貴方の憎しみ譲ってください

REON

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二章

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「ビビりすぎだよ!先生が真剣に聞いてくれてるじゃん!」
「唐沢さん?大丈夫ですか?」
「皆口先生!みんなツトム先輩に」
「落ち着いて。私と保健室に行きましょう」
「本当なんです!私が本当でみんなが嘘なんです!」
「分かりました。お話を訊きますから保健室に」

教室に走って来たのは古文の皆口先生。
無理矢理立たせようとする手を払うと顔に勢いよくあたってしまって皆口先生がよろめいた。

「先生大丈夫ですか!?」
「ありがとう。大丈夫です」
「田渕先生、皆口先生1人じゃ危ないです」
「はい。私も行きますから自習をしていてください」
「わざとじゃない!」
「分かってます。大丈夫ですよ」
「どうして私が連れ出されなきゃいけないの!?みんなが脅されてるから言ってあげてるのに!」

田渕先生と皆口先生の2人がかりで教室から出される。
振り返って見たみんなの目は冷たい。

ああ、脅されてるんじゃないんだ。
クラスのみんなが率先してやってること。
ツトム先輩たちは本当に様子を見に来ただけで、みんなが率先してやっていたから楽しそうに笑ったんだとやっと気づいた。

「日下先生お願いします」
「どうしたんですか?」
「少し外でお話を」
「え?はい」

保健室に行くと田渕先生は日下先生を連れて廊下に出る。

「少し落ち着きましたか?」

最初から私はおかしくない。
みんなが嘘をつくから大声になってしまっただけで。

「色々ありましたからね。少し疲れちゃったのかも」
「みんなが嘘ついてるだけです。本当に無視されてます」
「え?無視を?」
「優香が死んだから次の虐めが私になったんです」
「……唐沢さんが虐めに?」
「はい。おはようって言っても無視されました」

残った皆口先生に遅刻して来た後のことを話す。
無視されたり話しかけるなと言われたことを。

「次は私が虐めのターゲットなんて冗談じゃない。絶対みんなにやめさせてやる」

あいつらムカつく。
私たちが虐めてても止めなかった癖に。

「唐沢さん、爪を噛むと傷みます。落ち着いて?」
「落ち着いてます。みんながムカつくだけで」
「みんなクラスメイトでしょ?」
「だからなに!?クラスメイトなら虐めて良いの!?」
「違います。虐めはいけません」
「だったら止めなさいよ!それでも教師なの!?」
「唐沢さんっ!」

日下先生が走って来て皆口先生を庇うように前に出る。
なんだか私が悪者みたいでムカつく。

「今ご両親に連絡を入れてますから」
「は!?なんで親なの!?」
「ご両親にも一緒に判断していただくために」
「私が虐められてるなんて親が知るはずないし!」
「暴力はやめなさい!」
「なに言ってるの!?叩くフリしただけでしょ!」

馬鹿じゃないの。
人を悪者みたいな扱いしてるから叩くフリしただけなのに。

「生徒が怖いなら辞めれば?叩くフリなんて誰でもするし」
「しません。私の教師生活の中で一度もありません」
「ただの養護教諭だからね。クラス持ってないし」
「日下先生、皆口先生。私が変わります」

げ。堀田。
この前みっちり顔を見たばっかりなのに。

「皆口先生だけ。私は保健室の養護教諭ですから」
「じゃあ一緒に。皆口先生は授業に戻ってください」
「はい」
「あ、待ってください。顔を怪我してますから治療を」
「大丈夫です。自習をさせてるのですぐ戻ります」
「それじゃあ休み時間に」

なにこの仲良しごっこ。
虐められてる私を馬鹿にしてるの?

「田渕先生から話は聞いた。誰にどう虐めを受けてるんだ?」
「クラス全員」
「どんな風に?」
「聞いたのに何で何回も説明させるの」
「私が聞いたのはみんなが三年の牧から脅されてるって話だ」
「あ、それはもう良い。ただの間違い」
「間違い!?」

前に座った堀田に話してるのにドアの前に居る春山が驚く。

「間違いって、牧は3年の大事な時期なんだぞ?それを脅してるって騒いでおいてあっさり言うなよ。進学や就職に響くようなことなのに簡単にもう良いじゃないだろ」

なんで春山がこんなに言うのよ。
いきなり来て。

「春山先生は牧の担任だ」
「だから来たの?」
「牧と話す前に事実の確認に来た」
「へー。間違いだったから話さなくて平気」
「唐沢お前」
「春山先生落ち着いて。相手は生徒ですから」

変な教師。
たかが1人の生徒に熱くなって馬鹿じゃない?
熱血教師ってやつかな。
時代錯誤。

「唐沢、今は怒られてるんだぞ?笑うな」
「だって熱血教師なんて流行らないのに」
「流行りなんて関係ない。春山先生はそれだけ生徒のことが大切だから怒ってるんだ」

もう笑うなって言っても無理。
堀田も春山も寒すぎでしょ。

「失礼します」
「本田先生」
「ご両親と連絡が取れません」
「両方ですか?」
「はい」

本田が電話したんだ。
相変わらず生徒以外には気が弱い。

「唐沢さん。お母様が会社をお休みになってる理由は?」
「は?」
「自宅にも連絡してみたけど出ていただけないの」
「仕事休んでるんですか!?」
「え?ええ。無断欠勤されてるって」

どういうこと?
家に居なかったのに。
しかも無断欠勤って意味が分からない。

「知らなかったのか?」
「知らない。母親が起こさなかったから遅刻したんだし。朝ご飯もお弁当も作ってなかったから昨日喧嘩した嫌がらせでそのまま仕事行ったんだと思ってた」

