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グランドン兄妹大混戦
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妹達はにらみ合いを繰り返している。
今にも試合再開しそうな勢いだ。
そういう訳で、ブライアンは何喰わぬ顔で、食事の前で手を組んだ。
そのまま女神マリーベルと光(ライエル)への食への感謝の祈りを捧げる。
そうすると、貴族としての行儀を教わってきた、リヴィとメルはほぼ自動的に食事の前で手を合わせ、ブライアンに合わせて一通りの祈りを唱えた。
それからおもむろに、ブライアンがマナー通りにナイフとフォークを使って温かい鯖を食べ始める。まずはリヴィが、それから兄妹の様子を見てメルが、同じく食事を始めた。
「リヴィ、美味しいか?」
ブライアンが尋ねると、リヴィは口を動かすのを止めて、頷いた。
「お兄ちゃん、料理も出来るのね」
「野菜を切って温めるだけならね。リヴィ、それで、原因は何だ? さっき、メルがインクがどうとか言っていたけれど」
ブライアンとて、最近、妹達が霊素呪文の問題で、時間ギリギリで頑張っている事は知っている。その上で、インクで真っ黒になってしまった藁半紙を見ていれば、何があったのか大体予測はついていた。
リヴィはボソボソと、さっき、何があったのかを話した。
勿論、リヴィはメルのフローレンス姫告白事件については何も知らない訳だから、そのことは話さない。というか話せない。
「確かにそれは、ショックだったろうけれど、とっくみあいまでしてどうするんだ。リヴィ。地球が一個分は言いすぎだぞ」
リヴィは黙った。
一応、クインドルガにも地球儀のようなものはあって、公爵邸にもある。クインドルガという国のある星については、クインドルガ語での「地球」という意味の単語が当てられていた。
ブライアンの言う地球とは、彼の住まう惑星という意味の地球である。
「でも、お兄ちゃん。本当に、これ、フロリーストームとか霊素とかの、大切な事なんだよ」
リヴィは泣いていた目を拭った。
実は彼女も、とっくみあいの最中に、ツインテールに結わえた髪の毛を引っ張られたため、反射的な涙が出たのである。
「何よ! ブライ兄の前でいい子ぶっちゃって!」
メルは、日頃気にしていた事を言葉にしてぶつけた。
「ブライ兄に甘えればすむと思ってるんでしょ! あのねえ、ブライ兄だって、大人になったらリヴィの事ばっかり構ってられないんだから。可愛い妹ってだけで世渡り出来ると思うなよ!」
「メル」
ブライアンが、たしなめるための一声をかける。
ブライアンとしては、食事の前で喧嘩するなと言いたいところである。
「別に甘えてもいい子ぶってもないわよ。お兄ちゃんの前で素直にするのは当たり前の事でしょ!? 何それ、メルは、私とお兄ちゃんが仲悪かったり、お互いに反抗的だったりすればいい訳!?」
「そういう事言ってるんじゃないでしょ!」
「メルのヤキモチ焼き!!」
「うるさいブラコン!!」
メルは痛いところを突かれた。ステータスageが趣味の上に、前世でも現世でも一人っ子のメルは、競争大好きで自分が一番というところがある。言い方を変えれば嫉妬深いと言えるだろう。
そしてリヴィの方だって、友達が少なくて最大の親友が従妹(メル)で、その上大好きなお兄ちゃんが一番という人間関係で現在18歳。そりゃ、ブラコンだ。
お互いに互いの胸を抉りあって、今にもまたつかみあいを始めそうな雰囲気である。
「お前ら……。俺の事で争わないでくれ、とでも言って欲しいのか?」
ブライアンは、苦笑しながらそう告げた。
そこで巧みにボケられた二人は絶句。
しかし、すかさずリヴィが切り返した。
