自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

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第十五話「第八師団と相棒達の活躍について」

テロリストの備え

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 目的地に到着したのか、停止した車から、ステュクスに抱えられて比乃は降ろされた。そこは、先日爆破された倉庫の近くにある、別の倉庫だった。すぐ側には、大型のフェリー船が停泊している。

 倉庫の中には埃が薄っすらと積もっていて、人の出入りがほとんどなかったらしいことがわかる。作業途中の物と見られる機材や廃材が並んでいて、見晴らしがいいとは言えない。
 そうしていると、黒い目出し帽を被った男たちが数人、フェリーから降りてきた。全員、サブマシンガンなどの小火器で武装している。外にある船は、どうやら迎えの船らしい、これで自分をどこか、他の港にでも連れ去る魂胆なのだろうか。

 敵の数が増えただけでも厄介だと言うのに、抱えられた姿勢の比乃は、倉庫の奥に目をやって、驚愕に目を見開いた。
 照明も付けられていない暗闇の奥に、巨大な人型のように見える機体が蹲っていた。ペーチルSだ。それも、六機いる。

 とても、外にあるフェリーに搭載できる量ではない。いったいどこから、どうやって持ち込んだのか、しかも、ここにいても聞こえる超電動モーターの音から、出撃準備を終えた状態で鎮座していることもわかった。

 自衛隊は、相手がこれだけの戦力を揃えていることを想定できているだろうか。比乃は呆然とそれを見上げる。もしも、救助部隊が隠密優先で普通科や警察の機動隊を主力にしていたら、瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。救出作戦を指揮している人物が、対AMW戦闘を想定していることを祈るしかない。

「ステュクス、日比野軍曹を適当に座らせてやれ」

 指示を受けて、ステュクスは適当な廃材の上に比乃を座らせると、その手に手錠を嵌めた。これで、両手両足を封じられた比乃が「この脚で僕が抵抗できるとでも?」と、半分しかない腿を上下させて、自嘲気味に聞いた。

「流石にないとは思うが、逃げられでもしたら事なのでな」

「先生は心配性なの」

 ステュクスが車から取り出した義足を離れた所に放る。とても手が届く距離ではないが、それでも今は問題ない。救出されてから回収すればいいだけの話である。

「左様ですか」

 なので、聞いた本人は興味も無さそうな返事をする。その意図が解らないのか、探るように比乃を見るステュクスと、何を考えているのかわからない、無感情な目を向けて来ているオーケアノスに、比乃は内心「ちょっと余裕を見せすぎてるか」と冷や汗をかいた。

 しかし、オーケアノスは特に何も追求せずに鼻を鳴らして「まぁいい、退屈なんだろう」と言って、少し離れた所に座った。少女もその隣に嬉しそうに腰掛けたのを見て、比乃はほっと息を吐いた。まだ怪しまれてはいないようだ。

 ここで、こちらが何らかの手札を持っていると思われてはいけない。今できるのは、自分がフェリーに乗せられて海の上に運ばれてしまう前に、救出部隊が来ることを祈るくらいだ。あと、何かあるとすれば、

「しかし、これだけの戦力をどうやって持って来たんですか?」

 比乃が唐突に話し出した。少しでも情報を引き出してやろうと言う魂胆と、単純な興味本位であった。
 余計なことを聞くなとばかりに、少女がむっとした顔をするが、オーケアノスは「知りたいのか?」と、意外なことに特に隠すこともなく、このペーチルの出所を話し始めた。

 とは言っても、そのほとんどは自衛隊や警察が元から予想していた通り、北や大陸からの密輸入によるものだった。特に真新しい情報と言える物はほとんどない。

 わかったことと言えば、この男達が所属しているテロ組織が潤沢な資金と広大なパイプ、人員を揃えているということくらいだった。

「それだけの組織力があって、どうしてやることがテロなんです?  慈善活動でもすればいいのに」

「それは我々のトップにでも直接聞くがいい……さて」

 オーケアノスは片手を挙げて見せた。すると、すぐ側にあったペーチルが次々と立ち上がった。操縦者はあらかじめ乗り込んでいたらしい。それらの機体は、重たい足音を立てて、倉庫から外へ出て行く。

 何故、態々隠していた機体を倉庫から出すのか、怪訝そうにする比乃に、立ち上がったオーケアノスがゆっくりと振り向いた。その手には、いつの間にか通信機らしき物が握られていた。そこから、比之の聞いたことのない若い男性の『わりーオーケアノス、一足遅かった』という声が漏れた。

「さっきステュクスが言ったが、俺は心配性でな……例えば」

 少しの間の後、遠くで爆発音が鳴った。思わず比乃がそちらを見る、大型火器の発砲音。この音は、Tkー7の短筒独特のものだ。救出部隊が来てくれた、それも、ちゃんと対AMW戦を想定している。

「たかが一人の自衛官を助けるのに、自衛隊が即座にAMWを投入してくるのではないかと考えてしまうくらいにはな」

 そう言って、オーケアノスは周囲にいる兵士達に「敵がくるぞ、備えろ」と指示を出した。武器を持った男達は即座に散開して行く。それを見たオーケアノスは、フェリーの方へと歩いて行く。

「奴らは頼りにならん。ステュクス、念のために私も用意しておく、いざという時は、解っているな?」

「勿論です。先生」

 少女は満面の笑みで答えると、ケースから部品を取り出して、愛銃を組み立て始めた。倉庫の入り口で自分の生徒を見てから、近くにいた兵士の一人に、オーケアノスが何かと指示を出す。

「さて、軍曹には少し静かにしていて貰おうか」

「もう充分に静かにしてると思うんですけど、あまり手荒いことはしてほしくないですね」

「そうはいかんな、俺はお前を過小評価しない。今も何らかの切り札……まぁ、大体の予想はつくが、それを使って脱出の手段を講じていると言った所だろう?  だが残念だったな、次に目が覚めた頃には新天地だ。何、不安がることはないぞ」

 オーケアノスが話す間に、命令を受けた兵士が来て、身動きの取れない比乃の脇腹に高圧スタンガンを押し当てた。比乃の意識は、そこで途切れた。
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