ホスト異世界へ行く

REON

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第五章 新たな始まり

お約束

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「予想以上に額が凄かったけど本当に良いのか?気が変わったなら予定通り半分ずつにするぞ?」

SS素材が十八頭分だから白銀貨四・五枚くらいかと計算してたけど、日本円で九百七十万円の半分(四百八十五万円)ともなるとさすがにポンと寄付するレベルの話じゃなく、ギルドの出入口に向かいながらもう一度確認する。

「地上の金はこちらに来た時しか使わない。それに俺が自分で稼いでくることもいい顔をされない。民に示しがつかなくなるからな。使わず眠らせておくよりお前の役に立つ方がいい」

そっか。
これを持ち帰ると“魔王自ら稼いだ金”になるのか。
魔族たちから納めて貰う立場の魔王が自分で稼いで来ましたなんて、魔王城を取り纏める山羊さんから怒られそうだ。

「フラウエルの立場も結構自由が制限されるな」
「人族の王もそうだろう。俺よりも自由がなさそうだ」
「言われてみれば確かに」

国王ともなれば引き篭っていたい時でも許されない。
決められた予定に添って行動をしないといけないんだから、自由になる時間なんて寝てる時くらいだろう。

大きな声では話せないから声を抑えて会話をしながらギルドを出る。

「……お約束‪(  ˙-˙  )スンッ‬」

出入口を出た先に待ち構えて居たのは雑魚四人衆。
居るだろうと思ってた奴らが予想通りに居たってだけで、そのお約束の展開に驚きはない。

「待て!」
「あ、やっぱ俺たちを待ってたのか」

もしかしたら俺たちを待ってたんじゃないのかもと僅かに期待して無視したけど、人生はそんなに甘くないらしく通り過ぎようとしたところで止められる。

「まだ何か用か?」
「人族がSランクなんて偽装に決まってる」
「エルフ族にも居ないランクに人族がなれるはずがない」
「ギルマスが本物だって言ってただろ?耳掃除しろよ」

ハッキリ断言されたのにまだそれを疑ってるのか。
ギルド協会に照会したとまで言ってたのに。

「ファイアベアをどこで盗んで来たのか言いなさいよ」
「逆にどこなら盗めるのか教えろよ。ファイアベアのSS素材はアルク国で滅多に出回らないくらい貴重なんだろ?その滅多に出回らないものを誰から盗めるって言うんだ」

この女冒険者も気が強い。
強くあろうとして強がりを言う女は可愛いと思うけど、性格が悪いだけの気が強い女は好みじゃない。

「顔を隠してるような怪しい奴のことなんて信用しない」
「お前たちに信用して貰う必要もない。フラウエル行こう」
「ああ」

ギルドの前だから人が多い。
何事かと立ち止まる通行人やギルドの中から出てきて見てる人も居て、面倒なことになる前に(絡まれてる時点で面倒なことになってるけど)去ろうと歩みを進める。

「犯罪者を逃がす訳にはいかない」
「レオンの父親は騎士団なんだからね!」

横から俺の喉元に突きつけられた剣。
周りで見ていた人たちもさすがにその行動にはザワつく。

「レオンだかレインだかレモンだか知らないけど、戦う意志のない相手に武器を突きつける行為は自分が反撃されて殺されても已む無しってことくらいは当然知ってるよな?」

この異世界ではそれがルール。
騎士の息子がそれを知らないはずがない。

「さっきの人族だろ?Sランクの。何があったんだ?」
「解体所で騒いでたあのパーティがまた絡んでる」
「何かしたのか?あの人族」
「さあ。でももう反撃していい理由は揃った」

野次馬してる人たちからそんな声が聞こえてくる。

「剣をおさめろ。今なら何もなかったことにする」

なかったことにするというより、そうしたい。
冒険者同士の話だからわざわざ国がしゃしゃり出ることはないと思うけど、騎士の息子ってところが権力を振りかざした厳ついオッサンが絡んできそうで嫌だ。

「所詮人族のSランクだ。我々エルフ族より甘いんだろう」
「そうかもね。人族が強いなんて聞いたことないし」
「実はローブの中では震えてたりして」
「人族を一人屠ったところで問題はない。地上の神に逆らう愚かな人族にはいい制裁になるだろう」

