ホスト異世界へ行く

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第零章 先代編(後編)

天門

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勇者たちが天門を開くことを決意して一週間。
明日に決戦を控え、王宮に設置した転移の術式を使い各地から続々と賢者が集結していた。

「では明日の刻分かれに予定通り開門する」
『はっ』

ブークリエ国でもエルフ国でも国に登録してある賢者には放映石を持たせていて、それを使い最後の軍事会議を行った。

「お疲れさまです」
「ああ」

放映石を切ったミシェルに声をかけたイヴ。
眉根を押さえ短く一言返事をしたミシェルは机の引き出しからケースを出して葉巻の先に魔法で火をつける。

「この一週間殆ど眠られてないのでは?」
「問題ない。仮眠はとっていた」

怒涛の一週間。
ブークリエ国に属する賢者にはミシェルが、アルク国に属する賢者にはアルク国王が開門の報せを出し、死地に向かう賢者たちの心構えや支度を含め最短でも一週間が必要だった。

「既に来ている賢者たちに問題は起きてないか?」
「はい。宿に滞在しておりますが落ち着いております」
「そうか」

賢者の中にはまだ若い者も居る。
歳のいった賢者は長年の月日で死地に向かう覚悟ができているだろうが、まだ若い賢者の中には死への旅路に恐怖する者も居るのではないかと予想していたのだが。

「私たち賢者は血継を持っていると判明した時点で賢者教育を受け天地戦で死ぬことを学びます。赤い月が昇った時にみなこの時が来ることを覚悟していたでしょう」

天地戦から生きて帰った賢者は居ない。
魔界で開戦しようと地上で開戦しようと、勇者を魔王の元へ送り届ける役目の賢者は魔族と真っ先に戦って死ぬ。
それが賢者の宿命。

「地上であれば私も戦えたのだが」

国を守らなければならないミシェルは魔界には行けない。
地上で開戦すれば大賢者の才を少しは使えたのだが。

「精霊族の盾である陛下が何を申されます。貴方は地上に襲来する魔族から国や民を守っていただかなくては」
「分かっている」

こちらから天門を開いても魔層を使って魔族は来る。
だから勇者に同行して魔界に行く賢者と、魔層の傍に控え襲来した魔族を迎え撃つ賢者の二手に分かれている。
開戦した時点で魔界も地上も無事ではいられない。

「民も今夜は眠れそうにないな」
「ええ。王都大聖堂でも連日祈りを捧げておりますが、決戦前日の今夜は教皇が月神の儀式を行うそうです」
「そうか。少しでも民の心の支えになってくれたら良いが」

明日開戦することは全ての精霊族に通達済み。
どこへ逃げようとも安全な場所などないのだから、民は勇者が魔王に勝利するよう神に祈りを捧げることしかできない。

「勇者方はどうしてる」
「四人で特訓を」
「今日もか。彼らが一番冷静な気がする」
「それぞれ思うところはあるでしょうが、自分たちで決断したことだけに既に覚悟はできているようですな」

決戦前夜でも勇者たちは変わらず。
覚醒しても絶対の勝利などないと特訓を重ねている。

「陛下」
「なんだ」
「春雪殿にお気持ちは伝えたのですか?好いていると」

言葉を濁さずはっきり言ったイヴにミシェルは苦笑する。
今までは『後悔のないように』と曖昧な言い方で諭していたのに、今日はもう濁さないのかと。

「春雪の中にはドナが居る。言ってどうなる」

ドナの崩御をきっかけに開戦を決断した春雪。
最期まで春雪を思い逝ったドナ。
強く結ばれた二人の間に割って入ることなど出来はしない。

「怯えているだけでは?好意を伝えて振られることに」

ズバリ言ったイヴにミシェルはくつくつ笑う。

「そうかも知れない。言ったところで何かが変わるわけではないと思っているのも本心だが、自分と春雪の好意の種類が違うことを思い知らされることが怖いのかもな」

春雪の好意は父や兄や友人という類いの好意。
ミシェルの好意は恋愛感情での好意。
どんなに本心を伝えたところで自分はドナのように恋愛感情で愛されることはないのだと分かっていた。

