ホスト異世界へ行く

REON

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第三章 異世界ホスト、訓練開始

聖ガルディアン教会

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異世界の神フォルテアルが描かれた建物から幾許か。
ドニの案内で目的地だった教会が見えてきた。

「ここが聖ガルディアン教会か」

守護者ガルディアンとは随分とご立派な名前。
……名前は。

厳つい名前とは反対に強風が吹いたら倒れそうな建物。
壁や屋根は素人と分かる手法であらゆる所が補強されている。
そんな寂れた教会のある敷地の手前でドニと建物を見上げているとローブにコツリと何かが当たって顔をおろす。

「く、黒い魔人は帰れ」

まだ第一王子ルイスさまくらいの年齢の男の子。
俺とドニに怯えながらも気丈に振る舞う。

「熱烈な歓迎だな」
「愛が重い」

フッと微笑したドニに苦笑で答える。

「みんなやれ!」
「なんだ?」

男の子の声でわらわらと姿を見せた幼い子供たち。
パチンコのような物を使って飛んで来る石つぶてを物理障壁をかけて防ぐ。

「これでも喰らえ!」
「お。魔法を使える子も居るのか」

障壁をすり抜け飛んできた世界的ヒゲ兄弟が投げるアレのような火の玉を手で受け止めて握り潰す。

「なっ、魔法が!」

魔法は絶対に当たると思っていたのか、今まで盛んに石つぶてを打っていた子供たちの攻撃の手が止まった。

「お前それ熱くないのか?」
「少しピリッとしたなって程度」
「涼しい顔でデタラメなことする奴だな」

戦闘狂軍人の魔法を嫌ってほど食らってきたからな。
回復ヒールの訓練のために風魔法でザックリ切られるわ、バスケットボールサイズの火球で火傷させられるわ……『生きてさえいれば回復できる』があの戦闘狂談。

そんな訓練を延々と繰り返してみろ。
ヒゲ兄弟の火の玉程度の熱さなんてお灸のようなもの。

「ま、魔人め!」

両手を前にかざした男の子から感じたのはヒゲ兄弟の火の玉を打った時よりも遥かに強力な魔力。
ただ放出される魔力量が安定しておらず、出した男の子本人もその火の強さに驚いている。

「様子が変だ」

ドニの呟きでハッとする。
もしかして……

「魔力を抑えろ!暴発する!」
「で、できないっ!」
「俺に向かって打て!そのままの炎を俺にあてるイメージをするんだ!俺なら消せるから思い切り打て!」

魔力の暴走。
俺も魔法訓練の二日目で起こった。
上手くイメージができないまま魔法を使おうとすると、形にならなかった魔力が暴走して暴発を起こしてしまう。

「わぁぁぁぁ!」

身の丈に合わない魔力量を解放した魔法を打った反動で男の子の体は後ろに倒れる。

「よくやった」

剣の柄を握ったドニを止めると一歩前に出て、当たったら火傷すること必須な火力のそれを闇魔法で消滅させた。

「カルロ!」
「大丈夫!?」

男の子の元に集まって来た子供たち。
反動で倒れはしたけど怪我はなさそうだ。

「無事で良かったけど子供が火遊びとは感心しないな。大人として悪い子にはしっかり罰を与えないと」

男の子の体を抱えあげて渾身の一撃。

「っ、痛ぁぁぁぁい!」
「戦う意思のない人に攻撃したら駄目だろ!」
「うぁぁぁぁっ!」
「司祭さまから教わってないのか!?」
「いぁぁぁぁぁぁ!」

必殺お尻叩きの刑。
周りの子もあまりに残酷な刑を目にして縮こまっている。

「どうし!……え?」

男の子の断末魔が聞こえたらしく教会から飛び出して来た男女二人。

「二人がこの教会の司祭さま?」
「私は修道女シスターのコレットです」
「司祭のボニートです。もしやこの石はこの子たちが」
「うん。その石を使って全員で攻撃してきたけどそれは一旦置いといて、この男の子。魔法が暴走しかけてた」
「「えっ!?」」

俺の脇に抱えられお尻しか見えてなかった男の子の顔を見せて説明すると二人は驚く。

「俺に打つイメージをさせて防げたけど、火力の強い火魔法が暴発してたらこの子自身が火達磨になるところだった」
「ああ何てことを。子供をお救いくださり感謝いたします」
「感謝申し上げます」
「いや、そんな畏まってくれなくて良いんだけど」

