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chapter.5
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しおりを挟む『わあ!お祭りみたい!』
街中を回る乗合馬車に乗って向かったのは市場。
石畳の広いその道の左右には、建物の店舗はもちろん、あらゆる物を扱っている屋台もズラリと並んでいる。
「人が多いが大丈夫そうだな」
『うん。帝都はもう慣れてきたから』
「そうか」
帝都には何度も連れて来た甲斐があった。
最初は多くのヒトの子が集まっている様子を見るだけでも小さくなって怯えていたのに、今はもう冒険者らしき装いの男女が行き交う市場に来ても恐怖心はないようだ。
「市場では目隠しを外しておけ。肝心の商品が見えなくては買い物が出来ないからな。精霊が居れば心配ない」
「はい。ありがとうございます」
魔力を通してスルリと布を外したライノは煌々と照る陽射しの眩しさに少し目を細める。
今まで人や物の輪郭しか見えない(暗闇の中に人や物の形が白く浮き出て見える)状況が続いていたからか、こんなにも世界は様々な色で溢れていたのかと新鮮な気分になった。
「私が遠征の際に揃える物を見て回っていいですか?」
「ああ」
「一から買い揃えるので時間がかかりそうですから、休憩する際は言ってください。その時は一人で見て回ります」
「休憩?私が疲れる訳がないだろうに」
「ブランシュの話です」
天虎神が疲れないのは百も承知。
ライノが言ったのはブランシュの話で、抱っこされているから歩き疲れることはないだろうけど、途中で飽きたり人の多さが嫌になって精神的に辛くなるかもしれない。
その時は一人で見て回るからということ。
「普段は静かな森で暮らしてますから、人の声や物音を長時間聞いていると煩く感じて負担になるかもしれません。体力面だけでなく精神面も考慮した上で、休憩を挟むタイミングはブランさまのご判断でお願いします」
「分かった。そうしよう」
ブランシュの負担を考えて言ったのかと納得した天虎。
帝都へは幾度も来ているものの市場のように往来が多く賑やかな場所に長時間居ることはないから、完全にヒトの子に怯えなくなった訳ではないブランシュにはたしかに精神的な負担がかかるかもしれない。
『心配してくれてありがとう』
「当然のことだよ。ブランさまも私もブランシュに無理をさせたくないからね。全て一緒に回らなくとも私が買い揃えて後で教えることも出来るから、無理せず疲れたら言って」
『うん。ありがとう』
自分のことを心配してくれていることが伝わったブランシュは少し恥ずかしそうにモジモジしながらお礼を言って、そんな愛らしいブランシュに天虎とライノも笑みを浮かべた。
冒険者も多い市場を見て回る三人。
市場に並ぶ屋台は店舗型と違いその時々で入れ替わるから、何がどこに売っているかは実際に見て回る必要がある。
ライノが最初に立ち止まったのは衣装を売る店。
これからの季節に重宝しそうな薄手の衣装が台の上に重ねて並べられている中からシャツやパンツを次々に手に持つ。
「何日野営する気だ。そんなに必要ないだろうに」
「遠征中もですが、普段の訓練着として買っておこうかと。持って来た訓練着が傷んで少なくなったので」
「そういうことか」
幾ら安いとは言え何枚買うんだと呆れた目で見た天虎は普段通り訓練着と聞いて納得する。
確かに屋敷から持って来た質のよさそうな訓練着は狩りや訓練で汚れたり破れたりとしていたなと。
『天虎さん。私もほしい』
「「え?」」
『これ、ディアちゃんのお母さんが選んで買ってきてくれた大切なワンピースだから。汚れてもいい服が欲しい』
ブランシュが着てきたのは薬花と交換で光の一族が買ってきてくれたワンピース。
特にお気に入りのそれは出かける時にしか着ないくらい大切にしているから汚したくない。
【ブランシュにも漸く欲しい物が……】
食べ物(食材)以外で欲しい物を言ったことがないブランシュが初めて欲しいと言ったことに感無量の天虎。
