24 / 42
中学の時の記憶
しおりを挟む
それから数分後、葵と小山は部屋を出ていった。残された黒井と佳代子は気まずそうに座っていた。やがて口を開いたのは佳代子だった。
「あの…黒井君って…」そのまで言いかけどうしようか迷っていると
「澤須中の黒井圭太だ」と返した。(あぁ!)と佳代子は納得した表情をしてみせた。
「さっきいた小山も覚えているか?小山仁だよ」
「うん、覚えてる。そっかぁ。三人とも仲いいのね。私って、親の都合でお引越しして、大人になってまたここに戻ってきていろんなものが変わってて…」佳代子は窓を見ながら言った。
「だけど、俺たちは何も変わってないんだよな。葵も仁も昔から…いや葵は別かな」と圭太は笑って言った。
「葵君のことできれば知りたいなぁ…」彼についてのあまり記憶が無い佳代子は彼らが傷つくことの無いよう窓の外を向いたまま独り言のようにいった。「でも、あの時も楽しかったなぁ。私全然勉強なんてできなくって、隣の席に葵君がいた時に彼に教えて貰っていたなぁ。普段無口の彼の教えって分かりやすくて、いつかお礼言おうって思っても当時の私にはそれができなくて…」一人で話始める佳代子の思い出話を圭太は黙って聞いていた。
「一回ね、ハロウィンだっけ?クラスの皆にクッキー焼いていったことがあったの覚えてる?黒井君も同じクラスだったけ?」
「いや、俺は違うな」佳代子の思い出話を知っていてもその続きを敢えて彼は何も言わなかった。ただ黙って彼女の話を聞いていた。
「隣の席だったから葵君に一番初めにあげようって、いつものお礼を兼ねてあげようって持って行ったの」
そう今でも鮮明に覚えている。彼はその日風邪で休んだのだった。その次の日も、その次の日も彼の席には教科書が置かれることは無かった。いつも暗い彼がいない何日間はなぜか寂しかった。今覚えば当時は勉強を教えてくれる男の子にしか思っていなかった。彼が学校に来る前に佳代子の家は引っ越しした。
「一度風邪ひくとあいつ長引くからなぁ…」と圭太は笑って言った。
「不思議よね、ずっと逢えないって思っていたのに。殆どもう記憶が無くなりかけていたのに…」
「あいつはずっと覚えていたよ。岡崎のことを。俺だって何回かは止めたんだぜ?みっともねぇからやめろって」
「私ったら全然気づかなくて…」佳代子はコーヒーを飲みながら言った。
「気づいてても驚きだがな。彼の執着した気持ちに応えた岡崎も凄いと思うな」
「知ったときは怖かったよ…。でもそれぐらい好きなんだって考えちゃったらなぜか嬉しくって…」
「よかったな」黒井は笑って目の前にいる彼女の幸せを心から喜んだ。
「ただいま」丁度よく帰ってきた葵の声が聞こえた。佳代子は彼の元へ行き、買ってきた物をキッチンで話をする二人を見て黒井は「幸せ者だな」と小さな声で言った。
「あの…黒井君って…」そのまで言いかけどうしようか迷っていると
「澤須中の黒井圭太だ」と返した。(あぁ!)と佳代子は納得した表情をしてみせた。
「さっきいた小山も覚えているか?小山仁だよ」
「うん、覚えてる。そっかぁ。三人とも仲いいのね。私って、親の都合でお引越しして、大人になってまたここに戻ってきていろんなものが変わってて…」佳代子は窓を見ながら言った。
「だけど、俺たちは何も変わってないんだよな。葵も仁も昔から…いや葵は別かな」と圭太は笑って言った。
「葵君のことできれば知りたいなぁ…」彼についてのあまり記憶が無い佳代子は彼らが傷つくことの無いよう窓の外を向いたまま独り言のようにいった。「でも、あの時も楽しかったなぁ。私全然勉強なんてできなくって、隣の席に葵君がいた時に彼に教えて貰っていたなぁ。普段無口の彼の教えって分かりやすくて、いつかお礼言おうって思っても当時の私にはそれができなくて…」一人で話始める佳代子の思い出話を圭太は黙って聞いていた。
「一回ね、ハロウィンだっけ?クラスの皆にクッキー焼いていったことがあったの覚えてる?黒井君も同じクラスだったけ?」
「いや、俺は違うな」佳代子の思い出話を知っていてもその続きを敢えて彼は何も言わなかった。ただ黙って彼女の話を聞いていた。
「隣の席だったから葵君に一番初めにあげようって、いつものお礼を兼ねてあげようって持って行ったの」
そう今でも鮮明に覚えている。彼はその日風邪で休んだのだった。その次の日も、その次の日も彼の席には教科書が置かれることは無かった。いつも暗い彼がいない何日間はなぜか寂しかった。今覚えば当時は勉強を教えてくれる男の子にしか思っていなかった。彼が学校に来る前に佳代子の家は引っ越しした。
「一度風邪ひくとあいつ長引くからなぁ…」と圭太は笑って言った。
「不思議よね、ずっと逢えないって思っていたのに。殆どもう記憶が無くなりかけていたのに…」
「あいつはずっと覚えていたよ。岡崎のことを。俺だって何回かは止めたんだぜ?みっともねぇからやめろって」
「私ったら全然気づかなくて…」佳代子はコーヒーを飲みながら言った。
「気づいてても驚きだがな。彼の執着した気持ちに応えた岡崎も凄いと思うな」
「知ったときは怖かったよ…。でもそれぐらい好きなんだって考えちゃったらなぜか嬉しくって…」
「よかったな」黒井は笑って目の前にいる彼女の幸せを心から喜んだ。
「ただいま」丁度よく帰ってきた葵の声が聞こえた。佳代子は彼の元へ行き、買ってきた物をキッチンで話をする二人を見て黒井は「幸せ者だな」と小さな声で言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる