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第零章 先代編(前編)
エルマフロディット
しおりを挟むイヴの到着から遅れること数十分。
春雪の魔法検査の結果を知り、改めて王城にある書庫で禁書を読み耽っていたマクシムも従者から伝達を聞き寓話の間へやってきて、ミシェルの口から春雪についての説明を受ける。
「本当に半陰陽の者が実在するとは」
教典に登場する魔族の王。
禁書に遺されている魔族の生態。
交わる機会のない種族のそれはマクシムにとって創作話のように現実味がなかったが、異界の者であろうと二つの性を持つ者が実在するとなれば文献も信憑性が増す。
「マクシム。諄いようだが、このことは誰にも口外しないよう。既に関わっているからこうして話したが、本来勇者について知ることができるのはごく一部の者と決めている」
「心得ております」
地上を救う力を持つ異界の勇者。
その力を悪用せんと目論む者、革命家や暗殺者といった破壊主義者、面白おかしく語る愚者も居ないとは限らない。
それらのあらゆる思惑から避けるためには、勇者の利点も弱点も知られない方がよい。
だからこそ勇者に関わる者は限定される。
本来であれば知らされることのない内容であったことはマクシムも理解していた。
「とは言え、今回はマクシムの機転に救われた。まだみなの居た王城へ連れ戻られていたら騒ぎが大きくなっただろう。なにが最善かを判断できるよい王太子に育ってくれたのだな」
尊敬する父から褒められ頬が緩みそうになるマクシム。
けれどそれを悟られないよう頬を引き締め「ありがとうございます」と軽く礼をする。
「流行病ではなかったとのことですが、勇者さまの療養場所は今後いかがなさいますか?このまま宮殿で療養していただくか、勇者宿舎でと言うことであればお連れいたします」
流行病の可能性を考え広がらないようそのまま宮殿で隔離処置をしたが、そうでないなら住み慣れた勇者宿舎で療養した方が落ち着くのではないか。
「ミシオネール。お前はどう思う」
「王太子殿下がよいのであれば宮殿で療養していただく方がよいかと。王太子殿下はもちろん仕える者も口の固い者ばかりですし、王城から近いので私も診察に通い易いです」
何より、警戒心の強い春雪には人の出入りの少ない王太子宮殿の方がゆっくり療養できるだろう。
王太子の立場のマクシムも警戒心が強く、王太子宮殿は少数精鋭で成り立っている。
「うむ。では勇者殿の体調が落ち着くまでマクシムに任せてよいだろうか。私やミシオネールも毎日様子を見に来るが」
「光栄です」
二人が勇者を任せてくれると言うことは信頼あってのこと。
二人から任されたことも、地上を救う勇者に関わることも、マクシムにとってはこの上ない光栄なことだった。
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ミシェルは春雪が目覚めて決定したことを話してから王城へ戻ることにして、一旦叙事詩の間へ戻る。
寓話の間に残ったマクシムとイヴは、診察時間や食事のメニューなど、この宮殿での療養中に必要な話しを詰めた。
「殿下。老婆心ながら一つ献言を」
「伺います」
話しが纏まり散開する前に執事のフェリクスが用意した紅茶で喉を潤していると、イヴが改まった様子で「献言を」と口にしティーカップをソーサに置く。
「ここで過ごすのであれば追々わかることですので先に申し上げますが、勇者殿は大変警戒心の強い方です。警戒心が強過ぎるがあまり部屋に人が居ては落ち着かないほどに」
意図せずとは言え、既に片足を踏み入れてしまったマクシムには春雪が難しい性格をしていることを伝える必要がある。
ミシェルは頻繁に城下へ出て一般国民と接しているため春雪の態度に不快感を示さないが、生まれて17年間一般国民と親しく接する機会のなかった王太子は不快に思う可能性が高い。
「最初は従僕どころか女中でさえ必要ないと拒絶されました。自分のことは自分でするから部屋では独りにして欲しいと」
自分のことは自分でする。
それは一般国民であれば当たり前のことでも貴族は違う。
マクシムは特に世話をされることに慣れた王位継承権第一位の王太子であり、自分のことは自分でなどと無礼なことはできないと世話役を用意するだろう。
その気遣いが春雪には仇になる。
あの時のように強い口調で拒絶の言葉をはくかも知れない。
そうなれば常に従順な者に囲まれているマクシムは不快になり、勇者へ悪印象を持つ可能性もある。
「ではこの宮殿でも必要以上の接触は避けましょう。用件のある時だけお呼びくださるよう、魔導ベルをお渡しします」
おや?
