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chapter.4
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しおりを挟む花祭のあと1ヶ月半ほど経ってからのこと。
ユハナ公爵家では使用人たちが朝から大忙しだった。
「あら、可愛らしい。お人形さんかしら」
「まあ、愛らしい。どこにボタンがありますの?」
「姉さん!ブランシュが驚いてるから!」
パーティホールの壁際に置かれた椅子に一人で座っていたブランシュは背の高い女性二人からツンツン啄かれていて、走って来たルイを見て椅子から飛び降りると後ろに隠れる。
「え?こちらのとびきり可愛らしいお人形さんがお父さまやルイが話していた私たちの恩人でしたの?」
「そうだ」
「てっきりお人形さんだとばかり」
「お父さまがお作りなった贈り物かと思いましたわ」
「ヒトだからっ」
拳を握って力説するルイ。
たしかにブランシュは人形のように可愛いけど、だからと言ってヒトを人形と間違えるなんて。
「ではご挨拶を。お初にお目にかかります、麗しい恩人さま。ルイの姉で長女のアイナですわ。流行病の際に御助力いただいたことは父や弟から聞いております。なかなかお会いすることが叶わず御礼が遅れたことをお許しくださいませ」
「私は次女のミレーラですわ。お初にお目にかかります」
同じ淡い水色のドレスを着た二人がカーテシーで挨拶する姿をルイの後ろからチラリと覗き見ていたブランシュは、その美しい所作についつい見惚れる。
『とっても綺麗なお姉さんたちだね』
「姉さんたちが?ブランシュの方が綺麗だ」
「あらあら。そういうことですの?」
「姉の前で恥じらいもなく情熱的ですこと」
「ち、違う!姉さんたちのことを綺麗だって言うからブランシュの方が綺麗だって言っただけで」
「いつ会話しましたの?」
「目と目で?」
「そうじゃなくて」
否定するほどに墓穴を掘るルイ。
自分で言っていてそのことに気付いて口ごもる。
念話で会話したことは言えない。
「それで二人はいつ婚約しますの?」
「早くしないと他の殿方に奪われましてよ?」
「どうして話を大きくするんだ!」
きょとんとするブランシュと真っ赤になった顔を手で隠しているルイを微笑ましい目で見る二人。
「なにをしている」
「あら、今度は殿方のお人形さんが」
「まあ、美しいですわ」
声をかけて来たのは天虎。
アイナとミレーラは天虎の周りを回ってスイッチを探す。
「姉さん。その方がブランシュの父君だ」
「え?お人形さんではないの?」
「お父さまの作品ではなく?」
「違うから」
さっきも似たようなやり取りをしたことに頭が痛くなりながら説明したルイ。
「少年の姉なのか」
「はい。申し訳ありません。わざと遅い時間を伝えて来たのに今日に限って早く来たようで、このようなことに」
「え?私たち遅い時間を伝えられてましたの?」
「だから人が少なかったのね」
今更気付いて驚くアイナとミレーラ。
小規模なパーティと聞いていたから違和感がなかった。
「ご挨拶が遅れました。ベランジェ公爵が長女アイナと申します。お嬢さまには先にお伝えいたしましたが、流行病の際に御助力いただいたとのこと。心より感謝申し上げます」
「次女のミレーラと申します。お二人の御助力のお蔭で領民が救われました。ありがとう存じます」
「それ以上の礼は不要だ。私の娘に贈り物をした少年に礼を返しただけなのだから」
天虎にも美しいカーテシーで御礼を伝えた二人。
あの父親に似て変わり者の姉妹かと思えば、末の弟と同じく父親を反面教師にして育ったのか。
「ルイが贈り物を?」
「あのルイが異性に贈り物を?」
「話せないブランシュと筆談した時にそのままペンを渡しただけで、贈り物と言えるほどのものじゃない」
「まあ、気が利かない」
「なぜお花や宝石にしなかったのかしら」
「だから贈り物のつもりではなかった」
ああ、やはりあの父親の娘だな。
ぐいぐいと距離を詰められているルイの姿を見てそう察した天虎はブランシュを抱き上げる。
『お荷物はしまい終わったの?』
