自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

ハの字

文字の大きさ
249 / 344
第三十五話「極寒の地での任務について」

概要説明

しおりを挟む
 外の寒さに比べて、暖房が効いているプレハブ内は暖かかった。
 三人は外衣を脱いで前に抱えると、アバルキンに促されて奥側の席に座った。それに続いて入り口側にロシア軍の三人が座る。

 そして六人の前に立ったアバルキンが「さて」と一呼吸置いて、

「今回は少々特殊な環境と状況とはなっているが、ロシアと日本、この二カ国で合同演習が行えることを喜ばしく思う」

 そう前置きをしてから、少佐は説明を始めた。

「事前に知らされているとは思うが、今回の軍事演習は二日間に渡って行われる。まず本日だが、自衛隊と我々との模擬戦闘を実施する。これは互いの技量について擦り合わせる為のものだ。両者、存分に力を発揮してもらいたい」

 少佐がそう言った所で、エリツィナが自衛隊三人を横目で睨む。彼女からの明らかな敵意の眼差しに気づいたのは比乃だけだったが、そんな目で見られる覚えが本人にはないので、比乃は適当に軽く頭を下げて置いた……視線が更にきつくなった気がした。

 アバルキンがごほんと態とらしく咳をすると、中尉はふいと視線を前に戻した。

「そして明日だが、日比野軍曹らから直接、対OFM戦闘についてここでレクチャーして貰い、その後、最後の締め括りとして、実機を使って対OFM戦を日露合同で行った場合を想定した演習を行う。これが大体のスケジュールだ」

 ここまで何か質問は、と少佐が六人を一瞥すると、比乃が挙手して立ち上がった。

「最後に行うと言う日露合同での作戦を想定した訓練ですが、それはつまり、今後自分達とそちらで組んでOFM撃退を行う可能性もあるということでしょうか?」

「それは多分に政治的問題が関わるので、私からは断言できないが、今回の演習内容に関しては上からの指示であるため、それもあり得ると考えてもよいかもしれないな」

 上からの指示、となると、ロシアの上層部は日本と協力してでもOFMの対処を行いたいということなのだろうか。
 そこまでこの国が切羽詰まっているとは考えていなかったが、今回の演習もロシア側から頼まれたと言うことであるし、自分が思っているよりもロシアの状況は逼迫しているのかもしれない。

 比乃は短時間でそう分析して「わかりました」と席に座った。そのタイミングで、外から大型車両のエンジン音が複数聴こえてきた。全員がそちらを見やると、例の機材を積んだトラックが広場に入ってきた所だった。

「ちょうどそちらの機体も到着したようだな。それでは、模擬戦の細かい打ち合わせをする」

 それから、壁に広げられた地図を使って、模擬戦を行う地域と範囲、お互いの初期位置などについて詳しく打ち合わせが行われた。模擬戦に参加する全員がそれらを確認した所で、ミーティングは解散となった。

 後は機体のセッティングが終わるまで待機となる。それまでの待ち時間、比乃ら自衛隊組は整備スタッフの所に集まっていた。三人を出迎えたのは、数ヶ月ぶりに顔を見る整備員、森一等陸曹であった。

「よう比乃に志度に心視、久しぶりだね」

「森さんもお久しぶりです」

「森のあんちゃん!  元気してたか!」

「森一曹……お久しぶり……」

 三者三様の反応に、森は苦笑しつつ、

「元気だよ元気、そっちこそ学校とかどうだい?」

 森は近づいて来た志度の頭をわしゃわしゃ撫でながら、笑みを浮かべて聞く。比乃が「学業も滞り無くやれてますよ」と胸を張って言うと「そりゃ良かった」と志度の頭から手を離した。

「さて、感動の再会は一先ず置いといて、装備の説明だね」

 真面目な顔になった森が、腰に巻いていたバックルから大型の端末を取り出して、画面に触れて操作すると、今回のTkー7改二の武装一覧が映し出された。それを三人に見えるように持ち替える。

