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悪役令嬢はおめかししちゃいけないとでも?
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そんなこんなで、話は現在に戻る。
クインドルガ暦824年、3月--。
オリヴィア・グランドンとその従妹アメリア・グランドン。通称グランドン姉妹は、年ごとの娘に成長していた。
リヴィと呼ばれているオリヴィアは、18歳。メルと呼ばているアメリアは、17歳。
どちらも王立学院で順調--というには語弊のありすぎる学生生活を送り、ゲーム内の悪役令嬢としての進路を華麗に踏み外しつつ人生を楽しんでいた。
ケバケバお水顔で、幼児期による虐待による精神障害から、金と男と嫉妬に狂って世界中の地雷を踏みまくり、ギロチン送りになるはずのリヴィは、立派に農民として就農候補生となっていた。
「赤毛悪役枠」「としては」顔が可愛い以外に何の取り柄もないはずの、お取り巻き(血縁)のメルの方は、ステータスageのプロフェッショナルとなり、朝は三時半に起き出して妖精の与えた悪役令嬢養成ギプスを着用しながら日々目指していた。
目指す先がどこなのかというと、要は、悪役令嬢バッドエンドを回避出来ればなんでもいいんだが--。
既にメルは、ステータスageそれ自体が、快感になるレベルであるらしい。
王立学院は概ね、日本の学校制度と大差はない。
唯一違うのは、進学・進級の時期が、洋風で、秋口にあるということである。
そのため、春である三月が、一番、休みが長く、学生に参加出来るようなイベントが多かった。
その一つが、三月の第一日曜日にある<慈母の種まきの祝祭>、通称マドンナ・シーズである。クインドルガの古語では、いかにも厳めしくもくどい言葉があるのだが、若者や学生の間では、マドンナ・シーズで通じていた。
一月に前夜祭とも言える予祝があり、その頃から大聖堂はマドンナ・シーズの準備に取りかかる。
それぐらい大規模な春の祭である。クインドルガの国民のほとんどは何らかの形で参加するし、王立学院のある首都クェンティンでも、最も有名な祝祭の一つであった。
そうは言っても、クインドルガは本来、農耕が盛んな国であるため、季節に応じて、それぞれ一回は、爆発的なダンスやカーニバルも含む祭があった。それぞれ独特の個性があるのだが、中には本来のマリーベル教からはズレた意味合いが強いものもある。恐らく、農耕が始まった頃合いまでさかのぼるような、民間の儀礼だろうとの事である。
いずれにせよ、そうした祭事と政治、宗教が密接にくっついていることはどこの国でも同じ。
公爵家がそういう祭を放置することなどありえない訳だった。
しかし、公爵家夫婦が、面倒くさがった。父親の方は、何やら領地の方でもめ事を抱えているらしく、そっちの方の手が放せないと言い出した。母親の方は、そのサポートの他に、そろそろ足が弱くなってきた姑の方に呼びつけられて、心配だと言い出した。
(ああ~……、ママ達、宗教イベント好きじゃないんだよね……。地位が高いと、そういうことのいざこざに一回巻き込まれると、本当にあっちもこっちも三面六臂の大活躍したって追いつかないって言っていたもんな~……)
そうは思ったものの、リヴィだって、自分のような粗忽な娘が、うっかりそういうイベントに公爵家を代表して首突っ込んで、属性を存分に発揮した場合どうなるかと、自分で思った。
「パパ、ママ、私も、畑の種まきしなきゃいけないんで、今度のマドンナ・シーズはパスしたいんです」
「お前は何を言っているのか」
しかし、公爵であるジェイムズは一刀両断してくれた。
「畑に種まきしたいなら、さっさとマドンナ・シーズに行ってきなさい。慈母マリーベルに敬虔な祈りを捧げて、五穀豊穣を祈るのが筋だろう」
「へっ」
リヴィは狐に鼻をつままれたような顔をした。基本的に、宗教イベントに疎い父親なので、リヴィにも行かなくていいと言ってくれるもんだと決めつけていたのである。
「そうよ、リヴィ。マリーベル様の母なる豊饒の力で、お前の畑に言祝ぎをもらってきなさい。そうすれば、去年は失敗した野菜も、今年は立派に実るかもしれないわ」
「えっ、ちょっ、あのっ」
基本的に、畑に反対している母親の方までそんな事を言い出した。
母のエルノラの方は、ジェイムズよりもずっと、リヴィの農民運動にいい顔をしていなかったのに、こういうときだけそういう事を言う。
「二枚舌! ママったら、自分が面倒臭いもんだから、私に押しつけているんでしょ!」
「だって、ママ、リヴィの畑の手伝いしたくないんだもの。勉強の手伝いや、花嫁修業の手伝いだったら、いくらでもするけれど。畑とか、それぐらいなら、女神様に手伝ってもらってよ」
「性格悪ーっ!!」
「うーん。そこは政治が悪いって言ってくれないかしら。公爵家の娘が畑をやるのはけしからんというのは、政治家が作った風潮みたいなものだから、そのへんは政治とか社会的なムードにですね、モノを申してくれると、ママとしては、気楽かなあ」
リヴィはじろりと積極的に政治に関わってきているジェイムズの方を睨んだが、ジェイムズは、やはり日本のサラリーマンのような対応をした。
要するに、新聞を熱心に読んで聞こえないふりをした。
(どこも変わらないんだな……)
おい、年頃の娘の花嫁修業の話題だぞ、それでいいのか、とは思ったが、リヴィも積極的に花嫁がどうとかそういう話を親としたい訳ではなかったので、そこは黙って涙を飲んだ。
(農園カフェの事しか、頭にないような娘に、こんなどでかい宗教イベント押しつけて、何が起こっても私、”ジャガイモの苗が気になるので……”で笑って誤魔化すし、笑って誤魔化せないならそのまま逃げるからね!)