人族を見下して『殺れ殺れ派』の奴らが半分。
Sランク相手に『辞めておけ派』の奴らが半分。
うん。人族を見下してる奴は片っ端から殴りたい(本音)。

「本当のことを言え。正直に話せば殺さずにいてやる」
「お前らが勝手に詐称だって疑って騒いでるんだろうが」

話の分からない奴は疲れる。
騎士を父親に持つ息子の正義感……ではないな。
俺たちを囮にしようとしていた卑怯な奴らだし。
たんに人族が嫌いなんだろう。

「兎に角、俺の方に戦う意思はない」
「お前にはなくてもこちらにはある。犯罪者め」
「犯罪者じゃないって言って」
「もういい!」

剣を握る男の手に力が入ったのを見て後ろに引く。

「今のは完全に斬る気だったよな?」
「当然だろう!犯罪者はみんな死罪だ!」
「それを判断するのはお前じゃなくて国だ」

ただの冒険者が独断と偏見でを行って良いのかよ。
神にでもなった気か。
あ、が集まった国でしたね‪(  ˙-˙  )スンッ‬

「分かった。やらなきゃ終わらないならやってやる」

何を言っても無駄。
しかも今の斬撃は殺す気だった。
大人しく殺されてやるつもりはない。

「フラウエルは手を出さないでくれ。手加減しても死ぬ」
「元よりやる気はない。小虫相手では運動にもならない」
「な、小虫だと!?人族が地上の神を愚弄するか!」
「あーはいはい。お前の相手は俺だから」

魔王に斬りかかろうとした男の腕を掴んで止める。
正体を知らないとはいえ、その人に攻撃をしたら一瞬で骨も残らないほどに焼き尽くされるぞ。

「俺が相手になるから来い」
「馬鹿にしてるのか!剣を抜け!」
「必要ない。早くかかって来い」

NA☆N☆TE☆NE☆
ここで風雅を召喚する訳にいかないって理由なんだけど。
それにコイツ相手に刀が必要だとも思わない。

「人族の癖に生意気な!」

そのモブ丸出しな台詞と共に斬りつけてきた男の蹴ると、手から離れた剣は音を立てて地面に落ちる。

「……え?嘘だろ?」

手を押さえてうずくまる男。
まるで痛恨の一撃を受けたかのように唸っている。
あの……弱 す ぎ ま せ ん か ? (震え)

「いや、え?本気じゃないよな?あ、油断を誘う演技?」
「さすが小虫。軽く払われただけで膝をつくとは」
「俺いま太刀筋を逸らすために蹴っただけなんだけど」
「普段鍛えていない証拠だ。人の回りを飛び回るだけの煩わしい小虫が。それで神を語るとは聞いて呆れる」

嘘だと言ってくれ。
こんな雑魚がBランクって、エルフ族はどうなってんだ。
それはファイアベアがAクエになるはず。

「よくもレオンを!」
「先に攻撃を仕掛けたのはそっちだろ。被害者面すんな」
「ま、魔法を手で!?」

火魔法を手で受け止めて握り潰した俺に女は驚く。
先に俺の首へ剣を突きつけたのは仲間の男の方なのに、まるで俺の方から仕掛けたみたいに「よくも」と言われても。

「お前の火魔法なら人族の子供の火魔法の方が熱い。形ばかり綺麗に整えても燃やせなきゃ意味ないだろ。まるでお前たちみたいだな。見た目だけ着飾って中身はスッカスカ」

段々腹が立って来た。
人族は地上を守るため天地戦に向けて日々訓練をしているのにエルフ族のこの為体ていたらくは何だ。

「自分たちを地上の神とのたまうのは結構だけど、神と敗北が結びつかなくて鍛えてないんだろ。エルフ族みんながそうだとは思わないけど、少なくともお前ら二人の実力は人族の子供以下しかない。弓と風魔法を操った強い先代たちが泣くぞ」

百歩譲って強かったらしい先代が自分を『神』と言うのはいいとしても、落ちぶれたエルフ族が神とは笑わせる。

「人族には天地戦に命をかける覚悟ができてる賢者や騎士たちが大勢居る。力を過信して落ちぶれたお前らじゃその人たちの戦いの足手まといにしかならない」

エミーや騎士団のみんな。
地上層に暮らす人々を救うため、大切な人が生きる国を護るため、自分たちは魔族や魔物と戦って死ぬ覚悟を持っている。
それを知ってるからのエルフが腹立たしい。

「お前たち!人族に馬鹿にされて腹が立たないのか!?」
「そうよ!みんなで力を合わせれば勝てるよ!」

ようやく立ち上がった男と同調する女。
そんなことを訴える二人を野次馬は遠巻きに見てるだけ。
パーティメンバーの残り二人も剣を握ってるものの、俺に怯えていて斬りかかってくる様子はない。