堀田も本田も日下も困った顔しないでよ。
私に訊かれたって知らないから。

「父親の方は」
「外回りに出てるそうです」
「携帯に連絡は」
「お忙しいのか出ていただけませんでした」

父親は出るはずない。
あの人のスマホは不倫相手のために持ってるようなもの。

「父親は不倫相手の家かな。多分」
「……不倫」
「ブサい癖に女に貢いでるの。あ、ブサいから貢がないと相手して貰えないんだろうけど」

うちの父親は本当にブサい。
子供の贔屓目で見ても下の下。
それは不倫相手もお金を貰わなきゃやってられない。

「その辺はご家族でじっくり相談を」
「あ、無理。話し合いならあの夫婦腐るほどしてるから。あのブサいのはそういう生き物だと思ってるから家にお金を入れてくれればどうでも良い。それより母さんどこ行ったんだろ」

養護教諭らしい日下の言葉を止める。
親がこうだから~、親の愛情が~、なんて聞き飽きた。
そんな生き物と思ってたら本当にどうでも良くなった。
醜く死ぬのがお似合いとは思ってるけど。

「そうね。お母様がどうされたのか心配よね」
「うん。ご飯作る人が居ないと困る」
「え?ご飯?」 
「私料理できないもん。後は洗濯とか掃除もしてくれないと」

それが母親の役目と聞いた。
母親本人から。
だから私は母親にはならない。

「春山先生、牧の件は後で」
「はい。失礼します」

堀田から言われてやっと熱血教師は居なくなる。
また2人のコンボで笑わされたら堪らないから良かった。

「話を戻そう。無視されてることは間違いないのか?」
「おはよって言って返事がかえらなきゃ無視でしょ」
「聞こえてなかった可能性は?」
「ない。話しかけないでって言われたし」
「誰から言われたんだ?」
「リナ。村井リナ」

やっと虐めの話。
何より重大なことなのに遅いのよ。

「他には?」
「誰も話さない。前の席のユウコも隣のヤスヒロも無視」
「んー。村井と喧嘩でもしたか?思い当たる理由は?」
「ないよ。友達じゃないのに喧嘩なんか」
「友達じゃない?」
「友達は久美たちだけ。後はクラスメイト」

喧嘩するほど関わったことがない。
挨拶くらいはするけど特に話したこともないし。

「本田先生、もう一度ご両親に連絡を」
「分かりました」
「親は関係ないじゃん」
「関係ある。ご両親は保護者だ。唐沢が虐められてることが事実ならなおさらご両親も含めて話し合わないといけない」

え、そんなに面倒くさいの?
親と教師と三者面談なんて嫌なんだけど。

「優香の時は呼ばなかったじゃん」
「……濱名の話はやめよう」
「死んだから?」
『………』
「なんで黙るの?」

3人して黙らないでよ。
図星だったからって。

「唐沢。自分が濱名に何をしたのか分かってるのか?」
「虐めたって言うんでしょ?もう散々説教したじゃん」
「そういう態度なら訊く。自分が虐められてどんな気分だ?」
「は!?虐め肯定派なの!?それでも教師!?」
「教師だから訊いてる!」

びっくりした。
急に怒鳴らないでよ。
大人の癖に。

「腹が立つか?悔しいか?悲しいか?嫌だと思うか?」
「当たり前でしょ!なんで私が虐められるのよ!」
「じゃあ唐沢はどうして濱名を虐めた?」
「は?」
「自分は嫌だと思うのに何で濱名の気持ちは分からない」
「私は優香じゃないんだから分かるわけない!第一今は優香のことは関係ないでしょ!虐められてるのは私なの!なんで死んだ生徒の味方するの!」

言い返すと堀田は大きな溜息をつく。
なによその顔。
教師の癖に生徒を睨んで良いと思ってるの?

「濱名の名前を先に出したのは唐沢だろ。関係ないならどうして濱名と比べた?自分が濱名を虐めたことは悪いと思っていないのに、どうして自分が虐めを受けたら目くじらを立てる?」

この教師ムカつく。
優香の味方してる。
もう死んでるのに。

「虐めてたら虐められても良いって!?」
「虐めは駄目だ。それは唐沢にも重田たちにも話しただろ」
「じゃあ私の味方しなさいよ!可哀想なのは私でしょ!」
「唐沢が言っても説得力がないな」
「は!?何言ってるの!?」
「唐沢は虐めていたことを全く反省してない。濱名に可哀想なことをしたと思っていない人間が自分の時だけ可哀想だから味方をしろとは、随分と都合の良い話だな」

最低教師。
やっぱり虐め肯定派じゃない。

「教育委員会に訴えてやる」
「構わない。例え訴えられようとも反省の出来ない唐沢の声は響かない。虐めは絶対に駄目なんだ。その駄目なことを自分がしてしまったことをまずは反省して欲しかった」

この人話が通じない。
なんでこんな馬鹿が教師になれたの?
死んだ相手に反省?
居ない相手に反省してどうするの?
現実見なさいよ。

「堀田先生。クラスの生徒からも話を聞いた方が良いです」
「もちろんそうします。田渕先生が聞いた感じでは脅されてる様子も虐めた様子もなかったようですけど。私も改めて生徒たちからしっかり聞くつもりです」

この人たちじゃ解決出来ない。
みんなが嘘ついてるって言ったのに。
なんで今すぐみんなに怒らないのよ。
気の長い話。
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