嫌すぎる結婚相手と、世界の命運を握ることになりました。

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【24】そっちが元気になるとか、想定外です *

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「……と、とにかく、引き続き、魔力送りますね……」
恥ずかしさで震える声をなんとか抑えながら、僕はそう告げた。
アルヴィスは布団の中で横になったまま、ゆるく目を伏せている。熱はまだ完全には引いておらず、呼吸も少し荒い。
それなのに――
「ん。頼む」
なんて、当たり前みたいに返事しないでほしい。だって今、僕たちは全裸で――肌をぴったり密着させているわけで。
(これ、意識あるのやばい……!)
意識のなかったときより、何倍も恥ずかしい。無言でぎゅっと抱きしめるだけでも、体中がかあっと熱くなる。背中や胸に彼の体温が伝わってきて、脳が混乱する。
しかも、誓約の印のせいで、アルヴィスの感情がなんとなく伝わってくるのだ。
それがまた、妙に落ち着いていて――むしろ僕を見て少し楽しんでいるような空気すらある。
(た、楽しむな!これは治療だからな!?)
僕が必死に魔力を流し続けていると、ふいにアルヴィスがぽつりと呟いた。
「……なあ、キスした方が、もっと効くんだろ?」
「……っ!」
心臓がバクンと跳ね上がる。思わず顔を上げてアルヴィスを見ると、彼は本当に悪びれた様子もなく、僕を見つめていた。
「き、きっ……は、はい、確かにそうですけども!」
「じゃあ、してくれよ。さっきも、してただろ?」
「そ、それは……っ!あの時は、貴方が意識朦朧としてて、その、必要に迫られて……!」
「今は、ちゃんとある」
「だから余計に恥ずかしいんですってば!」
叫び声が部屋に響く。羞恥の極致。僕の尊厳とプライドが消え失せそうだった。
……いや、服はすでに消え失せてるけど。残された僕のメンタルが、今まさに後を追おうとしている。
それでも、アルヴィスの呼吸はまだ浅い。彼の体からわずかに瘴気が漂っているのを見て、僕は唇を噛んだ。
(……彼のためにやるって決めたんだ。だったら――)
震える手で彼の頬に触れ、そっと唇を重ねる。ほんの軽く、触れるだけのつもりだったのに。
「っ……!」
アルヴィスの腕が、ゆっくりと僕の背に回された。ぐっと抱き寄せられて、密着度が一気に跳ね上がる。
(ま、待って……それ以上は……!)
そう願ったそばから、彼の唇が深く傾く。角度が変わって、優しく、でも、濃厚に絡み合うキスに変わった。
魔力が流れていくのが、はっきりと分かる。確かにこれは効果がある。でも――
(いや、これはもう……治療の域を超えてない……!?)
必死で逃げ出したがっているのは、羞恥心なのか、理性なのか、自分でもわからない。ただ一つはっきりしているのは――僕の身体が、彼から離れようとしないという事実だった。
しかも、送ってるはずの僕の方が、なぜか妙な熱にあてられて、ふらふらしてきている。
でも、アルヴィスの呼吸は明らかに落ち着いてきていて、肌の熱も少しずつ和らいできていた。
(……やっぱり、これが一番効くんだな……)
思考はすっかりぐちゃぐちゃだったが、とりあえず、今は彼の容体が第一優先だ。
もう一度、唇を重ねる。今度は少しだけ、深く。目を閉じると、心臓の音がやけに大きく聞こえた。
(これは、治療。治療……!)
そう必死に自分に言い聞かせながら、唇を重ね続ける。深く、熱く、まるで想いごと、注ぎ込んでしまっているような錯覚を覚えながら。
魔力はちゃんと流れている。彼の呼吸も、穏やかになってきて――
と、その時。
不意に、下腹部あたりに何かが触れたような感触があった。いや、触れたというか……押し当てられた、というか。
目をそっと開けて、視線を下に向けて――そして見てしまった。
「……えっ」
そこに、堂々たる存在感で反応しているアルヴィスのそれが、いた。
思考が一瞬で凍りつき、次の瞬間には脳内に警報が鳴り響く。
ちょっと待って!?いや、ほんとにちょっと待って!?
反射的に体を引こうとしたけれど、背中にはしっかりアルヴィスの腕が回っていて、ぴったりホールドされている。逃げられない。密着は継続中。
「ちょ、ちょっとアルヴィス!?これはっ、そのっ、えっと、こ、これは……!」
「……ごめん。不可抗力」
「不可抗力で済ませないでくださいぃぃぃぃ!!」
顔から火が出るどころじゃない。僕の脳がオーバーヒートして湯気が出ている。僕の尊厳とプライドは完全に消え失せた。
「ぼ、僕は真面目に治療をしてたんです!少しでも効果が出るようにって!全力で!密着して!」
「知ってる。助かってる」
「……こっちは助かってません!!」
僕の叫びが室内にむなしく反響した。
なにが悲しくて、裸で必死に魔力を送っていたら彼のアレが元気になってくる世界線なのか。
神様に説明を求めたい。なんなら訴えたい。
「……でも、やっぱりキスは効果あるな。体が軽くなった気がする」
「だ、だからって堂々と硬くならないでください!」
もはや自分が何を言っているのか分からない。顔を真っ赤にして叫んだ僕に、アルヴィスは少しだけ視線を逸らした。
「……いや。そっちが可愛すぎるのが悪い」
「っ!?」
その一言に、心臓が思いきり跳ねる。なんだか――ほんのちょっとだけ、彼の表情が照れたように見えてしまって。
(え?まさか、照れてる?アルヴィスが?)
口元がほんの少しゆるんで、耳の先が、かすかに赤い。あんなに堂々としてたのに、そんな顔を見せられたら――
(そんな表情……ズルい……)
思わず、胸がきゅっと鳴った。この状況でときめくとか、我ながら正気を疑う。
……と、思った次の瞬間、自分の下腹部に違和感を覚えた。
(うそ、ちょっ……ちょっと待って!?)
自分が反応してしまっているのに気づいた瞬間、僕はもうダメだった。
「な、なんで僕まで……!?」
「ふーん……そっちも元気なんだな」
「ち……違います!いや、違くないけど違うんです!」
意味不明な否定を叫びながら、慌てて距離を取ろうとしていると、アルヴィスがゆっくりと体をずらし――ぐっ、と腰を押し当ててきた。
「~~~~~~っ!?」
「……ん。こっちのほうが、魔力の流れが良くなるかもな」
「良くなりません!!」
こっちのパニックなんてまるでお構いなしに、アルヴィスはいたずらっぽく笑う。けれどその目は、まっすぐで、真剣で、どこか優しかった。
「……嬉しいよ。お前も、同じ気持ちなんだって分かって」
「そ、それは……ちがっ……!」
言いかけて、言葉が喉で止まる。否定しきれない自分がいて、余計に動揺した。
「いやだからっ――わわ、動かないでください、本当に!!」
僕の理性はピンチどころか、今にも崖から真っ逆さまに落ちそうだった――。
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