「その言葉が大嫌いな賢者を知ってる。その賢者曰く、その言葉を言っていいのは強者だけ。弱者が力を合わせようとも上手く戦えずマイナスにしかならない。その弱者を庇って強者が死ぬ場合もある。だから戦場で弱者は罪だと」

軍人じゃないけど冒険者も同じ。
数合わせのために弱い奴を何人連れて行ってもむしろ足を引っ張られるから危険。

「偉そうに!野蛮な人族なんて滅べ!」

女が放ったのは火炎。
さっきも魔法で攻撃したからこのパーティの魔法士だろう。
マニュアル通りのカタにはまった火炎だ。

「火遊びするなよ。俺を殺す気ならこのくらいはやれ」

火炎を無効化してお返しに業火で女の体を包む。

「エメっっ!……貴様エメを!」
「先に攻撃してきたのは誰だ!何度も言わせるな!」

斬りかかってきた男の剣を手で弾いて胸倉を掴む。

「お前がリーダーだろ?リーダーのお前が相手の力量も読めず剣を突きつけて反撃していい理由を作ったからこうなった。お前の悪行の責任は仲間たちにとって貰う」

胸倉を掴んだまま仲間二人に手を翳すと「ヒィ」と情けない声を洩らして男二人は後退る。

「恨むなら頭の悪いアホなリーダーを恨め。それから、そのアホの下に付いた見る目のない自分たちの愚かさを恨め」

二本目の業火。
逃げかけた男たち二人の体も炎が包む。

「騎士の息子だか何だか知らないけど強いのも偉いのも父親であってお前じゃない。お前本人は自分の仲間すら守れないただの雑魚だ。戦う意志のない相手にわざわざ喧嘩を売って仲間を危険にさらすクソみたいなリーダーだ。自分の愚かな言動が仲間の命を奪う理由になったことを忘れるな」

胸倉を掴んで持ち上げていた手を離すと男は地面に落ちたまま呆然としている。
リーダーの判断が仲間の命を左右することがこの金持ちの坊ちゃん(多分)にも伝わっただろうか。

「……お灸はこの辺にしとくか」

業火を消すと中でポカンとしていた三人。
何が起きてるのか分からず声を出せなかったんだろう。

「操れるようになったのか。攻撃対象を」
「うん。まあ」

火 魔 法 だ け で す け ど 。
黙って眺めていた魔王から言われて答える。
賢者にしか使えない対象操作を俺も〝賢者様の寵愛児〟のお蔭で使えるけど、実際に使えるのは火魔法だけ。
他のはまだクソッタレ賢者さまに鼻で笑われながら訓練中。

「どうだ?野蛮だ地上の神に逆らう愚か者だと罵った人族から軽くあしらわれるのは。人族のSランクはエルフ族のランク付けより甘かったか?弱いと聞かされ舐めていた人族が自分たちより強かった気分はどうだ?お前らは神の名を語った傲慢な井の中の蛙。広い世界を知らないただの雑魚だと知れ」

小さな井戸の中で自分が最上位だと勘違いした蛙。
井戸の外の広い世界には自分たちを丸呑みできる奴がごろごろ存在してると言うのに、小さな井戸の中で満足してそれを知ろうともしない。

召喚される前の世界にもこういう奴は居た。
何度その天狗になった鼻を折ってきたか分からない。

「これでもまだりたい奴が居るならかかって来い。俺がその高々と伸びた鼻をへし折ってやる」

ようやく静かになって溜息をつく。
これで絡んで来る奴も居なくなるだろう。
うじゃうじゃ湧かれて魔王にキレられるのが一番怖い。
なにせ、魔力を抑えに抑えた人族の姿でさえ厄災の王を倒せるほどの規格外だから。

「いいのか?無に還さず終えて」
「いやだからそれは駄目だって。殺す気なんてない」

どれだけほふりたいんだ。
スッキリしないらしい魔王に苦笑する。
わざわざ反撃の理由を作った馬鹿に少しお灸を据えてやろうと思っただけで、最初から殺すつもりはなかった。
例えこの世界のルールとして認められてることだとしても、簡単に「じゃあ殺す」とハードボイルドな考えにはなれない。