人の良さそうな二人から両手を組んで祈られ、お尻叩きの刑に処してただけにちょっと後ろめたい。

「叩かれて痛かったか?」
「……ゔ、ゔん」
「もし魔法が暴発したら痛いじゃ済まなかったんだぞ?」
「ごべんなざい」
「上手く使えない内は大人に付き添って貰って練習しろ」
「ア゙イ゙」
「分かったならいい。回復してやる」

号泣する男の子のお尻に回復ヒールをかける。
暴発せずに済んで良かった。

「もう痛くないか?」
「うん。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」

ついさっきまでは敵対心剥き出しだったのに、地面に下ろした男の子は碧い目で俺を見上げてお礼を口にする。

「子供たちがご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「話して聞かせますのでどうぞ今回だけはお目こぼしを」
「お説教は任せるけどなんで攻撃してきたんだ?俺たちのことを魔人って呼んでたから勘違いして攻撃してきたのか?」

みんな至って普通の子供たちで戦闘狂でもなさそう。
カ〇ダタたちのように金目当てでもなさそうだし、俺たちも攻撃をされるような行動はしていないのに。

「恐れながら王宮の方でいらっしゃいますか?」
「まあ。王宮で暮らしてる」
「そちらのローブで王宮魔導師さまと勘違いしたのかと」
「え?ここでもその名前が出てくる?」
「ここでも?」
「来る時にも勘違いされたから」

今日はやたらとその名前を聞いてる気がする。
いや、カ〇ダタたちはそう勘違いしていたのか知らないけど。

「お兄ちゃんたち黒の魔人じゃないの?」
「カルロ。そのようなことを」

火の玉を打った男の子の口を慌てて塞ぐ修道女シスター

「その黒の魔人ってなんだ?」
「知らないの?悪い人は魔人なんだ」
「魔人って魔人族のことだよな?勇者と戦う」
「うん」

祖龍や魔人族は魔王の配下と国王のおっさんが言っていた。
魔人族が襲いに来たと勘違いしたってことか?

「魔人はとして教典に書かれてるんだ。だから悪い奴のことを魔人っていう奴も多い」
「なるほど。天使と悪魔の悪魔ってことか」
「悪魔?それは知らないけど」

ド二が教えてくれて漸く合点がいった。
俺の居た世界だと悪い奴のことを「この悪魔!」と言ったりするけど、この世界では「この魔人!」と言うってこと。

「つまり俺たちを王宮魔導師と間違えて黒い魔人って言ったってことだよな?子供たちが王宮魔導師を悪い奴だと思ってることは分かったけど理由を聞かせてくれるか?子供なりに攻撃手段まで用意して計画を練ってたみたいだけど」

ドニと俺がここに来てから攻撃を開始するまで数分。
パチンコや石つぶてを用意してあったことを考えると前々から作戦を立てて練習していたとしか思えない。

「……よろしければお話の続きは中で」
「じゃあお言葉に甘えて」

顔を見合わせた司祭さまと修道女シスターの表情で堂々と話すような内容ではないんだと察してそう答える。

「遅れて来る二人のことを話しとかないと同じ目にあうぞ」
「そっか。エドとベルも同じローブ着てるからな」

たしかに攻撃されたら困る。
この世界で生まれ育ったドニも魔法攻撃を受けて剣を抜こうとしていたけど、数々の命のやり取りをしてきた特殊部隊の二人は特に攻撃をしてくる者は子供だろうと敵と判断して斬り捨てそうだから。

「お連れさまがいらっしゃるのですか?」
「俺の仲間で護衛もしてくれてる二人。今は来る途中で襲ってきた元囚人を捕まえて警備兵のところへ引き渡しに行ってる」
「そうでしたか。お怪我はございませんか?」
「大丈夫。誰も怪我はしてない」

俺たちはもちろんカ〇ダタとカ〇ダタ子分たちも。
平和的に(?)捕縛したから無傷で連行されて行った。

「後で来る二人も王宮魔導師じゃないから攻撃しないでくれ」
「うん。お兄ちゃんの仲間か聞く」
「危ないからもう警戒は……いや、俺の名前はシン。このローブを着た男女が来たら俺の名前を出して聞いてくれ」
「シンお兄ちゃんだね。分かった」

