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第九話「里帰りと米国からの来訪者について」
ある大尉の活躍
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辺りの闇は濃かった。
月の光を遮る雲すらもない月夜が、懇々と暗闇の市街地を照らす。その街は、数時間前まで人々が日常を謳歌していた。だが、今は人っ子一人見られない。それは時間帯のせいではないことを、遠距離からの砲撃で崩れたいくつかの建築物が、物語っていた。
その市街地の中を、数人の歩兵が歩いていた。彼らの装備はまちまちで、あるものは東側の旧式ライフル、またあるものは西側の対戦車ロケットを装備している。そして人種を隠すように被っているフェイスガード。
誰がどう見ても、彼らは正規兵だとは思えないだろう。実際のところ、この集団こそが、この街に砲撃を加えたテロリスト集団に他ならない。
そして、彼らの後ろから、巨大な履帯が動く音。正規軍から強奪したのか、それとも横流し品なのか、搭乗員も知らない。米軍の最新鋭のMBTだ。
今いる市街地の様な、障害物が多い戦場ではAMWに劣るとされている戦車だが、この機種はAMWの主流武器である四十ミリ弾などは屁でもない装甲を持っていた。
撃破するならば、それを大きく上回る大口径長砲身の物でなければならないが、そんな強力な砲を装備している機体なんて、そうはいない。
ろくすっぽ訓練を受けていないテロリストが扱うにしても、その強力な砲と頑強な装甲だけで充分強力な兵器に成り得る。
このMBTが十両と、更に旧世代とは言えAMWがもう十機。加えて航空戦力の攻撃ヘリが五機。その他、戦闘車両と歩兵が多数。
もはや、テロリスト集団などではなく、小さい軍隊と化した彼らは、避難移動中の民間人と、防衛を早々に諦めた米軍の部隊を追撃、殲滅するために、街を破壊しながら一直線に進んでいた。
民間人というのは、人が思うよりもずっと移動速度が遅い。それに合わせて移動している米軍もそうだ。市街地を迂回などしなくとも、真っ直ぐ突き進んでいけば、米軍の援軍が来るよりも先に、獲物に追いつける計算だった。
護衛している軍の掃除が終われば、後は無人となった街で好き放題に略奪するも、女を捕まえて好きにしても良いと指導者から言われれば、この無法者達の士気も勝手に上がる。もし、トゲ付きの肩パッドとモヒカンがあれば、それはさぞ似合ったことだろう。
戦車を先導するように進んでいた歩兵の一人が、ふと、こちらを向いている監視カメラに気付いた。なんの変哲もないスーパーマーケットの入り口についた監視カメラである。それが、じっとこちらを見ていたかと思うと「ウィンッ」と音を立てて動き、自分達の後ろにいるはずの戦車の方へと向いた。
歩兵がその動きに違和感を感じた直後、遥か彼方から今度は何かの飛来音が聞こえた。他の歩兵もその音に気付いて周囲を見渡す。
その音の正体に歩兵の男が気付いたのは、自分達の後ろを進んでいた戦車が、炎を吹きながら突っ込んで来た何か――赤外線画像誘導対戦車ミサイルによって爆発し、中にいた搭乗員が全滅してただの鉄の箱と化してからだった。
尤も、気付いたと同時に、歩兵集団は爆発の余波を受けて死亡していたのだが――
《ミサイル全弾命中、敵残存戦車無し》
「上出来よ」
テロリストのMBT、並びに随伴歩兵を襲ったミサイルを放った張本人。AMW『M5A3 シュワルツコフ』。
米陸軍の主力兵器であるその機体は、鋼鉄の箱で人型を組み上げたような装甲に、更に上から追加装甲と各種武装を取り付けた、正に歩く主力戦車と言うのが相応しい様相をしていた。
その堅牢なコクピットの中で、メイヴィス・ヴァージニア・スミス大尉は、ハッキングした監視カメラからの映像を見て舌舐めずりする。その女性らしからぬ仕草を咎める人物は、この狭苦しいコクピットの中には誰一人としていない。
それどころか、本来周辺に展開するはずの随伴歩兵も、周辺状況を知らせる偵察車両も、エアカバーを担当する航空戦力も、誰もいなかった。
孤立無援の遅滞作戦。それが、この若い女性パイロットに与えられた命令だった。その命令を出した、ナイスミドルと言う言葉が似合う司令官の辛そうな顔を前に、この無謀な作戦を嬉々として受令したのだ。
そんな彼女は、部隊内で『女ゴリラ』というあだ名が付けられているが、まだ二十代後半である肌は軍隊生活の中でも張りを保ち、スタイルは抜群。顔も精悍な女戦士という、どちらかといえば戦いの女神だとか、そういう呼び名をつける方が適切な容姿をしていた。
彼女がモニターを再度見ると、今度は攻撃ヘリが団体で接近して来ていた。どうやら、ミサイルの発射源を特定して来たらしく、どれも正確にこちらへと向かって来ている。
「さぁ、死神とダンスよ!」
メイヴィスがそう叫ぶと、鈍重な期待を前進させ、テロリストとの壮絶な戦闘を始めた。近寄る敵機を千切っては投げ千切っては投げ、群がる歩兵を吹き飛ばし、先頭車両を瞬く間に消し炭にした。
そして戦闘があっけなく終わり、傷もほとんど着いていない機体から、まるで軽いエクササイズを終えたばかりのような顔で降り立った。そして、増援部隊と一緒に戻ってきたナイスミドルの司令官に、こう言った。
