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最後の時
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上の方が騒がしくなってきた。
人の足音が響いている。
「時間だ。足りない事は影に聞け!影はお前を選んだからなんでも正しく教えてくれるだろう。さあ殺してくれ。」
穏やかな声だった。
フェイが手に持っていた懐剣を俺に向かって差し出した。
フェイの覚悟を知り、迷いながらもそれを受け取ろうとした。
「…ダメよ!ジンシ!殺しては駄目!」
とリーエンが俺の伸ばした手にしがみついた。
「リーエン、離してくれ。父を殺した奴だ。俺を殺そうとした奴だ。きっと見逃しては貰えない。」
この先を思うとそうするしかないか、と俺は半ば諦めていた。
「ダメよ。あなたも同じになる。父を殺したフェイと同じになる。兄殺しになってしまう!」
必死な顔で俺を説得するリーエンの顔を見て迷いが更に大きくなる。
「…違うよ、リーエン。帝は父じゃないし、俺を殺してもジンシが兄に手を掛けた事にはならない。」
変わらず穏やかな声でフェイがそれを拒む。
「なるわ!なるのよ!」
その時、フェイがリーエンを引き寄せて抱え込んだ。
手にしていた懐剣をリーエンに当てる。
「ダメよ!諦めてはダメ!」
とリーエンが叫び、
「じゃあ、お前が死ね!」
とフェイが怒鳴る。
「やめろ!」
フェイは本気だ、リーエン、リーエン!
「じゃあ、お前がやれ!」
フェイは言葉を続ける。
「自分じゃ出来なかった。だから殺してくれ!」
ああ、これが。きっとこれが、フェイが願っていた事。
「兄」が「皇太子」が俺に願っている。
その時、上から何か塊が降ってきて、突然周りが白い煙が立ち上る。
次第に濃くなる煙に囲まれて何も見えなくなった。
「リーエン!影だ!動くな!」
「ジンシ!」
ダン!ダン!
誰かが上から飛び降りて、着地する音がいくつも響いた。
誰かに手を取られて、後ろに回された。
「やめろ、離せ!」
「…影の一族は新しい長を決めました。
申し訳ありません。ジンシ殿下には再び死んでもらわねばなりません。」
「やめろ!」
「イヤ!やめて!なんで!なんでジンシなの!」
リーエンの泣き叫ぶ声が空気を裂いていく。
「国の安寧の為です。死んだはずの皇子が生きていて、皇太子を殺した等、民に知らせるわけにはいきません。」
「待て!帝の血はジンシにしか残されていない!殺すなら俺だ!俺を殺せ!」
「帝の血はリーエン様の中に居ります。問題はございません。」
「いや!ダメ!もう誰も殺してはいけない!でないと終わらないの!終わらないのよ!」
リーエンの泣き叫ぶ声だけが響いた。
俺は…。
また諦めるのか?
ダメだ、もう諦めてはいけない。
「駄目だ!もうこれ以上の死は要らない。
例え罪人と成り果てても、命は奪うな!」
「それがあなたの願いですか?」
影の声が耳元で響く。
「ああ、そうだ!もう誰も傷付く必要はない!咎めは俺に与えればいい。」
本音だった。
これ以上誰かが傷付くのはもうウンザリだ。
「御免!」
影の声と共に、バシッと首筋に痛みが走る。
「うっ!」
首に手刀が入れられた途端、何も見えなかった真っ白な世界は、真っ黒な世界へと変わった。
…リーエン…。
最後に見えたのは、「生きろ」と言ったあの天女の顔だった。
人の足音が響いている。
「時間だ。足りない事は影に聞け!影はお前を選んだからなんでも正しく教えてくれるだろう。さあ殺してくれ。」
穏やかな声だった。
フェイが手に持っていた懐剣を俺に向かって差し出した。
フェイの覚悟を知り、迷いながらもそれを受け取ろうとした。
「…ダメよ!ジンシ!殺しては駄目!」
とリーエンが俺の伸ばした手にしがみついた。
「リーエン、離してくれ。父を殺した奴だ。俺を殺そうとした奴だ。きっと見逃しては貰えない。」
この先を思うとそうするしかないか、と俺は半ば諦めていた。
「ダメよ。あなたも同じになる。父を殺したフェイと同じになる。兄殺しになってしまう!」
必死な顔で俺を説得するリーエンの顔を見て迷いが更に大きくなる。
「…違うよ、リーエン。帝は父じゃないし、俺を殺してもジンシが兄に手を掛けた事にはならない。」
変わらず穏やかな声でフェイがそれを拒む。
「なるわ!なるのよ!」
その時、フェイがリーエンを引き寄せて抱え込んだ。
手にしていた懐剣をリーエンに当てる。
「ダメよ!諦めてはダメ!」
とリーエンが叫び、
「じゃあ、お前が死ね!」
とフェイが怒鳴る。
「やめろ!」
フェイは本気だ、リーエン、リーエン!
「じゃあ、お前がやれ!」
フェイは言葉を続ける。
「自分じゃ出来なかった。だから殺してくれ!」
ああ、これが。きっとこれが、フェイが願っていた事。
「兄」が「皇太子」が俺に願っている。
その時、上から何か塊が降ってきて、突然周りが白い煙が立ち上る。
次第に濃くなる煙に囲まれて何も見えなくなった。
「リーエン!影だ!動くな!」
「ジンシ!」
ダン!ダン!
誰かが上から飛び降りて、着地する音がいくつも響いた。
誰かに手を取られて、後ろに回された。
「やめろ、離せ!」
「…影の一族は新しい長を決めました。
申し訳ありません。ジンシ殿下には再び死んでもらわねばなりません。」
「やめろ!」
「イヤ!やめて!なんで!なんでジンシなの!」
リーエンの泣き叫ぶ声が空気を裂いていく。
「国の安寧の為です。死んだはずの皇子が生きていて、皇太子を殺した等、民に知らせるわけにはいきません。」
「待て!帝の血はジンシにしか残されていない!殺すなら俺だ!俺を殺せ!」
「帝の血はリーエン様の中に居ります。問題はございません。」
「いや!ダメ!もう誰も殺してはいけない!でないと終わらないの!終わらないのよ!」
リーエンの泣き叫ぶ声だけが響いた。
俺は…。
また諦めるのか?
ダメだ、もう諦めてはいけない。
「駄目だ!もうこれ以上の死は要らない。
例え罪人と成り果てても、命は奪うな!」
「それがあなたの願いですか?」
影の声が耳元で響く。
「ああ、そうだ!もう誰も傷付く必要はない!咎めは俺に与えればいい。」
本音だった。
これ以上誰かが傷付くのはもうウンザリだ。
「御免!」
影の声と共に、バシッと首筋に痛みが走る。
「うっ!」
首に手刀が入れられた途端、何も見えなかった真っ白な世界は、真っ黒な世界へと変わった。
…リーエン…。
最後に見えたのは、「生きろ」と言ったあの天女の顔だった。
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