「国王ともあろう者が」
「知っているだろう?私が小心者だと」

小心者だから感情に蓋をして国王として振舞っている。
父も兄も亡くなり自分しか王位を継ぐ者が居ない状況に追い込まれて王位継承しただけで、私は国王の器ではない。

「こと恋愛に関してはまるで幼子ですな」
「手厳しい」

呆れるイヴにミシェルは苦笑する。
尤も初恋も経験しない内に有識者に言われるがまま三人の妃を娶ったミシェルが恋愛に関して疎いのも仕方がないのだが。

「私は見ておりませんが、ドナ殿下は最期に陛下へ春雪殿を頼むとのお言葉を遺したのですよね?それは自分の代わりに春雪殿を支えて欲しいという願いだったのでは?」

イヴはドナの遺言を直接見ていない。
けれどミシェルに対して遺したメッセージの内容だけは聞かされて知っている。

「もちろんその願いは叶える。天地戦に勝利して戻った後も変わらず、春雪はもちろん一行の三人にも国王として出来る限りのことをして生活を支えていくつもりだ」

やれやれ。
ドナ殿下、どうやら貴方の願いは恋愛下手な父上には正しく通じていないようですぞ。

「たしかには様々でしょうが……」

ミシェルの好意に気付いていたからこそ、国王ではなく一人の男として生涯をかけ春雪殿を支え愛して欲しいとの願い。
自分が深く愛した者を最も信用できる者に託したのだろうに。

「今夜は自室で大人しくお休みください。そのように疲れた顔で見送るなど国王として言語道断。最期に見た陛下の顔がコレなど、今までの私の様々な苦労が報われないのはご勘弁を」
「う、うむ」

詰め寄るイヴの圧の強さにたじろぐミシェル。
明日死地に向かう者とは思えないほどいつもと変わらぬ様子のイヴにミシェルは苦笑した。


その日の夜のこと。
明日に備え早目に自室へ戻ったミシェルは付き人に下がるよう指示し人払いをして、気を引き締めるために身を清める。

ついにこの時が来てしまった。
明日私は国王らしく賢者や勇者たちを見送れるのだろうか。
幼い頃から傍に居た者の死地への旅路を見送れるだろうか。
初めて愛しいと思った者の背中を押すことができるだろうか。

ぬるめの湯を浴びながら明日のことを考えるミシェル。
春雪たちが決断して一週間、準備に没頭することで感情を抑えてきたが、明日を控えて感情が表に出てきてしまった。

「私は国王。私の全ては国と民のためにある」

冷徹になりきれない心優しい若き国王。
その優しさこそがミシェル自身を蝕むもの。

「長風呂ですな」
「…………」

最後に冷たい水を頭からかぶり身を清めたミシェルを寝室で迎えたのは、ティーカップを片手に持ったイヴ。

「春雪」

飄々としているイヴの隣には春雪。
イヴが準備したのかテーブルの上には紅茶のセットと共に銀食器にのったサンドウィッチが置かれていて、春雪はそれを口にしているところだった。

「国王の寝所に不法侵入したことがバレましたな」
「罰せられたらミシオネールさんの所為」
「春雪殿も同意の上ではないですか」
「まあ良いけど。どうせ明日の昼には行くし」
「罰する時間がなくて何より」

そんな会話をする二人にミシェルは唖然。
国王の寝室は最も警戒が強く、ミシェルに直接仕える者でもイヴ以外の者は不用意に足を踏み入れることは無い。

「陛下。そろそろ肉体美は仕舞っていただけますかな?」

ガウンを羽織って軽く結んだだけで胸元のはだけているミシェルの格好を指摘するイヴ。
いや、誰も居ないと思っていたのだから見た目など気にせず出てくるのも当然なのだか。

「なぜここに」
「今日が最後だからに決まっていますでしょう」

そう言ってイヴはニヤリとする。

「私は今まで陛下にお仕えして参りました。陛下の利になることは取り入れ不利になることは排除して。そんな私が陛下のために出来る最後のお役目がこれです。決戦前夜だからこそ、どうか後悔なきようしっかりと春雪殿と話してください」

