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第一章
第6話 降格
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お嬢様の尋問に耐えきって、部屋に戻った私は寝間着に着替えてベッドに横になった。
なぜ私がここにいるか、その理由をお嬢様に知られるわけにはいかない。だってそれは……。
私は五年前の出来事を思い返していた。
「ヤッター!私やりました。天界を救いました。これは2階級特進ものです」
上手い具合にあれを処理した私は、思わず雄叫びを上げてしまった。
「何事ですかシリウス。うるさいですよ」
事務室側のドアを開け先輩が怒鳴り込んできた。
「先輩聞いてください。私やりました。天界を救いました!」
「それは聞こえていたわ。それでいったいどういうことなの」
「それがですね先輩、私は天界を廃墟にしてしまいそうな邪悪な存在を事前に処分したんです」
「シリウスあなた。邪悪な存在ってなに? 処分ってなにしたの」
胸を張りドヤ顔で報告する私に先輩はなぜか困惑した様子だ。
「あのですね。先輩驚かないでくださいよ。そいつは、魂のくせに人型の実態があって、魔力関係のステータスが全てカンストしていたんです。おまけに邪悪な目でこちらを睨んできて、危なくこちらの存在が消されるところだったんです」
「なんなのそれ、魂のくせに人型の実態があって、魔力関係のステータスが全てカンストしてるなんてあるわけないでしょ。寝ぼけてるの」
先輩は私の話が信じられないようだ。まあ、それは無理もない。直接対峙していなければ私でもそんな話信じないだろうから。でも、今でも残っているこの恐怖感は本物だ。
「それがあったから騒いでるんですよ。首元で切りそろえられた漆黒のストレートヘアに、深淵の黒い瞳、暗闇の黒いワンピースを着た少女。思い出しただけでふるえが止まりません」
「漆黒のストレートヘアに、深淵の黒い瞳の少女……。ちょっと待ってその子名前はなんていうの!」
急に大きな声を出して、先輩にはアレに心当たりがあるのだろうか?
「名前ですか? ちょっと待ってくださいね。えーと。神薙春ですね」
「神薙春。同じ名前ね。でもまだ死ぬのは60年以上先のはず。その子年齢は」
「28歳ですね。本来はまだ死ぬわけではなかったようですけど、間違えて死んじゃったようです」
「間違えて死んじゃったようです。て、あなたなにしたの」
「それに関しては、私は何もしていませんが」
私がアレの死に関係ないことは少し考えれば分かるだろうに、なぜだか先輩はすごく焦っているようだ。
「そ、そうね、それでここに来たその子をどうしたの」
「処分しました」
「処分ってどうしたの」
先輩は私の胸倉をつかむ勢いで迫ってきた。ちょっと近いですって。
「放棄されていたゲーム世界に廃棄しました」
「廃棄?」
「悪役令嬢として転生させました」
私は、行ったことをありのままに先輩に伝えた。
「そう転生させてしまったの……、ちょっと電話借りるわね」
先輩はそう言うと、デスクの上の電話機の受話器を手に取り、ダイヤルを回した。
いったいどこに電話をかけているのだろう? 私は電話から聞こえてくる声に聴き耳をたてた。
「もしもし、私です」
『なんじゃ』
「じつは、大変なことになっていて、地球に転生させていた例の娘ですが、間違って死んでしまったようです」
『なんじゃと、死んだ。そんなことはありえんだろう』
「それがありえたようで」
『それで、魂は今どうなっている』
「それなのですが、担当した者が転生させてしまいました」
『それこそありえんだろう。亡くなったばかりの魂は、天国か地獄に送る決まりになっているはずじゃ』
「それが、担当者がビビってしまい、規則を曲げて転生させてしまったようです」
『なに……。そうか。それで、どこに転生させたのじゃ』
「放棄されていたゲーム世界だそうです。そこの悪役令嬢として転生させたようです」
『ゲーム世界の悪役令嬢か、それは困ったの』
「どういたしましょうか」
『そうじゃの、その担当者を二階級降格させ、その世界に堕とし、悪役令嬢のサポート役としよう。それで何とかならないようならまた考えるとしよう』
「わかりました。二階級ですね。ではそのように」
どうやら電話の相手は主神様のようだ。
先輩は話を終えると電話の受話器を置いた。
ところどころしか話が聞こえなかったが、どうやら二階級特進のようだ。やった!