【ああ。鍛えて貰いに行くのだから最低限でいいと言ってトランク二つほどだったが、インベントリにしまって来た】
『森に居てもお買い物に出られるしね』
【少年にもそう伝えてある】
姉から詰められているルイを他所に念話で会話する二人。
『ライノお兄さんは着替え中?』
【風呂を済ませて着替えると言っていた】
『私たちも着替えないとね』
【準備が出来たら光の一族が呼びに来る】
『そうなんだ』
今日はライノの弟妹の七歳の誕生日。
社交会デビュー前の二人のパーティは小規模ではあるものの、治療をしてくれた恩人の天虎とブランシュにも今年のパーティには参加して貰いたいという弟妹の希望で招待された。
ライノが暫く森で暮らすことが決まって1ヶ月半空いたのも今日の弟妹の誕生日を祝うため。
パーティが開かれることは事前に決まっていたから、心置き無く留守に出来るようそれが終わってからということで。
【一人で怖くなかったか?】
『大丈夫。ルイお兄さんが一緒に居てくれたから』
【今は姉に絡まれているようだが】
『うん。少し待ってるよう言って出て行った後にお姉さんたちが来たの。私のことお人形だと思ったみたいでツンツンされてるところにルイお兄さんが走って戻って来て、今は……』
こんな状況に。
姉二人から詰め寄られて女性への贈り物の種類や重要性について熱心に説かれている。
「もう分かったから。それより」
姉の横をすり抜けたルイは天虎とブランシュの所に来ると手に持っていた白い包みをブランシュに差し出す。
「これお菓子。作るばかりで食べてなかっただろ?」
『もしかしてこれを貰いに行ってくれてたの?』
「ああ。パーティが始まれば食事が出てくるけど、空腹で具合が悪くならないよう少し食べておいた方がいい」
屋敷はパーティの準備で慌ただしいから使用人が暮らす離れのキッチンを借りて昼からケーキを作っていたけれど、ブランシュ自身は何も食べている様子がなかったから。
昨日から手伝いに来ていたルイは天虎とブランシュが来てからずっとケーキ作りの手伝いをしていたから何も食べていないことを知っていて、ブランシュがお腹を空かせてるんじゃないかと思ってキッチンまで貰いに行った。
『心配してくれたんだね。ありがとう』
綺麗な包み紙に包まれたお菓子を受け取るブランシュ。
森を出る前に天虎と二人で食べてきたから特に空腹は感じていなかったけれど、自分を心配してわざわざキッチンまで貰いに行ってくれたことが嬉しい。
『ルイお兄さんから貰ったよ』
【良かったな。座って食べるといい】
『うん』
「少年、気が利くな。私の娘への贈り物としては満点だ」
天虎はくすりと笑ってルイの頭を撫でる。
ヒトの子が喜ぶ宝石や装飾品の類いに興味のないブランシュには、この菓子のように心のこもったものの方が喜ばれる。
少年にはそんな下心などなく心配しただけだろうが。
「お菓子が好きなんですの?」
「お飲み物もご一緒にいかが?」
天虎が椅子に座らせるとブランシュが包み紙を開き、それを見たアイナとミレーラは魔法で菓子やティーセットを出す。
「ほう。やるではないか」
『凄い!』
ふわふわ浮かんでいる数々のお菓子やティーセット。
触れてもないのにポットからティーカップに紅茶が注がれるのを見て天虎は感心して、ブランシュは拍手する。
「そのように喜んで貰えると張り切ってしまいますわ」
「可愛らしいお花やお人形さんもありましてよ」
「姉さんたちやり過ぎ!」
姉のアイナが魔法で紙吹雪を舞い散らし妹のミレーラも魔法で花吹雪を舞い散らせるのを見てルイは慌てて止める。
使用人たちが熱心に準備をしているパーティホールの一角を散らかしているのだから、前日から手伝いに来ていたルイが止めないはずもない。
「二人は大道芸人か」
「ショーダンサーですわ」
「せめてパフォーマーと言ってくださいませ」
天虎に答えながらも息ぴったりに軽快なステップを踏んで踊りながら魔法を使ったマジックを披露する二人。
その華やかなパフォーマンスにブランシュは釘付けになっていて、声の変わりにパチパチと拍手で応援する。
『お姉さんたち綺麗だね!』
