国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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死の公布

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「はっ!?」
「私は生きている。」
「…はい。」

ジャンはきちんと座り直して臣下の礼を取った。
「失礼ながら、看病の際にお背中の焼印を目に致しまして、内務府と殿中府に問い合わせを致しましたところ、該当者なしとの返答がございました。
翌日、ジンシ皇子殿下の崩御の発布がございました。」

何も言葉が出なかった。
まるで霞のように今までの暮らしが消えたとでも言うのだろうか。
城中の事務方を担う内務府、皇族の暮らしを守る殿中府、このふたつが皇子の存在を否定した?
その上崩御、と?

まさか!馬鹿な!

驚き過ぎて何も言葉が出て来ないジンシをよそに、ジャンはそんな事はどうでもいい、大したことではないとでも言いたげに涼しい顔をしている。

「お気持ちが混乱されているかとは思いますが、どのみちもうしばらくこちらで養生致してくださいませんか。
将軍には仔細報告は済ませております。
将軍は、一旦はこちらに寄りましたが、対応のため城へ戻りましてございます。
また城内で疫病が出たとのことで、そちらでも城から離れられずおります。
申し訳ない、ゆるりと養生して過ごされよとの伝言でございます。」

「疫病?」
穏やかではない話が急に飛び出してきた。
「…はい。帝の宮と龍の宮で朱病が出たそうです。」
「…朱病…。そんな気配は全くなかったが…。
しかし我は龍の宮から来た。」
もし、自分も被患しているとしたら、ここも大変な騒ぎになる。

「医師の見立てでは大丈夫、予兆は見られないとこのこと。
もう一度傷の診察を受けてから、少しずつ何かお召し上がりになられると良いでしょう。後で薄粥と果実をお持ち致しましょう。
城内の事についてはただいま状況を確かめさせております。もうしばらくお待ち下さい。」
「…わかりました。」

とりあえずジャンには面を上げてもらった。
「では医師をお呼びして参ります。」
とジャンはもう一度礼をすると部屋を出て行った。


…背中の焼印は皇族の証となる、兄には鳳が、ジンシには龍が印されている…と聞いた。
しかし背中なので自身で見た事は無いけれど。

型を作り、紙と背に一度ずつ印を残し、型はその場で溶かされ、印紙は宮中正殿の中に納められている。
拐かされた時など、入れ替わりを防ぐためである。

背中に焼印があるとすれば、高貴なる血筋である事は疑いようが無い。
その事を何よりも大事としている内務府と殿中府が該当者無しと判断した意義は大きい…。

事実上ジンシは追放されたに等しい。

頭を打ち付けてどこかおかしくなったのだろうか。
元々自分は皇子なんかではなくて、そうだと思い込んでいた痴れ者だったのだろうか…。
…何か確かめる術は…。

ふと思いついた。

「ハル、いるか?」
コトッ。

思わず安堵の溜息が漏れた。
気が狂ってしまったか思ったが、影が側にいるという事は、まだ大丈夫だ。

「…調べられるか?」
コトッ、コトッ。
2つの音…。否…という事だ。
時期ではない…という事なのか?
それとももう我の命令では動かないのだろうか…。

「…そうか。わかった。離れないでいてくれるか…。」
コトッ。

…良かった。どうやらまだ「影の一族」には見放されてはいないようだ。

「…しばらくここにいるべきだろうか。」
コトッ。

ひとつの物音を聞いて安心できる。
ジャンの言うようにまずは身体を直さなければならない。
何か動くとしたらその後だ。

ジンシはそのままもう一度横になる事にした。
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