予想外のマクシムの柔軟さにイヴは髭を撫でる。
つい数年前までは王太子の自分は誰よりも偉いという高慢さの目立つ子供だった記憶があるが。
「いかがなさいましたか?」
「いえ。失礼ながら成長されたのだなと」
黙ったイヴに首を傾げたマクシムはその本音にくすりとする。
「私ももう17になりました。いつまでも安全な鳥籠で守られている訳には参りません。ミシオネールさまの印象に残っている私の恥ずべき過去の姿はどうかお忘れください」
子供の成長とは早いものだ。
たった数年でここまで成長するとは。
過去の印象を引きずっていた私の方が恥ずべきことだった。
「これは私も態度を改めなくてはなりませんな」
「大変光栄なお話しではありますが、ミシオネールさまは父上にとってもこの国にとっても特別な方ですので」
身分は王太子のマクシムの方が上でも、賢者で国王の側近でもあるイヴに自分を敬うよう言うほどマクシムは愚かではない。
与えられた身分では測れない影響力と言うものは存在する。
代わりのいる王太子の自分より、代わりのいないイヴを失う方が国の損失になることをマクシムはよく分かっていた。
「言葉通りの不要な献言になってしまったようですな。これで私も失礼します。勇者殿の魔法検査を行いますので」
「はい。お気を付けて」
イヴが部屋を出たあとマクシムは苦笑する。
どうやら今代の勇者さまは扱いの難しい方のようだ、と。
けれど大食堂で春雪が見せた姿は、17年王家の者として生きてきたマクシムでも目を惹かれる自然で美しい所作だった。
仲間のミスを優雅な所作で些細なことに変えたあの機転ができる者なのだから、決して無能ではない。
「お呼びでしょうか」
「勇者殿を暫くこの宮殿でお預かりすることになった。すぐに着替えやこの必需品を最高級の物で揃えるように」
「拝見します」
宮殿内であれば呼応する魔導ベルを鳴らし呼んだ執事へ、イヴと詰めた内容を書いた紙を渡す。
「勇者さまは世話をされることを好まないらしい。魔導ベルをお渡しして必要な際に呼んで貰うことにする。今回は父上やミシオネールさまがこの宮殿ならばと私や使用人を信頼してお任せくださった。みな心してお仕えするよう」
「承知いたしました」
国王から信頼を得るのは簡単ではない。
信頼されていることを知れば使用人たちも気を引き締め勇者さまにお仕えするだろう。
「忘れず警備の強化を。愚者とは接触させるな」
「はっ」
マクシムの言う愚者は二妃とその子供たち。
王家の者でも父上の許可なく入れない勇者宿舎から出ているのをよいことに、勇者さまと接触を図ろうとする可能性がある。
次男のドナや長女のララは毒にも薬にもならない臆病者だが、臆病ゆえに母に命じられれば従うだろう。
この宮殿で勇者さまに万が一があれば私の失態となる。
王太子の私に成り代わり国王の座を狙うセルジュもまた、この時を好機と勇者さまに近付く可能性は高い。
あの愚か者たちを勇者さまへ近付けてはならない。
表面上は華々しい王家。
けれどその中身は蹴落とし蹴落とされの醜い争いが絶えない。
王位継承権第二位のセルジュには特に王位を譲れない。
民を見下すセルジュが国王になり贅沢放題な女狐が王太后となれば、多くの国民が貧困に喘ぐことになるだろう。
「フェリクスには苦労をかけてすまない」
「何を申されます。私は自ら望んでお仕えしておりますゆえ、なんなりとお申し付けください」
執事のフェリクスはマクシムの幼なじみ。
自ら志願して執事となったフェリクスの忠誠心は強い。
苦笑で詫びるマクシムに、フェリクスは堂々とした態度で笑みと言葉を返した。
・
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ミシェルやイヴが王城へ戻って一時間ほど。
魔導ベルを渡すため叙事詩の間を覗いたマクシム。
「失礼しました。お目覚めでしたか」
