国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

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シーフォン

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※惨殺遺体の表現があります。
苦手だと思われる方は避けてくださいますようにお願いします。








参列者警護を装って城内へ入ったシーフォンを迎え入れたのは「影」だった。
将軍と影は既に軍務府をその手に押さえ込んでいた。
帝直轄の軍は大きく分けて6つある。
「玄武」「青龍」「白虎」「朱雀」「草」「影」である。

一番大きな「玄武」を率いていたのがティバル将軍。主に国土を守るための組織。
城と城下を守っていたのが「白虎」
「青龍」と「朱雀」は帝や皇子その家族を守っていた。

「青龍」は主に皇太子家族とジンシ殿下を守っていたが、ジンシ殿下崩御のため解散、皇族は「朱雀」が守る事になっていた。
「青龍」にいた兵士は「玄武」「朱雀」に振り分けられている。

「朱雀」を除いて全ては将軍に付いた。

「影」とともに帝の宮に走る。
帝の宮は屈強な「朱雀」の兵士に囲まれている。

外に出れなくなった帝はその権限を皇太子フェイに譲って養生に入ったとされている。
帝の宮に入り込み、その帝を救い出すのがシーフォンに課された任務である。
シーフォンは影達が使っている通路からコッソリと宮に入った。

「フェイの影はここを守らないのか?」
という疑問。
それを払ったのもまた影だった。
「長の決断であります故。」
影の長がジンシに付いた結果だと聞かされた。

通路を抜けて、扉を開けた瞬間、容赦なくシーフォンを襲ったのは、耐えがたい「臭い」だった。

そこは死臭漂う惨劇の跡地だった。
必死で帝を守ろうと命を掛けた者たちはそのままそこに捨て置かれたままだった。
流れ出した血は既に黒く乾き、腕がない者、腑が飛び出している者、夥しい数の屍が無雑作に転がり、既に腐敗が進み、蟲が集り始めていた。

「…酷い。」
戦場に長くいたシーフォンでさえもこんな酷い場面は知らない。
敵方でさえも死者の尊厳は守ってくれた。
ただ呆然と立ちすくんだ。

「お急ぎ下さい。」
影に急かされて我に戻されたシーフォンは奥に奥にと走っていった。
「中には朱雀のものは居りません。臭いに耐えきれず、外のみの警備になりました。」
あまりに周りを気にしないで走るので見つかるのではないかと思ったシーフォンに影は告げる。

奥に行けばいくほどに死者の骸の重なりは酷い。
とうとう帝の寝所の前まで来た。
ここに来るまでにただ一人も生きている者の姿はなかった。

「…何があった。」
「ご自身の目でお確かめ下さい。」

そう言って影は寝所の扉を大きく開いた。

外の悲惨さに比べて、寝所の中は綺麗だった。
臭いさえなければいつもの場所のようにも見える。

寝台には静かに横たわる帝らしき男の遺体が大切に寝かされていた。
「…帝。」

今日シーフォンに与えられた使命は「帝の救出」のはずだった。
膝を床に落とした。

「いつだ。なぜ黙っていた。」
昨日今日ではない事は一目で判る、酷い姿である。

影ならばいくらでもその報せが出来た筈だ。
「…形見分けの後です。隠したのはゼンシ様の遺言です。」

帝の死が明らかにされたら、そのまま皇太子がその位に就いてしまう。
そうなれば帝と弟皇子での戦いになる。
「帝」に逆らう事に迷い戸惑う者の数が増える。

…ゼンシ様はそう言った。

「我の死を隠せ!隠し通せ!
既に間に合わないと知れば、ジンシは動かない。」

太刀傷を受けて臥せってから弱って息切れるの間、帝は事細かく影を通じて指示を出していたという。
そしてその間幾度となく宮の中では兵士たちがそれぞれの主人のために戦った。

「白虎」は言葉そのままに命を張った。
少しでも朱雀の兵を遠ざける為に戦い、あえて遺体はそのままにした。

目論見は当たり、朱雀達どころか皇太子さえも寄り付かなくなった。

「フェイには毎日影の者が嘘の報告に上がっておりました。
影の一族の長は次の主人をジンシ殿下と見据えました。」

「生き残った者は?」
「ここにはもうおりません。ゼンシ様亡き後宮を脱出しております。」

朱雀の兵は屍しか残っていない宮をただひたすら「警護」していたというのか…。

影は帝の寝台の下から箱ひとつを取り出した。
「本来ならば霊廟と正殿にあるべきものですが、早々にこちらに隠しました。」

「帝よりジンシ様に託されたものでございます故に。」

箱に入っていたのは、ジンシの剣と一葉の紙。皇子の龍の印を押した紙だった。
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