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第二章
第62話 マジックペン
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結局ヒロインは、レグホン商会でアルバイトをすることになったようだ。
シローの話によると、彼女は大変有能で、発注、経理、販売まで一人でこなし、大変な仕事も嫌な顔一つせず黙々と片づけているそうだ。
私が発案し、彼女が手がけたマジックペンの売り上げも好調で、これも全て彼女のおかげとういことだ。
最も、シローの場合、恋愛補正が働いている可能性があり、話をそのまま鵜呑みにはできない。
ということで、私は一度ヒロインが働いているところを見に行くことにした。
シローの話によると、ちょうど今の時間なら、店先に出てマジックペンを販売しているはずだ。
そんなわけで、私は、シリーを引き連れ、レグホン商会の王都支部へ向かっている。
いた。ヒロインだ。なにやら店先に出されたマジックペンの宣伝販売用の屋台で客ともめている。
「お前がこんな物売るから、俺のところのインクとペンが売れなくなったんだ。どうしてくれる」
客ではなかったようだ。ただのクレーマーだ。というか、キース=ヨークシャだ。よく絡んでくるやつだ。
「そんな売り上げに響くような影響があるとは思えませんが。それに、こちらは特に不正をしているわけではないですから。自由市場に競争があるのは当然です」
「そんなこと言っていいのか。こっちは、侯爵家と繋がりがあるんだぞ。ゆくゆくは王妃になるお方だ、こんな商会簡単に潰して仕舞えるんだぞ」
本当に侯爵家と繋がりがあるのか? でもまあいい。取り敢えず止めよう。
「あら、ゆくゆくは王妃になるお方とは、マリー様のことでしょうか。私が開発したマジックペンが、ご迷惑をかけているなら、謝らないといけないかしら」
「そうだ謝ってもらおうか。そしてそれの販売権をこちらに寄越……公爵令嬢!」
「そう、私はあなたに謝らなければいけないの?」
「いえ、滅相も無い。そのようなことはございません。私は、こいつに言っていたのです」
「でもね。先程も言ったけれど、マジックペンを開発したのは私なの。それにレグホン商会に販売するように頼んだのも私よ。もしそちらにご迷惑をかけているなら謝らないといけないのは私だわ」
「いえ、迷惑など一切被っていませんから。ちょっと勘違いしただけです。それでは私はこれで失礼します」
キースは慌てて逃げ出した。
「イライザ様、ありがとうございます。また、助けていただきました」
「いいのよ。しかし、あのキースが言っていたことは本当かしら」
「キースが言っていたことですか?」
「侯爵家と繋がりがあるとかいう話よ」
「それですか。多分実際にあるのだと思います。マリー様とキースが話しているのを見たことがありますから」
「そう、だとするとあのキースにもよほど注意しなさいよ」
「注意ですか」
「あなた侯爵令嬢に狙われているのよ。忘れたわけではないでしょうね」
「そうですね」
「アレー。噂のマジックペンを買いに来てみれば、変わった組み合わせだね」
「聖女様、いつになったら悪を滅するために呼んでくれるのだ」
「ラン司祭。それにグラール。あなたたちなんでこんなところにいるのよ。それとグラール私のことは聖女ではなくイライザと呼んで」
「だからマジックペンを買いに」
「そんなのはいいわ。なぜグラールが一緒なの」
「僕がお世話係に決まってね。見聞を広げることも大事かと思って、こうして連れ歩いているんだ」
「もしかして幼女趣味なの」
「なぜそうなる」
「グラール、この人に変なことされなかった」
「変なこと? こいつ、もしかして悪なのか」
「変なことなんてしてないですよ。冗談でもそんなこと言うのやめてくださいよ。冗談で消されたらたまったものじゃない」
「それで、大丈夫なの。襲われたり、攫われたりしない」
「そんな命知らずはいないよ。仮に攫われても君に呼び出してもらえば済むことだろ」
「それもそうね。ちょっと待って、私が呼び出して、グラールが呼び出されるけど、私が魔法を使っているわけではないわよね。私召喚魔法は使えないし」
「そうだね。グラールが君の呼び出しを感知して、転移しているのだろうね」
「つまり、魔法を使っているのはグラールの方よね」
「魔法かどうかわからないけれど、そうだろうね。それがどうかしたかい」
