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chapter.6
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しおりを挟むブランシュの期待に応えて野営をした翌日の朝。
「野営は楽しかったか?」
『とっても!知らないことを教えてもらって勉強になったし、三人で寝たのも楽しかった!』
野営地を片付けて聞いた天虎に答えるブランシュ。
一昨日の野営では他の人も居たから出来なかったテントの組み方や魔物避けや虫除けの使い方などを実際に体験しながら学べたし、普段と違ってお風呂や寝るのも三人一緒で嬉しかったし楽しかった。
『いつかディアちゃんやヴァルお兄さんの家族やルイお兄さんの家族やライノお兄さんの家族とも野営できたらいいなあ。みんなで野営できたらとっても楽しそう』
よほど楽しかったらしく笑顔のブランシュ。
愛らしいその笑顔を見て天虎とライノは和む。
ただ、ブランシュが思う野営と多くの者が思う野営はまた違うものなのだけれど。
魔物避けや虫除けを使ったもののブランシュに経験させるために使わせただけで、天虎が野営地を神聖結界で囲っていたから魔物も襲いようがなかったし、神聖力を纏う天虎が居れば虫も近づけないから虫除けを使う必要もなかった。
しかも眠るのは天虎が育てた綿花の上。
テントの中とは言え硬い地面の上で眠るから慣れていない人は身体が痛くなるけれど、極上の綿花の上に布を敷いて眠ったからそれも心配なかった。
危険もなければ苦痛もない野営。
正体を隠す必要がない時の天虎が一人居れば、危険なはずの野営もただのお泊まり会でしかない。
それでもブランシュが普段とは違う体験が出来て楽しそうだったから、天虎とライノも満足。
「次は少年の実戦の時間だ。布で視界を塞げ」
「はい」
ブランシュの野営体験はお終い。
このあとは本来の目的だった討伐の時間。
ブランシュが作った朝食を食べたあと武器やアイテムの確認を念入りに行っていたライノは気持ちを入れ替え、天虎が封印を施した布を目元に巻く。
「魔眼で私とブランシュが見えているか?」
「見えています」
「初めて単独でA級の魔物と戦う今回は封印を甘くした。実力を確認するための実戦訓練ですぐ死なれては困るからな」
そんな言い方をする天虎にライノは苦笑する。
さすが神というのか。
天虎神にとってはA級の魔物と視界不良の状態で単独で戦わせることもただの訓練の一つでしかない。
「標的の魔物が居る場所は既に分かっている。転移すればすぐに実戦だ。戦う準備と覚悟は出来ているか?」
「出来ています」
準備はもちろん、死ぬ覚悟も出来ている。
覚悟に関しては天虎神に弟子入りして鍛えてもらうと決めた時から万が一のこともあると覚悟していたから今更だ。
あくまで『万が一のこともある』というだけで死にたい訳ではないから、必死に生きるけれど。
「ブランシュ。心配?」
『……うん。天虎さんと狩りに行けるライノお兄さんが強いのは知ってるけど、今回は一人で戦うから』
やはり心配されていたかとライノはまた苦笑する。
今朝も武器やアイテムの不備がないかを確認していた私の隣で不安そうに『大丈夫?大怪我しない?』と聞いてきたけれど、いざ討伐の時間と聞いてまた心配になったんだろう。
『ライノお兄さん。抱っこして』
「え?ああ」
天虎に抱っこされていたブランシュが手を伸ばしてきて、珍しいなと思いつつ抱っこするライノ。
『絶対に死んだら駄目だから』
そう言ったブランシュの柔らかい唇が頬に触れる。
「!?」
視界を塞いでしまったからブランシュの輪郭しか分からないけれど、頬に重なったそれが何かに気づいて一瞬で顔を赤く染めた。
「…………?」
なにをと驚くライノの鼻を擽る甘い香り。
その香りを運ぶ肌を撫でるような優しいそよ風が吹く。
『私はクリステルみたいに大聖女の守護は使えないからただのお祈りだけど、ライノお兄さんの無事を願って』