「対応が決まったわ」
「二階級特進ですか」
「なに言っているの、降格に決まっているでしょ」
「えー。なんでですか。天界救ったんですよ」
昇進のはずが降格! そんなはずない。何かの間違いよ。
「馬鹿言ってんじゃないわよ。規則を曲げて勝手に転生させてタダで済むはずないでしょ。二階級の降格よ」
「二階級の降格……」
茫然自失になっている私に先輩は追い打ちをかけた。
「それと、例のゲーム世界に降りて、悪役令嬢のサポートをしてもらうから」
「そんなー。それだけは勘弁してください。あれとは、もう二度と会いたくありません」
またあの恐怖を味わらなければなければならないのか。考えただけでも身がすくむ。とてもではないが無理だ。
「自業自得よ。諦めなさい」
「先輩。そこを何とかしてください」
先輩に縋りつくも、まったく相手にしてもらえない。
「こればかりは、主神様の命令だから私ではどうにもならないわ」
「トホホ」
主神様の命令では諦めるしかない。私は途方に暮れるのだった。
そして私は主神様の命令どおり、降格されて罰としてここに堕とされた。堕女神だなんて、そんな情けないことお嬢様に知られるわけにはいかない。
なぜ私がここにいるか、その理由をお嬢様に知られるわけにはいかない。だってそれは……。
私は五年前の出来事を思い返していた。
「ヤッター!私やりました。天界を救いました。これは2階級特進ものです」
上手い具合にあれを処理した私は、思わず雄叫びを上げてしまった。
「何事ですかシリウス。うるさいですよ」
事務室側のドアを開け先輩が怒鳴り込んできた。
「先輩聞いてください。私やりました。天界を救いました!」
「それは聞こえていたわ。それでいったいどういうことなの」
「それがですね先輩、私は天界を廃墟にしてしまいそうな邪悪な存在を事前に処分したんです」
「シリウスあなた。邪悪な存在ってなに? 処分ってなにしたの」
胸を張りドヤ顔で報告する私に先輩はなぜか困惑した様子だ。
「あのですね。先輩驚かないでくださいよ。そいつは、魂のくせに人型の実態があって、魔力関係のステータスが全てカンストしていたんです。おまけに邪悪な目でこちらを睨んできて、危なくこちらの存在が消されるところだったんです」
「なんなのそれ、魂のくせに人型の実態があって、魔力関係のステータスが全てカンストしてるなんてあるわけないでしょ。寝ぼけてるの」
先輩は私の話が信じられないようだ。まあ、それは無理もない。直接対峙していなければ私でもそんな話信じないだろうから。でも、今でも残っているこの恐怖感は本物だ。
「それがあったから騒いでるんですよ。首元で切りそろえられた漆黒のストレートヘアに、深淵の黒い瞳、暗闇の黒いワンピースを着た少女。思い出しただけでふるえが止まりません」
「漆黒のストレートヘアに、深淵の黒い瞳の少女……。ちょっと待ってその子名前はなんていうの!」
急に大きな声を出して、先輩にはアレに心当たりがあるのだろうか?
「名前ですか? ちょっと待ってくださいね。えーと。神薙春ですね」
「神薙春。同じ名前ね。でもまだ死ぬのは60年以上先のはず。その子年齢は」
「28歳ですね。本来はまだ死ぬわけではなかったようですけど、間違えて死んじゃったようです」
「間違えて死んじゃったようです。て、あなたなにしたの」
「それに関しては、私は何もしていませんが」
私がアレの死に関係ないことは少し考えれば分かるだろうに、なぜだか先輩はすごく焦っているようだ。
「そ、そうね、それでここに来たその子をどうしたの」
「処分しました」
「処分ってどうしたの」
先輩は私の胸倉をつかむ勢いで迫ってきた。ちょっと近いですって。
「放棄されていたゲーム世界に廃棄しました」
「廃棄?」
「悪役令嬢として転生させました」
私は、行ったことをありのままに先輩に伝えた。
「そう転生させてしまったの……、ちょっと電話借りるわね」
先輩はそう言うと、デスクの上の電話機の受話器を手に取り、ダイヤルを回した。
いったいどこに電話をかけているのだろう? 私は電話から聞こえてくる声に聴き耳をたてた。
「もしもし、私です」
『なんじゃ』
「じつは、大変なことになっていて、地球に転生させていた例の娘ですが、間違って死んでしまったようです」
『なんじゃと、死んだ。そんなことはありえんだろう』
「それがありえたようで」
『それで、魂は今どうなっている』
「それなのですが、担当した者が転生させてしまいました」
『それこそありえんだろう。亡くなったばかりの魂は、天国か地獄に送る決まりになっているはずじゃ』
「それが、担当者がビビってしまい、規則を曲げて転生させてしまったようです」
『なに……。そうか。それで、どこに転生させたのじゃ』
「放棄されていたゲーム世界だそうです。そこの悪役令嬢として転生させたようです」
『ゲーム世界の悪役令嬢か、それは困ったの』
「どういたしましょうか」
『そうじゃの、その担当者を二階級降格させ、その世界に堕とし、悪役令嬢のサポート役としよう。それで何とかならないようならまた考えるとしよう』
「わかりました。二階級ですね。ではそのように」
どうやら電話の相手は主神様のようだ。
先輩は話を終えると電話の受話器を置いた。
ところどころしか話が聞こえなかったが、どうやら二階級特進のようだ。やった!
「対応が決まったわ」
「二階級特進ですか」
「なに言っているの、降格に決まっているでしょ」
「えー。なんでですか。天界救ったんですよ」
昇進のはずが降格! そんなはずない。何かの間違いよ。
「馬鹿言ってんじゃないわよ。規則を曲げて勝手に転生させてタダで済むはずないでしょ。二階級の降格よ」
「二階級の降格……」
茫然自失になっている私に先輩は追い打ちをかけた。
「それと、例のゲーム世界に降りて、悪役令嬢のサポートをしてもらうから」
「そんなー。それだけは勘弁してください。あれとは、もう二度と会いたくありません」
またあの恐怖を味わらなければなければならないのか。考えただけでも身がすくむ。とてもではないが無理だ。
「自業自得よ。諦めなさい」
「先輩。そこを何とかしてください」
先輩に縋りつくも、まったく相手にしてもらえない。
「こればかりは、主神様の命令だから私ではどうにもならないわ」
「トホホ」
主神様の命令では諦めるしかない。私は途方に暮れるのだった。
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