国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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来客

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ある日、父が山荘にやって来た。
珍しく客を連れている。

「いかが致したのですか?」
誰にも会わずに済むようにしていたのに、父自ら山荘に人を引き入れた。

「皇太子付きの近習、フーシン殿だ。今宵はここに泊まる。ホンは?」

ああこの人が…。

「リュウと狩場に向かいました。」
「直ぐ戻せ。」
「…畏まりました。」
行こうとすると、
「ジャンに行かせよ。」
「…畏まりました。」

セイに持てなしを託して、早々に着替えた。

初めて見たフーシンという人。
ジンシからフーシンの話はこの短い間にもたくさん聞かされた。

ジンシが心から信じていたフーシン。
母の形見の笛を託した御人。

目録に書かれていた肩書きを見て、皇太子の近習に引き上げられたのは、半分人質のようなものだともジンシは言っていた。

皇子の人質となりうる価値を持つ、おそらくは腹心の部下。ううん、きっと「友」だ。

そっと庭から外へ出て、厩からエンを出した。
厩には見慣れない馬が既に繋がれている。
父が泊まる…と言っていた事を改めて思い出した。

今日は馬術訓練で崖下りをすると言って出かけていった。崖下りをするのならば、きっとあの場所…。
そう当たりをつけたのは正解だった。

向こうからリュウとホンが馬に乗って掛けてくる。

「リ…ジャン殿!」
嬉しそうに駆けてくるホン。
「いかがした?共に遠乗りでもしましょうか?」
「…遠乗りはまたの機会に。お客です、フーシンと申す皇太子の近習が父と来ております。今宵は…泊まる、と。」

それだけで何かを察したのか、ジンシの顔が真顔になる。
「…そうですか。わかりました。すぐ戻りましょう。」

「会うのですか?」
「ええ、会います。」
「フーシンならば信じて良い。」

ああ、そうか、そうだ。
ジンシにとってフーシンは別格。

「心配してくれるのですね。」
「それは、もちろん。」
「嬉しいです。」

どういう意味だろうか。
「私、そんなに薄情者に見えますか?」
「いいえ、全く。」

リュウがニタニタと、薄気味悪い笑みを浮かべるている。
「俺、先戻りますか?」
「…いや、変な誤解をされると困る。」
「誤解じゃないでしょ。」
「違う!フーシンにだ。憚るようなことをしてはいないと思って貰わねばならない。」

あっ、そっちっすか、とリュウが呟く。

…話が見えない。

「…今夜、部屋に行きます。」
耳元でホンが囁く。
「…最後の夜になるかもしれないので。」

えっ?

しかしホンはリュウを連れてそのまま先へ先へと行ってしまった。

ホンが「最後の夜になるかも」と言った事がずっと引っかかっている。
もしかしたらフーシン殿はジンシ殿下を迎えに来たのかもしれない。
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