ホスト異世界へ行く

REON

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第零章 先代編(前編)

原因不明

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王太子宮殿へ向かい王城を出たマクシム。
くだらない茶番劇を見せられて溜息をつく。

「王太子殿下。護衛を」
「必要ない。すぐそこだ」
「ですが」
「私の命を狙う者ならばまだ城内にいる」

マクシムの皮肉を聞きグッと口を結んだ騎士。
その姿を見てフッと口元を皮肉に歪ませ再び歩き出した。

実際に王太子宮殿は王城と一番近い。
身分の高い者が住む宮殿ほど国王の暮らす王城の近くに作られている。

庭園に咲き誇る花々。
寒冷期であっても季節に合わせた花を見ることができる。
もっとも、母親のブランディーヌが亡くなってからはマクシムも花を愛でることはなくなったけれど。

早く戻って湯浴みをしようとまっすぐ歩いていたマクシムは、噴水に誰かが座っていることに気付く。
あれは……

「勇者さま?」

王家より先に大食堂を出た勇者。
護衛騎士もつけずなぜ庭園に。

「如何なさいましたか?」
「……王太子殿下。ご挨拶申し上げます」

少し間があいたあと立ち上がり胸に手をあて挨拶をした春雪。
今の間は誰だったかを思い出していたのだなと察する。
あれだけ強烈な印象を残す者がいたのだから私の存在などすぐに思い出せなくて当然か。

「ご気分が優れないのではないですか?」
「いえ。もう宿舎へ帰ります」

月明かりと淡い街灯に照らされた春雪の顔色は青白く見える。
何か企んでいて見つかったことに顔色を変えたのか……いや、どうやら体調が悪いようだ。

「お待ちください。そのまま帰らせては私が叱られます」

勇者は地上に生きる者にとって大切な存在。
今日の晩餐も勇者との顔合わせでなければ参加しなかった。

「どうぞお掛けください。どこか痛いのでは?」
「食べすぎただけです。落ち着いたら帰ります」

言われて眺めれば線の細い体。
どこか体を悪くしているのでは。

「よろしければ私の宮殿でお休みください」
「お気持ちだけで」
「勇者さまに何かあっては大変ですから」

この様子で見て見なかったふりは出来ない。
放置してもし勇者に何かあれば国が揺らぐ。

「客間が空いておりますので落ち着くまでそちらでお休みください。食べすぎであればお薬もありますし、勇者宿舎へは私が責任をもってお知らせしますからどうぞご安心を」
「……すみません。ありがとうございます」

ようやく折れた。
食べすぎならば薬を飲んで休んでいれば落ち着くだろう。

「大丈夫ですか?」
「はい。すみません」

立ち上がった途端によろめいた体を支える。
これは食べすぎが理由ではなさそうだ。

「勇者さま、少し私に体を預けてください」
「はい?」
「このまま歩いて倒れては怪我をなさいますので」

致し方ない。
マクシムは体に強化魔法をかけて春雪を抱き上げる。

「要らなかったか」

ポツリと呟いたマクシム。
強化魔法をかけるほど重くない。

「すぐに着きますので少し我慢を」

まるで女性を抱いているようだ。
この軽い体で魔王を倒せるのだろうか。
そう思いながらも口には出さず王太子宮殿へ向かった。

「お戻りなさいませ」
「勇者殿の体調が優れないようだ」
「なぜこちらの宮殿へ」
「私の宮殿が一番近い」
「王城へお連れした方が」

宮殿の入口に立っていた警備兵。
いつまでも扉を開けない警備兵へ舌打ちする。

「私に指図するな。余計なことを言わず開けろ」
「は、はっ!」

王城にはまだあの親子が居るだろう。
愚劣な者のいる場所へ地上の命運を左右する勇者を置いて行くことはできない。

「王太子殿下?」
「すぐにベッドの用意を」
叙事詩エピックの間の支度を」
「「はい」」

人を抱えてきたのを見てメイドへすぐに指示したのはマクシムの従者。

「この黒髪は勇者さまでは」
「そうだ。体調が優れず噴水に座っていたのをお連れした。本人は食べすぎと言っていたがそうは思えない。随行医ずいこういを呼べ」
「承知しました」