もう一度頬に口付けられギュッと抱きしめられると胸元に温度を感じる。
頬に口付けられ抱きつかれたからという理由ではなく、本当に心臓の辺りが温かくなっている。
【清浄の祝い子の守護だな】
『ブランシュが守護をかけてくれたのですか?』
【本人は物語で読んだ大聖女を真似て少年の無事を願い口付けたようだが、守護がかかった】
無自覚にも祝い子の守護をかけたブランシュ。
生きてほしいという心からの願いが祝い子の守護という形になったというのが正しい。
【私の娘が初めてかけた守護だ。たかだかA級の魔物には御大層な代物だが、無様な姿を見せるなよ?】
『はい』
無自覚だろうと私を思ってかけられた守護。
絶対に負けられない。
「ありがとう、ブランシュ。死なないと約束するよ」
『うん。約束』
そう約束を交わしたライノはブランシュの額に口付けた。
「では転移するぞ」
「お願いします」
再び天虎はブランシュを腕に抱くと、討伐対象の居る場所までワープを使って移動した。
『え……もしかして、あれがそう?』
【ああ。あれがジーヴルだ】
転移先は樹の上。
地面に居る魔物を見下ろしてブランシュは驚く。
霧氷の魔物ジーヴル。
名前の通り巨体に白い氷を纏った幻想的な魔物。
その美しさで山の神と呼ぶ者も居るほど。
ただし、その幻想的な容姿とは反対に雑食で凶暴。
巨体での突進攻撃や鋭い爪での引っかき攻撃の他にも氷魔法で攻撃してくる厄介な魔物で、本来なら山岳地帯にある高山が生息地だから目撃情報は少ないけれど、今回は人里のある平地のこの森で目撃情報があったことで討伐依頼が出された。
『……とっても大きな熊さん』
【ジーヴルは魔熊だ】
『魔熊?普通の熊さんとは違うの?』
【普通の熊は魔法を使えないが、魔熊は魔法を使う】
『魔物も魔法を使うの!?』
【使える魔物も居れば使えない魔物も居る】
天虎の説明を聞いてポカンとするブランシュ。
普段は天虎が狩りに出て倒したあとの魔物を持ち帰ってくるから、魔法を使える魔物も居ることを知らなかった。
『気付かれたようですね』
天虎がブランシュに説明をしていたから終わるまで待とうと思っていたけれど、ヒトの香りか気配か気付いてバッと三人の居る樹の上を見上げた魔熊に向かってライノは即座に麻痺瓶を二本投げる。
『行ってきます』
当たったことを確認して神剣を抜いたライノはジーヴルの巨体に向かって飛び降りた。
「ぐおおお」
足元に風魔法を使って着地したライノの神剣で巨体を斬られたジーヴルは地の底を這うような低い雄叫びをあげる。
「お前の敵は私だ」
痛みで興奮状態になったジーヴルのターゲットはライノ一人に定まった。
『ライノお兄さん大丈夫かな』
巨体のジーヴルとライノでは身体の大きさが違う。
サイズの差がまるで大人と幼子かのようで、心配で仕方ないブランシュは天虎のマントをギュッと握る。
【少年が今日まで遊んでいたとでも?】
『え?』
【毎日私の住処の森で狩りに出て神の私とも手合わせしている少年が、あの程度の魔熊に殺られるはずもない】
天虎から見ればこのジーヴルは小型。
もっと歳のいった手練の魔熊が出て来ることを期待していたけれど、やはり天虎の森ではない場所に居る魔熊では所詮この程度が限界かという気分。
【ブランシュも将来私と狩りに出るようになれば魔熊以上の魔物とも戦うことになるのだから、少年が戦う姿を見てヒトの子の戦い方を学べ。そのために連れて来た】
『う、うん!』
ジーヴルの弱点の火魔法と剣技で戦うライノの姿にブランシュは両手を組み無事を祈りつつも見守ることにした。
「……?」
思いのほか『鈍いな』と感じるライノ。
ジーヴルが振り下ろす爪の攻撃を一撃喰らえばヒトの身体などひとたまりもないというのが一般常識だけれど、しっかり動きを追っていれば避けられる程度の速さでしかない。
魔熊と戦うのは初めてだけれど、獰猛で危険な魔物として知られる魔熊とはこんなものなのだろうか。
それとも、巨体故に期待していなかった麻痺薬の効果が意外にもあったのか、魔熊にもヒトのような加減という感覚があるのか、単にこの個体が弱いだけなのか。