 それを見た比乃が「あれ?」と怪訝そうな声を上げた。志度と心視も同様に、疑問符を作っている。

「森さん、まさかですけど、改二の装備……」

「そう、そのまさか。Tkー7更なる改造案に変わってるよ。志度と心視の機体もこれになってるから、二人もよく見といてね」

 三人の前に表示されたTkー7改二の立体モデルの隣にある装備欄には、ある意味で見慣れた、しかし最近はほとんど目にしなかった装備が追加されていた。

「今更スラッシャー付け直すんですね……」

 Tkー7改二の腕部に外付けされた武装、それは多目的アンカー「スラッシャー」であった。旧Tkー7や、Tkー7改に取り付けられていた。市街地での戦闘において高い汎用性を発揮する武装である。志度と心視も「おお、懐かしい」と声を漏らす。

「使い勝手良いから俺は好きだけどな」

「……先祖、帰り?」

「まぁ三人が戸惑うのもわかるけどね、技本の方から正規軍相手に新装備のデータを得るチャンスだからって押し付けられちゃってね」

「……でも森さん、ここ、市街地じゃなくて森林地帯ですよ?」

 そう、スラッシャーは建造物や大型の構造物などを用いて、三次元での立体起動を行うための装備である。今、比乃達がいるような山中で使うには、ちょっとコツがいるし、万全にその効果を発揮できない。
 Tkー7の整備士である森はそれを承知していないはずもなく、彼は頰をぽりぽり気不味そうに掻いた。

「いやね、技本もそれはわかってるはずなんだけど、“それでもあの三人なら使いこなせるはずだ”って豪語されちゃって……使ってもらえるよね?」

 どうやら、技本から過大評価を受けているらしい。比乃は困り顔になりつつも「まぁ、わかりました」と了承した。

「命令とあらば、どうにか使ってみせます。データが必要ってことは、それなりに活用しないといけないんでしょう? 完全な平地でもなければ、やりようはありますから」

「流石は比乃、物分かりが良い!」

 嬉しそうな森に諦め気味に言った比乃は「ただし」と付け加える。

「スラッシャーを積極的に使うのは僕だけでいいですよね、データ取るならそれでもいいはずです」

「それはいいけど、なして?」

 森と、隣の志度と心視が首を傾げた。比乃は説明する。

「この中で、一番スラッシャーを使うのに慣れてるのは僕です。志度はこれが無くても近接戦闘ができますし、心視はポジション的にあんまり使用経験がありません。そんな二人が変にスラッシャーをい使って模擬戦で足枷になるくらいなら、慣れてる僕が使えば良い。それだけの話です」

「なるほど、一理ある」

 説明を聞いて頷く森だったが、志度は「えー?」と不満そうな声をあげた。

「俺だって使えるぞ、そんな負担にならないって!」

「それじゃあ聞くけど、これ使った三次元機動テスト、志度と僕で評価の差はどれくらいあった?」

「うっ……それは……」

 思わず呻いた志度の名誉のために詳細は省くが、この二人でのワイヤーアンカーの扱い方の評定には、二段階ほど差があった。その上、比乃はスラスターを用いた三次元機動のテストも行なっているのである。これに関してだけは、その技量差は一目瞭然であった。

「というわけで、二人は無理せずいつも通り戦ってね」

「ちぇ、わかったよ」

「了解……」

「うん、流石はまとめ役。それじゃあそういう風にセッティングしとくから、もう少し待っててちょうだいな」

 そう言うと、森は三人から離れて機体の入ったコンテナの前で集合していた整備スタッフ達にあれこれ指示を出し始めた。

 指示を受けたスタッフ達がそれぞれの担当部位に移動していくのを見送って、比乃はプレハブの隣、おそらくは相手側のペーチルが収まっているであろう、大型コンテナの方を見て呟く。

「さて、相手はどんな装備で来たのかな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

処理中です...