天地戦に出たあと勇者も生還する保証はない。
そして勇者が敗北すれば国王のミシェルの命も終わる。
だからこそ今日を逃して悔いは遺して欲しくはなかった。

「……お節介な奴だ」
「最期くらいはこのくらいしても許されるかと」

ふっと微笑したイヴは春雪を見る。

「春雪殿、陛下を頼みます。決戦前になってもまだうじうじしている小心者に喝を入れてやってください」
「分かった」

春雪の返事を聞いて満足したイヴは術式を使い一足先に帰って行った。

「ごめん。勝手に寝室に入って」
「いや、それは構わないが」
「構わなくはないよね。国王の寝室に侵入するとか大事件だ」
「まあ一般的に考えれば粛清対象ではあるが」

イヴの姿が見えなくなって口を開いた春雪の方を振り返ったミシェルは苦笑して自分も春雪の対面のソファに座る。

「何と言われて連れてこられた」
「シエルには本音を語れる人が居ないから話を聞いてやって欲しい。シエルが心を許した俺にしかできないことだって」
「戦を控えた者に頼むなど迷惑をかけてすまない。前夜だからこそゆっくり休むべきだと言うのに」

ひとたび魔界に行けば何日かかるか分からない。
ゆっくり眠れるのも最後になるかも知れないのにイヴの奴め。

「どうせ眠れなかったから」
「ん?」
「部屋に居たところで眠れない。だから特訓してたんだし」
「明日に戦を控えていると言うのに」
「あ、リフレッシュをかけて貰ったから汚くはない」
「それは気にしていないが」

明日に備え四人での特訓を早目に終わらせ部屋に居たものの、ベッドに入っても結局は眠れずに一人で特訓していた。
そこにイヴが来てミシェルの所へ一緒に来て欲しいと頼まれたというのが、ここまで来るまでの経緯。

「一行の三人は?」
「大切な人と居るのを邪魔したりしない。異界には人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって言葉があるんだ」

自分の色恋沙汰に疎い春雪でも人の恋路は邪魔しない。
呑む機会の多い時政も今日は朝まで恋人と過ごすだろう。
時政にはイザベルが、柊には美雨が、美雨には柊が居る。
決戦前夜に愛する者が傍に居ないのは春雪だけ。

「ならば眠れるよう少し呑むか?」
「じゃあ少しだけ」

春雪もミシェルも明日に備え早目に自室へ戻ったとあって普段眠る時間よりもまだ早い。
酒の強い春雪であれば少しくらい呑んでも明日に響くことはないだろうと考え、ミシェルはキャビネットから酒を出した。

そして呑み始めて一時間ほど。

「春雪。大丈夫か?」
「なんの話?」
「酔いの話だ。珍しく酔いが回っているようだが」
「全然」

いや、確実に酔っている。
とろんとした目もほんのり色付いた肌も酔っている証拠。
普段一緒に呑んでも酔った姿など見たことがないのに。
疲れが溜まっていて酒のまわりが早かったのだろうか。

「酔いがさめるよう解毒するぞ?」
「いやだ」
「気分よくなっているのに無粋だとは思うがさすがに」

大賢者のミシェルは酒の成分を分解する魔法を使える。
気晴らしに呑むのだから普段はそんな無粋なことはしないが、二日酔いで天地戦に行くなど死にに行くようなもの。

「解毒して部屋に送ってやるから眠れ」
「いやだ」
「そんな子供のような反こ」

魔法をかけるため隣に座ったミシェルの口は話途中で止まる。

「一人になりたくない」

ミシェルにぎゅっと抱きついた春雪。

「一人になるとドナ殿下のことを思い出して苦しい」

酔って出た本音か。
葬儀の日には『別れは済ませた』と悲しみを受け入れ乗り越えたようなことを言っていたが、乗り越えようと強がっているだけでまだ心に燻っているのだろう。