これなら普段狩りの際に戦っている魔物の方が強い。
『……ライノお兄さん、強いね?』
軽々とジーヴルの攻撃を避けては炎での魔法攻撃や剣での物理攻撃を入れるライノを見てブランシュはきょとん。
魔物と戦っている姿は見たことがなくとも天虎から狩りに連れて行ってもらえるのだから強いのだろうとは思っていたものの、初めて見たライノの実力はブランシュが漠然と思っていた強さのレベルを超えている。
【まだまだ粗が目立つが、まあ、ひと月程度の訓練の成果としては及第点だろう。格下にも油断せず足元に風魔法をかけてスピードを上げながら戦っているところは合格だ】
『魔熊さんの方が格下なの?』
ピムおじさんが大反対していたくらいだからそんなに強い魔物なんだと思っていたのに。
【今の少年にとってはだがな。私の住処の森で暮らす以前の少年が万が一単独で魔熊と対峙していれば、良くて重傷を負いながらの撤退。最悪の場合は死んでいただろう】
それを聞いて背筋が寒くなるブランシュ。
決して魔熊が弱い訳ではなく、ライノが強くなったから軽々と戦えているように見えるだけなのだと。
【あの少年が短期で強くなれた理由にはブランシュも関係しているのだから、魔熊程度に負けては困る】
『私?』
【毎日食べさせているだろう?料理を。ブランシュの調味料を使った料理は肉体や能力を活性化させる効果もある】
ブランシュが作った料理は回復効果があるだけでなく、調味料の組み合わせ次第で身体能力を上げる効果もある。
それに気付いたのは少年が森で暮らすようになってからだったけれど、底上げされた状態で毎日神の私と訓練している少年は異例の早さで肉体も能力も鍛えられている。
『そ、そうなの?』
【ああ。幾ら神の私が鍛えているとはいえ、祝い子でもない普通のヒトの子がひと月やそこらであれほど急成長するのは妙だと思っていたが、ブランシュが使った調味料の組み合わせ次第で料理に回復以外の効果がついていた。何の効果もない素の状態の時より成長が早くて当然だ】
天虎はブランシュと出会う前から肉体も鍛えられていて能力も高かったから、毎日食べても気付かなかっただけ。
ライノはまだ成長段階だから明らかな変化に気付いた。
『私もライノお兄さんの役に立ててたんだ』
魔熊と戦っているライノを見ながら呟くブランシュ。
私は天虎さんのようにライノお兄さんが強くなるためのお手伝いは出来ないから、せめて生活だけはしっかり支えてあげたいと思って毎日料理や洗濯をしていた。
【ブランシュは居るだけで役に立っているぞ?】
『え?』
【少年が魔眼を鍛えたい理由も、強くなりたい理由も、ブランシュを守れる男になるためだからな】
驚いた表情で自分を見たブランシュに天虎はくすりと笑う。
【ブランシュが居るから少年は過酷な人生を生きて強くなることを決意した。だから何かしてやらなくてはと気負いする必要はない。ブランシュが居るだけで少年は強くなれる】
そう言われて少し頬を染めたブランシュ。
呪い子と疎まれ捨てられた自分をライノは守ろうとしてくれていることや、居るだけで強くなれると言って貰えて。
『私も鍛えてもっと調味料や調理器具の種類を増やして料理を作る。それと調味料の組み合わせでどんな効果がつくかも調べる。拾ってくれた天虎さんも含めて、両親から捨てられた私を大切に思ってくれてる人たちの役に立ちたいから』
ブランシュの頭に口付ける天虎。
主神の加護を授かった清浄の祝い子のブランシュは、ただそこに居るだけでも星や生命に『穢れの浄化』という祝福を齎している特別な存在だというのに。
【無理はしないようにな】
『うん!』
それがブランシュの決めた人生なら。
主神も私もただ見守ろう。
二人がそんな会話をしていることなど知らず、ライノは魔熊との戦いに全集中している。
「やはり硬いな」
身体の表面が氷に覆われているから致命傷が入らない。