「はい」
そっと扉を開けるとベッドで眠っていた春雪が体を起こし水をグラスに注いでいるところで、起こさないようノックせずに開けたマクシムは詫びながら部屋へ入る。
「すぐにお暇しますが、こちらをお渡ししておこうかと」
「ベル?」
「魔導ベルと申します。入用の際にこちらを鳴らしていただければすぐに使用人が参りますのでお使いください」
金で出来た魔導ベル。
手のひらよりも小さいそのベルを春雪へ渡す。
「お気遣い感謝します」
「お気になさらず。一日も早いご回復をお祈りいたします」
「ありがとうございます」
聞いていたよりも刺々しい印象はない。
むしろ感謝を口にして丁寧に頭を下げる姿は好印象。
「……いかがなさいましたか?」
黒曜石のような美しい瞳でジッとマクシムを見上げる春雪。
端整で美しい顔貌もあいまって、引き込まれそうなその瞳からマクシムは思わず目を逸らす。
「す、すみません。国王さまに似てると思って」
「父上に?」
たしかにマクシムはミシェルの生き写しのようだと言われる。
王家の中でもパープルの髪と瞳が揃った者はマクシムだけ。
「不躾に見てしまい申し訳ありません」
「いえ。父上に似ているとは光栄なことです」
そうか。
私の容姿が父上に似ているから、聞いていたほどの強い警戒心を抱いていないのだろう。
「どうぞそのようにお気遣いなく。私は王太子ではありますが、勇者の冒険譚を読み憧れたこの世界の者の一人でもあります。勇者さまのお役に立てることを喜ばしく思っております」
幼い頃に母上や父上から読んで貰った勇者の物語。
数々の困難に立ち向かい勝利する勇者たちに憧れたのは事実。
妹のグレースも聖女さまに憧れていたあの頃が懐かしい。
「俺、いや、私はそんな立派な人間ではありません」
これは失言だったか。
春雪の表情が翳りマクシムはそう察する。
「ではこうしましょう。まだ勇者さまは訓練を始めたばかり。のちの勇者さまを見て立派かどうかを私自身で判断します」
「期待には添えないと思います」
ボソッと呟いたそれを聞きマクシムは珍しく声に出して笑う。
神に選ばれし者であることが既に素晴らしい才能だと言うのに、その自信のなさは実に愛らしい。
「私をここまで笑わせるとはなかなかの強者ですね」
春雪が注いだまま置き去りの水が入ったグラスへ魔法で氷を二つ浮かばせ、まだ頬の赤みが残る春雪へそれを渡す。
「氷。水属性のレベルが高いんですね」
パッと子供のような笑みでマクシムを見上げた春雪。
講義で水属性のレベルをあげると氷や雪も出せるようになると習い知っていたから、レベルの高い魔法を使えるマクシムに尊敬にも似た気持ちが生まれる。
「母上や妹のグレースが雪が好きなもので、魔法を使えるようになってからそればかり練習していました」
まだ子供だった私とグレース。
母上やグレースにねだられ父上が見せてくださる雪は美しく、穏やかに笑む母上や嬉しそうにはしゃぐグレースを見て、私もいつか二人に見せてあげたいと幼心に思った。
「じゃあ雪も使えるんですか?」
興味津々に聞く春雪に釣られて微笑したマクシムは、体調を崩している春雪に自分の肩にかけていた肩掛けを頭からかぶせ、手のひらに魔力を集め雪を降らせてみせる。
「……これが雪。綺麗だ」
威力を抑えハラハラと降る雪を見て春雪は呟く。
そんな春雪の横顔を眺めるマクシム。
黒曜石のような瞳と端整な顔立ちに目を囚われる。
まるで作られた物のようなその美しさに。
美しいその横顔をずっと眺めていたい衝動に駆られながらも、自制して雪を止ませた。
突然雪が止んでしまい少し不満そうにチラと見た春雪。
その拗ねたようにも見える表情が愛らしく、マクシムはくすりと笑い春雪へ手を伸ばし、頬に触れコツリと額に額を重ねる。
「まだ熱があるのでお終いです」
それはマクシムらしくない衝動。
体調が心配なのも事実ではあったが、額を重ね熱を確認した行動は触れる理由が欲しかったから。