「今回も、余裕だったわね」
月の光を遮る雲すらもない月夜が、懇々と暗闇の市街地を照らす。その街は、数時間前まで人々が日常を謳歌していた。だが、今は人っ子一人見られない。それは時間帯のせいではないことを、遠距離からの砲撃で崩れたいくつかの建築物が、物語っていた。
その市街地の中を、数人の歩兵が歩いていた。彼らの装備はまちまちで、あるものは東側の旧式ライフル、またあるものは西側の対戦車ロケットを装備している。そして人種を隠すように被っているフェイスガード。
誰がどう見ても、彼らは正規兵だとは思えないだろう。実際のところ、この集団こそが、この街に砲撃を加えたテロリスト集団に他ならない。
そして、彼らの後ろから、巨大な履帯が動く音。正規軍から強奪したのか、それとも横流し品なのか、搭乗員も知らない。米軍の最新鋭のMBTだ。
今いる市街地の様な、障害物が多い戦場ではAMWに劣るとされている戦車だが、この機種はAMWの主流武器である四十ミリ弾などは屁でもない装甲を持っていた。
撃破するならば、それを大きく上回る大口径長砲身の物でなければならないが、そんな強力な砲を装備している機体なんて、そうはいない。
ろくすっぽ訓練を受けていないテロリストが扱うにしても、その強力な砲と頑強な装甲だけで充分強力な兵器に成り得る。
このMBTが十両と、更に旧世代とは言えAMWがもう十機。加えて航空戦力の攻撃ヘリが五機。その他、戦闘車両と歩兵が多数。
もはや、テロリスト集団などではなく、小さい軍隊と化した彼らは、避難移動中の民間人と、防衛を早々に諦めた米軍の部隊を追撃、殲滅するために、街を破壊しながら一直線に進んでいた。
民間人というのは、人が思うよりもずっと移動速度が遅い。それに合わせて移動している米軍もそうだ。市街地を迂回などしなくとも、真っ直ぐ突き進んでいけば、米軍の援軍が来るよりも先に、獲物に追いつける計算だった。
護衛している軍の掃除が終われば、後は無人となった街で好き放題に略奪するも、女を捕まえて好きにしても良いと指導者から言われれば、この無法者達の士気も勝手に上がる。もし、トゲ付きの肩パッドとモヒカンがあれば、それはさぞ似合ったことだろう。
戦車を先導するように進んでいた歩兵の一人が、ふと、こちらを向いている監視カメラに気付いた。なんの変哲もないスーパーマーケットの入り口についた監視カメラである。それが、じっとこちらを見ていたかと思うと「ウィンッ」と音を立てて動き、自分達の後ろにいるはずの戦車の方へと向いた。
歩兵がその動きに違和感を感じた直後、遥か彼方から今度は何かの飛来音が聞こえた。他の歩兵もその音に気付いて周囲を見渡す。
その音の正体に歩兵の男が気付いたのは、自分達の後ろを進んでいた戦車が、炎を吹きながら突っ込んで来た何か――赤外線画像誘導対戦車ミサイルによって爆発し、中にいた搭乗員が全滅してただの鉄の箱と化してからだった。
尤も、気付いたと同時に、歩兵集団は爆発の余波を受けて死亡していたのだが――
《ミサイル全弾命中、敵残存戦車無し》
「上出来よ」
テロリストのMBT、並びに随伴歩兵を襲ったミサイルを放った張本人。AMW『M5A3 シュワルツコフ』。
米陸軍の主力兵器であるその機体は、鋼鉄の箱で人型を組み上げたような装甲に、更に上から追加装甲と各種武装を取り付けた、正に歩く主力戦車と言うのが相応しい様相をしていた。
その堅牢なコクピットの中で、メイヴィス・ヴァージニア・スミス大尉は、ハッキングした監視カメラからの映像を見て舌舐めずりする。その女性らしからぬ仕草を咎める人物は、この狭苦しいコクピットの中には誰一人としていない。
それどころか、本来周辺に展開するはずの随伴歩兵も、周辺状況を知らせる偵察車両も、エアカバーを担当する航空戦力も、誰もいなかった。
孤立無援の遅滞作戦。それが、この若い女性パイロットに与えられた命令だった。その命令を出した、ナイスミドルと言う言葉が似合う司令官の辛そうな顔を前に、この無謀な作戦を嬉々として受令したのだ。
そんな彼女は、部隊内で『女ゴリラ』というあだ名が付けられているが、まだ二十代後半である肌は軍隊生活の中でも張りを保ち、スタイルは抜群。顔も精悍な女戦士という、どちらかといえば戦いの女神だとか、そういう呼び名をつける方が適切な容姿をしていた。
彼女がモニターを再度見ると、今度は攻撃ヘリが団体で接近して来ていた。どうやら、ミサイルの発射源を特定して来たらしく、どれも正確にこちらへと向かって来ている。
「さぁ、死神とダンスよ!」
メイヴィスがそう叫ぶと、鈍重な期待を前進させ、テロリストとの壮絶な戦闘を始めた。近寄る敵機を千切っては投げ千切っては投げ、群がる歩兵を吹き飛ばし、先頭車両を瞬く間に消し炭にした。
そして戦闘があっけなく終わり、傷もほとんど着いていない機体から、まるで軽いエクササイズを終えたばかりのような顔で降り立った。そして、増援部隊と一緒に戻ってきたナイスミドルの司令官に、こう言った。
「今回も、余裕だったわね」
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