心の中でそう誓い、リヴィはメルと一緒に、マドンナ・シーズにグランドン姉妹として参加することになった。
当然、嫡男のブライアンも一緒である。無論、いくら宗教にいい顔をしていない公爵夫婦とはいえ、頭の中まで二葉生やしていてもおかしくないようなリヴィを一人では出発させられないと思ったのだろう。
ブライアンの方は、何事においても無難な嫡男であったため、任せられると踏んだのだ。それに、ステータスだけは金ピカのメルも一緒なんだし。
そういう訳で、マドンナ・シーズの前日から、メルは公爵家に泊まり込み、ドレス選びに精を出す事となった。
「多分さあ、このクインドルガって国、乙女ゲーム風に清潔に整えられているけれど、近代イギリスとか参考にしているのよね」
メルが日本の小説家志望、山口彩芽の表情になりながらそう言って、赤いドレスを一枚めくりあげた。
「ちょっと、それは派手過ぎるんじゃないの?」
「……だよねー……。だけど、あんまり渋すぎるデザインのもどうかと思うしさあ」
彩芽は、取材をするときのような厳しい目つきになりながら、バックスタイルのドレスを睨んだ。
スカートの膨らみが腰の後ろにてんこもりになっているからバックスタイルと言うのだが、とにかく飾りリボンもドレープも、襞も、やり過ぎなんじゃないかというぐらい、盛りつけられているのである。確かに見た目は少女漫画のお姫様のようになれるだろう。
更にその上にオーバースカートをつけるのだから、装飾性としては申し分がない。
そして、悪名高いコルセットで体を厳しく縛り上げ、更に細く見せるかのようにぴったりした身頃をつけるのだ。
それに、花やレースをつけた帽子と、実用的とは言いがたい華やかなアンブレラを持って完成である。
……というように、農民リヴィは思ったのだった。
しかし、アメリアの方は全く逆の感想を持ったようで、目をキラキラを通り越してギラギラさせながらドレスを次々持ち上げてはおろし、持ち上げてはおろし、という作業に熱中し始めた。
何しろ、悪役令嬢マニア。
こういう時にどんなドレスを着こなして、どんなふうに自分を演出するのかという事にかけては、小説家志望としてもうかうかとしてはいられない必要案件なのだろう。
乙女キラキラというよりも、頬を紅潮させ鼻息荒く、口の中でぶつぶつ言いながら、ひらひらドレスを片っ端からチェックしていく。
(頭の中ではどんな令嬢とどんな展開をする気でいるんだろ……)
そこで間違っても異性がからんで来ないのは、原作オリヴィアが、男で間違った運命に叩き落ちていったためであろうか……。
どっちにしろ、農民としては、動きやすいドレスに越した事はないわけだった。そもそもが、リヴィの本体である菜月の方も、自分のカフェの夢をかなえる事に夢中だったため、華麗な装飾にはそんなに興味がないのである。
そのため、菜月はほとんど何も考えずに、テーラーメイドコスチュームを選んだ。
それも紳士服同然のダークカラーを選択し、上に着こなすと、下もそのまま乗馬ズボンを履こうとして、メルにその手を叩かれた。
「あんた、どこに、何しに行く気なのよ!!」
「え、だって。コルセット着るの、苦しいし、やだよ」
「私だって背筋伸ばしてコルセットつけるのに、なんであんたはつけないわけ!」
「メルはつけたいならつければいいじゃん。私はやなんだもの」
「私、コルセットもつけないような女と一緒に、春ミサにいきたくないんですけど!!」
「え~……」
リヴィはあからさまに嫌そうな顔をした。
「私がやるからには、あんたもやれよ!!」
「嫌だっつーの。私達は別人格でしょ!!」
「お前ねー……!!」
「大体、原作のオリヴィアが、男狂いで死んだんなら、私が地位の高そうな男がどん引きするような格好した方がいいんじゃなの?」
「それじゃ、世間的評価の方、肝心のステータス上げの方に支障が出てくるのよ! そこらへんのバランス、分からない!?」
リヴィは何とも妙な顔つきをした。
分かる筈がない。
何しろ、スマホのアプリで無料の落ちゲーをたまにやる程度の人間だ。乙女ゲームのセオリーやバランスの取り方なんて、何にも分からない。
「分かった、こうしよう」
そこでメルが折衷案を採りだした。
「あ~の~ね~……、確か、テーラーメイドにも、可愛い系のデザインがあったんだよね……」
メルは公爵家のウォーキングクロゼットの中を片っ端から漁り、該当のデザインを取り出した。
「ハイウエストだからツンデレっぽく見えるけども、こっちのモスリンに着替えてみ。体のラインはまろやかに見えるタイプ」
「わりとふりふり系だね」
フリルもついた乗馬服なんてあっていいのか? と不思議に思いつつ、リヴィはそのジャケットは着けないタイプのテーラーメイドを着こなしてみた。
上半身の前身頃には淡い色合いのフリルが多重についている。
スカートの方は装飾は華美ではないが、少なくとも乗馬ズボンよりはマシであろう。
全体的にユニセックスな色合いでまとまったが、頭の帽子には羽根飾りもついており、華美過ぎず地味過ぎずという辺りに落ち着いた。
メルはリヴィがそうした服装を着けたのをよくよく観察してみた。
考えて見るに、顔がケバい美貌であるリヴィが、春ミサに、バックスタイル襞襞てんこもりのドレスで行くよりは、こうしたさっぱりした服装の方が受けがいいかもしれない。
コルセット絞めすぎでくびれ強調、ぼんっきゅっぼんっよりは、少なくとも色気過多ではないだろう。
「ふ~ん、いいわね……。私もそっち系でまとめちゃおうかなっ」
上機嫌になったメルは、ジャケットは着けないタイプの乗馬ドレスを自分でも探し始めた。
リヴィはほっとした。コルセットつけて、歩行すらも至難の業であろうドレスを着ながら長時間のミサを耐える自信がなかったのだ。かといって、服装一つでメルと角をたてるのも嫌だった。
失礼のない程度にラフで動きやすく、上品なドレスを身につけると、メルはそれだけで大変に可愛らしく見えた。顔が元々いいという事もあるが、令嬢としての行儀作法を身につけていて、姿勢も正しいため、持ち前のステータスがいきいきと輝いているように見える。
「いいじゃん。これでいこうよ!」
メルがこざっぱりとして綺麗な服を着ていると、リヴィだって嬉しい訳で、単純にもそう言ったのだった。