客間に向かいながら指示するマクシム。
気を失っているのか眠っているのか春雪の反応はない。
噴水の時点では話せていたと言うのに。

部屋に行くと先に行ったメイドが扉を開け待っていて、すぐに寝かせるよう支度されていたベッドに下ろす。

「熱があるのか?」

顔が青ざめ汗をかいていることに気付いて額に触る。
分厚い正礼装で気付かなかったが、直接触れた額は熱い。

「王太子殿下、こちらは私どもにお任せを」
「彼は勇者だ。お前たちを信用していない訳ではないが、任せて部屋を出ることはできない」

他の者であればメイドたちに任せて離れた。
けれど彼はこの世界に一人しかいない勇者。
メイドに任せられる人物ではない。

「体を拭くタオルと氷水の用意を」
「承知しました」

熱があることは間違いなく、随行医がくるまでの応急処置として冷やすための氷水を用意させる。

「脈も呼吸も早いな」

生活環境が大きく変化して体調を崩したのだろうか。
晩餐の最中にそのような様子は一切見せなかったのに。
額に滲む汗をハンカチで拭う。

それにしても近くで見るとますます美しい。
大食堂で拝見した際にも中性的な方だとは思ったが、果たしてこれほどだっただろうか。
苦しそうな様子を見て思うことではないが。

「タオルをお持ちしました」

先に戻ったメイドから乾いたタオルを受けとり滲む汗を拭う。

「恐れながら王太子殿下。お熱いのではないかと」
「どうしたらいい」
「正礼装を緩めて差し上げては」
「たしかに苦しいか」

正礼装は首元までしっかり留められている。
たしかにこれで寝るのは苦しかろうとホックを外すと白い首が露わになる。

「随分と痩せておられる」

男性の割に細い首。
同じ異界からきた剣士殿はがっしりした体型で、魔導師殿も細い方だったがこれほどまでではなかった。
であるならやはり勇者殿が痩せているのだろう。

「お待たせいたしました」
「すぐに診察を。お前は下がっていい。ご苦労だった」
「はい」

顔や首の汗を拭っていると部屋へ随行医が訪れる。
その姿を見てベッドの横を譲り、メイドは下がらせた。

「肺と心臓の音を確認するために正礼装を脱がせますので、王太子殿下はお部屋の外でお待ちください」
「病人が肌を見せることに礼儀など関係ないだろう」

王家の者に肌を晒すことは無礼と言われている。
ただし病人であれば話は別。
それに、例え宮殿の随行医であろうと、勇者に関わる任についていない者と勇者を自分だけの判断で二人きりにはできない。

「では失礼して」

随行医の手で正礼装のボタンが外され、中に身につけているシャツのボタンも外され白い肌が露わになる。

やはり男性で間違いなかったか。
弱々しい春雪の姿を見て少し疑いをもっていたマクシムは、開けた胸元を見て自分の思い過ごしだったと納得した。

「肺や心音に異常はないですが随分と熱が高いですね。恐らく風邪だとは思いますが、念のため魔法検査を行いますか?」
「そうしてくれ。風邪ならば動かさず寝かせておくが、ここで対応できない病であれば王宮院へお連れしなくては」
「承知しました」

