貴方の憎しみ譲ってください

REON

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二章

6

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「失礼します。お父様と連絡がとれました」
「良かった。それで?」
「近くに居るようですぐに来れるそうです」
「帰ったら友達が作れないじゃん!」
「友達?」

ブサいのに学校へ来られるのも嫌だけど、今日中に友達を作って財布を捜しに行かなきゃ行けないのに冗談じゃない。

「クラスメイト全員に虐められてるんだろ?」
「そう言ってるでしょ!?」
「無視されてることが事実ならどうやって友達を作るんだ?」
「どうって友達なんて話しかければなれるし」
「話しかけて無視されたって言わなかったか?」
「だからそうだって!」
「唐沢。自分が何を言ってるか分からないのか?話しかけても無視されたならまた話しかけたところで無視されるだけだろ」

あ、そうだ。
無視されてるのに友達にはなれない。

「じゃあみんなに虐めをやめさせてよ。教師なんだから」
「今すぐみんなが止めればすぐに友達が出来るとでも?」
「大丈夫。友達を作るコツは知ってるから」
『………』

なんでまた3人して黙るの。
堀田と日下は顔を見合わせてるし本田はただ見てるだけ。

「虐めた側は虐められた側とすぐに友達になれるのか?」
「なれるでしょ」
「唐沢ならなれるのか?」
「なれるよ」
「そうか。じゃあまだ虐めてたんだな」

なんの話をしてるの?
勝手に納得しないで欲しいんだけど。

「日下先生、本田先生、少し席を外すのでお願いします」
「分かりました」
「私もですか?」
「はい!?唐沢の担任なのに何を言ってるんですか!むしろ本田先生が率先して話すのが本当でしょう!?」

怒られてるし。
ほんと本田は生徒にしか怒鳴れないダメ教師。

「本田先生。みんなに虐めやめさせてよ」
「みんなに聞いてから事実なら止めるよう話します」
「みんなが嘘ついてるのに事実ってなに!?」
「唐沢さん落ち着いて。一方の話では判断できないの」
「は!?虐められてる方が言ってるんだから事実でしょ!」
「唐沢さん、濱名さんの時には虐めてないって言ってるんだから信じろと言ってましたけど」
「優香の話をするな!」

どいつもこいつも優香優香。
虐められてるのは私だって何度言わせるの。

「本田先生、濱名さんの話は」
「え?はい」
「ご両親が来てからお話ししましょう」
「はい」
「唐沢さんもカッとせずに」
「どいつもこいつも優香優香って煩いからでしょ!」

人の気持ちの分からない人たち。
ムカついて机の上の物を払い退ける。

「物を投げないように。落ち着いて」
「何度同じこと言うの!馬鹿の1つ覚えみたいに!」
「本田先生、すぐに男性の先生を」
「はい」
「離せ!教室に帰る!自分でアイツらを辞めさせる!」

なんでコイツ離さないのよ!
役に立たない癖に!
人を捕まえる日下を何度も叩く。

「先生たちがみんなと話すから。ね?」
「煩い役立たず!辞めろ!」
「座ろう?」
「離せって言ってんの!教室に行く!」
「今は行かせられない。みんなの所は駄目」
「私のことに口出すな!」

しつこ過ぎる。
殴っても蹴ってもしがみついている。

「なにやってるんだ!殺す気か!」
「離さないのが悪いんだろ!」
「馬鹿なことするな!」

戻って来た堀田と校長に二人がかりで止められ腕を掴まれる。

「これを離せ!」
「煩い煩い煩い!」

手に握ったハサミを掴まれる。
もう少し遅かったら刺せたのに!
みんな空気を読んでよ!