その頃のブライアンはというと、念入りに靴を選んでいた。黒以外の靴は紳士としては非常識と言われていた時代であったので、黒い靴をいくつも床に並べ、一つずつ手に取って、あれこれと頭の中で計算していた。
そういう場所で、誰がどこを見るかは大体見当がついている。油断も隙もあったものじゃないので、まずは靴から慎重に選んだ。最終的には前の皇太子、即ち現国王が好んで履いたために流行した、黒の編み上げブーツを履き、それに対してバランスを取りながら衣装や、ステッキなどの小物を取りそろえていった。
前日の準備はこれで終わった。
翌日、早朝からリヴィ達は衣装を取りそろえ、ミサに必要なテキストなどを鞄に持って、馬車(ブルーム)に乗り込んだ。箱形の四輪馬車である。これも、元は、現国王が、皇太子であった時代に、技術者に注文をつけて作らせたものであるらしい。
「結局さあ、王家がそういう事を仕切るんだよ。分かってるの?」
メルがメル語でコマゴマと説教をし始めたが、リヴィは次第に魚が死んだような目になって空を睨んでいた。頭の中では野菜サラダを作っていた。
「こら、寝るな!」
ブライアンが、苦笑しながら、リヴィの頭を軽く叩いたので、リヴィはすねてしまった。
それほど時間をかけずに、マリーベル大聖堂に到着した。
着いてすぐに、庭にフロリーの馬車(バルーシュ)があることに気がついた。
大聖堂の後見人はドラモンド王家であるため、名代としてフロリーが来ているのだろう。ひょっとして、別の馬車で国王も来ているかもしれない。
「この国は、ドラモンド王家が、魔道によって国を開いて栄えてきたけれど、元は農耕民族の国だからな。農耕の祭主である王家が、儀礼の総本家みたいなところもあるし……マリーベル教と密接に繋がっているんだよ」
ブライアンがざっとそういう事を説明し、リヴィは心地よく聞き流していた。
考えて見れば、クインドルガの主食は肉ではなく、芋類や麦類である。両親に五穀豊穣がどうとかと、説教されたのもそのためだった。
大聖堂の外壁には、リヴィにも一目でゴシック風と分かるガーゴイルが立ち並んでいた。割と悪魔的な光景であり、芸術家の想像力とは本当に無限で奔放なものだと、リヴィは大聖堂を訪れるたびに感心していた。
その外壁の周辺に、クェンティンの民たちが並び、正門の扉からはみでてしまっている。予想はしていたが、マドンナ・シーズのために大変な混み具合であった。
大聖堂の天井の高さは22m、全長は156m、二つの高い塔を備え、西がライエル塔、東がマリーベル塔と呼ばれている。巨大な石を積み重ねて作った建物には、天使のタペストリ、絵画、複雑な幾何学紋様などなどが、荘厳していた。
内部に入ると、闇を溶かしたような光が、ステンドグラスから差し込んで来た。
ステンドグラスは、天井や高窓、さらに窓という窓を覆っている。
その数は、恐らく千枚に及ぶのではと、リヴィは聞いた事があった。
人は随分と混んでいるが、ミサの開始まではだいぶ時間があるので、三人で聖堂のステンドグラスを見て回る事にした。
ステンドグラスの綴る物語は、テキストの読めない民にも分かるように、壮麗なのにわかりやすく、シンプルなのに深みのある描画ばかりだ。
(深みとか神学とか、そういうのを抜きにして考えれば、文盲で小難しい事のわからない臣民のために、作られた漫画とか絵本みたいなもんよね)
リヴィがぼそっとそう言った。
(しっ! そういうこと言わない! 真面目にやってる司祭さんたちに聞かれたらどうするの!!)
慌ててメルが叱りつけた。
これは、架空の宗教マリーベル教に伝わる神話や伝説の類であり、必ずしも、現実とは一致しない。
古代、ある金持ちの元に、双子の姉妹が生まれた。
姉の名前はアロ、妹の名前はハロと言った。
ちなみに、マリーベルの教えでは、腹の中で上の位置にいた、後から生まれて来た方を姉と呼ぶ。
両親は、二人の成人が近づくと、財産をそれぞれに分け与えた。古代のマリーベル教ではそれほど珍しい話でもなかった。
姉のアロは、そのまま親の家に留まり、家の中でも外でも、汗水を流して働き続けた。
妹のハロは、都でかなえたい夢があったため、財産を持って旅立ち、そのまま帰って来なかった。
姉のアロは両親を敬い、大切に仕え、懸命に努力を続けた。
一方、妹のハロは、都で夢が雲散霧消し、数々の辛酸をなめ、無一文になって、ぼろぼろになりながら親元に帰ってきた。
「母さん、水をいっぱいだけいただけますか?」
家の門の前まで来たハロはそうとだけ言った。それ以上を求める事もなかった。
両親は家から飛び出て来て双子の妹を抱き抱え、そのまま、下僕達に湯浴みをさせて綺麗な服に着替えさせるように言った。
そして、牛を一頭ほふり、神に祈りを捧げ、歓迎の宴をもよおした。
畑で働いていた姉は、その騒ぎを聞いて何事かと戻って来た。そして、都で放蕩の限りを尽くしたと聞いている妹が歓迎されているのを身、驚いた。
「父様、母様、これは一体何の仕打ちです! 私は、ここに留まり、身を尽くして父様と母様のために働きましたのに! 私のためには子羊一匹、与えてくれなかったあなたがたが!」
「アロよ。姉よ、お前は常に私とともにいた。ならば、私の財産は全てお前のものである。だが、お前の妹は死んで生き返ったも同然なのである。いなくなったと思って探していたのが、見つかったのだから、当然のことだろう」
敬虔と神秘の輝きを放つステンドグラスには、その悲しいが心温まる神話の場面の数々が描かれていた。
大人のしるしに、両親から財産を与えられた時の喜びに輝く姉妹。
畑で、朝な夕なに仕事に励むアロ。
都会で失敗を繰り返して泣き伏すハロ。
疲れ果てたハロが、初めて家に戻ってきた時、出迎えた母親の優しい瞳と抱擁。
父親がアロを教え諭し、そしてしっかりとハグする場面。
大人の男の何倍もあるようなステンドグラスは、七色の輝きに満ちて、神話の時代を伝えた。
「詳しくはないんだけどさ。古代の農耕って、女性が中心だったんだってね」
「うん。当時は、男の人は狩りや釣りに行くのが当たり前だったんでしょ? だから、こういう神話が出来るんだね」
二人はうんうんとうなずき合い、声をひそめて、時折、女同士らしい打ち解けた会話を行った。
やがて、ステンドグラスは、民間伝承のハロの物語に入って来た。
