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02「黙って俺に身を委ねていれば良いんだよ」

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それ以来、僕は毎日のように王子とベッドを共にすることになった。

初めて一緒に寝た夜は、彼が僕の身体をあちこち触ったりしてきたので、しっかりと注意をした。
「こら、王子!もう子供じゃないんだからいたずらしないでください」
「えっ、いたずらってお前……これはそういうのじゃなくて……」
「え?いたずらじゃないなら、何なのですか?」
「それは……いや、なんでもない……」
そう言って彼は、僕に背を向けるように寝返りを打った。
「もう……変な王子ですね」
人肌が恋しいのだろうか。王子という立場は、きっと色々大変なんだろう。
そんなことを考えているうちに、僕もまた眠りについていた。

その後も彼は毎晩スキンシップをしてきた。
初めは抱きついて眠るだけだったのが、おやすみのキスもされるようになる。
「おやすみ、ルセット……ちゅっ♡」
「ひあっ!?何をするんですか!」
「おやすみのキスだよ」
「そ、そうなんですね……」
「うん、そうだよ」
頬にするだけの軽いものだからまあいいか、と思っていたが、段々とエスカレートしていき、そのうちに舌を入れる深いものになっていった。
「んむっ……んぅう……ぷはぁっ」
息継ぎをする暇もなく続けられるため、苦しくなって口を離す度に、唾液が糸を引くのを感じる。
「ルセット……可愛いぞ……」
「な、何言ってるんですか!さすがに、これはやり過ぎですよ……!」
「嫌なのか?」
「えっと……別に嫌ではないですけど……」
「ならいいじゃないか。お前は黙って俺に身を委ねていれば良いんだよ」
「そんな……あっ……もうダメですって……んむ」
強引な王子に流されて、結局毎晩おやすみのキスを交わした。
毎晩繰り返しているうちにすっかり慣れてきて、いつの間にかそれが当たり前になってしまった。


そうして毎晩一緒に寝ているうちに、城中に噂が流れ始める。
『ランヴェルセ王子とルセットが付き合っている』
それを耳にした途端、僕は血の気が引いた。
従者と付き合っているなんて噂が広まれば、王子に迷惑をかけてしまうに違いない。
僕は必死になって否定して回ったが、その努力虚しく誤解は解けなかった。
そして、ついに国王陛下の耳に入ったらしく、呼び出しを受けてしまったのだ。

***

「それで、これは一体どういうことなのかね?」
僕の目の前にいる王子の父上、つまり国王が問いかけてきた。
「えっと……それは……その……」
僕は何と言えば良いかわからず、言葉を詰まらせてしまう。
すると、一緒に呼び出された王子が口を開いた。
「父上、申し訳ございません!全て俺の責任です!罰なら俺が受けますので、どうかルセットは許してください!お願いします!」
そう言って王子は頭を下げる。
(どうして僕なんかのために、王子がそこまで……?)
ただの従者に過ぎない自分を助けてくれる彼の優しさに、胸が熱くなるような感覚を覚えた。
「ランヴェルセ……お前という奴は……どうしていつもいつも……」
そんな王子を、国王は呆れた様子で見つめている。
「あ、あの!ランヴェルセ王子は悪くありません!皆の誤解を解けなかった僕が悪いんです!」
僕が必死に訴えかけると、国王は深い溜息をついた。
「ルセット、お前は下がれ。私はこの馬鹿息子と話し合わなければならない……」
「で、でも……」
「ルセット、大丈夫だから。俺に任せておいて」
そう言って王子はニコッと微笑んだ。
「はい……」
促されて渋々退くと、彼はすぐに国王の前へ歩み出る。
「父上、少し落ち着いて話を聞いていただけませんか?」
「ふむ、聞いてやろう。なんだ?」
「俺は、ルセットが好きなんです」
「なるほど……それでルセットを無理矢理部屋に連れ込んでいたわけか」
「違います!俺はただ、自分の気持ちを伝えていただけで……」
「ほう、ではルセットはランヴェルセをどう思っているんだ?本当の気持ちを教えてくれないか?」
国王が僕の方を向いて問いかける。突然こっちに話を振られて焦ってしまった。
「え、えっと、僕は、ランヴェルセ王子のことはもちろん好きですが……」
「ふむ……恋愛的な意味で好きということか?」
「恋愛!?そ、それは違うと思いますが……」
「やはり、そういうことか……」
国王はどこか憂いを帯びた表情を王子に向ける。
「ランヴェルセ、どうやらルセットにお前の気持ちは全く伝わっていないようだぞ」
「そうみたいですね……まさかここまでとは思いませんでした」
いったい二人は何の話をしているのだろうか。
「あの、お話がよく見えませんが……つまりどういうことでしょうか?」
恐る恐る尋ねると、国王が僕達に向かって言った。
「ランヴェルセ、ルセット。お前たちはまず一度よく話し合いなさい。話はそれからだ」
「はい……わかりました……」
そうして僕らは、部屋へと戻ることになった。
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