「そうだな。気付いてやれずすまなかった」

春雪はまだ二十歳になったばかりの若者。
しかも初めて恋した者を失ったのだから、どんなに強がってみせたところで簡単に乗り越えられるはずもない。
私ですら子を亡くした悲しみを受け入れられてないのだから。

「寂しい。悲しい」

春雪の胸を締めつける感情。
失うことがこんなに辛いのなら人を好きにならなければ良かったとすら思ってしまう。

「苦しい」

縋るようにして泣く春雪を見るのは二度目。
一度目もドナのことだった。
友になれると思えた者を失いそうだった恐怖と無事だと知った安心感から、目の前に居た私に縋るようにして泣いていた。

隠していた能力もその身命さえも惜しまず春雪を愛したドナ。
今思えば春雪とドナが結ばれることは必然だったのだろう。
迷いもなくただ一人を選び、その一人へとひたむきに愛を注ぎ続けたドナに私が負けたのは当然の結末だった。

「そんなに辛いか」

春雪の顔を掴み上を向かせるとぽたぽた涙が落ちる。
その表情が分かり易く辛い顔ならまだしも無表情であることに胸をえぐられる。

「春雪」

こんなに泣いているのに私にはどうしてやることもできない。
ドナを生き返らせて再び会わせてやることもできない。
国王と言ってもただの人。
神のような力などない。

顔が近付いて重なったミシェルの口唇。
その行動に春雪は目を見開く。

「シエル」
「私が与えられるものは代わりの人肌くらいのものだ」
「シエルはシエルだ。ドナ殿下じゃない」

ドナ殿下はもう居ない。
誰もドナ殿下の代わりにはなれないし、自分も他の誰かをドナ殿下の代わりにはしたくない。

「ああ。私はドナにはなれない。ドナではない者の人肌でしかない。それでも何かに没頭している間は辛さも薄れる」

ああ、慰めか。
ミシェルの言葉で行動の意味を理解した春雪。
自分が悲しい苦しい寂しい一人になりたくないなどと言ったから、今夜だけはその辛さをドナの代わりにミシェルが埋めてくれようとしてるのだと。

「結局は一時の逃避でしかない。だから今夜だけだ」

大切な人を亡くした悲しみは自分で乗り越えるしかない。
私は私で、春雪は春雪で乗り越えること。
どんなに時間がかかろうとも。

肌に触れたミシェルの手で春雪は身体をぴくりとさせる。
慰めや現実逃避でしかない一夜限りの関係。
せめて没頭している間は苦しみが薄れるように。

「シエルにはいつも助けられてばかりだ」

最初に『傍に居る者が敵であるかを疑うのではなく、例え傍に居る者が敵であっても対応できるよう鍛えて強くなれ』と、この世界で生きる術を指南してくれたのはシエル。
その助言に従い鍛えて身を守る術を手に入れたことで、地球に居た時より警戒心が薄れて多少は他人を受け入れることが出来るようになった。

「シエルが生きる術を指南してくれたから、人の手で作られた人工生命だと知っても受け入れてくれたから、俺の意見や意思を蔑ろにせず寄り添ってくれたから、俺は変われた」

異世界に召喚されても春雪は春雪に違いない。
この世界でも警戒心剥き出しで人を寄せ付けないはずだった春雪の心を解いたのはミシェル。

「ありがとう、シエル」

触れられながらも話し続けた春雪の肌に口付けながらミシェルは胸を締め付けられる。
春雪との出会いで変わったのは私も同じだ。

「こちらに集中しろ」

そう言うとミシェルは春雪の肌に赤い痕を残した。

その後もゆっくり時間をかけ衣装を脱がすまでに至り、改めて春雪を見たミシェルは今更ながらドキリとする。
まだ残っている酒か緊張か恥ずかしさか、広いベッドでくたりとしている春雪の淡く色付いている肌と虚ろな表情に。