何しろ、読み書きが出来ない大衆の時代から伝わる神話である。中には民話、より庶民に身近な教えとしての異伝や口伝がたくさんあり、その中で、テキストと同様に愛されている「ハロ」である。
その場合は、ハロは、長者の一人娘である。跡継ぎであるにも関わらず、ハロはきかん気の子どもで、ある日突然、親に反発して飛び出してしまうのだ。
そんなハロであるから、世間では数々の失敗を繰り返し、無一文の上に、借金まで背負ってぼろぼろになって長者のところへ帰って来る。
長者は、ハロが帰って来る事を聞きつけて、大慌てで使いをやるが、使いが借金持ちのハロに冷たい事を言ったため、ハロは気絶して倒れてしまった。
それを聞いた長者は、ハロを、自分の家の雑用として雇い、「サラー」……「一人娘」という意味の呼び名を与えたのだった。
サラーはそのまま、十数年の間、物置小屋のような離れに住んで、朝から晩まで働き、借金も返した。
その頃合いを見て、長者は、サラーに自分の財産を分け与え、屋敷の支配人としての地位も与えた。
ところがそれでも、サラーは離れから出てこず、貧しい食事と人間関係で満足してしまった。
そこで長者は、隣近所の仲間も縁者も全て呼び、豪勢な祝いの席を設けて、初めてこう言った。
「このサラーは、私の失われた娘、ハロである。私を捨てて逃げ出した不出来な娘だが、今こうしてここにある。この子は私の娘、私はこの子の母である。そして私の財産は全てこの子に譲ろう」
それを聞いてハロは益々驚いて、母の慈愛に感動したのであった。
「この二つの物語って、結局、同じ事を説いていると思うんだけど……女神もライエル様も、決して、私達を見捨てない、見守っているよって事なのに、なんで、二つの物語に別れちゃったのかな」
リヴィはこちらのステンドグラスの物語を見ながら、メルに囁いた。
「そうだよね……言われてみれば、内容は同じのようで、随分違うわね」
リヴィは、屋敷の離れて孤独に眠るハロのステンドグラスを見上げながら、考えこんだ。
「……そりゃあさあ。私達がさ、18年なり17年なり、ほっつき歩いて、今から現代日本の実家に戻ったらさ……どうなるだろう」
「へ? 何?」
「死んだもんと思われていた娘が、いきなり、異世界行ってきましたっつって戻ったら、どうなるだろう」
「……」
メルは、リヴィの発想が例えようもないほど例えようもない事を知っているので、そこは黙った。
「いきなり受け入れられろっていうのは酷じゃない? だって、18年だよ。そしてさあ、ぬけぬけと歓迎パーティを始めちゃったら、隣近所だってビックリだし、親類縁者だってお前死んだんじゃなかったのかよ! って怒鳴りこんでくる人もいるかもよ」
「……ありうる……」
流石に小説家志望なので、メルはそのへんの様子を想像し、可愛い顔をしかめてしまった。
「そこで、敏腕で頭脳派のご両親がどーんと出て来て、はいこっち~はいあっち~はい、これはこれ~って裁きまくって、最終的に反論する人も愛の抱擁で解決出来るんならいいけれど、しばらくは、”なんじゃこりゃあ!!”なヒートアップもあるんじゃない?」
「あるかも……」
メルは眉間に皺を寄せて色々想像を巡らせた。
「それでもしっかり、ラブとハグで解決出来たんだから、この親御さんは大したものよね。素晴らしいわ」
リヴィは素直にそう言った。
「じゃ、こっちの民間伝承は?」
「うん。そこで、ヒートアップがないように、別の名前を与えて、離れに隠して、しばらくは借金を自力で返させるように、こそこそ陰徳積んだんでしょ? 世間様を欺いて」
「世間様を欺くなよ……」
「だって、都会で一旗あげるっつって、借金しょって帰ってきた娘なんですけど。こっちのパターンは……」
「グハッ!!」
メルは何か刺さる事があったのか、胸を押さえた。
「借金を返し終わったぐらいで、そろそろ大人になったかと思って財産分与するんだけど、娘がまた離れに引っ込んじゃった、そのへんだよね。ある意味、身を慎んでいるようにも見える。単に卑屈なだけかもしれないけど」
「うーん……解釈が難しいところだ……」
「そこで初めて、親類縁者を呼んで、ご近所様も呼んで、紹介した訳なんでしょ。さすがに、十年も二十年も親元で住み込み下働きしながら、自力で借金返して、その後も”身を慎んで”いた娘だったら、豪勢なパーティでお披露目しても、すんなり受け入れられたってことじゃないかな」
「なるほどねえ。考え方は様々かなあ」
「適材適所だよね。こういうケースにはこういうやり方、こういうパターンにはこういうノウハウ、それぞれ使い分けて、みんなが幸せになれればそれでいいのよ」
リヴィは肩をすくめて言った。
「あんたらしい。私は、断然、アロ&ハロ派だけどね。アロの気持ちもハロの気持ちも両方、分かるし、そんな親元で下働きするよりは、多少気まずい思いしても問題を明るみに出してやっちゃいたいわ」
「私は、長者とハロ派だな~。だって、人と衝突するのって、エネルギーがいるもの。それぐらいなら、身を慎んで、真面目に働くところを見せたいわ。親元だったら、安心だし」
しばらくして、メルが言った。
「ねえ……古代って、治安が悪かったんだよね」
「そりゃ、近代イギリスよりはね。どうして?」
「……ハロって、処女だったんかな……」
リヴィは思い切り噴いてしまった。
「あ、あんた、聖堂の真ん中で、何言ってるのよ!!」
「……だ、だって、あんたが、何回も、成人女性に身を慎んで、身を慎んでって言うから!!!!」
そこで二人とも大声を立てている事に気がつき、慌てて両手で互いの口を塞いだ。
それからそっと手をずらす。
「……大人の女性なんだから、そういう対象に見られる事だってあるし、本人だって普通にそういう浮いた話とか浮いた感情とかあったと思うわよ?」
メルがそう声を低めて言った。
「う……分かるんだけどさあ。やっぱ、こんな場所で、不謹慎だよお……」
「でもさ、リヴィだってそういうこと、まるっきり興味ない訳じゃないでしょ?」
「う、うん……まあね。でも、聖堂でする話じゃないよ……」
リヴィはすっかり赤くなって目を下に向けて、恥ずかしそうに縮まってしまった。
「わ、私だって、18にもなって、そろそろ婚期だから、そういうの、周りが気にするし……周りに気にされると、気になる事もあるんだけどさ……。ハロだってそういうことあったと思うけど、聖堂の真ん中で、例え考えが思いついても、そういう話をするべきじゃないよ。何かの拍子に考えついちゃうのは、しょうがないけどね。特にメルは、小説家になりたい夢があるんだし」