風邪であれば宮殿でも対応できるが、彼が勇者であることを考えれば万が一の見逃しも許されない。

「失礼いたします。氷水をお持ちしました」
「私が受けとる」
「お願いいたします」

メイドが運んできた鉄製のウォッシュボウルを随行医と来て扉の傍に控えていた従者が受けとり、魔法検査の邪魔にならないよう静かに準備をする。

何か大きな病でなければいいが。
苦しそうな姿を見ていると居た堪れない。

「……王太子殿下」
「結果が出たか」
「出たのですが……人払いを願えますか?」
「人払い?承知した」

目で合図を送ると従者は部屋を出る。
人払いが必要なほどの病だったのだろうか。

「結論から申しますと風邪ではありませんでした」
「ではなんの病だ」
「分かりません」
「分からない?」
「見たことのない検査結果が出たのです」

随行医は宮殿に仕える実力をもつ優秀な医療師。
その医療師が見たことのない結果とは。

「書き記しますので陛下にお伝えいただけますか?異界にしかない病なのかも知れません。それともうひとつ」
「まだなにかあるのか」
「はい。そのために人払いを願ったのですが、」

そこまで話して随行医は立ち上がりマクシムの傍に寄る。

「勇者さまは二つの性をお持ちです」
「……どういうことだ?」
半陰陽者エルマフロディットです」
「魔族や魔物にいるあれか?」
「はい」

極一部存在する半陰陽の魔物。
他には禁書の魔族の項目に記されているだけで、人族で半陰陽の者は見つかっていない。

「神がお選びになった勇者が魔族や魔物のはずはない」
「ええ。私もそう思います。意識のない今の状態では本人へ問うことはできませんが、異界の人族には半陰陽エルマフロディットの者も存在するのかも知れません」

悪意はなかったといえ勇者の大きな秘密を知ってしまった。
ただ見た目が中性的だったのではなく、本当に両方の性を持っていたとは。

「万が一のための魔法検査で秘密を知ることになるとは」
「勇者さまのお体はミシオネールさまが専属で魔法検査を行っておりますので、陛下のお耳にも届いているのではないかと」
「ミシオネールさまが?それであれば事情を知っているからミシオネールさまが専属で診ているのかも知れないな」

賢者ミシオネール。
彼は父上の教育係であり、現在も相談役として仕えている。
能力に関しても賢者の中で一番の実力者と言われている。

そのような優秀な方が随行医の魔法検査でもわかったことを分からないとは思えない。
魔法医療師ではなく賢者が検査を行っているのも、勇者が半陰陽であることを知っているからこそ他の者には任せられないのだと考えられる。

「中性的で美しい人だとは思ったが、理由があったのだな」

女性なのではと疑ったことも間違いではなかった。
美しい勇者は男性でもあり女性でもある。

「このことは口外を禁ずる。長生きしたいのであれば」
「心得ております」

勇者の秘密を話せば自分たちの分が悪い。
口封じのために消されるのはこちらだ。

「フェリクス」
「はっ」
「これをすぐに陛下へ。陛下は藍色インディゴ宮殿におられる」
「承知しました」

部屋の扉を開け、ミシェル以外の者が開けば燃えるよう魔法を施したスクロールを従者へ渡す。
随行医ではわからなかったこれらの症状を博識な父上やミシオネールさまが知っていればよいが。

「下手に薬を処方できませんので回復ヒールをおかけします」
「それが済んだら下がっていい。迎えがくるまで私がみよう」
「承知しました」

症状が楽になるよう無害な回復ヒールでの治療。
病の場合一度の回復ヒールでは完治しない。
薬との併用が必要だ。

随行医が回復ヒールをかけるとスっと顔色が良くなる。
苦しそうだった呼吸も落ち着いて楽になったのか、ずっと眉根を顰めていた表情も穏やかになった。

「ではこれで失礼します。もし急変した際はお呼びください」
「ご苦労だった」

部屋に残ったのは眠る春雪とマクシムの二人。
ベッドの隣へ椅子を運びそこへ座る。

「私が誰かの看病につく日がくるとは。母上の時ですら傍に居なかったと言うのに」

そう呟いてマクシムは苦笑する。

マクシムとグレースの母であるブランディーヌは流行病に罹り倒れ、二人は病床の母に近付くことを禁じられた。
ミシェルもまた国王の身で会うことを許されないまま、ブランディーヌは随行医に看取られひっそりこの世を去った。