理由があるんだろうから警戒するなとは言わなかった。
子供たちもこの世界で生まれ育ったんだから、攻撃をしたら反撃をされることくらい分かっていてやってるだろう。

平和な日本で生まれ育った俺とは価値観が違う。
常に命の危険が付き纏うこの世界の人たちを、平和な世界だからこその価値観に当てはめて善し悪しを判断してはいけない。


司祭さまに案内されたのは教会ではなく敷地内にある小屋。
みんなで暮らしているのか生活感がある。

「このような場所にしかご案内できず申し訳ございません」
「もしかしてあの子たちはここで暮らしてるんですか?」

部屋を見渡したドニが初めて自ら司祭さまに質問する。

「親の分からない子供たちを保護しております」
「ああ……子供の数は多いのに親が見あたらないと思えば」
「西区では遺棄される子供も珍しくありませんので」
「……そうですよね」

貧困層が集まるスラムの厳しい現実。
孤児院で育ったらしいドニも子供たちの環境には感じるものがあったのか、司祭さまから話を聞いて口を結ぶと促されるまま俺の隣に座った。

「子供たちが警戒する理由なのですが、召喚の儀の日程が発表されて半月ほど後でしょうか。王宮魔導師さまがこちらへ参られて教会を取り壊すことになったと申されまして」

その話は初耳。
とある人からこの教会のことを聞いて来たんだけど、取り壊しをするような話はしていなかったのに。

「教皇と領主が取り壊す許可をしたんですか?」
「ええ。教団の枢機卿すうききょうの印と領主さまの印のある書面をお持ちでした。今一度お考え直しいただけないかと本部へも赴いたのですが、聞いていただくことができず仕舞いで」

要は門前払いか。
まあ枢機卿は教皇に直接関わる最高顧問だけに一介の司祭には早々会ってくれないというのも分からなくないけど。

「理由は?この教会を取り壊す理由」
「勇者さまです」
「……は?」
「勇者さまにはお見せできないスラムと化した西区を清浄化する計画のようです。取り壊しもその一環であると」

またそれか。
絵の二人も王宮魔導師から『』を理由に建物を壊すと言われたと話していた。

「クソだな。要は勇者たちの存在を政策の大義名分に使っただけだろ。スラムを暮らしやすい地区にするっていうのは良いことだと思うけど、実際ここに暮らしてる人たちの問題は解決せずにただ臭い物に蓋をしようとしてる感が拭えない」

『汚い』とか『恥』とか王宮魔導師の本音がダダ漏れ。
自分たちがスラムを疎ましく思っているから消したいだけ。
今回の召喚を好機とばかりにこの世界の人が憧れる勇者の存在を大義名分にするんだから、腹のなか真っ黒の大した策士だ。

「お前のその発言、俺が言ってるのを聞かれたら首が飛ぶな」
「クソって言ったからか?それが事実だろ」

一応この国の偉い人の立場にある王宮魔導師をクソ呼ばわりした俺にドニは笑う。
アイツらも俺が嫌いだろうけど俺もアイツらが嫌いだ。

「あの、お二方はここへ礼拝のためにお越しになったのではありませんよね?王宮地区の傍にはフォルテアル大聖堂がございますので。よろしければ理由をお聞かせ願いますか?」

まあそう思うだろう。
わざわざ王宮からスラムまで礼拝にくる理由がないから。

「仰々しい理由を想像したなら悪いけど見に来ただけ」
「見るために……ですか?」
「エミーから聞いて。賢者のエミーリアは知ってるよな?」
「ええ。もちろん存じ上げております。この教会が現存していられることも、子供たちが毎日食事を口にできることも、全てはエミーリアさまのご寄付のお蔭ですので」

やっぱり寄付してたのか。
本人は寄付のことを口にしなかったけど。

「子供たちのことはエミーから聞いて知ってたんだ。産まれてすぐ棄てられてた子供とか、飢え死にしそうになってた子供を司祭さまが保護して教会で面倒を見てるって」
「さようでしたか。エミーリアさまを愛称でお呼びする方に初めてお会いしました。親しい間柄なのですね」