『感動しているところを水を差すようで申し訳ないですが、ここの衣装はブランシュには大き過ぎるかと』
【先ほどの衣装屋に戻るか】
『庶民が普段着として着る子供服なら市場でも売っていますから、歩いてる内に見つかると思います』
先ほど行った店は庶民が買うには少し高め。
既製品だから貴族が買うオーダーメイドよりは安いけれど、庶民なら子供のお出かけ用に一着買うくらい。
元気に走り回って汚して帰ってくる子供に普段から着せるような衣装なら市場にも売っている。
【そうか。じゃあ早く行こう】
『野営に必要な物のお店を見て回るついででいいよ。そのために来たのに必要な物を買わずに通り過ぎてたらまた戻って買うことになるし。余計に時間がかかっちゃう』
もう自分の衣装を売っている店を探すことしか考えていないと察したブランシュが天虎に釘を刺す。
衣装を売ってる店が遠かったらまた道を戻って必要な物を買ってと二度手間になってしまう。
【ブランシュが欲しい物が優先だ】
『今は野営に必要な物を教わってる最中だから。服は売ってるお店があったらで買ってください』
【店にあるだけ買ってやろう】
『そ、そんなたくさん要らないよ!』
さすが天虎神の娘。
父親の性格をよく理解している。
念話で話す二人の会話にくすりと笑ったライノはもう一枚手に取り店主に渡した。
シャツとパンツだけで十数枚買ったライノは右脚に付けているレッグホルスターにしまう。
「今回は訓練用にも買ったから多かったけど、本来は距離によって何泊野営するかを考えて着替えを持っていく」
そう教えて貰ったブランシュはこくこく頷く。
遠くへ行く時は着替えも必需品だよね、と。
「ただ、このような魔道具のアイテムバッグを持っていない冒険者は大きなバッグを持ち歩くことになるから、重要性の下がる着替えは二の次になることも少なくない」
『そうなの?』
「最悪、装備が汚くても命には関わらないから。それよりも命に関わる携帯食料や薬を持ち歩く方が大事なんだ」
『そっか。命の方が大事だもんね』
『そういうこと』
ライノはアイテムバッグを持っているから重さを気にせず着替えも持って行けるけれど、持っていない人は背負うなり肩からかけるなりして重いバッグを持ち歩くはめになる。
【アイテムバッグと言っても物によって容量が違う】
『入る量が違うってこと?』
【ああ。少年のアイテムバッグは容量が大きいが、貴族や高ランクの冒険者以外が使うのは容量が小さなものだろう】
『たくさん入る方がいいんじゃないの?』
【もちろんそうだが、高い】
『え?』
【ヒトの子でアイテムバッグを作れるのは魔導士や祝福縫いの出来る者だけ。必然的に値段が高くなる】
次の店を探しながら追加で説明する天虎。
ブランシュが親交を持っている一族はみな貴族だからアイテムバッグを持っているけれど、浴室の話の時と同じく庶民が当然のように持っている物ではないと教える必要がある。
『私のアイテムバッグは?自分で入れた物は出しておかないと新しい調味料や調理器具が入らなくなる?』
ブランシュが見せたのはポシェット。
それがアイテムバッグということは天虎から教わり知っていたけれど、せっかく強くなっても新たな物が増えなくなる時がくるんじゃないかと心配になって。
【それは私と同じインベントリだから問題ない】
『あ、やはりそうなのですか。時間停止型ではないアイテムバッグの割には、冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は温かいままなので、そうだろうとは思っていたのですが』
【なくならない調味料や調理道具と同じく、このバッグもブランシュの祝い子の能力の一つ。傍目からは分からないようバッグになっているが、中は私と同じインベントリだ】
さすが主神の加護を授かった祝い子というか。
神のギフトのインベントリを授かっているというだけでなく、魔法のインベントリのように目立たないようバッグの中とインベントリを繋げてあるという入念な偽装工作。
ブランシュの身を護るためにそうしたのだろうけれど、主神の溺愛ぶりも天虎神なみだ。
『アイテムバッグとインベントリは違うの?』