ミシェルとマクシムとグレースがブランディーヌと会えたのは灰になり墓へと埋葬されてから。
形を失ってからの再会にマクシムとグレースは泣き、ミシェルは自分の無力さを悔やんだ。

あの日のことをマクシムは忘れていない。

政略結婚だった父と母。
それでも父と母の間には二人にしか分からない確かな繋がりがあったのだと、普段は偉大な父の背中が小さく見えたあの日にマクシムは理解した。

「父上には心安らげる相手が必要だ」

春雪の顔を見ながらマクシムは独り言を呟く。
守る対象の我が子ではなく、安心して背を預けられる存在。
きさきとは名ばかりの二妃や三妃では到底無理だ。

父上は私が唯一尊敬する方。
三人の妻を同時に娶ったため宮殿へ来る機会の少ない父ではあったが、来た時には私やグレースが眠るまで遊んでくれた。
大人になり父上のご公務の量を知り、こんなにも忙しいのに私たちに会いに来てくれていたのかと驚いたほど。

父上は母上や私やグレースを父上なりに愛してくれていた。
母上を守り、グレースを守り、私を守り、国と民を守る。
それがどんなに大変なことか今ならわかる。

私はそんな父上を支えられる者になりたい。
安心して背を預ける相手は無理でも、せめて公務の方で。
そのために知識を学び、剣や魔法の訓練も重ねている。





時間は少し遡り藍色インディゴ宮殿。

「三妃を交えず私と二人で話したいなど珍しいな」
「確信のないことですので」

防音魔法を施した部屋でソファに座るミシェルとフレデリク。
ミシェルが来る前にも母の三妃から何度も話の内容を問われたが、フレデリクは最後まで口を結んだ。

「確信がなくとも話したくて呼んだのだろう?」
「実はロザリーとリーズがおかしなことを言うのです」
「おかしなこと?」
「勇者さまが男性ではないと」
「男性ではない?」
「見目麗しい勇者さまですので二人の勘違いや空想だろうと思ったのですが、父上もご存知の通り二人は誰も知らなかったことを当てたこともありますので、もしやと」

それが一度や二度ならば偶然で片付く。
けれど双子が言い当てたことは一度や二度ではない。
ただしそれがこの国を揺るがすほどの大きなことかと言えば、この藍色インディゴ宮殿の中で終わるような内容。
父上が来る数分前に気付いたり、プレゼントの中身を言い当てたりと、国を救うような大事のものではない。

「ふむ。今回のことに関してはロザリーとリーズの思い違いや妄想だろう。偶然にも風呂上がりの春雪殿の上半身を見たことがあるが、女性ではなかった」

男性と女性の体を間違うほど見慣れぬものではない。
もし女性であるなら訪問者を出迎える際に上半身を晒したまま扉を開けたりしなかっただろう。

「女性ではないとも言っていました」
「男性でも女性でもないと?」
「二人が言うには」

女性ではないと言うのは事実。
ただ男性でもないと言うならば何だと言うのか。

「もしや勇者さまは無性か両性なのでは」
「教典の神や魔王のように、か?」
「勇者さまが神や魔王などとは申しませんが、同じ特徴を持っているのではないかと」

教団の教典に書かれているのは無性の神と両性の魔王。
神や魔王がどうかは分からないが、禁書には魔族から聞いた話として両性の魔族も少なくないことが書かれている。

「……やはりそれはない」
「なぜですか?」
「春雪殿の健康管理は数日に一度ミシオネールが魔法検査を行っている。もし無性や両性であれば分かるはずだ」
「そうなのですか。では私の考え過ぎですね。思い違いで父上の貴重なお時間をいただいて申し訳ありませんでした」
「いや。たまにはこうして二人で話すのも悪くない」