木から飛び降りた勢いも加算された初撃は剣が当たった部分の氷が砕けて傷を負わせた手応えがあったけれど、今は氷が砕ける音が聞こえて剣で追撃しても硬い感触が手に伝わってくるだけで、肉を斬れた感触はない。
巨体を覆う氷の硬さは通常の氷とは比にならない。
同じ氷魔法を使う者として羨ましくなるほど。
あの初撃も天虎神の魔結晶で作られた神剣でなければ剣の方が折れていただろう。
A級の魔物に指定されているのも納得の防御力。
弱点の炎で溶けた場所も剣で追撃するより早く凍ってしまうのだから、このままだと私の体力や魔力が先に尽きる。
どのように戦えば致命傷を与えられるのか。
「!」
戦い続けて息があがった時に考えたライノのその一瞬の迷いを魔熊が見逃すはずもなく、硬い氷に覆われて鈍器と化した右腕を素早く振り下ろしてくる。
「……危な」
地面を叩き割るほどの怪力。
咄嗟に上乗せで両脚に風魔法をかけたことで間一髪後ろに避けられたけれど、もし今の攻撃を頭上から食らっていたら見るも無残な姿にされていただろう。
「考えろ。何か手段があるはずだ」
死を連想したライノは、自分を落ち着かせるためぶつぶつと声に出しながら魔法や神剣で魔熊への攻撃を続ける。
攻撃をされると一撃必殺もあり得るから。
魔熊の輪郭しか見えていない状態では炎を使って溶けた部分も正確には分からないし、どのくらいの速度で再び氷に覆われるのかも測ることが出来ない。
「弱点は炎。でも燃やして倒せるほどの火力はない」
天虎神なら炎で魔熊を燃やして終わっただろう。
でも私の火魔法にそこまでの威力はない。
魔法の威力でゴリ押しできるほど私は強くない。
剣と魔法の両方を使わなければ倒せない。
「剣と魔法……」
頭をフル回転させてふと気付いたライノ。
私が今握っている剣は神杖も兼ねた神剣。
普通の剣では不可能でも神剣なら出来るかもしれない。
「ジーヴル。私が成長するための実験体になってくれ」
目くらましの炎を魔熊に撃ったすぐあと、右手に握っていた神剣に火力をあげた炎魔法をかけたライノ。
「炎で溶かしても剣で追撃する時には凍って致命傷が入らないというのなら、再び凍る時間を与えず斬ればいい」
炎を纏わせた神剣で斬りかかると、初撃の時と同じくジーヴルが大きな鳴き声をあげる。
その鳴き声で自分の考えは間違っていなかったと確信したライノは足元の風魔法を上手く操りスピードを加速させながら、手を止めることなく炎を纏わせた神剣で攻撃を重ねていく。
【やはりあの少年は非凡の才の持ち主だ】
くつくつと笑う天虎。
あの神剣は神杖と同じく魔力を流せる。
魔力を長く流しておけるだけの魔力量さえあれば、神剣に魔法を纏わせ続けることも出来るということ。
『あれって魔法剣だよね?サヴィーノが使ってた』
【物語で読んだのか。たしかに彼奴も太陽神から授かった神剣にあらゆる魔法を纏わせて戦っていた】
ライノが使っているのは魔法剣。
神剣と魔法と剣技の才能が揃った者にしか使えない魔法剣を、まだ教えてもいない少年が自ら気付いて使うとは。
剣の才能のある父親と魔法の才能のある母親の血をしっかりと引き継いだようだ。
【ブランシュの祝い子の才や彼奴の子孫の少年と幼子の魔法の才がどこまで花開くかも楽しみだが、もう一つ新たな楽しみが出来た。どこまで強くなるのか見届けよう】
まだ才能が眠っている赤髪の少年も含め。
あらゆる物語を渡ってきたストーリーテラーが言っていた今代の主人公たちの才能と生き様を。
【行こう、ブランシュ。少年の勝利だ】
形勢が逆転したらあっという間。
ジーヴルの巨体が力を失い地面に倒れるのを見た天虎はブランシュを抱っこして木から飛び降りた。
「よくやった」
「天虎神」
起き上がって来ないか剣を構えたまま確認していたライノは、天虎がブランシュを連れて降りてきたことでトドメを刺したのだと分かって肩の力が抜け神剣の魔法を消す。
「時間がかかって申し訳ありません」
「いや。時間に関しては褒めてやろう。もっと時間がかかるものと思っていたからな」
死んだことで身体を覆っていた氷が溶け始めた魔熊を早々とインベントリにしまう天虎。
