスっと消える。
溶けたのではなく、言葉通り触れた瞬間に跡形もなく。

「雪?」
「いや。羽根のようだ」
「羽根?」

ひらりひらりと落ちてくる小さな小さな羽根。
何が起きているのか分からず、互いにきょとん。

「ん?」

俺を見た魔王は少し首を傾げる。

「手を貸せ」
「手?はい」

差し出された魔王の左右の手のひらに両手を重ねると、手から熱が緩りと入ってくる。

「え?え?」

スーッと体内を流れる熱。
最初は緩やかだったそれが一気に体内を巡り心臓で消えた。

「え!?」

自分から溢れた魔力。
何もしていないのに溢れる魔力は七色。
あらゆる色の魔力が溢れて目を眩ませる。

「ま、待って。止まらない」
「魔力制御しろ。以前は魔法を使えていたのだから出来るはずだ。教えただろう?お前に向いているのは魔力を箱に閉じ込め縮小させる方法だと。時空属性の異空間を使う要領で」

そう言われて思い出す。
以前誰かにそんなアドバイスを貰ったことを。
それが誰だったか思い出せないけど、そのは魔王だということなんだろう。

瞼を閉じてイメージする。
魔力神経を通り無駄に暴れている分の魔力を異空間の箱に閉じ込めて縮小させるイメージを。

ああ、こんな鍛錬をしたな。
あの時は制御し過ぎて子供の姿になってしまって、エドやベルやロイズやドニに驚かれたっけ。
赤ちゃんになった俺を抱っこしてくれたのは誰だったか。

そんなことを思い返していると体内の熱が引いた。

「……収まった」
「ああ。今回は赤子にならなかったな」

そう言って魔王はフッと笑う。
赤ちゃんになった俺を抱っこしたのは魔王か。

「抱っこ」
「ん?」
「ちょっと抱っこしてみてほしい」
「赤子にはならなかったのに子供返りしたのか?」

そんなことを言いつつも俺を抱きあげた魔王は自分の膝に乗せるとぎゅっと抱っこしてくれる。

「フラウエル」

腕の中で名前を呼びながら身体に頬寄せる。
本当に子供返りしてしまったみたいだと自分でも思うけど、やっぱり魔王に抱かれていると安心する。
心地よくて離れたくないと思うほどに。

「良かったな。これでまた魔法を使える」
「え?」
「魔力神経が開いた」

それを聞いて体内の魔力を探す。

「……魔力が分かる」

本当に魔力を感じとれる。
俺の魔力神経に魔力が流れるのを。
さっきは七色の魔力が目に見えたけど、目には見えなくなった今も自分の体内に魔力があることを感じとれた。

「ど、どうして急に」
「お前がアルク国王に施している治療と同じだ。魔力値の高い者の体液を取り込み魔力神経に他人の魔力を流すことで軟化させた。もっとも一度の情事で開いたのは想定外だったが。そこは一度開いたことのある魔力神経だったからか、お前が神族だから特別治癒が早かったのかは分からない」

魔王とやったから魔力神経が開いたってこと。
本人も一度で治るとは思ってなかったみたいだけど。

「ありがとう!フラウエルのお蔭だ!」

御礼を言って魔王の身体に抱き着く。
能力が高くて体液に含まれる魔力も多くて痛みも抑えられる魔王だからこそ、昼の鍛錬のように死ぬような痛みもなく魔力神経が開いたんだと思うから。

「俺のお蔭か分からないのだから礼は不要だ。最後の一押しが必要だっただけで、お前の今日までの努力がたまたまこのタイミングで実っただけなのかもしれない」

そう説明する魔王に笑う。
素直に御礼を受け取ってくれたらいいのに謙虚な。
むしろ自分の功績だと鼻高々に言ってくれても平伏して御礼を言ったのに。

「きっとフラウエルだったからだと思う。だってフラウエルと俺は二人で一つなんだろ?別々の肉体を持ったツイの者同士が一つになったから治療の効果も高かったんじゃないかな」

本当のことは分からない。
でもアルク国王の治療でも初代エルフの特殊恩恵が解放されたことと俺が神族の肉体に戻ったことで治療の効果が上がったくらいだから、二人で一つというくらい関係の深い魔王と俺なら充分有り得る理由だと思う。

「このままでいいと思ってたのに、喜んでごめん」

また魔法を使えるようになるのは嬉しい。
でも魔王の本音を聞いてしまったから申し訳なさもある。
そう思って謝ると魔王は俺の頭を撫でる。

「気にするな。半身の喜ぶ顔が見れて良かった」

心優しい魔王。
かけてくれる言葉も撫でてくれる手のひらも優しい。
能力が戻らなくていいと思ったのも俺に生きてほしいからだったし、そんな思いを抱えながらもまた魔法が使えるようになって良かったと言ってくれた。