「メルはお兄ちゃんが欲しいのよ。本当は。妹とか弟とかじゃなく、自分が甘えられるお兄ちゃんが」
「ちょっ……リヴィ、言わなくていいことを言うなー!?」
メルは直接、そんなことを話した事はない。
だが、生まれた時から、ブライアンとリヴィのいちゃつき具合を四六時中、見せつけられてきたメルとしては、内心、私もああいう頼りがいのある兄が欲しいわ、と思った事は一回二回じゃなかった。
「そうか。俺も、お淑やかで行儀が良くて、言葉遣いが綺麗な優しい妹が欲しいぞ」
ブライアンは、やや投げ槍にそう言った。
「そ、そんな、お兄ちゃん!?」
「ブライ兄、夢見すぎよ。今時、貴族の令嬢だって、そんな上玉いやしないわよ。現実見てよ。あなたの妹が、これよ?」
メルは鋭くリヴィの方を指差した。
「何言ってるのよ!? コレとか言わないで!!」
当然、たちまち頭に血が上るリヴィ。
「メル、人を指差すのはやめなさい。そして、女性をコレとか言う単語で表すと、余計な誤解を招くからやめなさい」
ブライアンは、兄として、公爵家嫡男として、言うべきことを言った。
「それからリヴィ。半泣きでぐずりながら食事をしない。食事は清く正しく、美しく」
その中には行儀指導も含まれるらしい。
「お前達、最近頑張り過ぎなんだよ。俺が、収穫祭の事で、ダンスの練習をさせていても、キャパオーバー気味ですぐに疲れてしまうようだし」
それからブライアンは、気にしていた事を告げた。実際、このハードスケジュールの中で、朝の30分を使って、ブライアンは妹二人に収穫祭の舞を教え込んでいる。二人とも飲み込みはいいのだが、すぐに息が上がって休憩が必要になってしまうのだ。
「収穫祭まで後少しだけれど、本当に、体が持つのか、お前らは。一日5~6時間は、ベッドの中に入っていなきゃだめだぞ。眠れなくても、寝るんだ」
「そんなことしていたら、霊素呪文も何も間に合わないよ。お兄ちゃん」
しょんぼりした様子でリヴィが言った。
実際のところ、リヴィは本来、素直な娘だが、ブライアンの前に出ると特別に素直さと甘えが出てしまうらしい。
「それを言われたら、確かになあ」
ツッコミを入れてきたブライアンだが、またため息をついてしまった。
霊素呪文でクッションの取り替えをすましてしまうのは、収穫祭の前が望ましい。
クインドルガの収穫祭は、神事という意味合いも強い上に、民衆にも大人気のイベントである。
そんな場所で、将来の王妃であるフローレンスがフロリーストームを起こしたらどうなるか。
公爵家だって、黙って見てられないのは当たり前だ。
「そのために、私頑張ったのに。メルだって、頑張ってたのに。それを、黒インクの海に沈めちゃうなんて、なんでこんな酷い事が起こるの」
そういう訳で、悔しそうに涙ぐむリヴィであった。
「そんなにしつこく怒る事ないでしょ!? 私だって、謝ってるのに。リヴィは、すぐ泣く!!」
気の強いメルはそこでズバズバ言い出した。
そして、言い出したら聞かない娘である。
「やっちゃったことは仕方ないんだもん。いいわよ、それじゃ、私が後の霊素呪文は全部完成させるんだから。そしたら、リヴィ、あんたは好きなだけ、ブライ兄とダンスでもしてればいいわよッ!」
「なんでそんなこと言うの!?」
二人で霊素呪文を完成させると、イキリまくっていたリヴィ。
そこでメルにそんなことを言われたら立つ瀬がない。
「鯖缶食ってダンスしてなさいよ!!!!!」
「酷い、そんな言い方ないじゃない!!!!!」
というわけで、試合再開。
そこは貴族の令嬢であるわけだから、例えば食器や野菜を投げ合うとか、そういうことはしないのだが、女の泥沼口喧嘩として手本にしたいような凄い言葉の応酬である。
「お前ら……言う事を、聞きなさい!」
そこはやっぱり、父親から監督指導を言い渡されているブライアン。