「校長警察を!」
「警察は」
「他の生徒に何かあってからでは遅いんですよ!?」
「でも女生徒ですし」
「琴子っ!」

校長と堀田の会話に混ざった声。
聞き覚えのある声でドアを見るとブサいのが立っていた。

「何をやってるんだ!人様に刃物を向けて!」

頬を左右2回。
初めて父親から叩かれた。

「申し訳ございません。娘がご迷惑を。申し訳ございません」
「大丈夫です」
「治療費は持たせていただきますので言ってください」
「本当に大丈夫ですからお顔をあげてください」

ペコペコペコペコ馬鹿みたい。
なんで日下に土下座してるの?
恥ずかしい人。

「琴子!先生方に謝りなさい!」
「離さないのが悪いんだし」
「お前は離さないってだけで人を刺すのか!」
「たまたま目に付いたからね」
「唐沢さん!」

頭に来る!
何回叩くのよ!
私は悪くないのに!

「不倫してる癖に偉そうにしないでよ!」
「私は不倫などしてない!」
「嘘つくな!」
「一度たりともしていない!」

なに言ってるの。
先生たちの前だからって。
もう私が話したから今更だよ。

「ご迷惑をおかけしました。自主退学させます」
「勝手に決めないで!」
「退学か自主退学かの差だけだ!」
「なんで私が退学になるのよ!」
「先生方に刃物を向けたんだから当たり前だ!」
「意味分かんない!刺してないんだから良いじゃん!」

何よみんなしてその顔。
また私を悪者扱いしてる。

「私は虐められたんだよ!?無視されたの!」
「もしそうなら因果応報だな」
「は!?」
「お前がクラスメイトを虐めたから今度はお前が虐められることになっただけだ」

馬鹿じゃないのこのブサいオヤジ。
普通なら娘の味方をするでしょ。

「私は琴子がしたことが恥ずかしい」
「娘に恥ずかしいって!」
「恥ずかしい!勉強が出来なくてもスポーツが出来なくても構わない!でも虐めなんて酷いことをしてたお前が恥ずかしい!そんな娘にしてしまった自分も恥ずかしい!」

ムカつく!
女に貢いでる癖に!

「あんたの娘に生まれたことが恥ずかしいよ!」
「そうか」

それで終わり?
あんなに言ってそれだけ?

「この子の荷物はのちほど受け取りに来ます。このまま病院に連れて行きますので少しお時間をください」

病院って誰の?
まさか母さんに何かあったの?
死なれたら困るんだけど。

「タクシーで向かわれますか?」
「いえ。弟が車を出してくれましたので」
「分かりました。お気をつけて」
「ありがとうございます。連絡させていただきます」
「はい」
「触らないでよ!」

校長と話した父親に手を掴まれて振り払う。

「嫌なら自分で歩け。歩かないなら抱えて行く」
「冗談でしょ!気持ち悪い!」
「じゃあ歩け。ケンスケが車で待ってる」

ブサいのに触られるなんて冗談じゃない。
今日は大人しく帰ってまた明日来よう。

「失礼します」

先生たちに頭を下げるブサいのを置いて先に行く。
すぐに追いついたブサいのは私の後ろを着いてきていた。

「ケンスケおじさん久しぶりー」
「……琴子ちゃん」
「元気だった?」
「ケンスケ、ロック」
「うん」

車に乗って挨拶した私にケンスケおじさんは困った顔。
ブサいのから言われてカチャと鍵が閉まる音がしてすぐに車は走り出した。

「ケンスケおじさん。母さんの病院に行くの?」
「美和さんの?」
「話さなくて良い」
「は!?あんたに訊いてないから!」
「すまない。クリーニング代は出すから」
「大丈夫」
「無視すんな!ブサい癖に!」

ブサいのが乗ってる助手席を後ろから蹴る。
何度蹴っても無視してるのがムカつく。


「琴子ちゃん行こう」
「母さんココ居るの?事故でもあった?無断欠勤ってことは」
「行けば分かるよ」
「まさか死んでないよね。私料理できないよ?」

ケンスケおじさんが連れて来てくれたのは知らない病院。
病院はたくさんあるけどここには初めて来た。
ブサいのはさっさと先に行ってくれてケンスケおじさんと話しながら病院に入る。