親しくないとは言わないけど親しいとも言えない。
なにせあの戦闘狂は肉体関係を持った相手でもある弟子を本気で殺しにくるような立派すぎる軍人さまだから。

「話が逸れたけど、王宮魔導師が教会を取り壊そうとしてるから子供たちはあんな暴挙に出たってことか?」
「はい。何度もやめるよう話してはいるのですが、私が腑甲斐ないばかりに子供たちを安心させられる返事を本部からいただけないままでして」

その言い方だとまだ諦めてはいないんだろう。
建て直しならまだしも取り壊しとなったら保護されている身寄りのない子供たちの行き場がなくなってしまうから。

「どうやって掛け合ってるんだ?毎回本部まで行って?」
「それしか方法がないのです」
「他の地区の司祭さまには協力して貰えないのか?」
「……残念ですが」

区が違えど教団の者同士なら少しは掛け合ってくれるんじゃないかと思って聞くと、司祭さまは小さく首を横に振る。

「司祭さまの口からは話し難いだろうから俺が説明するけど、他の教会の司祭さまから手を貸りるのは難しい。上に逆らうと自分が担当する地区の教会運営が厳しくなるから」
「運営が?」

俺がこの世界の人間じゃないことを知ってるドニが他区の司祭に協力を仰ぐのが難しい理由を代わりに説明してくれる。

「下手をすれば異端者扱いされて助成金を止められる。そうなればどうなるか分かるだろ?教会の維持が難しくなるし、信徒も異端者の烙印を押された司祭が居る教会へ礼拝に来るか?」

なるほど。
金銭的な問題もあるけど、何より神に仕える聖職者であるが故には大きな問題になりそうだ。

「手紙は?教皇に」
「教皇まで届く訳ないだろ。その前に検閲される」
「ああ、そっか」

それもそうか。
手紙の中に何か仕込まれてる可能性もあるし。
教皇に見せる前に中を確認され、もう枢機卿と領主が認めたことだけに見せるまでもないと判断されゴミ箱にポイされそう。

「直接会えないにしても話を通すくらいしてくれても」
「難しいだろうな。司祭さまだからなおさら」
「ん?」
「教会の状態で分からないか?ここには助成金が出てない」
「え?そうなのか?」
「はい。数年前に打ち切られました」

王宮師団でさえ国王のおっさんに確認をするくらいはしてくれるのに教団の奴らはケチ臭いと思えば……。

「もしかして異端者扱いされてって話は司祭さまのことか」
「いやそれはってだけで他にも居る。理由までは知らないけど、スラム地区の司祭さまが異端者の烙印を押されたってのは王都ギルドでも話題にあがってた」

言われてみれば納得の寂れ具合。
建物の補強が目立つのも助成金が出ていないから。
あれは自分たちで補強しているんだろう。

「理由を聞いても良いか?司祭さまが異端者には見えない」
「ありがとうございます。ですが私が異端者であることは間違いないのです。教団の教義を破りましたので」
「教義……教会のルールか。どんな?」
「教会に身を置くことができるのは神に仕える者だけ。ですが私は子供たちを教会の敷地であるここに住まわせております。教義に反する行為なのですから異端者で間違いございません」

なんて胸クソ悪い話だ。
集団のルールとして決まってることならたしかに司祭さまはそれを破ったことになるんだろうけど、もし司祭さまが保護しなければ助からなかった子供も多いだろうに。

「……話は分かった」

それしか言えない。
司祭さま本人が異端者で居ることを選んだんだから。

「取り壊すのはいつなんだ?」
「それが日にちまでは決まっていないのです」
「枢機卿と領主の印を押した書面まで用意したのに?」
「はい。予定日は記載されておりませんでした」

その印の押された書面がどんな物かは知らないけど、日本であれば先に日程が決まった状態で解体業者に依頼するんだけど。

「変だな。国が日程の入ってない書面を持って来るって」
「俺もそう思った」

この異世界での教団の在り方は知らない。
ただ、王宮魔導師が書面を持ってきたなら教会の解体は国も関わっていることなのに、日程のないとも言える書面を持って来るだろうか。

「北区の教会を建て直すために解体した時はたしか、所有権のある物を教団が一旦回収してからすぐ工事に入ったけど。召喚の儀の日程が発表されて半月後ならもう三ヶ月は経ってる」
「三ヶ月?用意周到に書面を準備して三ヶ月は長いな」

