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第二十三話「最新鋭機とその適正について」
マッチングテスト
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大量の景品を、食べ切れないということでアパート住民へ配り終えた三人は、余った残りを美味しく頂いていた。そこに、部隊長から一本の電話が掛かってきた。
「新型機のテストですか?」
『そうだ。俺の知り合いのマッド……いや、技本の開発主任が、秘密裏に開発していた機体でな。テストパイロットを探していたらしいんだが、その条件にぴたりと当てはまったのがお前と志度、心視の三人というわけだ』
「それはまた、光栄と言うべきなんでしょうか……というか今マッドって言いませんでした?」
『気にするな、人格はともかく、技術は確かだ。人格はともかくな』
「すっごい不安になってきたんですけど……」
また変人か……とこめかみに手をやって苦悶する比乃。
『まぁ、今回の件は結構上の方からの指示でもあるから、お前達に拒否権はないんだがな』
「別に拒否する気は毛頭ないですよ、テストパイロットも最近板について来たと思ってましたし」
『それはよかった。それで日取りについてだがーー』
告げられた日程と時刻をメモした比乃は「また学校、少し休まないといけないなぁ」と、ため息混じりに呟いた。そろそろ、出席日数の誤魔化しが効かなくなりそうだった。
***
後日。三人は廃工場に偽装されている開発施設へとやってきた。入り口で見張り役の自衛官に、身分証明書を提示して、中へと入って行く。受け取ったヘルメットの顎紐の具合を確かめながら、通路を進む。奥まった部屋に到着すると、白衣を着た初老の男性、楠木博士と数人の職員が待っていた。
「ようこそ、ようこそ来てくれた。日比野三等陸曹と、その仲間たち」
仰々しく腕を広げて三人を出迎えた博士が、実に嬉しそうに口を歪める。それらの動作だけで、比乃はこの人物が件のマッドサイエンティストであると見抜いた。変人は見れば解るのである。
「お世話になります。楠木開発主任」
「博士で、博士で良い。皆、私をそう呼ぶ」
そう言って差し出された手を、比乃が握り返す。その手を、博士は更にもう片方の手で包むと、興奮した様子で顔を近づける。
「君のような、君のような逸材が居てくれたことを、私は、私は神に感謝せねばならん。本当に、本当によくぞ自衛官でいてくれた」
「はぁ、どうも……」
そのテンションに付いて行けず困惑する比乃の手をぱっと離すと、博士は身を翻して「こちら、こちらに来てくれたまえ」と職員を引き連れて歩き出した。比乃たちは慌ててそれに付いていく。
「なんか聞いてた通りの人だな」
「変な……おじさん」
「ま、まぁ人は見かけによらないってこの間判ったし、案外普通の博士かもしれないよ?」
「……発明者、発明者とは普通の頭では務まらない、務まらないのだよ。三曹」
聞かれてたのか、と三人が気まずそうに首を竦めたのを見て、博士は「ひっひっひ」と笑った。
「私から、私からしてみれば、君らも余程の変人の類に入る、入ると思うぞ。今回はそれが都合良かったのだが」
変人に変人呼ばわりされて、比乃達は顔を見合わせた。そうして歩いていく内に、一行は厳重に警備された工場の一番奥の広い空間に辿り着いた。
そこには、布を被せられた高さ八メートル程の何かが立っていた。
「カバーを、カバーを外してくれたまえ」
博士が指示すると、職員の一人が壁際の操作パネルを動かした。すると、その機体にかけられていたシートがクレーンに寄って外されて行く。
「これは……」
現れた機体を見て、唾を飲む比乃。
「へぇ……」
その様相に、感嘆の声を漏らす心視。
「おお、かっけぇ!」
目を輝かせ、シンプルな感想を口にする志度。
三者三様の反応に、博士と職員。この機体の開発に携わってきた開発者達が、取っておきの手品を見せたように笑みを浮かべる。そこに立っていたのは、機械仕掛けの天使だった。
見るからに運動性能を追求された、スリムな機体。それでいて、貧弱さを一切感じさせない四肢は、細いながらもマッシブなデザインで、むしろ力強さが垣間見えた。白を基調にしたその機体は、全体的に尖った印象のTkー7やTkー9とは違う、丸っこく、そしてヒロイックなデザインで、見る者、相対する者にある種の威圧感を与える様相をしていた。
そして何よりも目立つのは、背中に一対生えた円筒型の装備だ。色と相まってまるで天使の羽のように生えたそれが、どのような機能を持っているのか、比乃達には想像もつかなかった。敵対者の破壊を目的とした兵器であるはずなのに、一種の芸術品のようなその魅力的な姿に、比乃は一瞬だが見惚れた。
「楠木博士、この機体が……」
「そう、これが、これが我が最高結作、Tkー11ネメスィ、その先行試作型だ」
誇らしげに、博士が頷いて、自慢気に語り始める。
「我が国で、我が国で二番目のフォトン動力搭載機にして、正式採用されれば、三番目の純国産量産型AMWとなる。その実現の、実現のためにも、君達の力を貸してくれ」