反射的に、ちらちらと、前方で別のステンドグラスをうっとり見上げているブライアンを見つつ、リヴィはそう答えた。
「まーね!」
自分の夢の事になると、メルは渋い顔をやめて、明るい笑顔を輝かせた。
しかし、胸の中で少しだけ残念に思った。
(大聖堂の中って事もあるんだろうけど、ガード堅いな~。悪役令嬢ものとしては、恋愛だってセオリーなんだから、浮いた話とかそういうことも探っておきたかったんだけど。簡単にこういう手には乗らない、か)
いずれ、一族郎党牢獄死や、ギロチン送りや、破産して首つりなどを回避したいメルは、リヴィのそういう点も、友人としてしっかりチェックしておきたいのであった。
クインドルガ暦824年、3月--。
オリヴィア・グランドンとその従妹アメリア・グランドン。通称グランドン姉妹は、年ごとの娘に成長していた。
リヴィと呼ばれているオリヴィアは、18歳。メルと呼ばているアメリアは、17歳。
どちらも王立学院で順調--というには語弊のありすぎる学生生活を送り、ゲーム内の悪役令嬢としての進路を華麗に踏み外しつつ人生を楽しんでいた。
ケバケバお水顔で、幼児期による虐待による精神障害から、金と男と嫉妬に狂って世界中の地雷を踏みまくり、ギロチン送りになるはずのリヴィは、立派に農民として就農候補生となっていた。
「赤毛悪役枠」「としては」顔が可愛い以外に何の取り柄もないはずの、お取り巻き(血縁)のメルの方は、ステータスageのプロフェッショナルとなり、朝は三時半に起き出して妖精の与えた悪役令嬢養成ギプスを着用しながら日々目指していた。
目指す先がどこなのかというと、要は、悪役令嬢バッドエンドを回避出来ればなんでもいいんだが--。
既にメルは、ステータスageそれ自体が、快感になるレベルであるらしい。
王立学院は概ね、日本の学校制度と大差はない。
唯一違うのは、進学・進級の時期が、洋風で、秋口にあるということである。
そのため、春である三月が、一番、休みが長く、学生に参加出来るようなイベントが多かった。
その一つが、三月の第一日曜日にある<慈母の種まきの祝祭>、通称マドンナ・シーズである。クインドルガの古語では、いかにも厳めしくもくどい言葉があるのだが、若者や学生の間では、マドンナ・シーズで通じていた。
一月に前夜祭とも言える予祝があり、その頃から大聖堂はマドンナ・シーズの準備に取りかかる。
それぐらい大規模な春の祭である。クインドルガの国民のほとんどは何らかの形で参加するし、王立学院のある首都クェンティンでも、最も有名な祝祭の一つであった。
そうは言っても、クインドルガは本来、農耕が盛んな国であるため、季節に応じて、それぞれ一回は、爆発的なダンスやカーニバルも含む祭があった。それぞれ独特の個性があるのだが、中には本来のマリーベル教からはズレた意味合いが強いものもある。恐らく、農耕が始まった頃合いまでさかのぼるような、民間の儀礼だろうとの事である。
いずれにせよ、そうした祭事と政治、宗教が密接にくっついていることはどこの国でも同じ。
公爵家がそういう祭を放置することなどありえない訳だった。
しかし、公爵家夫婦が、面倒くさがった。父親の方は、何やら領地の方でもめ事を抱えているらしく、そっちの方の手が放せないと言い出した。母親の方は、そのサポートの他に、そろそろ足が弱くなってきた姑の方に呼びつけられて、心配だと言い出した。
(ああ~……、ママ達、宗教イベント好きじゃないんだよね……。地位が高いと、そういうことのいざこざに一回巻き込まれると、本当にあっちもこっちも三面六臂の大活躍したって追いつかないって言っていたもんな~……)
そうは思ったものの、リヴィだって、自分のような粗忽な娘が、うっかりそういうイベントに公爵家を代表して首突っ込んで、属性を存分に発揮した場合どうなるかと、自分で思った。
「パパ、ママ、私も、畑の種まきしなきゃいけないんで、今度のマドンナ・シーズはパスしたいんです」
「お前は何を言っているのか」
しかし、公爵であるジェイムズは一刀両断してくれた。
「畑に種まきしたいなら、さっさとマドンナ・シーズに行ってきなさい。慈母マリーベルに敬虔な祈りを捧げて、五穀豊穣を祈るのが筋だろう」
「へっ」
リヴィは狐に鼻をつままれたような顔をした。基本的に、宗教イベントに疎い父親なので、リヴィにも行かなくていいと言ってくれるもんだと決めつけていたのである。
「そうよ、リヴィ。マリーベル様の母なる豊饒の力で、お前の畑に言祝ぎをもらってきなさい。そうすれば、去年は失敗した野菜も、今年は立派に実るかもしれないわ」
「えっ、ちょっ、あのっ」
基本的に、畑に反対している母親の方までそんな事を言い出した。
母のエルノラの方は、ジェイムズよりもずっと、リヴィの農民運動にいい顔をしていなかったのに、こういうときだけそういう事を言う。
「二枚舌! ママったら、自分が面倒臭いもんだから、私に押しつけているんでしょ!」
「だって、ママ、リヴィの畑の手伝いしたくないんだもの。勉強の手伝いや、花嫁修業の手伝いだったら、いくらでもするけれど。畑とか、それぐらいなら、女神様に手伝ってもらってよ」
「性格悪ーっ!!」
「うーん。そこは政治が悪いって言ってくれないかしら。公爵家の娘が畑をやるのはけしからんというのは、政治家が作った風潮みたいなものだから、そのへんは政治とか社会的なムードにですね、モノを申してくれると、ママとしては、気楽かなあ」
リヴィはじろりと積極的に政治に関わってきているジェイムズの方を睨んだが、ジェイムズは、やはり日本のサラリーマンのような対応をした。
要するに、新聞を熱心に読んで聞こえないふりをした。
(どこも変わらないんだな……)
おい、年頃の娘の花嫁修業の話題だぞ、それでいいのか、とは思ったが、リヴィも積極的に花嫁がどうとかそういう話を親としたい訳ではなかったので、そこは黙って涙を飲んだ。
(農園カフェの事しか、頭にないような娘に、こんなどでかい宗教イベント押しつけて、何が起こっても私、”ジャガイモの苗が気になるので……”で笑って誤魔化すし、笑って誤魔化せないならそのまま逃げるからね!)