「今度こそ帰ろう」
「お前がそれでいいなら」
「全然いい」

むしろ早く去りたい。
もしかしたらあの魔導砲の中の箱を作った奴がこの国に居るかも知れないから、これ以上目立つのは避けたい。
何より人族を自分たち以下と見下して馬鹿にするようなエルフ族に関わるのはりだ。





「やっと静かになった」

ギルドの前(冒険者たちの目)から離れ小鴨こがものようにクワクワ鳴きながら付いて回っていた四人も居なくなり、ようやく顔バレを気遣う必要がなくなって晴々する。

「赤服の男が情報を照会したと言ってたが大丈夫か?」
「ん?ああ、ギルマスか。居住国のことならギルドカードでは見れない。国の出入国で使えるのは国が国民の情報を持ってるからで、ギルドカード単体だと分からないんだ」

ギルド協会に登録されてる情報の中でギルド側が照会出来るのは名前と冒険者ナンバーとランク。
協会に登録されている情報とカード(or装飾品)の情報が一致しているかを確認出来るというだけ。

「そもそも冒険者は居住地が決まってない住所不定の奴も少なくない。貸アパートに住んでる奴も居るけど、色んな領地に行ってクエストを受ける気ままな冒険者には居住地がない」

地上では爵位がないと土地を持てないから、一般国民は国や領主が建てた貸アパートの一室を借りて生活するのが基本。
冒険者の中には宿に泊まって暮らしている奴もいれば、王都を拠点として貸アパートに暮らしている奴も居る。

アパートの一室を借りて暮らしていれば居住地がブークリエ国になるけど、宿で寝泊まりをしてる人は住所不定。
人族の区域にある様々な領地を回って各地にあるギルドのクエストを熟す住所不定の冒険者も少なくない。

「……住所不定?」
「俺が居た世界にはってものがあったんだ。都道府県、市区町村、何丁目何番地、何の何って感じで場所を表す。暮らしてる家がない人のことを住所不定って言う」

日本に居た時はあって当たり前だった住所。
この異世界では一軒一軒に住所がある訳じゃなく『(東西南北)区+(東西南北)側+A~Z』って分け方。
つまりマダムたちが井戸端会議をする時には「〇区×側Aの△△さんのお宅が~」と表現する。

「魔族は各々が好きな場所に暮らしているから人族の棲み分けもよく分からないが、半身の居た世界はますます複雑だ」
「たしかに魔界層と地上層って分け方の魔族からすれば複雑かもな。竜人族にだけは竜人街って場所があるけど」
「ああ。竜人族が一番人族の棲み分け方に近い。同じ竜人同士で集まって商売をしながら暮らしているからな」

そんな話を小声で交わしながら街中を抜ける。
一応小声で話してはいるものの、人族の国と違って他人(の会話)にあまり興味がなさそうなところはさすが都会だと感じた。

「このあと行きたい場所とかあるか?」
「待て。子供賢者が水晶に魔力を送ってきている」
「エミーが?」

休暇の時くらい付き合えと言っていたからアルク国を出て魔空魔法で移動する前に次の予定を聞くと、魔王はそう言ってローブから腕輪のついた方の腕を出す。

「どうした」
『あ、繋がった。デートの邪魔してごめんよ』
「本当に邪魔だ」
「いつから社会見学がデートの扱いになったんだ」

腕輪の水晶を映写機変わりに写しだされたのはエミーの姿。
珍しく白衣を着ている。

『魔王に急用があって呼ばせて貰った』
「俺に?」
『魔導砲の中から箱を取り外す時の無効化は私たちも出来たんだけど、箱の蓋を開ける時の無効化が上手く行かないんだ。それで一箱爆破させてしまった』

そう言ってエミーが見せたのは箱の残骸。

「爆破って怪我は?大丈夫なのか?」
『大丈夫。爆散することは魔王から先に聞かされてたから研究所の爆発物処理室でやってる。直接触って処理してた訳じゃないから建物にも研究者にも被害はない』
「そっか。良かった」

魔王から先に聞いてなかったらと思うとゾッとするけど。

『ただ、貴重な証拠物を一つ駄目にしてしまった。いま研究者たちに箱の中の術式の型を調べさせてるけど、簡単に開けてた奴に訊いた方が早いと思ってね』

それでフラウエルに通信してきたと。
たしかに魔王はあっさり開けてた。

「魔族の俺に地上の者が使う術など分かるはずがないだろう?取り外す時と同様に蓋を開ける時もただ無効化しただけだ」
『え?違う魔法で無効化したんじゃなくて?』
「無効化は無効化だろう?違う魔法とは何だ」