三人の方へ振り返った博士が、また狂気的な笑みを浮かべた。
「まずは、まずは“マッチングテスト”からだ。君達、手早く、手早く操縦服に着替えたまえよ。こちらの、こちらの用意はすでに万端なのだからな」
「新型機のテストですか?」
『そうだ。俺の知り合いのマッド……いや、技本の開発主任が、秘密裏に開発していた機体でな。テストパイロットを探していたらしいんだが、その条件にぴたりと当てはまったのがお前と志度、心視の三人というわけだ』
「それはまた、光栄と言うべきなんでしょうか……というか今マッドって言いませんでした?」
『気にするな、人格はともかく、技術は確かだ。人格はともかくな』
「すっごい不安になってきたんですけど……」
また変人か……とこめかみに手をやって苦悶する比乃。
『まぁ、今回の件は結構上の方からの指示でもあるから、お前達に拒否権はないんだがな』
「別に拒否する気は毛頭ないですよ、テストパイロットも最近板について来たと思ってましたし」
『それはよかった。それで日取りについてだがーー』
告げられた日程と時刻をメモした比乃は「また学校、少し休まないといけないなぁ」と、ため息混じりに呟いた。そろそろ、出席日数の誤魔化しが効かなくなりそうだった。
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後日。三人は廃工場に偽装されている開発施設へとやってきた。入り口で見張り役の自衛官に、身分証明書を提示して、中へと入って行く。受け取ったヘルメットの顎紐の具合を確かめながら、通路を進む。奥まった部屋に到着すると、白衣を着た初老の男性、楠木博士と数人の職員が待っていた。
「ようこそ、ようこそ来てくれた。日比野三等陸曹と、その仲間たち」
仰々しく腕を広げて三人を出迎えた博士が、実に嬉しそうに口を歪める。それらの動作だけで、比乃はこの人物が件のマッドサイエンティストであると見抜いた。変人は見れば解るのである。
「お世話になります。楠木開発主任」
「博士で、博士で良い。皆、私をそう呼ぶ」
そう言って差し出された手を、比乃が握り返す。その手を、博士は更にもう片方の手で包むと、興奮した様子で顔を近づける。
「君のような、君のような逸材が居てくれたことを、私は、私は神に感謝せねばならん。本当に、本当によくぞ自衛官でいてくれた」
「はぁ、どうも……」
そのテンションに付いて行けず困惑する比乃の手をぱっと離すと、博士は身を翻して「こちら、こちらに来てくれたまえ」と職員を引き連れて歩き出した。比乃たちは慌ててそれに付いていく。
「なんか聞いてた通りの人だな」
「変な……おじさん」
「ま、まぁ人は見かけによらないってこの間判ったし、案外普通の博士かもしれないよ?」
「……発明者、発明者とは普通の頭では務まらない、務まらないのだよ。三曹」
聞かれてたのか、と三人が気まずそうに首を竦めたのを見て、博士は「ひっひっひ」と笑った。
「私から、私からしてみれば、君らも余程の変人の類に入る、入ると思うぞ。今回はそれが都合良かったのだが」
変人に変人呼ばわりされて、比乃達は顔を見合わせた。そうして歩いていく内に、一行は厳重に警備された工場の一番奥の広い空間に辿り着いた。
そこには、布を被せられた高さ八メートル程の何かが立っていた。
「カバーを、カバーを外してくれたまえ」
博士が指示すると、職員の一人が壁際の操作パネルを動かした。すると、その機体にかけられていたシートがクレーンに寄って外されて行く。
「これは……」
現れた機体を見て、唾を飲む比乃。
「へぇ……」
その様相に、感嘆の声を漏らす心視。
「おお、かっけぇ!」
目を輝かせ、シンプルな感想を口にする志度。
三者三様の反応に、博士と職員。この機体の開発に携わってきた開発者達が、取っておきの手品を見せたように笑みを浮かべる。そこに立っていたのは、機械仕掛けの天使だった。
見るからに運動性能を追求された、スリムな機体。それでいて、貧弱さを一切感じさせない四肢は、細いながらもマッシブなデザインで、むしろ力強さが垣間見えた。白を基調にしたその機体は、全体的に尖った印象のTkー7やTkー9とは違う、丸っこく、そしてヒロイックなデザインで、見る者、相対する者にある種の威圧感を与える様相をしていた。
そして何よりも目立つのは、背中に一対生えた円筒型の装備だ。色と相まってまるで天使の羽のように生えたそれが、どのような機能を持っているのか、比乃達には想像もつかなかった。敵対者の破壊を目的とした兵器であるはずなのに、一種の芸術品のようなその魅力的な姿に、比乃は一瞬だが見惚れた。
「楠木博士、この機体が……」
「そう、これが、これが我が最高結作、Tkー11ネメスィ、その先行試作型だ」
誇らしげに、博士が頷いて、自慢気に語り始める。
「我が国で、我が国で二番目のフォトン動力搭載機にして、正式採用されれば、三番目の純国産量産型AMWとなる。その実現の、実現のためにも、君達の力を貸してくれ」
三人の方へ振り返った博士が、また狂気的な笑みを浮かべた。
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