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Robinという騎士

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 「少し話しませんか?」

全く何を言っていいのかわからなかった騎士は思わずClaireにそう言った。Ashbery家の一人娘だと思うと緊張して何も話すことが出来なかった。

 やがて日は暮れ、森の中も真っ暗になり薄気味悪くなってきた。

「一体どちらへ?」

不審に思ったClaireは騎士に尋ねた。

「えっと…」

やはり何と言ったらいいのかわからず黙ってしまう彼の横でClaireのお腹が鳴った。

「…失礼…」

顔を赤らめ恥ずかしがる彼女を見て騎士は

「どこかで休みましょう」

と提案した。



 ついた先は誰も住んでいない小さな小屋だった。彼は野宿なぞしたことのない彼女に食べられそうな木の実で調理をした。

温かい食べ物で二人の心は落ち着いた。

「Ms,Claire…」

そう小さな声で呼びかけるが後の言葉が思いつかない。

「Mr,Robin、このようなものが作れるなんて素敵ね」

Claireも何を話せばいいのかわからず、目の前の料理のことを褒めた。Robinは顔を赤らめ、微笑んだ。

 やがて夜が更け横になって眠る一人の少女を守るように一人の青年が焚火の傍で彼女を眺めながらなにやら考え事をしていた。

「あの娘を殺せ」

主人からの命令が耳から離れない。騎士は頭を抱えた。

「俺には出来ない…」

もう一度すやすやと眠るClaireを見た。自分の上着を掛け、美しく幸せそうに眠る彼女の心臓を突き刺すことなどできなかった。

「Ashbery…」

敵対視していた家でもないのになぜ殺さねばならないのか、この少女が何をしたっていうのか…。自分と同じくらいの年齢の罪のない人など殺すことが出来ない。それに彼はAlbertと同い年と言うこともあり、彼からClaireの話をよく聞いていた。Robinは刀を置いた。薪を入れ激しく燃えだした炎を眺めていた。

 騎士の名前はRobin Brownといい、今年で18になる青年だった。元々はただの農家の息子であり、意気地がないからと無理やり父親に騎士団に入れられた。Robinは背は高く、騎士の割には線の細く、髪は眺めで優し気な目が前髪から覗いている。顔だちは整い、素敵な青年だった。
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