ゲームの世界に転移したら美形王子に溺愛されてるんですが!?

krm

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05.本を読みたかっただけなんですが!?

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「ミノル、今日はこれからどうする?」
朝食を終えると、王子が尋ねてきた。
「そうですね……この世界のことを色々知りたいのですが」
「それなら、書庫に行ってみるといいよ」
「おお!書庫があるんですね」
いかにもゲームっぽくてワクワクする。どんな本があるんだろうか。
「ああ。私が案内しよう」
「ありがとうございます!」
ということで、早速書庫へと向かうことになった。

王子と一緒に書庫に入ると、圧倒されるほどの本が並んでいた。天井まで届くほどの棚があり、びっしりと大量の本で埋まっている。
「うわぁ、すごい量の蔵書ですね!」
「ここは、王国で一番大きな書庫なんだ」

そして、本を見て驚いた。
「あれ?文字が読めるぞ……」
この世界の雰囲気に似合わず、本の文字は日本語で書かれていたのだ。
日本のゲームだからそれはそうか。そういえば、今更だが言葉も普通に通じているし、問題なく意思疎通もできるな……。
「それがどうかしたかい?」
「いえ、なんでもないです!」
俺は適当にはぐらかすことにした。あまり詳しく言うと、ついゲームの内容まで話してしまいそうだからだ。

「それじゃあ早速、何か読んでみようか。どんなことが知りたいんだい?」
「えっと……まず、魔王について教えてください」
「わかった。じゃあ、歴史の本を探そうか」
それからしばらく2人で本を探す。そして、ようやく目当てのものが見つかった。
「これだね。この本によると、かつてこの世界を恐怖に陥れた存在がいたという」
「それが魔王ですね」
「そうだ。魔王は強大な魔力を持っていて、人々を苦しめていたらしい。しかし、ある時現れた一人の少年によって倒されたと書かれている」
「少年……」
「その少年は勇者と呼ばれていて、人々を苦しませている魔王を倒すために旅に出たようだ」
「なるほど……」
紛うことなきゲームの世界である。
「その後は、勇者と仲間達の活躍で魔王は倒され、世界に平和が訪れた」
「ふむふむ、それで……?」
「おしまいだよ」
「えっ、終わりですか!?」
なんかあっけないな……。まあ、そういうものかもしれないけど。
「まあ、創作物語ではなくて歴史として伝わっているものだから、こんな感じだよ」
「たしかに、そうですね……。えっと、今現在は魔王も勇者もいないんですね?」
「ああ、少なくとも私の代では現れていないね」
「なるほど……」
恐らく、そのうち現れるのだろう。気をつけておかないとな……。

「魔物はいるんですよね?」
「ああ。だが、私もまだ本物は見たことがないんだ。魔物についても調べてみようか」
「そうですね」
それから魔物についての本を探して読んでみた。
「えーと、魔物とは体内に魔石を持つ生物の総称である。へぇ~、魔獣タイプと魔人タイプがいるんですね。魔獣は理性を失って凶暴になるけど、魔人は知性を持っている個体もいる……」
「ふむ、興味深いな」
魔物については王子も詳しく知らなかったようだ。興味深げに聞いている。
「ちなみに、この国には魔物は来ないのですか?」
「いや、この国にも何度か来たことはあるよ。でも、我が国の騎士団がなんとか追い払っていたから、被害はあまりなかったんだ」
「そうだったんですか」
今のところ、魔物はそこまで脅威ではないようだ。

「魔物はどのくらいの強さなんでしょう?」
「個体差はあるけど、強いものになると1匹で街を簡単に滅ぼせるぐらいの力を持っているようだ」
1匹で街を滅ぼされたら、そりゃあ大変だな。まあゲームの世界だとよくあるけど。
「そんなに強い魔物がいるなんて怖いですね……」
「ああ、本当に恐ろしいよ」