人族と魔族では同じでも差があるらしくエミーと魔王は互いに首を傾げあう。

「人族の無効化には闇属性魔法を使うんだ。魔族も何かの属性魔法を使って無効化するんじゃないのか?」
「魔族には人族のような闇属性や聖属性はない。無効化するには魔空属性魔法を使う」

魔王から魔祖と魔空属性を使った転移のやり方を教わった時に思ったんだけど、人族が持つ“闇・聖・時空”を合わせたものが魔族の魔空属性なんじゃないかと思う。

「なあエミー。もしかしたら人族には無理かも」
『無理?』
「賢者は複合魔法を使えるけど三種は無理だよな?」
『二種が限界だね』
「魔族の魔空属性は多分、精霊族の闇・聖・時空の複合」
『三種も!?』

数人しか居ない賢者でさえ二種類の属性複合が限界。
でも魔族には最初から三種類の属性が複合されてる超絶便利な魔空属性がある。
しかも魔王に至っては“魔祖(魔王の個体能力)”という特別な能力も持っているから、無効化するのにも魔祖+魔空属性魔法を使ってる可能性が高い。

『待て。どうして君がそんなことを知ってるんだ?』
「俺も魔族の属性魔法を使えるから。黙っててごめん」
『……魔王の半身になった影響か』
「魂の契約が完了して目が覚めた後だからそうかも」

魔族の属性を覚えたことは今まで言ってなかった。
人族の敵である魔族の力を持っているなんてそれこそ人外扱いされるだろうし、謎が多い魔族の力を研究するためにモルモットにされるのも嫌だったから。

『私は何も聞かなかったことにする。君が使う様々な能力は全て特殊能力ユニークスキルによるもの。異世界人の君だからこそ神が与えた特別な能力。誰かに訊かれてもそう貫き通すんだ』
「いいのか?言わなくても」

本当なら知った時点で国に報告する必要がある話。
もし何かの拍子にバレた時、俺に魔法を教えているエミーがそれを知らなかったと言ってもみんな信用しないと思うけど。

『そうだね。もし君が話してもいいと思えるなら国王にだけは話してくれるかい?国王は君に対して自分の愛息子かのように激甘だ。当然口も堅いし君を研究材料になんてしない』
「分かった。国王のおっさんには話す」

確かに国王のおっさんなら誰にも言わないと思う。
息子かのように激甘かどうかは知らないけど異世界から召喚してしまったことを詫びてくれたし、勇者じゃなかった俺にも生活するための手当をくれているパトロンだから。

『魂の契約を結ぶと能力も継ぐと魔王は知ってたのか?』
「魂の契約にそんな効果はない。魔王の俺と契約することで魔素耐性がつくのと能力値が多少上がるくらいの影響は有るが、能力を継ぐなど本来ならば有り得ない。魔王の俺だけが持つはずの個体能力の一つを持ってることに気付いておかしいとは思っていたが、気に病むと思って本人には言わなかった」

……やっぱりそうか。
魔王以前にエミーの賢者の力を覚えてたから、もしかしたら魂の契約は特殊恩恵を得る為のでしかなかったんじゃないかとは自分でも少し思ってた。
中には魂の契約を結んだから出来てる事もあるだろうけど。

『恩恵が次々と増えたりするから私も変だとは思ってたけど、恐らくそれこそが君の持つ特殊能力ユニークスキルの能力なんだろうね』
「え!恩恵が増えるのって変なのか!?」

恩恵どころか特殊恩恵も属性魔法も増えてますけど!?
隙あらば暇を持て余した神々に遊ばれてますけど!?

『普通は覚醒する以外で増えたり減ったりしない。私を例にして説明すると、元は〝賢者の血継〟って名前の特殊恩恵だったものが覚醒後〝賢者〟に変わって同時に恩恵も二つ増えた』

ぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
だって今まで恩恵(やれること)が増えてもエドやベルはキラキラするだけで変だとは言わなかったし、エミーもさらっと流して教えてくれなかったのに。

召喚された時点と現時点での俺のステータス(特殊恩恵&恩恵)の変化はコチラ。

↓召喚時↓

《特殊恩恵》
遊び人

《恩恵》
なし

↓現在↓

《特殊恩恵》
神に愛されし遊び人 evolve!
不屈の情緒不安定
カミサマ(笑)
Dead or Alive 
魔刀陣
賢者様の寵愛児♡
魔王様の寵愛児♡
魔影
神罰 new!
大天使 new!