お渡りがなくなり数年。
宮殿へ来る機会と言えば週に一度の食事くらい。
大半の子供たちが訓練校や魔導校へ通うようになった今、こうして話す機会を設けられたことは喜ばしいことだった。

「父上。寵妃ちょうひはお迎えにならないのですか?」
「随分と唐突な。だが、そのような事を考える歳になったか」
「誤魔化さないでください」

三妃の長男であるフレデリクはグレースと数日違いで生まれた十六歳で王位継承権第四位。
まだ女性には興味がないように思っていたが、いつの間にかそんなことを口にするようになったかと成長を実感するミシェルにフレデリクはピシャリと言う。

「寵妃は必要ない。既に三名の妃を迎え八名もの子供に恵まれた。私の器ではこれ以上抱えられない」

イヴからも寵妃の話は出たことがあるが必要ない。
九つで始まった世継ぎの問題もようやく済んだ。
今更別の誰かを迎えるつもりはない。

「私が言うのもおかしな話しですが、二妃と母上では父上のお心は癒せません。むしろ刃を向けている存在でしょう」

我が母ながら性格はよろしくない。
母上の性格を言葉で表現すれば、外面的には優しい笑みを浮かべながら近付き刃を突き刺す。
そんな表裏の激しい母上を見てきたためか、私に向ける女性の笑みが偽りにしか見えなくなった。

「父上には信じ愛せる人が必要です。父上が抱えずとも安心して身を任せられる人を見つけてください」
「フレデリク」
「私はこの先継承権を辞退して宮殿を出ます。ただ、父上のことが心配なのです。マクシム兄さまのように力も覚悟もない私が心配するなど烏滸がましいと分かってはいるのですが」

祈りの形に結んだ手を額に寄せ顔を伏せるフレデリク。
フレデリクもまたマクシムと同じくミシェルを尊敬している。
だからこそ母の元を離れ領地経営を成功させという形で国やミシェルの役に立ちたいと決めていた。

「申し訳ありません。不敬なことは重々承知で白状いたしますが、父上にロザリーとリーズの話をしたのは勇者さまが女性であれば寵妃にと思ったからです。もし二人の言ったことが事実であれば父上の身を任せられる相手になるのではないかと」

男性の勇者を女性や両性であればと言うことがどれほど失礼なことであるかはフレデリクも分かっている。
けれどそう考えてしまったことが事実だった。

「なぜそう思った。あまりにも荒唐無稽こうとうむけいだろう」
「勇者さまをご覧になる父上の表情が穏やかでしたので」
「私が?」
「父上はお強いですのでご自身が守られる側になることを忘れているように思います。勇者さまであれば父上を守る側にもなれるのではないでしょうか」

フレデリクの話を聞いてミシェルは眉根を押さえる。
愛児にこれほど心配をかけていることに気付かなかったとは父親失格だ。

「フレデリクの気持ちは充分わかった。心配させたことは申し訳なく思う。だが春雪殿は男性で寵妃にすることはできない。春雪殿も同性に言われては不快だろう。怒らせたくはない」

気持ちは伝わったものの「では」とはならない。
寵妃となれる者の性別など記載されていないが、勇者を寵妃に迎えるなど前代未聞の事態であり民の暴動が起きる。
何より春雪殿にうっかり口を滑らせようものなら今以上に警戒して口さえきいてくれなくなるだろう。

「陛下。お話し中失礼します」

ノックの音と三妃の声。
こちらからの声は聞こえないため防音魔法を消す。

「なんだ」
「王太子宮殿よりスクロールが届いております」
「スクロール?」
「シーリングスタンプが紫のためお声をおかけしました」
「なに?」

シーリングスタンプの紫は『至急』を報せるもの。
王太子宮殿でなにか起きたことを表している。
すぐに扉を開け三妃からスクロールを受け取り、シーリングスタンプに魔力を通し封印を解いてからそれを開いて目を通す。