「春雪」

名前を呼ぶと目だけ動かした春雪と目が合う。
その表情がなんとも艶めかしい。
本人に自覚はないのだろうが。

「そっちは触らないで」
「なぜ」
「興醒めするだろうから」

男性器の方に触れたミシェルを止めた春雪。
突然何を言っていると少し考えたミシェルはくつくつ笑う。

「男性の部分に触れたら冷めると?」
「女性じゃないことを実感して不快だろうから」
半陰陽エルマフロディットと知って手を出している私にそれを言うか」

顔に手を添え自分の方を向かせてミシェルは軽く口付ける。
そんな男だと思っているなら心外だ。

「私は春雪の身体を見て、両性とはどちらか一方しかない未完成の身体とは違う完成体なのだと思ったが。もし私が男性の部分を見て興醒めする程度の男なら春雪は怒っていい」

笑うミシェルに『精霊族に半陰陽エルマフロディットは居ないのに不快に思わないのも興醒めしないのもさすが親子だ』と春雪は一人思う。
春雪は知らないだけでミシェルとドナは本当の親子ではないのだが。

「もっと自分に自信を持て。充分すぎるほど美しい」
「……ありがとう」
「不快にならないかの心配より別の心配をした方がいい」
「?」

なにがと言いたげな表情の春雪にくすりと笑ったミシェルは、春雪の男性の部分を躊躇なく握り深く口付ける。
衣装を脱がすに至るまででも既にくたりとしていたのに、まだ行為は終わっていないことを心配するべきだ。

求めているのは私の方。
人肌を与えているふりをして与えられている。
今まで幾度も激しい欲求を抱きながらも理性で堪えてきた相手が自分の腕の中に居るのだから、一度たがが外れれば簡単にはおさまりそうもない。

愛児が心から愛した人物。
そのことは充分に理解しているし罪悪感がない訳ではないけれど、開戦前夜の今夜だけは許して欲しい。
私も春雪が愛おしい。


何度も果てぐったりした春雪はミシェルを見る。
淡いランプの光が頼りの薄暗い部屋で見上げるミシェルの顔は、成年を祝う舞踏会の日に白銀の月の下で見たそれと同じ。
父のようでも兄のようでも友人のようでもない。
あの時と同じ一人の男の顔だ。

ああ、そうだったのかと春雪は身震いする。
あの時は『の日だったのだろう』と結論づけたけれど、そうではなかった。
あの時にミシェルが言った『大切に思っている』は親しくなった者への好意ではなく、恋や愛での言葉だったのだと。

「春雪」

名前を呼んでからの口付けにも熱がこもっている。
ミシェルの気持ちに気付いたからこそそう感じてしまうのかも知れないが。

「ねえ、俺のこと好き?」

離れた口から問いかけられたそれにミシェルは驚く。
まっすぐに目を見る春雪から目が離せず言葉も出てこない。

「答えなくていい」

聞いておきながら苦笑した春雪はミシェルの頬に触れる。
もう分かったから返事は要らない。
今まで口にしなかったと言うことは伝えるつもりがなかったのだろうから。

「ありがとう」

自分に好意を持ってくれたことへの感謝。
ずっと見守っていてくれたことへの感謝。
笑みで感謝を伝えた春雪をミシェルは強く抱きしめる。

遅すぎた真実。
春雪は私ではなくドナに恋をして、明日天地戦へ行く。
私ではない者への感情を抱えたままで。

行って欲しくない。
ドナの代わりにはなれないけれど、そのドナへの思いごと愛するから行かないで欲しい。

「……どうして私は国王だったのだろうか」

喉元まで出かけていた言葉を飲み込んだのは国王だから。
一人のために他を切り捨てることの出来ない私は最初からドナに勝てるはずがなかった。
精霊族のため引き留める言葉を飲みこむ私が春雪に愛を語る資格などない。

抱きしめていた身体を起こしてゆっくり押し入った中は熱い。
この世界に召喚された時にはまだ誰も知らなかったはずのこの身体は、既に私ではない者の感触を知っている。
分かっていたことでも胸が痛い。

嫉妬や悲しみや罪悪感や怒り。
ミシェルの感情は様々な思いでぐちゃぐちゃ。
春雪に愛されるドナへの嫉妬、愛する者を見送る悲しみ、ドナの想い人を組み敷いている罪悪感、怒りは自分に対して。
春雪だけを思い民を切り捨てる決断もできない癖に、春雪に愛されているドナを羨み、引き留めもしないのに悲しく思い、今夜だけと言い訳して春雪の温もりを求める自分に腹が立つ。