「琴子座りなさい」
「話しかけないでよっ!」
「琴子ちゃん。手を挙げたら駄目だよ」
「フリだよ。ムカつくから叩くフリ」
「ここに座ろう」
「分かった」

ブサいのは嫌いだけどケンスケおじさんは好き。
子供の頃は色んなところに遊びに連れて行ってくれたし、美味しい物もたくさん食べさせてくれた。

考えてみれば私の財布がオジサンばかりなのはケンスケおじさんの影響かも。
優しくて美味しい物を食べさせてくれて、毎年誕生日には欲しい物を買ってくれてたから。

「唐沢さん。こちらへ」
「はい。琴子行こう」
「命令しないで!私はケンスケおじさんと行く!」
「良いですか?一緒に。その方が素直に行くので」
「こちらの方は」
「私の弟です」
「ご親族でしたらどうぞ」

あれ、やっぱり母さん死んだのかな?
連れに来た看護師さんもケンスケおじさんも静か。
明日からご飯どうしよう。
朝昼晩コンビニかあ。

「こちらへどうぞ」
「失礼します」

呼ばれたのは第三診察室。
診察室に居るなら死んでない?
あ、説明かな。

「唐沢琴子さんですか?」
「え?はい」
「年齢はお幾つですか?」
「16ですけど」

なにこれ。
ブサいのもケンスケおじさんも両隣に居るのにどうして私の名前と年齢なんて訊くの?

「母さんはどこですか?生きてます?」
「お母さん?」
「私の。死なれたら困るんですけど。ご飯が作れません」

眼鏡の先生が私の話を聞いてブサいのを見る。
説明が先でまだ訊いたら駄目だったのかな?

「ご飯が作れないから困るのかな?」
「後は洗濯と掃除も。今朝もボイコットされて困ったんです」
「ボイコット?」
「起こしてくれなくて遅刻するし朝ご飯もお弁当も作らないで仕事に行って。母親の癖にボイコットするなんてムカつく」

先生は「うん」と言って短く頷く。

「爪を噛むのは癖かな?」
「はい」
「今少し何かに怒ってる?」
「母親に。ほんとムカつく。今朝から良いことがないのは母さんのせい。朝起こしてくれなくて遅刻したから友達を作るのが遅れた。だからみんなに無視されたんだ。全部母さんのせい」

考えれば考えるほどそうとしか思えない。
いつも通りに行ってたら今頃は友達と放課後の約束をして財布捜しに行けたのに。

「友達を作るって言うのは?」
「なんで訊くの?そのまま」
「じゃあ無視されたって言うのは?」

そう訊かれて思い出しまたムカついてきた。

「無視されたの!クラスメイトに!挨拶しても無視するし話しかけないでって言ったり!ツトム先輩から脅されて私を虐めてるんだと思ったのにみんなで共謀してたの!私が虐められるなんて冗談じゃない!それなのに先生がみんなにも話を訊かないと判断出来ないって!虐められてるのは私なのに優香優香って煩いし!役に立たないから自分で辞めさせるって言ったら日下が足にしがみつくし、殴っても蹴っても離さないからムカついてハサミで刺そうとしたら堀田に止められてブサいのから叩かれた!3回だよ!?女の顔なのに3回!」

細かく説明すると先生はまた「うん」と頷く。

「ハサミは誰の?」
「養護教諭?学校の?多分。知らない」
「そのハサミでどうして刺そうとしたの?」
「離れないから。教室に戻って自分で話すって言ったのに、みんなの所は駄目とか言って私の脚にしがみついたの。蹴っても殴っても離れないないんだから刺すでしょ?邪魔だもの」

なんでケンスケおじさんが泣いてるの?
あ、私が虐められてたから泣いてるの?
やっぱりケンスケおじさん好き。

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