威厳を持って、口喧嘩に介入。
するとぴたっと口をつぐむリヴィとメルだったが、それでも、鋭く視線をかわしてにらみあい、これはなかなか手強そうだという空気をビンビン感じさせるのであった。
今にも試合再開しそうな勢いだ。
そういう訳で、ブライアンは何喰わぬ顔で、食事の前で手を組んだ。
そのまま女神マリーベルと光(ライエル)への食への感謝の祈りを捧げる。
そうすると、貴族としての行儀を教わってきた、リヴィとメルはほぼ自動的に食事の前で手を合わせ、ブライアンに合わせて一通りの祈りを唱えた。
それからおもむろに、ブライアンがマナー通りにナイフとフォークを使って温かい鯖を食べ始める。まずはリヴィが、それから兄妹の様子を見てメルが、同じく食事を始めた。
「リヴィ、美味しいか?」
ブライアンが尋ねると、リヴィは口を動かすのを止めて、頷いた。
「お兄ちゃん、料理も出来るのね」
「野菜を切って温めるだけならね。リヴィ、それで、原因は何だ? さっき、メルがインクがどうとか言っていたけれど」
ブライアンとて、最近、妹達が霊素呪文の問題で、時間ギリギリで頑張っている事は知っている。その上で、インクで真っ黒になってしまった藁半紙を見ていれば、何があったのか大体予測はついていた。
リヴィはボソボソと、さっき、何があったのかを話した。
勿論、リヴィはメルのフローレンス姫告白事件については何も知らない訳だから、そのことは話さない。というか話せない。
「確かにそれは、ショックだったろうけれど、とっくみあいまでしてどうするんだ。リヴィ。地球が一個分は言いすぎだぞ」
リヴィは黙った。
一応、クインドルガにも地球儀のようなものはあって、公爵邸にもある。クインドルガという国のある星については、クインドルガ語での「地球」という意味の単語が当てられていた。
ブライアンの言う地球とは、彼の住まう惑星という意味の地球である。
「でも、お兄ちゃん。本当に、これ、フロリーストームとか霊素とかの、大切な事なんだよ」
リヴィは泣いていた目を拭った。
実は彼女も、とっくみあいの最中に、ツインテールに結わえた髪の毛を引っ張られたため、反射的な涙が出たのである。
「何よ! ブライ兄の前でいい子ぶっちゃって!」
メルは、日頃気にしていた事を言葉にしてぶつけた。
「ブライ兄に甘えればすむと思ってるんでしょ! あのねえ、ブライ兄だって、大人になったらリヴィの事ばっかり構ってられないんだから。可愛い妹ってだけで世渡り出来ると思うなよ!」
「メル」
ブライアンが、たしなめるための一声をかける。
ブライアンとしては、食事の前で喧嘩するなと言いたいところである。
「別に甘えてもいい子ぶってもないわよ。お兄ちゃんの前で素直にするのは当たり前の事でしょ!? 何それ、メルは、私とお兄ちゃんが仲悪かったり、お互いに反抗的だったりすればいい訳!?」
「そういう事言ってるんじゃないでしょ!」
「メルのヤキモチ焼き!!」
「うるさいブラコン!!」
メルは痛いところを突かれた。ステータスageが趣味の上に、前世でも現世でも一人っ子のメルは、競争大好きで自分が一番というところがある。言い方を変えれば嫉妬深いと言えるだろう。
そしてリヴィの方だって、友達が少なくて最大の親友が従妹(メル)で、その上大好きなお兄ちゃんが一番という人間関係で現在18歳。そりゃ、ブラコンだ。
お互いに互いの胸を抉りあって、今にもまたつかみあいを始めそうな雰囲気である。
「お前ら……。俺の事で争わないでくれ、とでも言って欲しいのか?」
ブライアンは、苦笑しながらそう告げた。
そこで巧みにボケられた二人は絶句。
しかし、すかさずリヴィが切り返した。
「メルはお兄ちゃんが欲しいのよ。本当は。妹とか弟とかじゃなく、自分が甘えられるお兄ちゃんが」