【ああ。美しいな。大魔道士の娘だけあって魔法が得意なんだろう。魔法を上手く使ってパフォーマンスをしている】
これはもう後で掃除するしかない。
念話で聞こえた天虎とブランシュの会話で察したルイ。
パフォーマンスを始めた姉たちを止める術はルイにはなく、がくりと肩を落とした。
「ふう。美しいお人形さんたちに見られて捗りましたわ」
「美しいのは罪ですわ。もう大罪ですわ」
パフォーマンスを終え満足気にやりきった感を出す二人。
すっかり魅せられたブランシュは拍手で称える。
「パーティ前に汗をかいてどうするつもり?」
「あら。どうしましょう」
「贈り物だけ渡して帰りましょうか」
「後先を考えずに行動するのは父上だけにしてほしいっ」
散々床を散らかして汗をかいたから退散するとか。
拳を握り心から訴えるルイは苦労人。
「娘を楽しませてくれた礼に綺麗にしてやろう」
そう言って天虎が指を鳴らすと一瞬で散らかっていた紙吹雪や花吹雪が消え、アイナとミレーラの身体も綺麗になった。
「まあまあ」
「あらあら」
口元を押さえた二人は天虎にズイッと詰め寄る。
「魔法が得意ですの?」
「今のはどのような魔法ですの?」
「父親に似て圧が強い!」
『ふふ。ルイお兄さんのお父さんにそっくり』
アイナとミレーラに詰め寄られる天虎を見てブランシュは楽しそうに言って笑う。
『申し訳ありません。姉たちには天虎神だと話していないので遠慮が……いや、話しても変わらないかも』
『変わらないんだ』
『姉たちは父上と似ているから言って変わる自信が無い』
そればかりは家族のルイにも自信を持って言えない。
天虎の正体が神だと知っている父親がアレなのだから。
「せっかくだからそれも食べるといい。持って歩いてるのは姉たちのオヤツだからおかしなものは入っていない」
『お姉さんたちのオヤツを貰っていいの?』
「あげるつもりで出したんだから大丈夫」
「私を放置せず姉たちを止めろ」
「私にも無理です」
姉たちから逃げて来た天虎に真顔で謝るルイ。
止められるならパフォーマンスを始める前に止めている。
「お前たちも座っていろ。むしろ座れ。大人しくしろ」
背後から忍び寄る気配に気付いた天虎は魔法を使いアイナとミレーラを浮かせてブランシュの両隣の椅子に座らせる。
「ふう。お嬢さまのお父さま、凄腕の魔法使いですのね」
「うちのお父さま以上に魔法が得意な方は初めてですわ」
『うん。天虎さんは強くて凄いの』
「「え?」」
何事も無かったかのように一息ついてブランシュに話しかけた二人は、どこからか聞こえてきた子供の声にキョロキョロと周囲を見渡す。
「鈴が鳴ったような愛らしい声はお嬢さま?」
「今の声はお嬢さまの声ですの?」
『え?聞こえてるの?』
周りには男性の天虎とルイしかいないことを確認した二人がもしかしてとブランシュを見ると、念話が繋がっていることを知らなかったブランシュもキョロキョロと二人を見る。
「愛らしいですわ!今のはどうやりましたの!?」
「可愛くて大罪ですわ!私も知りたいですわ!」
小動物のような動きをしたブランシュをアイナとミレーラはガシッと抱きしめて頬擦りしながら質問する。
可愛い、知りたい、という心境の究極形。
「え?聞きたいのはそれ?」
ルイは今のブランシュの発言より念話のことの方を質問した姉たちを正気かという様子で見る。
はっきり天虎さんと言ったのに。
【声に出さずとも話せるこれは念話という神聖魔法だ。娘に聞いたところでヒトの子のお前たちには使えない】
「「神聖魔法?」」
既に聞いたことのあった男性の声は天虎の声だとすぐに分かった二人はブランシュの足元にしゃがんだ天虎を見る。
【大魔道士のお前たちの父親より魔法が得意なのも当然だ。私はお前たちヒトの子が天虎神と呼んでいる神なのだから】
「「て!」」
言われて気付いたアイナとミレーラが何を言おうとしたかを察した天虎はパッと二人の口を手で塞いで止める。
距離はあるものの準備をしている使用人たちの中には自分やブランシュの正体を知らない者も居るから。
【念話を繋げてやったのだから念話で話せ。普段会話をする時のように話したいことを思い浮かべるだけで聞こえる】
『あーあー。こうですの?』