心の中でそう誓い、リヴィはメルと一緒に、マドンナ・シーズにグランドン姉妹として参加することになった。
当然、嫡男のブライアンも一緒である。無論、いくら宗教にいい顔をしていない公爵夫婦とはいえ、頭の中まで二葉生やしていてもおかしくないようなリヴィを一人では出発させられないと思ったのだろう。
ブライアンの方は、何事においても無難な嫡男であったため、任せられると踏んだのだ。それに、ステータスだけは金ピカのメルも一緒なんだし。
そういう訳で、マドンナ・シーズの前日から、メルは公爵家に泊まり込み、ドレス選びに精を出す事となった。
「多分さあ、このクインドルガって国、乙女ゲーム風に清潔に整えられているけれど、近代イギリスとか参考にしているのよね」
メルが日本の小説家志望、山口彩芽の表情になりながらそう言って、赤いドレスを一枚めくりあげた。
「ちょっと、それは派手過ぎるんじゃないの?」
「……だよねー……。だけど、あんまり渋すぎるデザインのもどうかと思うしさあ」
彩芽は、取材をするときのような厳しい目つきになりながら、バックスタイルのドレスを睨んだ。
スカートの膨らみが腰の後ろにてんこもりになっているからバックスタイルと言うのだが、とにかく飾りリボンもドレープも、襞も、やり過ぎなんじゃないかというぐらい、盛りつけられているのである。確かに見た目は少女漫画のお姫様のようになれるだろう。
更にその上にオーバースカートをつけるのだから、装飾性としては申し分がない。
そして、悪名高いコルセットで体を厳しく縛り上げ、更に細く見せるかのようにぴったりした身頃をつけるのだ。
それに、花やレースをつけた帽子と、実用的とは言いがたい華やかなアンブレラを持って完成である。
……というように、農民リヴィは思ったのだった。
しかし、アメリアの方は全く逆の感想を持ったようで、目をキラキラを通り越してギラギラさせながらドレスを次々持ち上げてはおろし、持ち上げてはおろし、という作業に熱中し始めた。
何しろ、悪役令嬢マニア。
こういう時にどんなドレスを着こなして、どんなふうに自分を演出するのかという事にかけては、小説家志望としてもうかうかとしてはいられない必要案件なのだろう。
乙女キラキラというよりも、頬を紅潮させ鼻息荒く、口の中でぶつぶつ言いながら、ひらひらドレスを片っ端からチェックしていく。
(頭の中ではどんな令嬢とどんな展開をする気でいるんだろ……)
そこで間違っても異性がからんで来ないのは、原作オリヴィアが、男で間違った運命に叩き落ちていったためであろうか……。
どっちにしろ、農民としては、動きやすいドレスに越した事はないわけだった。そもそもが、リヴィの本体である菜月の方も、自分のカフェの夢をかなえる事に夢中だったため、華麗な装飾にはそんなに興味がないのである。
そのため、菜月はほとんど何も考えずに、テーラーメイドコスチュームを選んだ。
それも紳士服同然のダークカラーを選択し、上に着こなすと、下もそのまま乗馬ズボンを履こうとして、メルにその手を叩かれた。
「あんた、どこに、何しに行く気なのよ!!」
「え、だって。コルセット着るの、苦しいし、やだよ」
「私だって背筋伸ばしてコルセットつけるのに、なんであんたはつけないわけ!」
「メルはつけたいならつければいいじゃん。私はやなんだもの」
「私、コルセットもつけないような女と一緒に、春ミサにいきたくないんですけど!!」
「え~……」
リヴィはあからさまに嫌そうな顔をした。
「私がやるからには、あんたもやれよ!!」
「嫌だっつーの。私達は別人格でしょ!!」
「お前ねー……!!」
「大体、原作のオリヴィアが、男狂いで死んだんなら、私が地位の高そうな男がどん引きするような格好した方がいいんじゃなの?」
「それじゃ、世間的評価の方、肝心のステータス上げの方に支障が出てくるのよ! そこらへんのバランス、分からない!?」
リヴィは何とも妙な顔つきをした。
分かる筈がない。
何しろ、スマホのアプリで無料の落ちゲーをたまにやる程度の人間だ。乙女ゲームのセオリーやバランスの取り方なんて、何にも分からない。
「分かった、こうしよう」
そこでメルが折衷案を採りだした。
「あ~の~ね~……、確か、テーラーメイドにも、可愛い系のデザインがあったんだよね……」
メルは公爵家のウォーキングクロゼットの中を片っ端から漁り、該当のデザインを取り出した。
「ハイウエストだからツンデレっぽく見えるけども、こっちのモスリンに着替えてみ。体のラインはまろやかに見えるタイプ」
「わりとふりふり系だね」
フリルもついた乗馬服なんてあっていいのか? と不思議に思いつつ、リヴィはそのジャケットは着けないタイプのテーラーメイドを着こなしてみた。
上半身の前身頃には淡い色合いのフリルが多重についている。
スカートの方は装飾は華美ではないが、少なくとも乗馬ズボンよりはマシであろう。
全体的にユニセックスな色合いでまとまったが、頭の帽子には羽根飾りもついており、華美過ぎず地味過ぎずという辺りに落ち着いた。
メルはリヴィがそうした服装を着けたのをよくよく観察してみた。
考えて見るに、顔がケバい美貌であるリヴィが、春ミサに、バックスタイル襞襞てんこもりのドレスで行くよりは、こうしたさっぱりした服装の方が受けがいいかもしれない。
コルセット絞めすぎでくびれ強調、ぼんっきゅっぼんっよりは、少なくとも色気過多ではないだろう。
「ふ~ん、いいわね……。私もそっち系でまとめちゃおうかなっ」
上機嫌になったメルは、ジャケットは着けないタイプの乗馬ドレスを自分でも探し始めた。
リヴィはほっとした。コルセットつけて、歩行すらも至難の業であろうドレスを着ながら長時間のミサを耐える自信がなかったのだ。かといって、服装一つでメルと角をたてるのも嫌だった。
失礼のない程度にラフで動きやすく、上品なドレスを身につけると、メルはそれだけで大変に可愛らしく見えた。顔が元々いいという事もあるが、令嬢としての行儀作法を身につけていて、姿勢も正しいため、持ち前のステータスがいきいきと輝いているように見える。
「いいじゃん。これでいこうよ!」
メルがこざっぱりとして綺麗な服を着ていると、リヴィだって嬉しい訳で、単純にもそう言ったのだった。
その頃のブライアンはというと、念入りに靴を選んでいた。黒以外の靴は紳士としては非常識と言われていた時代であったので、黒い靴をいくつも床に並べ、一つずつ手に取って、あれこれと頭の中で計算していた。
