国を割る姫  避けていた宿命が向こうから飛び込んで来るなんて想定外!

枝豆

文字の大きさ
59 / 87
鳳の羽を纏う龍

行方不明の者1

しおりを挟む
リーエンの披露目の席で、奥宮太夫シェンはイライラを募らせていた。

(全く…何をモタモタしているのか。)
不甲斐ない娘がフェイから払われて自席へと戻る姿を横目で睨みつけた。

やはりスーチーでは無理だったか…。
まだ手が付くどころか、影さえもつけられていない娘である。
「側女とは認めない!」
フェイの気概がこんなところまで現れているのが忌々しい。

ソニアが宮に来た時に、ソニアを寝所に呼び込まない様に、フェイに色小姓を充てがったのはソニアの国の干渉を避ける為。あの国はいずれ遠ざけねばならない。
そのため世継ぎは要らない。
これは国策だった、と信じている。

どちら側になるかわからなかったので幾人かを入れてはみたが、フェイは受ける方を選んだ。

しかし誤算が生まれた。
フェイはのめり込みすぎた。
昼夜問わず、暇さえあれば小姓達と部屋に籠る始末。
慌ててスーチーを入れたが遅かったようだ。

…血は争えぬ、か。

私が婚約者に唆されて、アナンの宮に通うようになったのは13歳の頃だった。
婚約者もまたアナンの毒に塗れていたひとりだった。

初めは泣きながら、それが渋々へと変わり、いつの間にか嬉々として通うようになった頃、帝からフェイの子守へと配置された。

フェイの子守となったら、アナンに重宝されるようになった。
フェイの成長を伝え、アナンの思惑通りにフェイを育てた。

アナンの願いは帝、ただひとり。
求めても求めても与えられない愛を、代替品で賄う。
…馬鹿な女だ。哀れな女だ。
女の喜びは気持ちさえ入れ変えてしまえばいかようにもなるというのに。

フェイにソニアが呼ばれ、慌しく席を立つのを見て疑念が湧いた。

(このタイミングで…か?)
時はリーエンが琴を奏でている場面である。
…不興を買うぞ?
娘を溺愛している将軍である。溺愛ぶりは届けられた婚礼用具一式で窺い知れた。
わずかひと月の間であれだけの量と質である。

…リーエンには要らんだろ、と半分をスーチーの部屋に、半分を嫁に行った末の娘に送った。

チラリ将軍の様子を伺おうとして驚愕した。
将軍が座っていた席は空だった。
伴の者もいない。

他にいない者は…。
白虎の長、玄武の長の姿もなかった。
主役の余興というのにこぞって皆が席を離れるのは不自然だ。

このところフェイは少しおかしい。

短慮に走り帝に逆らった私をあっさり許したこと、手筈を無視し直ぐジンシを山荘に送ったこと、ジンシの側近だったフーシンを重用し出したことも。
あげく何も知らない将軍の娘を所望し、早々に手を付けた。
あの不吉な国を割ると言われた女を、だ。

…何か起こる。

勘だった。
直ぐにスーチーを連れて席を立った。
それにソニアがチェンを連れて出て行った今、ここにスーチーを阿呆面のまま残しておくわけにもいかない。

脇の目立たぬ仲居達の通用口を使って勝手口から外へ出ることにした。

「…あれは白虎?」
遠目に兵装束に身を包んだ白虎が垣間見える。

「…捨てるぞ。」
帝に逆らってから覚悟はしていた。そのための準備もしていた。
いつ命を取られるかわからないのだ。

かつて夫であったあの者はまだ慙愧の念を保っているだろうか。
奥を出て頼れる者はあの者しかいないのだけれど…。

出入りの商人に見えるように服装を変えて、スーチーを伴に門を潜った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

処理中です...