「フラウエルは俺に何かしてほしいことはないの?俺だけ色々として貰ってるのはフェアじゃない。一方だけが甘えるだけの関係性なんて重荷でしかないし、長続きしない」

魔王とはこれからも一緒に居たい。
だから重荷になるだけの関係にはなりたくない。
好きになったからこそ、持ちつ持たれつの関係がいい。

「してほしいことか」
「うん。死ぬ以外のことなら叶えられるよう尽力する」

そう話した俺に魔王はくつくつと笑う。

「それなら茶碗蒸しを作ってくれ」
「は?茶碗蒸し?」
「お前が魔界へ遊びに来た時に作ってくれた時から俺の好物になった。俺を忘れる前のお前が幾つも作ってくれたのを異空間アイテムボックスにしまってあったが、もうなくなったから頼みたい」
「なにその可愛いお願い」

身体は大きくてキリッとしてる美形なのに、願いが『茶碗蒸しを作ってくれ』とかギャップが凄い。
お菓子を隠し持ってこっそり食べる子供みたいだ。

「そんなことでいいなら喜んで作るよ。どうせなら茶碗蒸しの他にも色々な料理を作るから一緒に買い物へ行こう」
「量は多めで頼む。魔族は精霊族よりも食べる」
「知ってる。たくさん食べてるの見たから」

食事の際に記憶を失っている俺以外の人は魔王が大食漢なのを知っていてさも当然のように大量の料理を運んで来たし、その量が綺麗に胃袋に収められたところも見てたから。

「能力が使えなくなってからは鍛錬や領主の仕事に必死で料理を作ることもなくなってたけど、俺の料理を喜んで食べてくれる人が居ることの嬉しさを思い出した」

早く能力を取り戻さなければと一人で追い詰められて心の余裕がなかったけど、魔王に言われて思い出した。
能力なんてなかった頃の俺は、様々な国の料理を食べるのも作るのも好きな『どこにでもいる男』だったことを。

「半身が作る料理は美味いからな。今では魔王城でもお前からレシピを教わった料理人が異世界料理を作っている」
「そっか。俺も魔界に行ったことがあるんだっけ」
「ああ。一時期俺の半身として城で暮らしていたし、地上層に戻ってからも魔界層と行き来していた。お前が教えてくれた異世界の知識は魔界でも様々な場所で役立ってくれている」

俺が忘れてるだけで、魔族の役にも立ててたのか。
それを知って嬉しくなる。
自分が誰かの役に立てることが嬉しい。

「今更だけど色んな思い出を忘れてることが悔しい。またフラウエルや魔族や魔界のことを教えてくれる?知りたい」
「幾らでも。一から始めればいいと言っただろう?」
「うん。ありがとう」

先に俺をベッドに寝かせた魔王は自分も隣に横なると、俺と目を合わせて微笑を浮かべ軽く口付ける。

「今日はもう寝ろ。先程の放出で魔力が減っている」
「あ、やっぱり?目視できるくらいの量だったし」
「居たのが俺じゃなければ正気を失っただろうな」
「え?どういうこと?」
「賢者の魔力ですら魔力酔いする精霊族ならお前の魔力にあてられて死んでいてもおかしくなかった」

そう言われて血の気が引く。
そんなにヤバい状況だったとは。

「屋敷の人たちの確認しないと」
「大丈夫だ」

上半身を起こそうとした俺を押さえてベッドに戻した魔王は苦笑しながら俺の頭を撫でる。

「俺が部屋に障壁を張ったから使用人たちに影響はない。放出したのもあの瞬間だけで、今は制御できている」
「よ、良かった。ありがとう」

あの時は魔力をことが出来なかった(焦っていてそれどころじゃなかった)けど、部屋から魔力が漏れないよう障壁を張ってくれていたようだ。

「魔力神経は開いたが、どこまで魔法が使えるようになったのか、どこまで能力が戻ったのか、起きてから調べよう。その際にも万が一の時のために障壁を張ってやる」
「うん。またお世話になります」

能力が高い魔王が一緒に居る時で良かった。
神族の俺の魔力がダダ漏れになってたことを考えると、賢者のエミーでも耐えられたか分からない。

「安心して眠れ。俺が居る」
「ありがとう。おやすみ、フラウエル」
「おやすみ、俺の半身」

心地いい腕の中で眠りにつく。
能力を失ってからというもの感じることがなかった安らぎを感じながら。

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転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

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ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
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新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

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バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

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