「ちょっ……リヴィ、言わなくていいことを言うなー!?」
メルは直接、そんなことを話した事はない。
だが、生まれた時から、ブライアンとリヴィのいちゃつき具合を四六時中、見せつけられてきたメルとしては、内心、私もああいう頼りがいのある兄が欲しいわ、と思った事は一回二回じゃなかった。
「そうか。俺も、お淑やかで行儀が良くて、言葉遣いが綺麗な優しい妹が欲しいぞ」
ブライアンは、やや投げ槍にそう言った。
「そ、そんな、お兄ちゃん!?」
「ブライ兄、夢見すぎよ。今時、貴族の令嬢だって、そんな上玉いやしないわよ。現実見てよ。あなたの妹が、これよ?」
メルは鋭くリヴィの方を指差した。
「何言ってるのよ!? コレとか言わないで!!」
当然、たちまち頭に血が上るリヴィ。
「メル、人を指差すのはやめなさい。そして、女性をコレとか言う単語で表すと、余計な誤解を招くからやめなさい」
ブライアンは、兄として、公爵家嫡男として、言うべきことを言った。
「それからリヴィ。半泣きでぐずりながら食事をしない。食事は清く正しく、美しく」
その中には行儀指導も含まれるらしい。
「お前達、最近頑張り過ぎなんだよ。俺が、収穫祭の事で、ダンスの練習をさせていても、キャパオーバー気味ですぐに疲れてしまうようだし」
それからブライアンは、気にしていた事を告げた。実際、このハードスケジュールの中で、朝の30分を使って、ブライアンは妹二人に収穫祭の舞を教え込んでいる。二人とも飲み込みはいいのだが、すぐに息が上がって休憩が必要になってしまうのだ。
「収穫祭まで後少しだけれど、本当に、体が持つのか、お前らは。一日5~6時間は、ベッドの中に入っていなきゃだめだぞ。眠れなくても、寝るんだ」
「そんなことしていたら、霊素呪文も何も間に合わないよ。お兄ちゃん」
しょんぼりした様子でリヴィが言った。
実際のところ、リヴィは本来、素直な娘だが、ブライアンの前に出ると特別に素直さと甘えが出てしまうらしい。
「それを言われたら、確かになあ」
ツッコミを入れてきたブライアンだが、またため息をついてしまった。
霊素呪文でクッションの取り替えをすましてしまうのは、収穫祭の前が望ましい。
クインドルガの収穫祭は、神事という意味合いも強い上に、民衆にも大人気のイベントである。
そんな場所で、将来の王妃であるフローレンスがフロリーストームを起こしたらどうなるか。
公爵家だって、黙って見てられないのは当たり前だ。
「そのために、私頑張ったのに。メルだって、頑張ってたのに。それを、黒インクの海に沈めちゃうなんて、なんでこんな酷い事が起こるの」
そういう訳で、悔しそうに涙ぐむリヴィであった。
「そんなにしつこく怒る事ないでしょ!? 私だって、謝ってるのに。リヴィは、すぐ泣く!!」
気の強いメルはそこでズバズバ言い出した。
そして、言い出したら聞かない娘である。
「やっちゃったことは仕方ないんだもん。いいわよ、それじゃ、私が後の霊素呪文は全部完成させるんだから。そしたら、リヴィ、あんたは好きなだけ、ブライ兄とダンスでもしてればいいわよッ!」
「なんでそんなこと言うの!?」
二人で霊素呪文を完成させると、イキリまくっていたリヴィ。
そこでメルにそんなことを言われたら立つ瀬がない。
「鯖缶食ってダンスしてなさいよ!!!!!」
「酷い、そんな言い方ないじゃない!!!!!」
というわけで、試合再開。
そこは貴族の令嬢であるわけだから、例えば食器や野菜を投げ合うとか、そういうことはしないのだが、女の泥沼口喧嘩として手本にしたいような凄い言葉の応酬である。
「お前ら……言う事を、聞きなさい!」
そこはやっぱり、父親から監督指導を言い渡されているブライアン。
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