俺は召喚の儀で召喚されて来た当人だからその前のことは知らないけど、発表されたのは三ヶ月以上前の話だったようだ。

「司祭さま。お客さまのお連れさまがお越しになりました」
「どうぞ。中に案内してください」
「失礼します」

ドアをノックしたのは子供たちと片付けをしてた修道女シスター
エドとベルを連れてきてくれたようだ。

「区境の警備兵へ引き渡して参りました」
「お疲れさま。変なのに襲われなかったか?」
「何名か近寄っては来ましたが大丈夫です」
「……相手が大丈夫か?」

キリっとして言うベルのが怖い。
相手が無事であることを祈りたい。

「エド、ベル。このガルディアン教会の司祭さま」
「司祭のボニートと申します」

報告を済ませてドニと俺の後ろに立った二人に紹介する。

「シンさま専属執事バトラーのエドワードと申します」
「同じくシンさま専属女給メイドのベルティーユと申します」
「お仲間で護衛と伺っていたのですが」
「はい。身の回りのことから護衛や戦闘まで行います」
「それは凄い。万能なのですね」
「「恐れ入ります」」

二人とも尻尾を出してたらパタパタしてたんだろうか。
ちょっと見たかった。

「さて、二人も合流したから帰ろう」
「もうよろしいのですか?」
「うん。どんな所かはもう見れたし。それに俺たちが長居すると司祭さまも自分の仕事ができないだろ」

合流したばかりのエドとベルにはすぐに帰ることになって悪いけど、当初の目的だったは分かったから。

「あの、シンさま」
「ん?」
「お祈りをする時間を少しだけいただけませんか?」
「ああ。司祭さま、礼拝堂でお祈りってさせて貰える?」
「ええ、是非。ご案内いたします」
「ありがとう」

この異世界の信徒の概念が俺には分からないけど、同じ神を信じて祈りを捧げる人がそうであるならエドとベルは信徒。
教会に来たんだから祈りをって思うのも当然だろう。

「シンお兄ちゃん!」

家から出るとわらわら集まって来た子供たち。
ついさっきまで敵対視してた相手とは思えないくらいフレンドリーなのが子供らしい。

「綺麗になったな。石っころ」
「みんなで片付けた」
「片付けたー」
「偉い偉い」

自分たちで飛ばした石だけどな。
そう思いつつもみんなで片付けたことを褒める意味で人に絡みついてドヤっている子供たちの頭を撫でる。

「不思議な方ですね」
「ん?」
「この子たちはなかなか人に懐かないのですが」

そう言って修道女シスターは子供たちの様子に首を傾げる。

「シンさまの魔性は子供にも有効なのですね」
「さすが我々のあるじ。子供までも誑しこむ魔性の男」
「おい、言い方。変な誤解を受けるだろ」

エドとベルから言われてドニや修道女シスターに笑われた。

案内して貰った礼拝堂。
質素だけど清潔にしてある室内の奥にはついさっき壁画で見たばかりの神の姿をした像が置かれている。

「ではシンさま。少しお時間をちょうだいいたします」
「うん。俺はここで待ってるから」
「はい」

エドとベルとドニは像のある奥へ行き、俺は出入口近くの席に座った。

さて、どうしたものか。
まさか取り壊し計画のオプションまでついてくるとは。
自分が居なくなった後のことなんて悠長に言ってる場合じゃなさそうだぞ、戦闘狂軍人さま。

話を聞いて教会を見に来たのは本当。
ただもっと詳しく言うとエミーから頼まれごとをしたから。





王都の外で魔法訓練をしてた日の食事時間。
最初はスラムの安全面の話になり、スラム唯一の教会は傷んでいるのに資金不足や許可がおりず建て直しができないこと、そんな状況でありながらも司祭さまは棄てられた子供を保護して育てていることなどを話してくれた。

「へー。まさに聖職者って感じの人だな」
「だろう?金にがめつい教団の中で貴重な存在だ」
「他の人はがめついのかよ」
「トップの教皇は悪い人じゃないんだけどね。ただもうお歳だけに召喚祭のように大きな行事じゃないと表には出てこない。それを良いことに好き勝手やってる奴らも居るんだよ」