「また見せてくれますか?」
鈍感なのか興味がないからどうでもいいのか。
感情を抑えきれず頬に触れ額を重ねた行動には何の反応も見せない春雪に『不快にさせずに済んだ』と少し安心したものの、気にかけるくらいはして欲しかったとも思い苦笑する。
「では勇者さまが回復したら今度は外でお見せしましょう」
「外で?」
「今のような威力を抑えた雪では物足りないでしょうから」
「今ので威力を抑えてたんですか?凄い」
魔法が好きなのだろう。
使えると知ってから春雪のマクシムを見る目が変わった。
魔法が使えて良かったとこれほど思えたのは初めてで、マクシムは自分の感情に戸惑いつつまた苦笑した。
「お部屋の温度が少し下がりましたね」
「暑かったから丁度いいです」
それを聞きマクシムは再び春雪へ額を重ねる。
今度は触れたい衝動ではなく純粋に熱を確認するために。
「お水を飲んでまた横になってください。冷やしましょう」
しっかり重ねて確認するとたしかに熱い。
父上のかけた回復が切れたのだろう。
「お食事を口にできそうですか?少しお腹に入れて薬を」
氷枕の位置を正してから背中に手を添えベッドに寝かせ、ウォッシュボウルに魔法で氷を追加するマクシム。
今の今まで『さすが王太子』と思う落ち着き払った態度だったのに、突然かいがいしく行動し始めた姿に春雪はつい笑う。
「やっぱり国王さまと似てますね」
愛らしくクスクス笑う春雪。
マクシムはその警戒心の欠片もない表情に胸がチクリとする。
ミシェルと似ているから見ることのできた無防備な姿なのだと思うと、胸がモヤモヤするのを感じた。
相手は同性だと言うのに。
いや、同性でもあり異性でもある。
それならばこの感情も許されるのではないか。
しかし、本人は男性のように振舞っているのだから不快か。
戸惑い迷うマクシム。
春雪本人には自覚がなくともすっかり翻弄されている。
元から春雪は女性と言われれば信じるような中性的な顔立ち。
乳房のない体と口調で男性だと思うだけで、体と口調という判断材料を隠されれば女性と思う者もいるだろう。
それもそのはず。
春雪はどちらにもなれるよう、あえてそう作られたのだから。
汚染された世界で生き抜くことのできる人工生命の子孫を遺すことも研究の一つとして。
「お言葉に甘えて少しだけ食事をいただけますか?解熱剤はミシオネールさんが用意してくれたので」
「すぐに」
ただし、その薬が効く保証はない。
その時はまた春雪が自分で作る必要があるけれど。
魔導ベルを鳴らし部屋へ来た使用人へ指示をし十分ほど。
いつでも出せるよう既に用意してあったこともあり、あっという間に運ばれてきたのはお粥。
「私が居ては気が散るでしょうから一度下がります。器は下げに参りますので、食べ終えたら魔導ベルで報せてください」
「ありがとうございます」
「では、ごゆっくりお召し上がりください」
微笑して出て行ったマクシムの後ろ姿を見送った春雪。
「物凄い気の利く人だな」
静かに扉がしまったのを確認してボソッと呟く。
「王太子宮殿で休ませて貰えて良かった」
この宮殿で療養するよう言われた時はどうなることかと少し不安だったが、ミシェルに似た見慣れた容姿と度重なる気遣いに、春雪はマクシムを警戒していた自分が馬鹿らしくなった。
「うん。美味しい」
病人の体を気遣った少し薄口の柔らかい粥。
物足りなければどうぞと添えられた野菜も美味しい。
熱が下がったら王太子にも使用人にも礼を言わないと。
加湿器の音だけが時々コポコポと音をさせる静かな部屋で、いつ誰が訪問してくるか分からない勇者宿舎とは違う居心地のよさを感じていた。
食事と静かな居心地のよい部屋を満喫する春雪とは正反対に、駆け込むように自室へ戻ったマクシムは閉めた扉に背を預けズルズルとしゃがみこむ。
上手く冷静を振る舞えただろうか。