春雪の上にぽたりと落ちた雫。
浅い呼吸をしながら薄ら瞼をあげると金色の瞳と目が合う。
ドナと同じ黄金神眼を持っているのかと、春雪はミシェルの顔に手を伸ばす。

頬に手を添えてもミシェルは動きを止めない。
なにがそんなに悲しいのか、ぽたぽたと涙を落としながら。

「見るな」

そう言って手のひらで視界を塞がれ口も口付けで塞がれる。
なにをそんなに怯えているのか。
何一つ見るな、一言たりとも言葉を紡ぐなとでも言うように。
人を組み敷いて動き続けておきながら。

「顔を見せて」
「駄目だ」

口唇が離れるのを待って口にした言葉は拒絶される。
見せたくないのは感情が露わな表情か涙か。

「これじゃあ誰としてるのか分からない」
「分からなくていい。ドナ以外の誰かの人肌でしかない」

呼吸で喘ぎながらも目元を覆う手のひらを退けて欲しくて紡いだ春雪の言葉にミシェルが返したのはそんな返事。

「なんだよそれ」

ムッとした春雪はミシェルの手を掴んで目元から離す。

「俺のこと誰とでもこんなことする奴だとでも思ってる?」

そう話す春雪の表情には怒りが滲んでいて、ミシェルは掴まれた手の力を抜き動きを止めた。

「誰でもいい訳じゃない。シエルだからだ」

はっきり言ったその言葉に驚きミシェルは目を見開く。

「誰でも良いから人肌を求めるほど自暴自棄になってない。相手がシエルだったから拒否しなかった。それなのにドナ殿下以外の誰かの人肌なんて言わないで欲しい」

相手がシエルだからしていること。
シエルなら良いと思って誘いにのったのに、まるで俺が誰でも良かったような言い方はやめて欲しい。

「すまない。今の情けない私を見られたくなかっただけだ。情けない奴など誰か分からなくていい」
「今のシエルが情けないって言うなら、寂しい辛い一人になりたくないって泣いてシエルの優しさに甘えてる俺はなに?」

ミシェルの顔に両手を添えた春雪は苦笑する。
先に泣いたのは俺の方。
シエルの優しさに甘えて慰められている俺の方が情けない。

「情けない者同士ならもう隠さないといけないものもないね」

そんなことを笑みで言った春雪。
その言葉は様々なことが頭を巡っていたミシェルのたがを外すには充分なものだった。

「お互いさまだと言うなら私も遠慮はしない。本能に従う」

深く口付けたあと再び動き出したミシェル。
この行為で謝らなくてはならないのはドナにだけ。
私もそちらへ行ってから幾らでも謝罪しよう。

「シエル」

春雪が自分の名前を呼ぶたび胸が締め付けられる。
ドナの代わりではなく私に身を委ねてくれていることに。
慎ましい喘ぎも汗の滲む白い肌も乱れた姿も全てが愛おしい。

春雪が召喚陣に姿を現した時から惹かれていた。
愛児を抱いた美しい神が降臨したと。
それからも知れば知るほど惹かれていった。

恋焦がれた者が私の行動一つに翻弄されている。
他の誰でもない私の下で。
それが嬉しい。

ドナ。
私もそちらへ逝ったら二人で親子喧嘩をしようか。
先に春雪に恋をして好きになったのは私で、そんな私の気持ちに気付いておきながら掻っ攫うとは何事かと。
もし次に私たち三人が同じ世界に生まれ変わったなら、今度は遠慮もしないし負けもしないと。