「この国は比較的平和な方だよ。ただ、魔物が活発になっていると聞いて不安に思っている人もいるみたいだけどね」
「やっぱり、魔物が現れると危険ですよね……」
「ああ。でも、勇者がきっと魔王を倒してくれると信じているよ」
「そうですね!勇者が必ず倒してくれますよね!」
勇者さえいれば大丈夫だろう。ゲームの主人公だしな。それにしても、勇者か……。実際に見たら一体どんな感じなんだろう。会えるものなら会ってみたいな、と思う。

それからも、俺たちは色々な本を読み漁った。
高いところの本を取ろうとした時、バランスを崩して転びそうになってしまう。
「危ない!」
その瞬間、横から腕を掴まれて引っ張られた。俺はそのまま王子の上に倒れ込んでしまう。
「大丈夫かい?」
目を開けると、俺の下敷きになっている王子がいた。王子は俺の腕を掴んだまま微笑んでいる。
「あ、ありがとうございます……」
俺は慌ててお礼を言った。心臓がバクバク鳴っている。
転んだことよりも、王子と至近距離で向き合っていることにドキドキしていた。
「あれ!?王子、怪我をしていますよ」
王子の手をよく見ると、小さい傷ができており、血が出ている。倒れた時に何かにぶつけて傷ついたのだろう。
「ああ、このくらい大丈夫だよ。気にしないでくれ」
「ダメですよ!すぐに手当てしないと……そうだ、俺の回復魔法を使ってみましょうか?」
「ああ!それはぜひお願いしたいな」
「じゃあ、やってみますね」
俺は王子の手をそっと握った。手を通して魔力が流れ込んでいく感覚がする。すると、みるみると傷口が塞がっていった。
「おお、本当に治ってしまった」
王子は自分の手にできた切り傷の跡を見て驚いていた。
「どうですか?」
「いや、驚いたよ。やっぱりミノルは才能があるみたいだね」
「いえいえ、そんなことは……」
「ふふっ、謙遜しなくてもいいよ」
「いや、本当ですから……」
「分かった分かった」
王子は笑いながら俺の肩に手を置いた。俺は王子に褒められるのは嬉しい。でも、本当は俺なんかより王子の方がずっと凄いのだ。この魔力だって王子のものだし、今だって、自分が怪我をすることも顧みずに助けてくれた。
「俺のせいですみません……。もっと気を付けていれば……」
「気にしないでくれ。それより、君が無事で良かったよ」
「はい……。あの、本当にありがとうございました」
俺は改めてお礼を言った。あのまま転んでいたら大怪我していたかもしれない。王子のおかげで助かったのだ。
「それなら、一つお願いを聞いてくれないか」
「えっ?なんでしょうか」
王子からのお願いとは珍しい。何かお礼できることは無いかと考えていた俺の気持ちを察してくれたのだろう。俺に出来ることならぜひ叶えてあげたい。
「私に敬語を使うのをやめてくれないか」
「えっ……!?そ、そういうわけには……」
「私はミノルと対等の関係になりたいんだ」
「うーん……」
正直困ってしまう。王子に対してタメ口をきくなんてとんでもないことだろう。王子が良いと言っていても、他人からの目がある。
しかし、すでに同じ部屋で同じベッドで寝ているくらいだから、今更な気もする。
それに、王子が望んでいるというのであれば仕方がない。俺は覚悟を決めた。
「分かりま……じゃない、分かったよ」
「ふふ、それで良いんだよ。よろしくな、ミノル」
王子は満足げに笑った。王子に名前を呼ばれると、なんだか嬉しい気分になる。

「さて、そろそろ戻ろうか」
「そうだね」
俺たちは書庫を出た。外に出ると、夕日が落ちかけている。随分と長い間、本を読んでいたようだ。
「今日は楽しかったよ」
「俺も……だよ」
タメ口にはまだ慣れなくて、なんだかくすぐったい気持ちになる。
「また、一緒に本を読もう」
「うん。楽しみにしてるよ」
そうして、俺は王子と一緒に部屋に戻った。
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