そういう場所で、誰がどこを見るかは大体見当がついている。油断も隙もあったものじゃないので、まずは靴から慎重に選んだ。最終的には前の皇太子、即ち現国王が好んで履いたために流行した、黒の編み上げブーツを履き、それに対してバランスを取りながら衣装や、ステッキなどの小物を取りそろえていった。
前日の準備はこれで終わった。
翌日、早朝からリヴィ達は衣装を取りそろえ、ミサに必要なテキストなどを鞄に持って、馬車(ブルーム)に乗り込んだ。箱形の四輪馬車である。これも、元は、現国王が、皇太子であった時代に、技術者に注文をつけて作らせたものであるらしい。
「結局さあ、王家がそういう事を仕切るんだよ。分かってるの?」
メルがメル語でコマゴマと説教をし始めたが、リヴィは次第に魚が死んだような目になって空を睨んでいた。頭の中では野菜サラダを作っていた。
「こら、寝るな!」
ブライアンが、苦笑しながら、リヴィの頭を軽く叩いたので、リヴィはすねてしまった。
それほど時間をかけずに、マリーベル大聖堂に到着した。
着いてすぐに、庭にフロリーの馬車(バルーシュ)があることに気がついた。
大聖堂の後見人はドラモンド王家であるため、名代としてフロリーが来ているのだろう。ひょっとして、別の馬車で国王も来ているかもしれない。
「この国は、ドラモンド王家が、魔道によって国を開いて栄えてきたけれど、元は農耕民族の国だからな。農耕の祭主である王家が、儀礼の総本家みたいなところもあるし……マリーベル教と密接に繋がっているんだよ」
ブライアンがざっとそういう事を説明し、リヴィは心地よく聞き流していた。
考えて見れば、クインドルガの主食は肉ではなく、芋類や麦類である。両親に五穀豊穣がどうとかと、説教されたのもそのためだった。
大聖堂の外壁には、リヴィにも一目でゴシック風と分かるガーゴイルが立ち並んでいた。割と悪魔的な光景であり、芸術家の想像力とは本当に無限で奔放なものだと、リヴィは大聖堂を訪れるたびに感心していた。
その外壁の周辺に、クェンティンの民たちが並び、正門の扉からはみでてしまっている。予想はしていたが、マドンナ・シーズのために大変な混み具合であった。
大聖堂の天井の高さは22m、全長は156m、二つの高い塔を備え、西がライエル塔、東がマリーベル塔と呼ばれている。巨大な石を積み重ねて作った建物には、天使のタペストリ、絵画、複雑な幾何学紋様などなどが、荘厳していた。
内部に入ると、闇を溶かしたような光が、ステンドグラスから差し込んで来た。
ステンドグラスは、天井や高窓、さらに窓という窓を覆っている。
その数は、恐らく千枚に及ぶのではと、リヴィは聞いた事があった。
人は随分と混んでいるが、ミサの開始まではだいぶ時間があるので、三人で聖堂のステンドグラスを見て回る事にした。
ステンドグラスの綴る物語は、テキストの読めない民にも分かるように、壮麗なのにわかりやすく、シンプルなのに深みのある描画ばかりだ。
(深みとか神学とか、そういうのを抜きにして考えれば、文盲で小難しい事のわからない臣民のために、作られた漫画とか絵本みたいなもんよね)
リヴィがぼそっとそう言った。
(しっ! そういうこと言わない! 真面目にやってる司祭さんたちに聞かれたらどうするの!!)
慌ててメルが叱りつけた。
これは、架空の宗教マリーベル教に伝わる神話や伝説の類であり、必ずしも、現実とは一致しない。
古代、ある金持ちの元に、双子の姉妹が生まれた。
姉の名前はアロ、妹の名前はハロと言った。
ちなみに、マリーベルの教えでは、腹の中で上の位置にいた、後から生まれて来た方を姉と呼ぶ。
両親は、二人の成人が近づくと、財産をそれぞれに分け与えた。古代のマリーベル教ではそれほど珍しい話でもなかった。
姉のアロは、そのまま親の家に留まり、家の中でも外でも、汗水を流して働き続けた。
妹のハロは、都でかなえたい夢があったため、財産を持って旅立ち、そのまま帰って来なかった。
姉のアロは両親を敬い、大切に仕え、懸命に努力を続けた。
一方、妹のハロは、都で夢が雲散霧消し、数々の辛酸をなめ、無一文になって、ぼろぼろになりながら親元に帰ってきた。
「母さん、水をいっぱいだけいただけますか?」
家の門の前まで来たハロはそうとだけ言った。それ以上を求める事もなかった。
両親は家から飛び出て来て双子の妹を抱き抱え、そのまま、下僕達に湯浴みをさせて綺麗な服に着替えさせるように言った。
そして、牛を一頭ほふり、神に祈りを捧げ、歓迎の宴をもよおした。
畑で働いていた姉は、その騒ぎを聞いて何事かと戻って来た。そして、都で放蕩の限りを尽くしたと聞いている妹が歓迎されているのを身、驚いた。
「父様、母様、これは一体何の仕打ちです! 私は、ここに留まり、身を尽くして父様と母様のために働きましたのに! 私のためには子羊一匹、与えてくれなかったあなたがたが!」
「アロよ。姉よ、お前は常に私とともにいた。ならば、私の財産は全てお前のものである。だが、お前の妹は死んで生き返ったも同然なのである。いなくなったと思って探していたのが、見つかったのだから、当然のことだろう」
敬虔と神秘の輝きを放つステンドグラスには、その悲しいが心温まる神話の場面の数々が描かれていた。
大人のしるしに、両親から財産を与えられた時の喜びに輝く姉妹。
畑で、朝な夕なに仕事に励むアロ。
都会で失敗を繰り返して泣き伏すハロ。
疲れ果てたハロが、初めて家に戻ってきた時、出迎えた母親の優しい瞳と抱擁。
父親がアロを教え諭し、そしてしっかりとハグする場面。
大人の男の何倍もあるようなステンドグラスは、七色の輝きに満ちて、神話の時代を伝えた。
「詳しくはないんだけどさ。古代の農耕って、女性が中心だったんだってね」
「うん。当時は、男の人は狩りや釣りに行くのが当たり前だったんでしょ? だから、こういう神話が出来るんだね」
二人はうんうんとうなずき合い、声をひそめて、時折、女同士らしい打ち解けた会話を行った。
やがて、ステンドグラスは、民間伝承のハロの物語に入って来た。
何しろ、読み書きが出来ない大衆の時代から伝わる神話である。中には民話、より庶民に身近な教えとしての異伝や口伝がたくさんあり、その中で、テキストと同様に愛されている「ハロ」である。
その場合は、ハロは、長者の一人娘である。跡継ぎであるにも関わらず、ハロはきかん気の子どもで、ある日突然、親に反発して飛び出してしまうのだ。
そんなハロであるから、世間では数々の失敗を繰り返し、無一文の上に、借金まで背負ってぼろぼろになって長者のところへ帰って来る。
長者は、ハロが帰って来る事を聞きつけて、大慌てで使いをやるが、使いが借金持ちのハロに冷たい事を言ったため、ハロは気絶して倒れてしまった。