その時は国王ではなく一人の男として。
互いに話せなかったことをゆっくり話そう。


「ねえ、シエル」
「ん?」

時間を忘れ睦みあったあと大人しくミシェルの腕に抱かれていた春雪は、モゾっと動いてミシェルの顔を見る。

「シエルは良い国王だと思うよ」
「急にどうした」
「言っておこうと思って」

開戦は明日。
いや、疾うに日が変わって今日。
これが最期になるかも知れないから話しておきたかった。

「俺が召喚された当日、二人で王都地区に行ってリュヌ祭を見たよね。シエルが祈りの炎を貰う幸せそうな人たちを見て、国民が笑顔なのは喜ばしいことだって言ってたのを覚えてる。その時にこの人は本当に国民を大切にしてるんだって思った」

国民が楽しみにしているリュヌ祭は中止にせず、その裏で自分は大切な愛娘を供物にして異世界から勇者となる者を召喚した。
愛娘を供物にすることは身を裂かれるほどの苦痛だっただろうし、召喚した異世界人に恨まれる可能性だって低くない。
自分の感情を殺してそれでも勇者召喚を行ったのは全て、盾の国の王として国民を護るため。

新星ノヴァの祝儀でも自分を囮にして国民を護ろうとした。
混乱期に入ってからは痩せて目の下に隈ができるほど働き通して、各地の国民に少しでも安心して貰えるよう尽力した。

シエルが常に優先するのは国民。
国民のためなら自分の身を削ることも厭わない。
それは当然のようで当然ではないと思う。

国王であろうとヒト。
国王たるものそうであれと教わろうと本当に出来るかは別。
ヒトは誰しも自分が可愛いものだから。
自分の身を削ってでも国民を護るには相当の覚悟が必要。

「だから俺にとって大切な人のシエルが大切にしてるものは俺が護るよ。大切な人が大切にしてるものを守るために戦う。シエルが大切にしてる国民の命が奪われないように。ドナ殿下が開発した数々のものを未来に遺せるように。今まで俺を大切にしてくれた人たちに恩返しするために必ず勝つから」

大切な人が大切にしてるものを護るために戦って勝つ。
それが春雪にできる最大の恩返し。

「春雪」

やはり春雪は神に選ばれた勇者。
迷いの尽きない私よりよほど肝が据わっている。

「今の私が贈れる言葉は一つだけだ」

春雪の滑らかな頬に手を添えて撫でるミシェル。
誰よりも愛おしく思いながら。

「必ず生きて帰ってこい」
「うん。待ってて」

春雪が戦うと言うのなら私は待とう。
勝って生還することを。
そしてその時こそ……

再会を祈り口付けたあと互いに抱きしめあった二人の身体は暫く離れることはなかった。





「国王陛下。あとのことは頼みましたぞ」
「ああ。心置きなく戦ってこい」

王都を背に城壁の外に居るミシェルとイヴ。
集まる前に既に別れの挨拶を交わしていた二人は、最後となるだろう会話をいつもと変わらぬ様子で交わす。

「賢者さま、お気を付けて」
「陛下とともに国を頼みましたぞ」
「誓います」

胸に手をあて頭を下げた王太子のマクシムに続き、セルジュ、グレース、フレデリクも頭を下げた。

集まっているのは国王と大公と賢者と公爵家と有識者。
数名の賢者と騎士と魔導師は既に魔層の傍に配置している。
この時間だけ全国民は王都への出入りを禁じられていて、城壁の中に居る。