《恩恵》
天陣 evolve!
神の怒り new!
神の裁き new!
大防御 new!
大天使の翼 new!
大天使の目 new!

……完全に人外認定ですありがとうございました。

『どうして落ち込むんだい?使える能力が増える特殊能力ユニークスキルなんて羨ましい。それだけ戦いの幅が広がるってことだ。魂の契約で能力を得られるなら私も契約して貰いたかったよ』

さすが戦闘狂 (  ˙-˙  )スンッ‬
強くなれるなら人外でもOKか。
魔族の力を持った人族が居るなんて一大事だろうに、軽く言うエミーに笑い声が洩れた。

『さてと。いつまでもデートの邪魔をする趣味はないし、改めて無効化する手立てを考えないとね。属性の種類が違う魔族が関係してないなら私たちにも無効化できるはずだ』
「俺がやってやろう」

研究(解析)の続きに戻ろうと通信を終わらせようとしたエミーに魔王は軽く提案する。

『魔王が?』
「ああ。国王に謁見できるか?」
『謁見?理由は?』
「渡す物がある。会談の駒になるかも知れない物を国王抜きで渡してはお前の立場が悪くなるだろうからな」
『会談の……まさか国から盗んだ物とかじゃないだろうね』
「魔族は力尽くで奪いはするが黙って盗んだりしない」
『そこ威張るところじゃないよ』

エミーから‪ (  ˙-˙  )スンッ‬ とされる魔王。
力尽くで奪うか卑怯にこっそり奪うかの差しかない。

『国王の命に関わる物じゃないだろうね』
「いま国王を殺して俺に何の得がある。国を混乱させては勇者の成長の妨げになるだけだろう。覚醒して俺と戦えるだけの強者となるには安全な国で安心して鍛えられる環境が必要だ」

面白い反論だ。
ここまでくるとむしろ、この世界で魔王が一番勇者の覚醒を期待してる気がする。

「俺は半身を戦場に立たせたくない。そのために会談で役立ちそうな物をお前たちに渡すというだけのことだ」
『分かった。君もシンに激甘なことは知ってる。ただ少し時間をくれるかい?国王に直接会って確認してみるよ』
「ああ。決まったらまた報告しろ。残りの箱も無効化してやるから下手に触らず用意だけしておけ」

何か凄い話になってきた。
魔族、いや、魔王が精霊族の争いに関わることなんて今までなかっただろうに。

「俺には先に教えてくれ。何を渡すんだ?」
「これだ」

通信を終わらせた魔王が異空間アイテムボックスから出したのは手のひらより大きいサイズの透明な石。

「なにこれ」
「お前たちが魔封石と呼んでいた物だ」
「透明のこれが!?」
「先程見た箱の中の石は魔力を封じて黒に変色していたから分からなかったがこれが原石だ。魔界では晶石と呼んでいる」
「じゃあこれは魔界の?」
「いや。エルフ族の領域に埋まっていた石だ。厄災の王が空けた大穴の中で見つけた。同じくらいだと思わないか?あの箱の中に入っていた石の大きさに」

黒と透明の違いはあるけどサイズはほぼ同じ。
こちらの方が多少大きいかもという程度の差。
箱の中の魔封石のサイズで既に人族の領域にはないって言ってたくらいだから、あの魔封石の出処はエルフの領域である可能性が高くなった。

「確かに同じくらいのサイズ。だから会談の駒って」
「証拠もなしに会談を行ってもはぐらかされるだけだろう。尤も今回の件が国ぐるみかと言われれば、普段見ているのと変わらないあの様子からしてそうでない気はするが」

王都の様子だけで言えば平和そのもの。
エルフ族の区域にも領地は複数あるらしいから国の軍事とは無関係にエルフ族の誰かが協力したのかも知れないし、国民は知らされてないだけで国が関与してるのかも知れない。

「……戦争はして欲しくない。大切な人を亡くして悲しい思いをする人や親の居ない子供が増える」

国を狙っての攻撃なら多くの命が奪われることになるから放っておくことは出来ないけど、いざ戦争になったらなったで戦地に赴き戦死する人が出てきてしまう。
ドニやロイズたちの子供時代ように、戦争で親を亡くす辛さを今の子供たちにも味合わせるようなことは避けて欲しい。

「「…………」」

多分お互いに脳裏をよぎったものは同じだったと思う。
国と国をかけた戦争よりも惨い、層と層をかけたが開戦する日がいつか必ず来ることを。

その未来は遠くない。
 
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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

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