自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

ハの字

文字の大きさ
189 / 344
第二十六話「上官二人と休暇について」

食事と世間話

しおりを挟む
 それから、がっくりと肩を落として筐体から出てきた三人組に「これからはマナーを守って人に迷惑かけないこと、良いわね!」と宇佐美が沙汰を下して、特に揉めることもなく一件落着した。

 強機体を使い、強ポジションに篭ったというのに、正面から突破されたことが余程ショックだったらしく、三人組は不平を漏らすことなくそれを了承して、とぼとぼとゲームコーナーから去って行った。

「ふぅ、悪は滅びたわね……!」

「いや、悪って程の相手でもなかったと思うんですけど」

 満足気に腰に手をやって胸を張る宇佐美に、比乃が突っ込みを入れていると、周囲にいたギャラリーがわっと比乃ら三人を取り囲んだ。
 周囲の外野からの「あんたら何者だ?」「実はランカーだろ?」「サイン、サインくれ!」というざわめきを無視して、悪目立ちが過ぎたと、一向はギャラリーから逃げるように階下に逃げることになった。

 その後は、二階のメダルゲームコーナーで各自で自由行動を取り、更に一時間ほど時間を潰した。心視と志度が、持ち前の超人的な動体視力を活かしてスロットで無双したり、宇佐美と安久が競馬を模したゲームにどハマりして比乃に諌められたりしたが、割愛させていただく。

 そして、ゲームセンターの前に再集合した五人は、宇佐美先導の元、近くにあったファミレスで昼食を取ることになった。割と空いている中、禁煙席のボックス席に陣取った五人は、メニューを手に取って吟味し始める。

「今日は私と剛の奢りだから、好きなの頼んでいいわよ!」

 そう景気良く言う宇佐美に、比乃と安久が「それはちょっと辞めた方が……」と言ったが、時すでに遅し、心視と志度が即座に店員を呼び。「ご注文をどうぞ」と聞かれれば、

「メニューのこれとこれとこれ、あとこれと……」

「私も、同じの……」

 と、メニューに書かれている料理を片っ端から注文し始めた。この二人、普段は抑えているが、結構な大食いなのである。比乃と安久が「あーあ」と顔を抑えるが、宇佐美は余裕の笑みを浮かべている。

「大丈夫よ、経費で落とすから」

「いや、それはいかんだろ」

 安久が生真面目に言うと、宇佐美は「冗談よ冗談」とけらけら笑う。

「まぁ経費で落ちなくたって、ここ数ヶ月給料使う暇無かったし、特別手当も出てるから余裕があるのよ……いや、ほんと、自衛隊ってここまでブラックだったかしら……ずっと詰所に缶詰かAMW乗ってるかのどちらかって状態だったのよ……」

「それは……ご愁傷様です」

 その笑いがどこか乾いた物になったのを見て、比乃は「長期出張しててよかった」と内心で思った。言ったら摑みかかられそうなので、口には出さなかった。

 しばらく待つと、注文された物が続々と机に並び、志度と心視が一心不乱にそれを食べ始める。他三人も、それぞれ適量の料理に手をつけ始めた。そして半分ほど食べ終えた所で、安久がふと話し始める。

「そういえば比乃、つい先週、米軍がハワイのテロ組織に対して一転攻勢を仕掛けたのは知っているか」

 聞かれた比乃は、先端に肉を刺したフォークを口元に持っていくのを止めて、記憶を辿るように首を傾げる。
 数秒して、数日前にテレビのニュースで少しだけ、それに関連する内容が流れていたのを思い出した。扱いはかなり小さく、ただ「米軍がテロリストに対して攻撃を行った」程度しか報道されていなかったので、その顛末がどうなったかは知らなかった。その規模がかなり大きな物だったことだけは、予想がついた。

 数ヶ月前にミッドウェイで自衛隊が大暴れしたことが多少なりともテロ組織の戦力に影響を出し、そこを米軍が突いた形になったその作戦は、

「ああ、あの上陸作戦でしょ?  ニュースだとちょっとしか流れなかったから結果は知らないけど、どうなったの?」

「うむ……結果は芳しく無い」

「どうにか橋頭堡を確保できそうって所で、AMWの性能差で押し負けて後退って話よ。航空戦は互角だったみたいだけど」

 言い淀んだ安久に代わって、宇佐美がフォークに巻いたパスタをくるくる回しながら答える。そう、米軍による何度目かのハワイ奪還作戦は、今回も失敗に終わっていたのだ。それを聞いた比乃は「うへぇ」と嫌そうな顔をした。

 AMWの性能差もそうだが、あの米空軍と米海軍を相手にして、航空戦力が互角という点が、最も強くテロ組織の強大さを表していた。航空戦力の保有数世界一位と同格と言えば、その凄まじさが良く伝わるだろうか。

 もしも、その戦力が日本に向けられたら、東京など文字通り火の海になっていただろう。もしかしたら、アメリカの次は日本なのかもしれない、そう考えるとぞっとする。

「米軍と航空戦力で互角って時点で、テロリストの規模がとんでもないってことがよくわかるね。どういう組織力してんだか」

「下手な小国や、下手をすると空自よりも高い戦力を有しているということだからな……それで、数ヶ月後に先行量産したXM6を部隊に加えて再度攻撃を行うらしいんだが、これに日野部一佐が関与しているらしい」

「部隊長が?  それまたどうして」

 ここに来て突然部隊長の名前が出てきたことに、比乃は怪訝そうに首を傾げた。
 あの人脈パイプのオバケのことだから、また裏で何かしら動いているのだろうが、アメリカに対して何をしているというのだろうか。というより、何に関わっているというのか、不可解極まりない。

「詳しいことはわかんないけどねー、人脈使ってどうのこうの裏工作するんじゃない?  そうでもなければ」

 宇佐美がパスタを巻いたフォークの先端で、席に着いている自分達をぐるりと指し示して、パクリとそれを口に運んだ。

「……自衛隊の派遣とか?  はは、無い無い、そんな余裕、自衛隊になんてないのに」

 宇佐美が言わんとしたことを自分で言って笑った比乃に、安久も同意するように頷く。

「そうだな、沖縄だけでも手一杯だと言うのに、他国に増援を出す余裕など、我々にはないからな」

「対岸の火事より自分家の火事よねぇ」

 宇佐美がそう言って締めると、三人揃って「ははは」と笑い、食事を再開した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

処理中です...