「!?」

マクシムの文字で書かれていたのは春雪の体調を報せる内容。
その下にはマクシムの随行医が書いた魔法検査の結果。
見たことのない言葉が並んでいる。

「フレデリク。話の続きは近い内に」
「マクシム兄さまになにかあったのですか?」
「マクシムは無事だ。今はこれしか話せない」
「陛下、外套をお忘れです」
「ああ」

三妃から外套を受けとり急ぎ足で出口へ向かったミシェル。

「父上お気を付けて!」

フレデリクの声に振り返る余裕もなく軽く手を挙げ宮殿を出て行った。

「陛下があんなにも慌てるなんて。王太子殿下は無事とのことなのに慌てるほどの何があったのかしら。なにか聞いた?」
「いえ。宮殿騎士より陛下へ至急お渡しするようにとだけ」
「そう。陛下もあちらこちらと大変ね」

王太子宮殿の騎士からスクロールを受けとった執事に聞いた第三妃は、それだけ言って広間へ戻る。

「フレデリクさま。なにかあればまた報せが届くかと」
「ああ。その時はすぐに教えて欲しい」
「承知しました」

あのような父上は初めて見た。
普段はもちろん自らの命を狙われた時でさえも動揺を見せなかった父上が、スクロールを読んで青ざめ動揺した。
一体なにがあったと言うのか。





「イヴ!起きているか!」
「な、なにごとですかな?」

王城にあるイヴの部屋。
ちょうど本を読み終え閉じたところでの大きな声に驚いてそちらを見ると、窓枠にミシェルがしゃがんでいた。

「春雪の体調が悪い。熱が高く意識も朦朧としていると」
「なんですと!?」
「私は先に王太子宮殿へ行く。急いでくれ」
「王太子宮殿?勇者宿舎では」

まだ話の途中だと言うのにスクロールを投げて寄越したミシェルは先に行くことを告げると窓枠から飛び降りた。

「ここは三階ですぞ?」

王城は天井が高いため三階でもかなりの高さ。
それを転移を使い窓から来るとは国王として如何なものか。

「王城内を歩く時間も惜しいと言うことか」

王太子宮殿専用のスクロールを拾い確認すると、至急を報せる紫のシーリングスタンプの欠片が残っている。
春雪殿が居るのは王太子宮殿で間違いないようだ。

「……これは一体」

まず目に付いたのは見知らぬ文字。
その下のこの世界の文字で書かれている補足を読み、魔法検査の結果だと気付いてイヴは慌てる。

「こうしてはおれん」

王太子宮殿の随行医が春雪の魔法検査を行った。
スクロールには書かれていないが、ミシェルにもまだ話していなかった問題を知られてしまったと言うこと。
極めて繊細な問題だけに本人がもう少しこの世界に慣れてから問うつもりでいたが、このような形で知られてしまうとは。

イヴもローブを掴み急いで自室を出た。


「国王陛下」
「マクシムはどこに居る」
「宮殿内におられます」

王太子宮殿の警備騎士へ聞きながら自ら扉を開けたミシェル。
騎士が開けるまでの僅かな時間すらも待てないほどにミシェルは動揺していた。

「国王陛下。お待ちしておりました」
「挨拶はよい。すぐに案内を」
「はっ。どうぞこちらへ」

扉を開けた先で待っていたのは王太子宮殿の執事。
挨拶は省略させすぐに案内させる。

「マクシム」
「父上。お待ちしておりました」

執事が開ける扉が開ききる前に足を踏み入れたミシェル。
普段冷静な国王がいていることはその行動で伝わった。

「春雪」

名を呼びベッドの隣へ跪いたミシェルに驚くマクシム。
勇者の名を親しげに呼んだこともだが、不安そうな表情を隠すこともせず頬に手のひらを添えている姿など見たことがない。