『お姉さまの声ですわ』
『ミレーラの声ですわ』
互いの声が聞こえてキラリと目を輝かせる二人。
『凄いですわ!本当に聞こえましてよ!』
『これなら秘密の会話もし放題ですわ!』
口を塞がれているのに大喜びの二人に天虎は苦笑する。
性根の悪い者たちではないと分かってブランシュとも会話が出来るよう念話を繋いだけれど、そういうところも父親に似ているらしく初めて経験する魔法の種類に興味津々。
「ご歓談中に失礼いたします。ブランさま、ブランシュさま。お着替えの準備が整いましたのでお迎えにあがりました」
スっと現れたのはソレイユ公爵家のエミリオ。
天虎が女性二人の口を手で塞いでいるという状況なのに表情一つ変えずに来て丁寧に頭を下げる。
「もう少しお待ちになって!」
「今いいところなんですの!」
天虎の手をガッと掴み口から離してエミリオに訴える二人。
初めて経験した魔法について聞きたいことが沢山あって。
「いいところ、ですか」
「すまない。姉たちがあらゆる方面に迷惑をかけて」
「恐れ多いことでございます」
ああ、その迷惑というのが今のこの状況に。
ただ、神の怒りを買った様子はないから問題ないだろう。
そう察したエミリオはルイにも丁寧に頭を下げる。
「後は少年に任せた」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
「行ってしまいますの?お話を聞きたかったのに」
「お聞きしたいことが満載ですわ」
「もう着替えの時間だ」
魔法に目がない姉妹に付き合っていたら話が終わらない。
この姉妹はあの父親と同類だから。
この短時間でそのことに気付いた天虎は早々に立ち上がる。
「行こうブランシュ」
『うん。ルイお兄さんとお姉さんたち、美味しいお菓子と飲み物をご馳走さまでした。残ったお菓子は後で食べるね』
「「どういたしまして」」
「少しはお腹に溜まったか?」
『大丈夫。ありがとう』
目の前で起きている騒動を意に介さずサクサクとクッキーを食べていたブランシュは、お菓子の残りを再び包み紙で包んでポシェットにしまいルイやアイナやミレーラに御礼を言って天虎に抱っこと両手を伸ばす。
「はあ。美しいプラス可愛いはイコールで罪ですわ」
「とっても昂りますわ」
美しい天虎が愛らしいブランシュを抱っこしている姿に興奮する姉たちを冷めた目で見るルイ。
決して悪い人たちではないけれど、姉たちのこの趣味趣向で自分やアウロナがどれほど振り回されて来たことかと。
姉たちは美しいものや可愛らしいものに目がない。
これから着替えると聞いたからそれ以上は引き止めなかったアイナとミレーラは、パーティフロアから出て行くエミリオと天虎とブランシュの後ろ姿を見送る。
「ルイ。貴方も念話で話せますの?」
「ああ」
「ではこの先は念話で」
ガラリと表情を変えたアイナ。
ミレーラもアイテムボックスから新たに出したティーポットから紅茶を注ぎながら、ルイにも座るよう椅子を指さす。
『先ほど念話で話すよう止められましたけれど、ここに居る使用人は天虎神の正体を知らないということかしら』
『使用人で知っているのは口の固い者だけと思っていい。最も親交の深いソレイユは会う機会が多いから知る者も多いようだけど、口外を禁じる契約を結んだ上で話してある』
『そう。それが最善でしょうね』
全ての使用人が信頼できる者とは限らない。
雇用契約を結んでいるのに、秘密ごとが大きいほど黙っていられず他人に話してしまう口の軽い者も中には居る。
ましてや神の正体という大金に変わる情報ともなれば金に目が眩む者も現れると予想がつく。
大金を得たところで先に待つものは破滅だというのに、愚か者とは目先の欲に飛びつくものだ。
『基本的には三大公とその家族と極一部の使用人だけと思っておけば間違いないけど、正体を知っているか分からない者には先に念話で話しかけてみるといい。天虎神はヒトの内面の善悪が分かるから、信頼できる者としか念話を繋げてない』
『そういう使い方も出来るのね』
話を聞きながら紅茶を注いでいたミレーラは姉とルイにもティーカップを渡して自分も口へ運ぶ。