【違う。アイテムバッグは魔道具、アイテムボックスとインベントリは魔法だ。魔道具は誰でも使えるが、魔法は適性を持つ者しか使えない。他にも、アイテムバッグとアイテムボックスは入る容量が決まっているが、インベントリは無制限。アイテムバッグは入れた物が傷むが、アイテムボックスとインベントリは傷まない。同じ収納でも別物だ】
天虎から教わりジッとポシェットを見るブランシュ。
アイテムバッグは入る量が決まっていて、入れた物は時間の経過で傷んでしまう収納の魔道具。
アイテムボックスも入る量が決まっているけど、入れた物は時間が経過しても傷まない収納魔法。
インベントリは入る量が無制限で、入れた物も時間が経過しても傷まない収納魔法。
『じゃあ外はバッグで中はインベントリのこのポシェットの名前は?魔道具なの?魔法なの?』
【…………】
見た目はバッグ(魔道具)だけど中はインベントリ(魔法)。
魔道具でも魔法でもあるポシェットの名前を真剣な表情で聞いたブランシュに答えられず沈黙する天虎。
主神の加護を授かったブランシュにしか使えない祝い子の能力(物)に名前などないから。
真剣な表情のブランシュと困惑顔の天虎が顔を見合せているのを見てライノは吹き出すように笑う。
『私は女性のバッグに詳しくないから初めて聞いたけれど、それはポシェットという名前のバッグなんだよね?』
『うん。初めて見た時にそう思ったの』
『じゃあ転生前の名前の可能性もあるのかな?』
『もしかしたら』
『それなら名前はそのままポシェットでいいんじゃないかな。魔道具でも魔法でもあるブランシュだけのポシェット』
ブランシュだけが使えるブランシュのためのアイテム。
それに名前などないだろうことはライノにも分かるから、ブランシュが好きに呼べばいい。
『私だけのポシェット』
そう考えると嬉しくなったブランシュはニコニコ。
私に渡すよう誰かが天虎さんに渡したポシェット。
蔦に包まれたまま捨てられて何も持っていなかった私に誰かがくれた初めての贈り物。
『ありがとう。私に素敵な贈り物をくれた人』
大切そうに両腕でポシェットを抱えたブランシュを見て微笑む天虎とライノ。
ブランシュはまだその贈り主を知らないけれど、感謝の心は主神にも届いただろう。
「お薬は要りませんか?」
狩りで得られる肉以外の食材を買いつつ市場を進んでいると、籠を持った女の子が通り過ぎる人に薬瓶を見せて声をかけていることに気付く。
「お薬は要りませんか?」
冒険者の装いをした人に声をかけている子供。
要らないと手で表すだけで立ち止まってくれなくても諦めず、通りすがりの冒険者に声をかけ続けている。
『私よりも小さな子が働いてる』
『貧民街の子だよ』
『貧民街?』
出店で売られている肌着や靴下を手に取りながらチラリと子供を見たライノはブランシュにそう答える。
『子供でも働いてお金を稼がないと生きられないんだ』
小さな子なのにもう働いていて偉いと思っているのだろうけれど、貧民街に子供だからという常識は通用しない。
大人も子供も関係なくああして少しでも稼がなければ食事すら出来ないのだから。
『お薬も買うんだよね?あの子から』
『駄目だ』
『……どうして?』
『あの子が売ったお金は悪い人のところにいくから。それが分かっているから冒険者たちは買わないんだよ』
いつも優しいライノから拒否されたブランシュは途端に悲しい顔になり、そんなブランシュを見たライノも胸が痛む。
それでもこれだけは私も引けない。
「ギルドカード払いはできますか?」
「出来るよ。たくさん買ってくれてありがとね」
「こちらこそ。助かりました」
女性店主と話してギルドカードで支払いをしたライノは買った商品をアイテムバッグの中に仕舞う。
「お薬は要りませんか?」
そうしている間も聞こえてくる声。
その声に胸は痛むけれど、買ってあげることは出来ない。
【そういうことか】
ブランシュと二人で女の子の様子を見ていた天虎はライノが言ったことを理解して呟く。
「少し休もう」
「では後は私が一人で」
「お前も休むんだ」