「今は回復ヒールが効き落ち着いておられますが、その前は熱で苦しそうにしておりました」
「なぜ春雪がここに居る?」

春雪から顔をあげたミシェルの顔は普段見ている冷静な顔。

「私はなにもしておりません」
「マクシムが愚かではないと分かっている。そうではなく、勇者宿舎へ帰ったはずの春雪がここに居る理由を知りたい」

王太子のマクシムは愚かではない。
失うものの大きさを理解していながら勇者に危害を加えるような軽率な真似はしない。

「私が勇者さまにお会いしたのは噴水です。この宮殿へ戻る際にお見かけしたので何故居るのかと私も不思議に思い声をかけたのですが、その時には既に顔色が悪くなっておりました」
「宿舎へ戻る前に体調が悪くなって休んでいたのか」
「恐らく」

大食堂を出たのは勇者たちの方が先。
晩餐中は具合が悪いことを隠していたのか、出た後に具合が悪くなったのかは分からないが、王太子宮殿へ戻るマクシムにしか気付けない噴水に居たのは人目を避けたからだろう。

「弱っている姿を誰にも見られたくなかったのだな?」

人を信用していない春雪だから弱った姿を見せたくなかった。
他の勇者と宿舎へ戻らなかった理由もそれが一番納得できる。

「そろそろ信用してくれても良いのではないか?春雪を傷つけたりしないと言うのに」

眠っている春雪へ話すミシェルの表情は苦笑。
まるでそれは恋人への語らいのよう。

「……やはり勇者さまが半陰陽エルマフロディットなのは事実なのですね」
「春雪が半陰陽エルマフロディット?」

しまった。
ご存知なかったようだ。
愛する者を慈しむような姿を見て、女性の性も併せ持つことを知っているから惹かれているのではと思ったのだけれど。

「どういうことだ」

驚きを隠せないミシェルの声に重なるノックの音。

「ミシオネールさまがおいでになりました」
「通せ」
「はっ」

マクシムの許可を得て執事が開いた扉からイヴが姿を見せる。

「ミシオネール。私を謀っていたのか?」
「やれやれ。一足遅かったようですな」

溜息をつき歩いてくるイヴ。
その姿は普段のイヴの飄々とした様子と変わらない。

「謀っていたとは人聞きの悪い。事実を確認した後にご報告するつもりだったというだけのことです」
「やはりミシオネールさまはご存知だったのですね」
「ええ。魔法検査の結果に出ておりましたので」

マクシムにくすりと笑い、そのままベッドに向かったイヴ。
眠っている春雪の顔を覗き込む。

「なぜ私に話さなかった」
「申しました通り、まだ事実確認を行っていないからです」
「その場で本人に聞けば良かっただろう」
「おや?陛下ともあろうお方が愚見ですな」

心拍数・呼吸数ともに増加が見られる。
回復ヒール治療により落ち着いているものの長くは持ちそうにない。
解熱剤の投与が必要だろう。

「私が魔法検査を行ったのは講義初日。検査を行ったのちに魔法検査ならば身体状況が分かることを説明したら動揺しておりました。仮に私があの場で真偽を問い詰めていたら今はあったのでしょうか。ご自身のことを打ち明けてくれたでしょうか」

あれは半陰陽エルマフロディットであることを知られたのではという動揺。
知られたくない秘密だと言うこと。

「秘密を知られたとあらば警戒心を強めていたのでは?モルモットにされるのではないかと。そのために近付き親切にしているのではと。ますます独りを望むようになったのでは?」
「……春雪ならそうなるだろうな」

言われて考えてみれば容易に想像できる。
モルモットになりたくないと言った春雪を思い出したミシェルは自分が口にした直情的な言葉を反省した。

「マクシム。春雪の検査結果を知っている者は何名居る」
「人払いをしたので随行医と私だけです」
「ではマクシムと随行医には口外を禁ずる」
「はい」

命じられずとも言えはしない。
長く共にいる父上は気にならないのだろうが、今の自分は腹を空かせた危険な魔物の前に置かれた餌。
他言しようものなら殺気の塊の魔物賢者さまに消されるだろう。

