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第二十六話「上官二人と休暇について」
プロとアマチュアの差
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プレイ用の記録カードの作り方を、何故か三人組が懇切丁寧に説明していた。それを聞いている安久と宇佐美の後ろで、比乃は自分の出番は無いのかとごねる志度と心視をなんとか宥めた。なんとか納得した二人を置いて、大きい球体型のゲーム筐体の一つへと乗り込む。
相変わらず、実機を簡易的ながらも良く再現したコクピットの中、いつもの様に備え付けの消毒剤をヘッドギアに吹き付けて、比乃はそれを装着して座席に腰掛ける。
このゲーム、“AMW”は、複数人での対戦にも対応している。今回は、三対三のチーム戦が選択された。機体選択画面に移り、迷うことなくTkー7を選択する。他二人も、目当ての機体を探してから、比乃と同じくTkー7を選択した。
同じチームであれば、ヘッドギアに内蔵されたインカムマイクで通信が可能だ。比乃は早速インカムの電源を入れて、二人への通話を試みる。
「こちらchild1、準備完了。チュートリアルは済んだ?」
『はいはーい、Teacher2、準備完了の感度良好よー。しっかし良くできてるわねぇこれ』
『Teacher1準備……完了で良いのか、この手の物はよくわからんのだが……』
「僕は前にやったことあるけど、操作感覚はTkー7に近いよ。ただ、受信値が六十前後で固定されてるって言えば分かり易いかな。操縦の半分はスティックとレバーでやるあの感じ」
『なるほど、大体解った。要は演習機と一緒ということだな』
比乃の短い説明だけで、安久は何となく操作感覚のイメージがついたらしい。宇佐美も同じようで『演習機なら今でもたまに乗ってるからね』と余裕たっぷりの口調で言った。
「これはゲームだから、あんまり実機とごっちゃにすると痛い目見るかもよ、ヒットポイントとか、無限の弾数とか、そういう要素はリアルにはないでしょ」
如何にこのゲームがリアルに作られていても、所詮は娯楽のための道具である。そのためにバランス調整などという名目で、リアリティが犠牲になることもあるのだ。その辺りについて釘を刺すように比乃が言うと、二人は『確かに』『それもそうね』とあっさり理解して頷いた。
「まぁ良くできたシミュレータ程度に思っておくのが一番しっくり来ると思うよ」
言ってる間に、ランダムでステージが選択され、森林地帯が選ばれる。俯瞰で示されたMAPに、それぞれの初期配置地点が記され、右下にゲーム開始までのカウントダウンが表示される。
「それで、作戦とかはある?」
『勿論、正面から叩き潰してやるだけよ!』
『相手は所詮素人、作戦など立てるまでもないだろう。個人技能で十分対応可能な範囲のはずだ』
「……まぁ、それもそうか」
不慣れなゲームだと言うのに、余りにも自信たっぷりな二人だった。しかし、比乃は不安を覚えることはなかった。実際のところ、この二人の技量というのは、多少のハンデなど物ともしないほどに凄まじいのだ。そして何より、このゲームのリアルさ、つまり実機との差異の少なさも、比乃自身がよく知っていた。
安久と宇佐美が実力を発揮するには、十分な再現度はある。
「それじゃあ、とりあえず一人一機担当ってことで」
比乃の提案に、二人から了解という返事が返って来たのと同時に、カウントダウンが終わり、ゲームがスタートした。
「ちぇ、俺もやりたかったなぁ」
「……でも、あの二人がどう戦うのか、興味ある」
周囲にいるギャラリーと共に、壁にはめ込まれた大型液晶スクリーンを見ていた志度と心視は、そんなことを呟いていた。
このゲームは、外部からの観戦手段として、大型のスクリーンにプレイ画面がリアルタイムの俯瞰視点で映し出されるのだ。
二人の周りにいるギャラリーも、このゲームセンターの強豪と、それに噛み付いた初心者の対戦に興味津々らしく、先程よりも輪にかけて結構な人集りになっていた。
「あの初心者連中、玄人向けの機体を迷わず選んだな……実はやり込んでるんじゃねぇのか?」
「でもカードの作り方も知らない様子だったぜ? なんとなくで選んだだけだろ」