少年が初めて単独で達成したA級クエストの証明なのだから、傷んでいない状態でギルドまで届けてやろうと思って。
「幾つか小さな傷は負ったか」
「悔しいですが。ジーヴルの動き自体は魔眼と気配で追えていたのに、魔法の氷塊が幾つか避けきれず掠りました」
腕や顔を掠った氷塊で傷を負っているライノ。
避けられなかったことがよほど悔しかったらしく、切れて血が流れる頬を手の甲でぐいっと拭う。
「ブランシュ?」
いつもなら天虎が言うよりも先に気付いて傷薬をとなるブランシュが大人しくて首を傾げた天虎。
『ライノお兄さん!あ、あのね!』
「ん?」
天虎に抱っこされたままモジモジするブランシュ。
ほんのり頬を染めている。
「ブランシュ?」
『……たよ?』
「え?」
念話なのにゴニョニョと聞こえずライノも首を傾げる。
言いにくいことがあるんだろうか。
『とってもかっこ良かったよ』
言ったブランシュも言われたライノも耳まで赤くなる。
ただ褒めて褒められてで照れている初々しい二人のそんな姿も親バカの天虎には面白くない。
「まだまだ指摘する部分は満載だがな。魔熊如きの魔法を避けられないとは、もっと厳しく鍛えてやろう」
「あ、はい」
肩に手を置いた天虎からの威圧感でスンとなるライノ。
やはり愛娘が関わることには大人げない。
「まあ今回は及第点だ。まだ教えていないのに自分で気付いて魔法剣を使ったことは評価できる」
「魔法剣?」
私の娘に頬を染めさせたことはさておき、ジーヴルとの戦いについては充分に及第点。
治癒力を鍛えるため普段の訓練や鍛錬ではかけない回復をかけて傷を治しつつ褒めた天虎。
「神剣に火魔法を纏わせただろう?なかなか致命傷を与えられず打開策を必死に考えて辿り着いたんだろうが、魔法の力を神剣に流して纏わせるあれを魔法剣と言う」
うんうんとブランシュも頷く。
物語の挿絵で見たことがあるだけで、実際に見たのは初めてだったけれど。
「魔法剣は太陽神の加護を授かっていた光の一族の初代が得意としていた融合技で、魔力を流せる神剣であることの他にも剣の才能と魔法の才能が揃った者にしか使えない」
「……初代皇帝が得意としていた技」
思い付きで試してみたことだったけれど、この帝国の初代皇帝だったという傑物が使っていた技だったとは。
どこかの皇族の落胤として誕生したものの、祝い子だったために母親と共に流刑され何一つ与えられなかったというのに、自らの力で皇帝までのぼりつめた人物。
多くの者を救ったという初代皇帝が使っていた技を自分が使えたことの喜びに、今更ながら手が震えるライノ。
「お前に私の魔結晶で作った神剣を与えたのは魔法剣を教えるつもりだったからだ。あの頃はまだ魔法剣どころか肉体を基礎から鍛えなくてはならない段階だったが、魔法と剣の才が揃っていることは少なくとも分かっていたからな」
だから早い段階で私に神剣を。
神剣の扱いに慣れろと言っていたのは後々に魔法剣を教えることを見越してだったのだろう。
「ん?ブランシュがかっこ良かったって言ってくれたのはもしかして、初代皇帝が魔法剣を使っていたから?」
『サヴィーノが魔法剣を使って戦ってる姿を描いた挿絵がかっこ良かったの』
やはりそうか。
ブランシュのお気に入りの初代皇帝が魔法剣を使って戦う姿がかっこ良かったから、同じく魔法剣を使った私がかっこ良く見えただけのこと。
ズーンと肩を落とすライノに苦笑する天虎。
たしかにブランシュが『かっこ良い』と思ったのは彼奴の影響もあるだろうが、挿絵で見た彼奴ではなく魔法剣で戦う少年の姿を見て『かっこ良い』と思ったのだろうに。
やれやれ。
来世に旅立ってもなお現世の若者に影響を与えるとは、神の私すら振り回していたふてぶてしい彼奴らしいというか。
一切の反省を感じない笑みと物言いで『ごめんごめん』と軽く謝るサヴィーノの姿を思い出した天虎は晴れ渡る天を仰ぎ、もう一度苦笑を浮かべた。
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