「……。いや、何でもないわ」
「それだけ話しておいて何でもないはないだろう」
「ごめん、ちょっと気になっただけなの」
「どうしてもしゃべる気がないようだね」
「ごめんね」
グラールを鑑定して魔術回路をコピーできればいろいろ便利そうだ。学園にいてもシリーを呼び出せる。
ヒロインに持たせてピンチの時に呼び出してもらうのもいいかもしれない。いや、盗まれて悪用されると大変なことになるのでそれはだめか。
緊急事態を知らせる機能だけなら問題ないだろう。シリーがいれば飛び放題だし。だめだ、転移は禁止されていた。
まあ、転移で行かなくても緊急事態を知らせる機能は重要かも知れない。
と、いろいろ御託を並べ、ラン司祭には内緒で、グラールの魔術回路を鑑定した。
鑑定は出来た。だが超複雑な立体重層魔術回路だった。これは解析に時間がかかる。
ヒロインを死なせないためにも、緊急時通知機能は早めに解析しよう。
「それで、マジックペンは売ってもらえるかな」
「あ、すみません。ラン司祭いらっしゃいませ。マジックペンですね。何色にします」
「何色?」
「インクの色が五色ありまして。黒、赤、青、緑、茶色ですね。あと太さも普通、細、太の三種類あります」
「とりあえず全部一本ずつもらえるかな」
「それでしたら、こちらの箱詰めがお得です」
「じゃあそれで」
「一緒にこちらのペンケースなど如何ですか」
ヒロインは皮でできたマジックペンが三本ほど入るペンケースを勧める。
「元々、このマジックペンは移動先で場所を選ばず、サッと取り出して使うことを考えて作られた商品なんです。ですからこういったケースがあると、持ち運びに大変便利ですよ」
「じゃあそれももらおうかな」
「毎度ありがとうございます」
なかなかうまい商売をしている。ハンバーガーショップの店員以上だ。これなら販売は任せておいても大丈夫だろう。
「サーヤさん、それではごきげんよう」
「イライザ様、何か用事があったのではないのですか」
「ただ通りかかっただけよ。おほほほほ。ラン司祭とグラールもごきげんよう」
「ああ、また」
「イライザ様、早々の呼び出しを期待しているぞ」
「そうね。機会があればね」
グラールを使う機会があるだろうか。悪を滅する。人を消し去ってしまうとはいかなるものなのだろう。私にそれを行う覚悟があるだろうか。私は心の奥底に畏怖の念を抱いていた。
シローの話によると、彼女は大変有能で、発注、経理、販売まで一人でこなし、大変な仕事も嫌な顔一つせず黙々と片づけているそうだ。
私が発案し、彼女が手がけたマジックペンの売り上げも好調で、これも全て彼女のおかげとういことだ。
最も、シローの場合、恋愛補正が働いている可能性があり、話をそのまま鵜呑みにはできない。
ということで、私は一度ヒロインが働いているところを見に行くことにした。
シローの話によると、ちょうど今の時間なら、店先に出てマジックペンを販売しているはずだ。
そんなわけで、私は、シリーを引き連れ、レグホン商会の王都支部へ向かっている。
いた。ヒロインだ。なにやら店先に出されたマジックペンの宣伝販売用の屋台で客ともめている。
「お前がこんな物売るから、俺のところのインクとペンが売れなくなったんだ。どうしてくれる」
客ではなかったようだ。ただのクレーマーだ。というか、キース=ヨークシャだ。よく絡んでくるやつだ。
「そんな売り上げに響くような影響があるとは思えませんが。それに、こちらは特に不正をしているわけではないですから。自由市場に競争があるのは当然です」
「そんなこと言っていいのか。こっちは、侯爵家と繋がりがあるんだぞ。ゆくゆくは王妃になるお方だ、こんな商会簡単に潰して仕舞えるんだぞ」
本当に侯爵家と繋がりがあるのか? でもまあいい。取り敢えず止めよう。
「あら、ゆくゆくは王妃になるお方とは、マリー様のことでしょうか。私が開発したマジックペンが、ご迷惑をかけているなら、謝らないといけないかしら」
「そうだ謝ってもらおうか。そしてそれの販売権をこちらに寄越……公爵令嬢!」
「そう、私はあなたに謝らなければいけないの?」
「いえ、滅相も無い。そのようなことはございません。私は、こいつに言っていたのです」
「でもね。先程も言ったけれど、マジックペンを開発したのは私なの。それにレグホン商会に販売するように頼んだのも私よ。もしそちらにご迷惑をかけているなら謝らないといけないのは私だわ」
「いえ、迷惑など一切被っていませんから。ちょっと勘違いしただけです。それでは私はこれで失礼します」