「それよりオタク連合も初心者相手も容赦ないよなぁ、シュワルツコフにペーチルにレオとか、初心者相手に出す機体じゃねーだろ」
“オタク連合”とあだ名された三人組が選んだ機体は、アメリカのシュワルツコフ、ロシアのペーチル、ドイツのレオ。どれも装甲が分厚く、射程距離が長い。俗に言う“強機体”と呼ばれる物だった。初心者が相手でも、三人組には一切の容赦をするつもりはないらしい。
沸き立つギャラリーの前、液晶画面の中でゲーム開始のカウントが終わり、ゲームがスタートした。同時に、三機のTkー7が前方へ向けて駆け出す。対して、機種も国もバラバラな三機は、固まった陣形でゆっくりと動き出す。
そして、米露独の機体は、森林地帯の切れ目、丘の辺りに来ると、そこから撃ち下ろすように、Tkー7三機に対して斉射を始めた。事前にゲームを知り尽くしているということは、そのMAPのどこで戦えば有利に立ち回れるかも熟知しているということである。
特に、その丘は、篭って戦うには適している地形としてゲーマー間では有名だった。その大人気ない戦法にギャラリーの一部からクレームの声が上がった。
だが直に、その声は驚愕の声と歓声に変わった。
三機のTkー7はその丘目掛けて、攻撃を左右ジグザグに動きながら避けつつ、真正面から突撃を敢行しているのだ。
普通であれば、その場所に籠られた時点で、正面からの攻略を諦めて迂回し、脇から攻めるなどするのが、このMAPのセオリーである。だが、三機のTk-7はそれを完全に無視して、正面から攻撃を避けつつ接近するなど、これまでやって成功したプレイヤーはいない。
弾丸を紙一重で避け、弾幕を掻い潜り、ミサイルを手持ちの短筒で叩き落とす。その常軌を逸した操縦技能に、ギャラリーは色めき立つ。画面を見ていた志度と心視が「良いなぁ」「楽しそう……」と羨ましそうに画面の中のTkー7を見る。
そうしている間にも、Tkー7三機が、オタク連合とのクロスレンジに入った、慌てて近接武器を取り出した重鈍な三機に、すでに高振動ナイフを振り抜いていた俊敏な三機が襲いかかった。そこから先が一方的な展開であったことは、あえて言うまでもないだろう。
三分程して、ゲーム筐体から出てきた宇佐美が、ギャラリーに向けてブイサインをした。
「楽勝!」
そう言って笑顔を見せた宇佐美に、ゲームセンターの厄介者を実力で叩き伏せて見せたことを賞賛する、熱いエールと拍手が送られたのだった。
相変わらず、実機を簡易的ながらも良く再現したコクピットの中、いつもの様に備え付けの消毒剤をヘッドギアに吹き付けて、比乃はそれを装着して座席に腰掛ける。
このゲーム、“AMW”は、複数人での対戦にも対応している。今回は、三対三のチーム戦が選択された。機体選択画面に移り、迷うことなくTkー7を選択する。他二人も、目当ての機体を探してから、比乃と同じくTkー7を選択した。
同じチームであれば、ヘッドギアに内蔵されたインカムマイクで通信が可能だ。比乃は早速インカムの電源を入れて、二人への通話を試みる。
「こちらchild1、準備完了。チュートリアルは済んだ?」
『はいはーい、Teacher2、準備完了の感度良好よー。しっかし良くできてるわねぇこれ』
『Teacher1準備……完了で良いのか、この手の物はよくわからんのだが……』
「僕は前にやったことあるけど、操作感覚はTkー7に近いよ。ただ、受信値が六十前後で固定されてるって言えば分かり易いかな。操縦の半分はスティックとレバーでやるあの感じ」
『なるほど、大体解った。要は演習機と一緒ということだな』
比乃の短い説明だけで、安久は何となく操作感覚のイメージがついたらしい。宇佐美も同じようで『演習機なら今でもたまに乗ってるからね』と余裕たっぷりの口調で言った。
「これはゲームだから、あんまり実機とごっちゃにすると痛い目見るかもよ、ヒットポイントとか、無限の弾数とか、そういう要素はリアルにはないでしょ」
如何にこのゲームがリアルに作られていても、所詮は娯楽のための道具である。そのためにバランス調整などという名目で、リアリティが犠牲になることもあるのだ。その辺りについて釘を刺すように比乃が言うと、二人は『確かに』『それもそうね』とあっさり理解して頷いた。
