人間不信になったお嬢様

園田美栞

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告白

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あれこれと朋子や彰宏の話を聞いていた紗紀子は圭吾の性格を思い出していた。以前、彼の家が傾いたことがあった。そこでかなりの人が失業する羽目になったのだった。それでも彼の家の経営が難しいらしく不正をしてまでも立て直そうとしている。彼らしい政策だと思った。だけどそれでいいの?ほかの働いている人たちは?前からそう思っていて幼くて思っていても口に出せなくて何もできずにいた自分を今でも苦しめている。
(駒井さんはどうしているのかな…)
以前、葛城で働いていた人がいた。面倒見のいいおじさんで葛城の家に遊びに行くと必ずと言っていいほど圭吾と私の三人で遊んでくれた方だった。そんな彼もあの時に失業した人だった。確か娘がいるって言っていたような…。紗紀子と同い年の子がいるって聞いたことがある。名前は全く聞いたことなかったけれど急に思い出した。そんな家族を持った人が失業したら家族はどうなるんだろう。考えるだけでも恐ろしい。そんな人たちを守るためにも、家族を不幸にさせないためにも…


 「俺たちが手を組むのはどうかな?」
過去を思い出していた紗紀子を彰宏の言葉が現実に戻した。
「それって…」
ぽかんとしていると彰宏はにこりと笑った。彼は急にそっぽを向いたり、唇をかみしめたりしていたが、やがて真剣な顔つきになった。
「俺には君が必要なんだ。それに、君が悲しそうな顔をしているのを見るのがいつも辛いんだよ。自分だったら幸せにしてあげれる気がする。遠回りだろうとなんだろうと、信じてついてきてほしい」
紗紀子は目を見開いた。彼がそんなことを思っているなんて考えもつかなかった。一緒にいて幸せだったし、楽しかった。彼女は照れ笑いをしながらコクリと頷き
「ありがとう」
と言って彼に抱きついた。
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