一人で買い物を続けようとしたライノの肩を組んだ天虎は有無を言わさずいい香りのする串焼きの屋台に行く。
「今焼けてるだけ全部」
「……え?」
「焼けてる分を全部売ってくれ」
「は、はい!」
片腕では逃がさないというようにアイスブルーの髪の美少年の肩をがっしりホールドしていて、もう片腕では人形のように愛らしい真っ白な美少女を抱いている眉目秀麗な青年。
珍しい白い髪と金の目をした青年と美少女のその容姿にも、美少年と青年の肩に乗っている白と黒の大きな鷹にも驚きつつ、店主は焼けている串焼きを慌てて袋に入れる。
「三本は今食べるからそのままでいい」
「はい!」
焼けた分だけでも十本以上あるのにと思いながら袋に入れていた店主は、持ち帰り用に買ったのかと納得する。
「ギルドカードで払えるか?」
「あ、はい。全部で十六本ありました。こちらの魔道具にギルドカードをかざしてお会計をお願いします」
帝都の市場に来る客は冒険者も多いから、ギルド本部から支払い用の魔道具をレンタルしてギルドカード払いも出来るようにしている出店も多い。
袋に串焼きを入れながら会計の様子を確認した店主の視界に入ったのは金色のギルドカード。
Aランクの上位冒険者を表すその色で、強そうな大きな白鷹をテイムしているのも納得できた。
「お待たせしました」
「ああ。少年、別にして貰った三本を受け取れ」
「はい」
大きめの串焼きだから袋二つ分。
肩から手を離した天虎はその二つの袋を受け取り、バラの三本はライノが受け取った。
「そこで座って食べよう」
『うん』
「はい」
避難経路として路地裏に繋がる細道には出店がないから、天虎はライノにそこにある段差に座るよう促す。
「ブランシュも食べろ」
『ありがとう』
先にブランシュを段差に座らせライノから受け取った串焼きの片方を渡した天虎も、二人と並んで座り串焼きを口に運ぶ。
「お薬は要りませんか?」
変わらず聞こえてくる女の子の声。
ライノが買い物をしている間も天虎が買い物をしている間も誰一人として足を止めなかった。
「あの幼子が気になるのか」
『うん』
ジッと女の子を見ていたブランシュは天虎に聞かれて答えると少しだけ串焼きを食べる。
「可哀想だと?」
『……うん。それが適切な言葉なのか分からないけど』
可哀想という言葉は好きじゃない。
自分が人からそう思われるのが好きじゃないから。
家族には捨てられても天虎さんが拾って育ててくれてるし、優しくしてくれる人も居る今は幸せだから。
だからあの子を可哀想と思うのは逆に失礼じゃないかとも思うけど、その言葉以上に今の心境を表す言葉が分からない。
「あの薬を買えば益々治安が悪くなるだろうな」
『え?』
「少年が言っただろう?売った金は悪い奴のところに行くと。あの子供を働かせている奴はわざと子供に売らせることで大人の同情心を誘ってる。可哀想という同情心を」
まっとうな大人なら、粗末な服を着て薄汚れた子供が薬を売っている姿を見て何も思わない訳がない。
一本買ってあげれば温かいパンの一つでも買えるんじゃないかと、つい買ってしまいそうになるだろう。
『同情心』
「ああ。誰かの一時の同情心で数本売れたとしてもあの子供が貰えるのはパンの一つも買えるかどうかの金で、それ以外は悪い奴の懐に入る。悪い奴の懐に入った金は悪いことに使われますます治安が悪化する。結果として、あの子供も含めた貧民街に暮らす者たちみんなの首を絞めることになる」
天虎から貧民街の現実を聞かされたブランシュは串を持った両手をギュッと握る。
あの子から薬を買うことがそこに暮らすみんなを苦しめることになるなんて思いもしなかった。
『だからライノお兄さんは駄目って言ったんだね』
ライノから止められた理由を理解したブランシュ。
いつも優しい人なのにどうしてと思っていたけれど、何も知らずあの子を苦しめるところだったのは自分の方だった。
「私も可哀想だと思っているよ。それは紛れもない同情心だ。自分の心が痛まないよう薬を買ってあげればこの罪悪感からも逃れられるだろう。でもそれじゃ駄目なんだ」
ブランシュは可哀想という言葉を適切か分からないと言ったけれど、私はあの子のことを可哀想だと思っているし、自分と違う環境で育ったあの子に抱く同情心に違いない。