「まぁ良くできたシミュレータ程度に思っておくのが一番しっくり来ると思うよ」
言ってる間に、ランダムでステージが選択され、森林地帯が選ばれる。俯瞰で示されたMAPに、それぞれの初期配置地点が記され、右下にゲーム開始までのカウントダウンが表示される。
「それで、作戦とかはある?」
『勿論、正面から叩き潰してやるだけよ!』
『相手は所詮素人、作戦など立てるまでもないだろう。個人技能で十分対応可能な範囲のはずだ』
「……まぁ、それもそうか」
不慣れなゲームだと言うのに、余りにも自信たっぷりな二人だった。しかし、比乃は不安を覚えることはなかった。実際のところ、この二人の技量というのは、多少のハンデなど物ともしないほどに凄まじいのだ。そして何より、このゲームのリアルさ、つまり実機との差異の少なさも、比乃自身がよく知っていた。
安久と宇佐美が実力を発揮するには、十分な再現度はある。
「それじゃあ、とりあえず一人一機担当ってことで」
比乃の提案に、二人から了解という返事が返って来たのと同時に、カウントダウンが終わり、ゲームがスタートした。
「ちぇ、俺もやりたかったなぁ」
「……でも、あの二人がどう戦うのか、興味ある」
周囲にいるギャラリーと共に、壁にはめ込まれた大型液晶スクリーンを見ていた志度と心視は、そんなことを呟いていた。
このゲームは、外部からの観戦手段として、大型のスクリーンにプレイ画面がリアルタイムの俯瞰視点で映し出されるのだ。
二人の周りにいるギャラリーも、このゲームセンターの強豪と、それに噛み付いた初心者の対戦に興味津々らしく、先程よりも輪にかけて結構な人集りになっていた。
「あの初心者連中、玄人向けの機体を迷わず選んだな……実はやり込んでるんじゃねぇのか?」
「でもカードの作り方も知らない様子だったぜ? なんとなくで選んだだけだろ」
「それよりオタク連合も初心者相手も容赦ないよなぁ、シュワルツコフにペーチルにレオとか、初心者相手に出す機体じゃねーだろ」
“オタク連合”とあだ名された三人組が選んだ機体は、アメリカのシュワルツコフ、ロシアのペーチル、ドイツのレオ。どれも装甲が分厚く、射程距離が長い。俗に言う“強機体”と呼ばれる物だった。初心者が相手でも、三人組には一切の容赦をするつもりはないらしい。
沸き立つギャラリーの前、液晶画面の中でゲーム開始のカウントが終わり、ゲームがスタートした。同時に、三機のTkー7が前方へ向けて駆け出す。対して、機種も国もバラバラな三機は、固まった陣形でゆっくりと動き出す。
そして、米露独の機体は、森林地帯の切れ目、丘の辺りに来ると、そこから撃ち下ろすように、Tkー7三機に対して斉射を始めた。事前にゲームを知り尽くしているということは、そのMAPのどこで戦えば有利に立ち回れるかも熟知しているということである。
特に、その丘は、篭って戦うには適している地形としてゲーマー間では有名だった。その大人気ない戦法にギャラリーの一部からクレームの声が上がった。
だが直に、その声は驚愕の声と歓声に変わった。
三機のTkー7はその丘目掛けて、攻撃を左右ジグザグに動きながら避けつつ、真正面から突撃を敢行しているのだ。
普通であれば、その場所に籠られた時点で、正面からの攻略を諦めて迂回し、脇から攻めるなどするのが、このMAPのセオリーである。だが、三機のTk-7はそれを完全に無視して、正面から攻撃を避けつつ接近するなど、これまでやって成功したプレイヤーはいない。
弾丸を紙一重で避け、弾幕を掻い潜り、ミサイルを手持ちの短筒で叩き落とす。その常軌を逸した操縦技能に、ギャラリーは色めき立つ。画面を見ていた志度と心視が「良いなぁ」「楽しそう……」と羨ましそうに画面の中のTkー7を見る。
そうしている間にも、Tkー7三機が、オタク連合とのクロスレンジに入った、慌てて近接武器を取り出した重鈍な三機に、すでに高振動ナイフを振り抜いていた俊敏な三機が襲いかかった。そこから先が一方的な展開であったことは、あえて言うまでもないだろう。
三分程して、ゲーム筐体から出てきた宇佐美が、ギャラリーに向けてブイサインをした。
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