どの世界にも悪い奴は居るものだ。
神に仕える聖職者がそれは駄目だろとは思うけど。

「軍人で賢者の私が一般国民を特別視すると問題になるから大きな声では言えないけど、ガルディアン教会の司祭さまには外戦で助けられた恩があってね。保護されてる子供たちも行き場が無くなってしまうし、あの教会は残ってくれればと思うよ」

賢者さまの立場ってのも大変だ。
俺は召喚された異世界人で国王のおっさんのヒモでもあるから訓練に付き合ってても問題になってないだけなんだろう。

「そういう理由があるなら気にするのも分かる」
「だろう?だから私が討伐に行った後のことは頼むよ」
「……は?」
「君ならそう言うと思ったんだ。何気に君って口では厳しいことを言いつつ甘やかすタイプだからね」

嵌 め ら れ た 。
いや、教会が気になることは本当だろうけど。

「無理。自分が生きてくだけで精一杯」
「問題が起きてないか時々様子を見に行ってほしいだけ」
「あったらどうするんだよ」
「どうするかは君に任せる」
「無理だって」
「そう言わずに。この唐揚げ?あげるからさ」
「俺が作った食い物で取引しようとすんな」





とまあそんな経緯があって一度どんな場所なのかを確認しておきたかった。

あの戦闘狂軍人に振り回されてる自覚はある。
ただ、地獄の訓練デスマーチの後にダッシュ100本を追加するとか言われたらイヤだとは言えなかった。

それにこの教会のことが死地に赴く覚悟のできてる賢者さまのの一つってことに気付いたから。
気がかりを持ったまま逝けばになってしまう。
それだけはさせたくなかった。

「シンさま。お待たせいたしました」
「あれ?もう良いのか?」
「はい。お時間をありがとうございました」
「感謝いたします」

祈りを終えて戻って来たエドとベル。
その後ろを司祭さまとドニが話しながら歩いて来た。

「フォルテアル神か」

俺のステータスで遊んでいる暇を持て余した神。
……なのかは知らないけど。
もしそうならぶっ飛ばす。

「貴方さまは特別な星のもとに生まれたように思います」
「特別な星の下?」
「宿命と申しますか。なんらかの課された宿命があるように感じたのです。どうぞ戯言とお聞き流しください」

司祭さまに言われたその言葉。
以前にも似たようなことを聞いたような……。

「あ。占い師が言ってたんだ」
「占い師?」
「相性とか未来とかを見てくれる人」
「占術師のことですか」
「かな?占いは興味ないし信じてもいないけど、二人の相性を占って貰おうって客、いや、知人に連れて行かれて」

当たると噂の占い師に相性を見て貰おうと同伴客から連れて行かれた先に居たのは、道に机と椅子を置いて占う易者。
いかにも胡散臭かったものの、占いなんてそもそもコールドリーディングやバーナム効果を活用しただけの代物だと思っているから、客がそれで満足するなら別に良いかと付き合った。

案の定“誰にでも当てはまりそうな内容”で言い当ててみせるのを黙って聞き、そのあと二人の相性占いだから俺もってことで手のひらを見せた。

「俺の手のひらも見せろって言うから出したのにろくに手相を見もしないで急にとか言い出して。俺は何か大きな宿命を抱えて生まれた人だから占えないし、二人が付き合ったり結婚する未来もないって断言してた。占えないから金も要らないって追い返されたのを覚えてる」

あの時は客の機嫌をとるのが大変だった。
ひたすら宥めて機嫌がなおったから今となっては笑い話になったけど、俺が言ったんじゃないのに客から怒られるわ泣かれるわ、オーナーやポンコツどもに爆笑されるわ、客とは二度と相性占いしないと心に誓った苦い経験。

「言われたのが二人目となると何かあるのかも知れないとは少し思うけど、俺は自分が生きたいように生きるだけだ。もし避けられない宿命があるなら俺がしたことがそれに繋がるだろ」
「はい。それがよろしいでしょう」

運命は巡り合わせで変わるもの。
宿命は前世から決められているもの。
変えられないのなら勝手にそこへ導かれるんだろうから、俺がやることは宿命に導かれただ。

「シンお兄ちゃんたちまたね!」
「また来てね!」
「またな」
「お気を付けて」

礼拝堂の外に出るとまた集まって来た子供たちや修道女シスターや司祭さまに挨拶をして教会を後にした。
 
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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

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