「貧民街の問題は国が取り組む必要がある問題だ。うちはもちろん他の貴族たちも貧しい人のために炊き出しをしたり、寒くなる前に暖かい衣装や毛布を配ったりするけど、それでも貧困に苦しむ人は居なくならない。伝承のように、ただそこに居るだけで幸せを齎してくれるという祝福の子が本当に居たら、貧民街なんてものは存在しなかったんだろうね」
でもそんな都合のいい人物は存在しない。
その現実があるのにまだ祝福の子を神の子と称え幸せを齎してくれると信じる人々にうんざりするけれど。
「お薬は要りませんか?」
座っていた天虎とライノとブランシュに声をかけた女の子。
薬瓶を見せる手も脚も細く、顔もコケている。
直接声をかけられ今まで以上に同情心や罪悪感がまして一時の感情に流されてしまいそうなライノは、それでは駄目だと自分を止めるために強く拳を握った。
「薬はついさっき買ってしまったから要らないが、ちょうど困っているところだったから一つ頼みたい」
「え?」
薬を買う変わりに袋を二つ女の子に見せた天虎。
その会話を聞いてライノはパッと天虎を見る。
「買ったはいいがアイテムバッグに入らなくてな。食べ物を無駄にしたくないから三人で一本ずつ食べたが、食事をしたばかりで食べきれないんだ。代わりに食べてくれないか?」
いい香りのする袋をジッと見る女の子。
朝から何も食べていなかったから本当は今すぐにでも頷いてしまいそうだけれど、後でどうなることか。
「ご、ごめんなさい。お金がないので買えません」
「金?もう店主には払った後だ。私は食べ物を無駄にしたくないだけで、お前はただ食べてくれるだけでいい」
「ほ、本当に払わなくていいんですか?」
「頼んでいるのは私の方だ。あそこで心配そうにこちらを見ている仲間も連れて来て一緒に食べてくれると助かる」
女の子を心配しているようで、路地裏に繋がる細道からこっそりと顔を覗かせこちらを見ていた少年と少女たち。
その子供たちを見て天虎はフッと笑うとこちらに来いと数回手招きする。
「あ、あの!ありがとうございます!」
「何故お前が礼を言う。むしろ礼を言うのは私の方だろうに。お前たちに食べて貰わなければ困るのだから」
笑みに変わった女の子は、少年や少女の方を向くとおいでおいでと大きく手招きする。
「あのね、冒険者さんが串焼きを食べてほしいって」
女の子より少し年上だろう少女や少年も含め、女の子よりも小さな子も合わせて八人居る。
「……後でお金を払うことになるんじゃないの?」
「こう見えて私は上位冒険者だから金には困っていない。買ったはいいがアイテムバッグが一杯で入らなかったから、丁度声をかけてきた少女に食べてくれと頼んだだけだ」
警戒する少年に真顔で答える天虎。
女の子より年上だろう少年や少女が警戒するのは当然で、小さな子も女の子にギュッと抱きついている。
「そんなに信用出来ないなら仕方ない。食べ物を無駄にしたくはないが、お前たちが食べないならゴミになるだけだ」
「そんなのもったいないよ!」
「だから頼んでいる。私たちも一本ずつ食べたが、食事をしたばかりで食べられなくてな」
その証明のように少し食べた串焼きを見せるブランシュ。
本当にお腹がいっぱいで食べられないんだと思って貰えるように。
「私もこの通り。誰かのアイテムバッグが空いていれば良かったけど、遠征に行くからと着替えや食材を買い過ぎた」
「あ。さっきお店で買い物してた」
「それで満タンになってしまったんだ。ここに来る前に他の店でも着替えや食材を買っていたから」
「たくさん買ってたからね」
ライノもまだ一口も食べていなかった串焼きを見せてからアイテムバッグからも着替えを出して見せると、肌着や靴下を買うところを見ていたんだろう少年は納得したようだ。
「分かって貰えたなら代わりに食べてくれると助かる」
「はい!」
みんなの同意を得るように顔を見合わせ頷いたことを確認した女の子は大きく頷いた。
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