「到着したようですな」

城壁の向こうから聞こえる国民の声。
その大歓声で城壁の外で待っていた者たちは城門を見た。

到着したのは勇者と勇者一行。
勇者たちを見届けたい国民を止めることは難しく、安全面を第一に考え開門の予定時間近くに出てくる手筈になっていた。

「春雪さま」

勇者装備を身につけた春雪。
国が特注で作ったスキャバードにおさめた聖剣をドナが贈った剣帯ソードベルトにさして腰に携えている。

「……お前も一緒に行くのだな」

国で用意した剣帯ではなくドナの贈り物。
天地戦に出る春雪があえてそれを選んだことは明白で、セルジュは独り空を見上げて小さく笑みを零した。

ミシェルの前に来た春雪と時政と柊と美雨は跪く。

「勇敢な若き勇者たちよ。貴殿らの無事を願う」
「仲間と共に戦い、この困難を乗り越えると誓います」

春雪たちを見るミシェルは国王の顔。
もう迷いはない。
必ず勝つと言った春雪を信じて若き勇者たちを見送る。

王都で鳴る刻分かれの鐘の音。
開門の時間がきた。

王都を背に立つのは春雪と時政と柊と美雨。
その後ろにはイヴを筆頭にエルフ族や獣人族の賢者が並ぶ。

「今こそ天門を開く力を」

胸の前で構えた聖剣に魔力を送る春雪。
その様子を見守っていた人々の目に映ったのは金色。
金色を纏う神々しい勇者と空に舞い散る金色の光の粒。

「……なんだあれは」
「なにが起きているのでしょう」
「分からない。このようなこと禁書にも記されていなかった」
「私も記憶にございません」

空に金色の光の粒が集まって形を成したもの。
中心には巨大な鎧の騎士。
そして左右には羽衣を纏った女性と大剣を背に携えた男性。
それを見てマクシムとグレースとセルジュとフレデリクは驚きを隠せず声を洩らす。

「あれは……経典の神々」
「神?」

凝視して呟いたミシェルの言葉に反応した子供たちは、改めてその姿を見る。

「……戦神と戦の女神」

光の粒で形作られているものの、経典や聖堂に描かれた戦神や戦の女神の姿だとマクシムも気付く。

「神々が顕現けんげんするなど聞いたことがない」
「今代勇者さまは神々からも愛されているのだろう」
「……ああ。なんとも頼もしい」

そう話してマクシムとセルジュはくすりと笑った。

「精霊王さま」

姿を見て聖剣を手にした時のことを思い出した春雪。
一歩後ろに居る時政と柊と美雨は空に浮かんでいる巨大な神々の姿で驚き、春雪の言葉でもう一度驚かされる。

『最期の選択肢を選ぶ者よ。汝に問う』
「はい」

周りに聞こえているのは春雪の声だけ。
精霊王の声を聞くことができる者は春雪一人。

『汝、なんのために戦う』
「大切な人の大切なものを護るために」

精霊王の問いに迷いなく答えた春雪。
それ以外の理由などない。

『汝にとって力とはなにか』
「大切な人の大切なものを護るために必要なもの」

問いかけたのは戦神。
その問いにも春雪は迷わなかった。

『汝、死する覚悟はあるか』

その問いをしたのは戦女神。
春雪は黙り少し考えたあと首を横に振った。

「私が死んだら一緒に戦う勇者一行も死ぬ。私の大切な人たちも死ぬ。私の大切な人が大切にしている人も死ぬ。だから魔王に勝つまでは何としてでも死にたくありません。大切な人を護るために必死に生きて最後まで戦います」

結果的に死ぬかも知れないことへの覚悟はある。
けれど戦う前から死ぬ覚悟はしたくない。
生きたいと思うからこそ必死に戦えると思うから。

『聞き届けた。我らが創造主に代わり最後の力を与えよう』

精霊王と戦神と戦女神から春雪へ。
眩い光の玉が三つ、春雪の身体へと吸い込まれた。

『最期の選択肢を選ぶ者よ。星を、生命を救い給え』

神々が消えたと同時に金色の巨大な門が姿を現す。
勇者だけが開くことのできる天門。
ゆっくりとその重い扉は開いた。

「……行こう」
「ああ。大切な者のために全力を尽くそう」
「うん!勝ってみんなで生きて帰ろう!」
「今から張り切るとバテるから」
「なにその冷めた感じ。俺たちの物語はこれからだ!なのに」
「打ち切られてるじゃん」

こんな時でもいつもと変わらない三人に春雪は笑う。
共に戦う仲間が時政と柊と美雨で良かったと改めて思った。

天門に入る前に振り返った春雪。
その先に居たのはミシェル。

「帰りを待っている」

笑みでそれだけ言ったミシェル。
他の言葉は必要ない。
勇者たちが生きて帰って来ることがミシェルの望み。

「行ってきます!」

手をあげて笑顔で言った春雪は、大切な人や大切な人の大切な人を護るため、仲間と共に天門へ足を踏み入れた。


これが六代目勇者、春雪の物語。
 
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