キースは慌てて逃げ出した。
「イライザ様、ありがとうございます。また、助けていただきました」
「いいのよ。しかし、あのキースが言っていたことは本当かしら」
「キースが言っていたことですか?」
「侯爵家と繋がりがあるとかいう話よ」
「それですか。多分実際にあるのだと思います。マリー様とキースが話しているのを見たことがありますから」
「そう、だとするとあのキースにもよほど注意しなさいよ」
「注意ですか」
「あなた侯爵令嬢に狙われているのよ。忘れたわけではないでしょうね」
「そうですね」
「アレー。噂のマジックペンを買いに来てみれば、変わった組み合わせだね」
「聖女様、いつになったら悪を滅するために呼んでくれるのだ」
「ラン司祭。それにグラール。あなたたちなんでこんなところにいるのよ。それとグラール私のことは聖女ではなくイライザと呼んで」
「だからマジックペンを買いに」
「そんなのはいいわ。なぜグラールが一緒なの」
「僕がお世話係に決まってね。見聞を広げることも大事かと思って、こうして連れ歩いているんだ」
「もしかして幼女趣味なの」
「なぜそうなる」
「グラール、この人に変なことされなかった」
「変なこと? こいつ、もしかして悪なのか」
「変なことなんてしてないですよ。冗談でもそんなこと言うのやめてくださいよ。冗談で消されたらたまったものじゃない」
「それで、大丈夫なの。襲われたり、攫われたりしない」
「そんな命知らずはいないよ。仮に攫われても君に呼び出してもらえば済むことだろ」
「それもそうね。ちょっと待って、私が呼び出して、グラールが呼び出されるけど、私が魔法を使っているわけではないわよね。私召喚魔法は使えないし」
「そうだね。グラールが君の呼び出しを感知して、転移しているのだろうね」
「つまり、魔法を使っているのはグラールの方よね」
「魔法かどうかわからないけれど、そうだろうね。それがどうかしたかい」
「……。いや、何でもないわ」
「それだけ話しておいて何でもないはないだろう」
「ごめん、ちょっと気になっただけなの」
「どうしてもしゃべる気がないようだね」
「ごめんね」
グラールを鑑定して魔術回路をコピーできればいろいろ便利そうだ。学園にいてもシリーを呼び出せる。
ヒロインに持たせてピンチの時に呼び出してもらうのもいいかもしれない。いや、盗まれて悪用されると大変なことになるのでそれはだめか。
緊急事態を知らせる機能だけなら問題ないだろう。シリーがいれば飛び放題だし。だめだ、転移は禁止されていた。
まあ、転移で行かなくても緊急事態を知らせる機能は重要かも知れない。
と、いろいろ御託を並べ、ラン司祭には内緒で、グラールの魔術回路を鑑定した。
鑑定は出来た。だが超複雑な立体重層魔術回路だった。これは解析に時間がかかる。
ヒロインを死なせないためにも、緊急時通知機能は早めに解析しよう。
「それで、マジックペンは売ってもらえるかな」
「あ、すみません。ラン司祭いらっしゃいませ。マジックペンですね。何色にします」
「何色?」
「インクの色が五色ありまして。黒、赤、青、緑、茶色ですね。あと太さも普通、細、太の三種類あります」
「とりあえず全部一本ずつもらえるかな」
「それでしたら、こちらの箱詰めがお得です」
「じゃあそれで」
「一緒にこちらのペンケースなど如何ですか」
ヒロインは皮でできたマジックペンが三本ほど入るペンケースを勧める。
「元々、このマジックペンは移動先で場所を選ばず、サッと取り出して使うことを考えて作られた商品なんです。ですからこういったケースがあると、持ち運びに大変便利ですよ」
「じゃあそれももらおうかな」
「毎度ありがとうございます」
なかなかうまい商売をしている。ハンバーガーショップの店員以上だ。これなら販売は任せておいても大丈夫だろう。
「サーヤさん、それではごきげんよう」
「イライザ様、何か用事があったのではないのですか」
「ただ通りかかっただけよ。おほほほほ。ラン司祭とグラールもごきげんよう」
「ああ、また」
「イライザ様、早々の呼び出しを期待しているぞ」
「そうね。機会があればね」
グラールを使う機会があるだろうか。悪を滅する。人を消し去ってしまうとはいかなるものなのだろう。私にそれを行う覚悟があるだろうか。私は心の奥底に畏怖の念を抱いていた。
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