それを聞いた長者は、ハロを、自分の家の雑用として雇い、「サラー」……「一人娘」という意味の呼び名を与えたのだった。
サラーはそのまま、十数年の間、物置小屋のような離れに住んで、朝から晩まで働き、借金も返した。
その頃合いを見て、長者は、サラーに自分の財産を分け与え、屋敷の支配人としての地位も与えた。
ところがそれでも、サラーは離れから出てこず、貧しい食事と人間関係で満足してしまった。
そこで長者は、隣近所の仲間も縁者も全て呼び、豪勢な祝いの席を設けて、初めてこう言った。
「このサラーは、私の失われた娘、ハロである。私を捨てて逃げ出した不出来な娘だが、今こうしてここにある。この子は私の娘、私はこの子の母である。そして私の財産は全てこの子に譲ろう」
それを聞いてハロは益々驚いて、母の慈愛に感動したのであった。
「この二つの物語って、結局、同じ事を説いていると思うんだけど……女神もライエル様も、決して、私達を見捨てない、見守っているよって事なのに、なんで、二つの物語に別れちゃったのかな」
リヴィはこちらのステンドグラスの物語を見ながら、メルに囁いた。
「そうだよね……言われてみれば、内容は同じのようで、随分違うわね」
リヴィは、屋敷の離れて孤独に眠るハロのステンドグラスを見上げながら、考えこんだ。
「……そりゃあさあ。私達がさ、18年なり17年なり、ほっつき歩いて、今から現代日本の実家に戻ったらさ……どうなるだろう」
「へ? 何?」
「死んだもんと思われていた娘が、いきなり、異世界行ってきましたっつって戻ったら、どうなるだろう」
「……」
メルは、リヴィの発想が例えようもないほど例えようもない事を知っているので、そこは黙った。
「いきなり受け入れられろっていうのは酷じゃない? だって、18年だよ。そしてさあ、ぬけぬけと歓迎パーティを始めちゃったら、隣近所だってビックリだし、親類縁者だってお前死んだんじゃなかったのかよ! って怒鳴りこんでくる人もいるかもよ」
「……ありうる……」
流石に小説家志望なので、メルはそのへんの様子を想像し、可愛い顔をしかめてしまった。
「そこで、敏腕で頭脳派のご両親がどーんと出て来て、はいこっち~はいあっち~はい、これはこれ~って裁きまくって、最終的に反論する人も愛の抱擁で解決出来るんならいいけれど、しばらくは、”なんじゃこりゃあ!!”なヒートアップもあるんじゃない?」
「あるかも……」
メルは眉間に皺を寄せて色々想像を巡らせた。
「それでもしっかり、ラブとハグで解決出来たんだから、この親御さんは大したものよね。素晴らしいわ」
リヴィは素直にそう言った。
「じゃ、こっちの民間伝承は?」
「うん。そこで、ヒートアップがないように、別の名前を与えて、離れに隠して、しばらくは借金を自力で返させるように、こそこそ陰徳積んだんでしょ? 世間様を欺いて」
「世間様を欺くなよ……」
「だって、都会で一旗あげるっつって、借金しょって帰ってきた娘なんですけど。こっちのパターンは……」
「グハッ!!」
メルは何か刺さる事があったのか、胸を押さえた。
「借金を返し終わったぐらいで、そろそろ大人になったかと思って財産分与するんだけど、娘がまた離れに引っ込んじゃった、そのへんだよね。ある意味、身を慎んでいるようにも見える。単に卑屈なだけかもしれないけど」
「うーん……解釈が難しいところだ……」
「そこで初めて、親類縁者を呼んで、ご近所様も呼んで、紹介した訳なんでしょ。さすがに、十年も二十年も親元で住み込み下働きしながら、自力で借金返して、その後も”身を慎んで”いた娘だったら、豪勢なパーティでお披露目しても、すんなり受け入れられたってことじゃないかな」
「なるほどねえ。考え方は様々かなあ」
「適材適所だよね。こういうケースにはこういうやり方、こういうパターンにはこういうノウハウ、それぞれ使い分けて、みんなが幸せになれればそれでいいのよ」
リヴィは肩をすくめて言った。
「あんたらしい。私は、断然、アロ&ハロ派だけどね。アロの気持ちもハロの気持ちも両方、分かるし、そんな親元で下働きするよりは、多少気まずい思いしても問題を明るみに出してやっちゃいたいわ」
「私は、長者とハロ派だな~。だって、人と衝突するのって、エネルギーがいるもの。それぐらいなら、身を慎んで、真面目に働くところを見せたいわ。親元だったら、安心だし」
しばらくして、メルが言った。
「ねえ……古代って、治安が悪かったんだよね」
「そりゃ、近代イギリスよりはね。どうして?」
「……ハロって、処女だったんかな……」
リヴィは思い切り噴いてしまった。
「あ、あんた、聖堂の真ん中で、何言ってるのよ!!」
「……だ、だって、あんたが、何回も、成人女性に身を慎んで、身を慎んでって言うから!!!!」
そこで二人とも大声を立てている事に気がつき、慌てて両手で互いの口を塞いだ。
それからそっと手をずらす。
「……大人の女性なんだから、そういう対象に見られる事だってあるし、本人だって普通にそういう浮いた話とか浮いた感情とかあったと思うわよ?」
メルがそう声を低めて言った。
「う……分かるんだけどさあ。やっぱ、こんな場所で、不謹慎だよお……」
「でもさ、リヴィだってそういうこと、まるっきり興味ない訳じゃないでしょ?」
「う、うん……まあね。でも、聖堂でする話じゃないよ……」
リヴィはすっかり赤くなって目を下に向けて、恥ずかしそうに縮まってしまった。
「わ、私だって、18にもなって、そろそろ婚期だから、そういうの、周りが気にするし……周りに気にされると、気になる事もあるんだけどさ……。ハロだってそういうことあったと思うけど、聖堂の真ん中で、例え考えが思いついても、そういう話をするべきじゃないよ。何かの拍子に考えついちゃうのは、しょうがないけどね。特にメルは、小説家になりたい夢があるんだし」
反射的に、ちらちらと、前方で別のステンドグラスをうっとり見上げているブライアンを見つつ、リヴィはそう答えた。
「まーね!」
自分の夢の事になると、メルは渋い顔をやめて、明るい笑顔を輝かせた。
しかし、胸の中で少しだけ残念に思った。
(大聖堂の中って事もあるんだろうけど、ガード堅いな~。悪役令嬢ものとしては、恋愛だってセオリーなんだから、浮いた話とかそういうことも探っておきたかったんだけど。簡単にこういう手には乗らない、か)
いずれ、一族郎党牢獄死や、ギロチン送りや、破産して首つりなどを回避したいメルは、リヴィのそういう点も、友人としてしっかりチェックしておきたいのであった。
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