『姉さんたちでも私の口から言えないこともあるから詳しくは天虎神に聞いてほしいけど、これだけは言っておく』
改まってそう言ったルイを見るアイナとミレーラ。
『天虎神の判断基準はブランシュだ。神にとってヒトなど取るに足らない存在だからか基本的にはどんな失態も甘くみてくれるけど、ブランシュのことには敏感だ。私たちもブランシュに害をなせば許さないと釘を刺されている。天虎神は再生の神ではあるけど、破滅の神でもあると忘れないでほしい』
天虎神の怒りは破滅の序章。
わざわざ手を掛けて回らずとも、生きるために必要な糧である大自然を奪うだけで生命など容易く滅ぶのだから。
『胸に留めておきますわ』
『同じく』
自分たちだけではなく全ての生命のために。
他でもないルイが言うのだから。
「それで、いつ婚約しますの?」
「婚約は早い方がよくてよ?」
「どうしてまたその話に戻るんだっ」
「だって、ねえ。可愛らしい子を愛でたいですもの」
「ルイの妻になってくだされば毎日愛でられますもの」
「そんな予定はないから。ブランシュは友人だ」
「え?無能」
「あんなに愛らしい子ですのに」
また姉たちから詰め寄られるルイ。
椅子に座っていても変わらず圧が強い。
「こらこら。またルイを困らせているのか」
「「お父さま」」
パーティらしく華やかな正装で着飾り三人のところに歩いて来たのはベランジェ公。
「予定していたより早いご到着でしたわね」
「途中参加になるだろうと仰られてましたのに」
「一件キャンセルが入ってね。お蔭で開始前に来れた」
昨日の時点でポータルを使いルイやアイナやミレーラと一緒にユハナ領には来ていたものの、魔道具の購入者たちと会う予定があるから間に合わないだろうと思っていたけれど、キャンセルが一件入ってすぐ宿に戻り支度をして駆けつけた。
「二人の相手は私がするからルイも着替えておいで」
「はい。お願いします」
「ご苦労さま」
昨晩からユハナ邸に泊まって手伝いをしていたルイの頭を撫でるベランジェ公はくすりと笑う。
破天荒な姉たちを二人きりにするのが心配でまだ着替えていなかったのだろうと思って。
「私たちも今の内に仕込んでおかないと」
「七歳の子はどのようなサプライズが好きかしら」
「頼むから大人しくしておいてくれ。みんな忙しいのに」
この調子だから。
ベランジェ公は苦笑しつつ後のことは任せろとルイの背中を軽く押した。
「サプライズの仕込みをする為に部屋へ行かずここに?」
ルイが走って行くのを見届けてベランジェ公も浅く椅子に座ってアイナとミレーラに質問する。
開始までまだ時間があるから本来なら一旦来賓室に通されているはずなのにパーティホールに居ると聞いて、ルイと居るのかと察してベランジェ公も先にここへ顔を出した。
「恩人さまへご挨拶に来たのですわ」
「私たちはまだ御礼を言えておりませんでしたから」
「ああ、そういうことか」
熱病の治療をして貰った時は二人とも高熱が出ていて眠っていたし、花祭の時もショーの予定があって屋敷に残ったから、二人はまだ天虎神やブランシュに会っていない。
私たちの恩人も招待されていることを話しておいたから挨拶に来たのかと納得した。
『天虎神とブランシュさまにはお会いできたかい?』
『ええ。親子揃ってお人形さんでしたわ』
『美しいと愛らしいの共演でしたわ』
『そうか』
二人も念話を繋げて貰えたか。
試しに念話で話しかけてみることで確認したベランジェ公は、アイナとミレーラも祝い子に害を齎す者とは判断されなかったようだと少し安堵した。
『今日の主役の双子や第二夫人は天虎神やブランシュさまの正体を知らない。夫人の屋敷から来た使用人たちも』
『あら。ユハナ公の第二夫人ですのにどうしてかしら』
『ライノの義母でもありますのになぜかしら』
予想できていただろうに。
皮肉たっぷりの二人にくすりと笑う。
アイナとミレーラは同じ女性として何かしらを感じ取っているのか、第二夫人を毛嫌いしている。
「さあ、時間まで私たちも部屋に居よう」
「「ええ」」
三人は立ち上がり目を合わせて微笑を浮かべた。
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