心臓が少し早く鼓動しているのを感じる。
マクシムは17歳。
男女ともに15歳で成年のこの世界では既に結婚もできる歳を迎えていて、実際に貴族家の同窓生は結婚している者も多い。
マクシムも王家の王太子でなく貴族家に生まれていれば、疾うに決められた婚約者と婚姻関係を結んでいただろう。
国王が健在であれば王家の男児は勉学を優先する。
それでも17歳ともなれば恋の一つや二つしていてもおかしくない歳ではあるが、父で国王のミシェルを尊敬し勉学や帝王学に励んでいたマクシムにはまだ未経験だった。
民に混ざり自らの目で見て社会を学ぶことを目的に王家の者も訓練校へ通うため、同窓生の中には異性も居る。
見目麗しい貴族令嬢もいれば才能に溢れた街娘も居るが、同窓生以上の目では見たことがない。
そんなマクシムが戸惑うのは致し方ないこと。
しかも相手は天地戦のために異界から召喚された勇者であり、男性であろうと思っていた者。
けれど意識してしまえば男性にも女性にも思える。
もし春雪が見た目も体も両性でなければ、マクシムも国を継ぐ王太子として自分に芽生えた感情を否定できただろう。
「ハルユキ……名前にも雪が」
雪を見ていた春雪を思い出し呟いたマクシム。
その一瞬後には自らが許可なく春雪の名を呼んだことに気付き、かっと火照る顔に気付く。
「こんな姿は誰にも見せられない」
父であり国王であるミシェルを尊敬し王太子として威厳のある姿を心がけることには慣れたが、初めて経験するその感情にはあまりにも不慣れで動揺を隠せない。
「どうしたらいいんだ」
他者から見ればなんと微笑ましいことか。
多くの大人が過ぎ去りし過去に経験しただろう、甘酸っぱく時にほろ苦い恋の始まり。
尤も、マクシムは全力でその感情に抗おうとしているが。
それもまた酸いも甘いも経験した者から見れば微笑ましい。
・
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・
「ありがとうございました」
「お役に立てましたら幸いです」
時間は進み再び叙事詩の間。
マクシムが使っていたのを真似て魔導ベルを鳴らした春雪は、二人で来た女中の一人に空いた器を下げて貰い、もう一人の女中から『リフレッシュ』というスキル魔法をかけて貰った。
「不思議。本当にサッパリした」
熱で汗をかきシットリしていた体がサラサラになっている。
本来は衣類や家具といったものを綺麗にするため使用人が習得するスキルらしいが、入浴できる状況下にない時にもこうして使うことがあるらしい。
「ちゃんとダフネさんに報せてくれたかな」
宮殿の女中を見てダフネを思い出した春雪は、誰か伝えてくれただろうかと今更ながら気付いて少し心配になる。
暫く不在にするのだから宿舎の使用人や勇者一行にも知らされないはずがないとは思うが、普段から待機していて呼べば来てくれる人なだけに気がかりだった。
春雪は人に興味がない訳ではない。
アイドルグループが歌って踊る姿をナノを使い見ていたし、女優を見て綺麗な人だと思うこともある。
それと同様にダフネを好意的に捉えているのは事実。
ただ好意的に捉えているからと言って警戒しない訳ではない。
春雪が唯一警戒しなかったのはヒューマノイドのゼットだけ。
解熱剤を飲み再びベッドへ潜った春雪は、コポコポ聞こえる加湿器の音を聞きながら瞼を閉じる。
療養が長引くほど訓練が遅れてしまう。
一日も早く復帰して参加できるよう大人しくしていよう。
最終的には他の何よりも訓練のことを気にかけながら眠りについた。
春雪、ミシェル、マクシム、イヴ。
それぞれが様々な心境を胸に秘め眠りについた夜。
春雪が両性であるというだけのことが思いもよらない形で大きな渦となって行くことを、まだ誰も知らない。
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