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第二話「正体不明の敵に対する自衛隊の対処法について」

別動隊

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 時を同じくして、森陸曹が危惧した通りの物を積んだ大型トラック三台は、大胆にも国道を突っ切り、目的地までの最短距離を走行していた。

 国道とは言っても、米軍撤退からほとんど再開発もされていない。左右を密林で囲まれた、少し幅が広い田舎道のような物だった。トラックの集団は誰に見咎められるわけもなく、順調に目的地に向かっていた。
 トラックは、民間車両の一台も走っていない無人の道路の緩やかなカーブに差し掛かる。

(しかし、不自然なくらい対向車がいないな――)

 運転手が小さな疑問を抱いた矢先、その答えがカーブの出口で姿を現した。

 分岐もない一本道の国道を、軽機動装甲車と、TK-7が二機、立ち塞がるように塞いでいたのだ。
 それは、森からの通報を受けた部隊長から命令を受けて、急遽として実施させた大掛かりな検問だった。すでに、周辺道路の封鎖を終えて行われたそれの目的は明白だった。

『そこのトラックー、停車しろー』

『御用検めであるぞー』

 スピーカーからむさ苦しい声を発しながら、Tk-7は威嚇のつもりなのか、何故かボディビルダーのようにポーズを決めている。
 特殊合金のフレームを見せつけるようにして、隙だらけに見える鋼鉄の巨人が、これ以上先へは行かせないと言わんばかりに、門番のようにこちらの行く手を阻んでいる。

「ちくしょう、山口の野郎しくじったな?!」

 運転手が潜入していた仲間の失態に思わず叫ぶ。どこか間の抜けた勧告が出されたことで、自分たちの目論見が半場看破されていることを察した。先頭のトラックの運転手が舌打ちして、急停車させながら無線機を乱暴に引っつかんで叫ぶ。

「作戦変更! タンザナイト、ジェード、ターコイズはここから直接目的地に向かえ、オブシディアンは目の前のをやれ!」

 通信を聞いていた後続のトラックもそれに倣って急停車する。アスファルトをタイヤが擦り、Tk-7の目前百メートルの所で、トラックの集団が停車した。

 そして、急停車したそのトラックの荷台が大きく膨れ上がる。隠蔽用のビニールシートを吹き飛ばしながら、三つの機影――紫、白、緑の甲冑が飛び出した。その三機は、Tkー7が短筒を構えるよりも早く飛び去ってしまう。

 それから少し遅れて、今度は黒い甲冑がトラックから降りると、自衛隊の方に向けて、武術家のように構えを取った。
 言外に「かかってこい」と言ってきている……Tk-7の機士はそう解釈した。

『LAVは下がれ! 仕掛けるぞ!』

『HQ、一佐の予想通りだ、そっちに三機いった!』

『HQ了解、慎重に』『『うおおおおおおおお行くぞおおおおおお!!』』

 駐屯地の発令所からの返信に被せるようにして、二人は雄叫びをあげた。フロントダブルバイセプスとバックダブルバイセプスの構えを解いたTk-7が、先手必勝とばかりに猛然と黒い甲冑に飛び掛かる。

 直進はせず、目標を挟むようなシザース機動。鏡合わせのような動きに、戸惑ったのか反応が遅れた甲冑の周囲を、土煙を上げながらぐるぐると無駄に回り――

『受けてみよ!』

『我らが秘奥義!』

 言うが早いか「ハァッ!」とハモらせながら大ジャンプ。空中で三回転してから、飛び蹴りを放った。
 このような動きが出来るのも、Tk-7の優秀なオートバランサと姿勢制御プログラム、DLSのおかげである。

 もっとも、このような性能の無駄遣いは想定されていないが

「HQへこちらLAV、大関陸曹と大貫陸曹が仕掛けた! ……ああ、ダブルラリアットで迎撃された! 相手は手練れだぞって巻き込まれるバック、バックしろ早く!!」

 すでに方向転換を終えて走り去ろうとするトラックを目前にしても、流石にAMWが取っ組み合いをしている中を突っ切るわけにも行かない。軽機動装甲車の運転手はトラックの追跡を諦め、Tkー7二機と正体不明機のプロレスを実況するしかなくなってしまったのだった。
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