「スクロールに書いてあった症状は分かったか?」
「いいえ。確認のために私も検査してみます」
「頼む」

魔法検査の結果で見知らぬ言葉が並ぶなど前例がない。
仮に異界人の勇者だから起きたことだったとしても、国王となる者が学ぶ門外不出の歴史書でも今回のような事例が書かれていた記憶はない。

「ふむ」
「どうだった」
「文字はこの世界で使用している文字になりました」
「では分かったのか?」
「いいえ。お手上げです」
「ん?」

魔法検査の結果が出ている画面パネルを見やすいようサイズを変化させたイヴ。

「ホルモン?染色体?」
「確かに読めますが肝心のそれが何かが分かりませんね」

随行医の魔法検査で出たのは謎の文字。
イヴの魔法検査ではこの世界の文字になっているが、肝心の『原因』が聞いたことのない言葉で分からない。

「恐らく春雪殿の居た世界で使われている言葉なのでしょう」
「この世界では治療が不可能と言うことか?」
「現時点では。ただ春雪殿が目覚めてそれが何か分かるのであれば、この世界にある物を使って薬が作れるかも知れません」

異界の人族もこの世界の人族も身体の作りは同じ。
この世界に存在しない身体の作りでない限り希望はある。

「起こすか?」
「寝かせておきましょう。どちらにせよ回復ヒールの効果は長く続きそうにありませんので目覚めた時に話せるようであれば」
「そうか。熱が下がっていないのだから辛いだろうな」

春雪の額に置かれていたタオルをウォッシュボウルに入った氷水に浸し絞るミシェル。
国王という立場の者が使用人のような真似を。

「さて。原因不明とあれば隔離せねば」
「ああ。ミシオネールは春雪と接触したマクシムや使用人たちの浄化を頼む。私は残りこの部屋に障壁をかける」
「国王の父上が残るなどなりません!」
「マクシム。私はもう悔やみたくないのだ」

誰よりも優先して離れるべき国王が残るなど有り得ない。
マクシムが反対するのは当然で、他の誰かだったとしても認めないだろう。

「あの頃はまだお前たちが成年前で私が病に伏せることはできなかった。だから会いに行くこともできず、最期の言葉も交わせぬまま一人寂しく逝かせてしまった」
「父上」

第一妃ブランディーヌ。
自分と同じくミシェルも看取ることができなかったことを悔やんでいるのだと分かり、マクシムはぐっと口を結ぶ。

「なに。今回は念のための隔離でまだ流行病と決まった訳ではない。春雪が目覚め次第聞いて報せる」

やれやれ。
やはり残ると駄々をこねるか。

イヴにはミシェルの言動も想定の範囲内。
第一妃の際には苦労して何とか言い聞かせたが、今回はもう何を言っても聞き入れないだろう。
今のミシェルは国王ではなく心許せる者の身を案ずる一人の男になっている。

「困った御方だ。私が今までどれほど苦労してきたか」

苦笑しつつミシェルへ浄化魔法と自然治癒魔法をかけるイヴ。

「マクシムたちを頼む」
「陛下も春雪殿を頼みますぞ。目覚めるまでは回復ヒールで対応を」
「ああ。任せておけ」

マクシムとイヴが部屋を出て扉をしめると障壁がかかる。

「父上」
「案じますな。陛下は国王とだけの男ではありませんぞ」

術式も使わず部屋一つを囲う障壁。
歴代初の二つドゥーブルの特殊恩恵を持つ国王。

大賢者ミシェル・ヴェルデ・ブークリエ。

彼もまた、神に選ばれし存在。
 
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旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

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部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
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不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

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新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

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