俺が聖女なわけがない!

krm

文字の大きさ
2 / 33

【02】選定!?俺が聖女なわけがない!

しおりを挟む
神官の一人が高らかに祝詞を唱え始めると、広場全体が静まり返った。祈りの声が澄み渡る空気の中で響き渡り、俺の心にも不思議な静けさと興奮が同時に広がっていく。

祈りが終わり、ついに聖女選出の瞬間が訪れた。祭壇上空の空がパッと明るくなり、純白の光が降り注ぎ始める。周りの人々が息を飲むなか、俺もその光景に目を奪われた。
次の瞬間、光の柱が一人に向かって降り注ぎ、その後は選ばれた聖女が感極まる感動的なシーンが繰り広げられる――はずだった。
はずだったのに――。

「何だこれ!?」
驚きのあまり、俺は思わず大きな声を出してしまった。
祭壇から放たれた光の柱は、あろうことか俺に降り注いでいたのだ。
「えっ!? う、嘘だろ……?」
パニックになりながら、俺は周りを見渡す。皆の視線は俺に集中しており、その誰もが驚きと困惑の表情を浮かべていた。
神官たちも狼狽の色を隠せず、慌てたように何かを話し合い始めている。
王子も驚いた表情で俺を見つめていた。その目には戸惑いの色が浮かんでいる。

神官が一歩前に出て、深呼吸をしてから厳かに告げた。
「新たなる聖女として、か……彼が選ばれた!」
驚きの声が上がり、瞬く間に広場全体に広まっていく。

「お、俺が聖女なわけがない! 俺は男だぞ!?」
俺の叫びに、周囲がいっそうざわめいた。俺と王子に視線が集まっていくのが分かる。

「これは……間違いということはないのか?」
王子が戸惑いながら神官に質問をするのが聞こえた。普段は冷静なイメージの彼でさえ、予想外の事態に驚きを隠せない様子だ。
「た、確かに前代未聞のことですが……選定の儀は神聖な儀式です。間違いはあり得ません……」
神官が真剣な表情で答える。それを聞いた王子が、意を決したように俺の方を見た。
呆然と立ち尽くしている俺の方へ、王子が静かに歩み寄ってくる。
その美しい顔が近づくと、緊張のあまり心臓が飛び出しそうになった。
「君……名は何という?」
王子の優しく美しい声が響く。
「ル……ルセルです……」
名前を言うだけで声が上ずって、恥ずかしいくらいに顔が真っ赤になってしまった。
「ルセル……いい名前だ」
王子が俺の名を呼び、ニッコリと微笑む。その笑顔は太陽のようで眩しかった。思わず見惚れてしまうが、すぐに我に返る。今はこの事態をなんとか打開しなくてはいけないのだ。
「王子、これは何かの間違いです! 俺には聖女の力なんてありません!」
必死に訴えてみたが、王子は首を横に振り、優しく笑った。
「心配はいらないよ。君には自然と人を引きつける魅力があるようだ……きっと運命なんだと思う」
王子の微笑みがさらに広がる。優しい光がふわりと彼の瞳に宿り、その魅力に一瞬引き込まれそうになった。反則レベルで美しい。鼻血が出そうなくらいに。
——って、そうじゃなくて。
「いやいや、運命とかじゃなくて、俺は男なんですよ! 聖女って普通は女性ですよね?」
「確かに前例はないし、僕もまだ戸惑っている……でも、儀式の結果は覆せないんだ」
王子が俺の手をしっかりと握りしめる。
「だからこそ……こうなったからには、お互いに支え合って進んでいこう」
王子のその言葉に、俺は少し肩の力が抜けた。王子も実は混乱しているっぽいことが分かり、ちょっとだけ親近感が湧いてくる。
「うう……分かりました……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。さあ、一緒に行こう」
王子は握っていた手を一度離し、改めて差し出した。俺は一瞬ためらったが、深呼吸してその手を取る。もう、この状況を受け入れるしかない。
「一体これからどうなってしまうんだ……」
俺は小さく呟きながら、王子に手を引かれて歩き出した。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
※未完 4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

オメガになりたくなかった猫獣人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「俺は種馬なんて御免だ」 その言葉にパトリックの目の前は真っ白になった。

憧れのスローライフは計画的に

朝顔
BL
2022/09/14 後日談追加しました。 BLゲームの世界の悪役令息に憑依してしまった俺。 役目を全うして、婚約破棄から追放エンドを迎えた。 全て計画通りで、憧れのスローライフを手に入れたはずだった。 誰にも邪魔されない田舎暮らしで、孤独に生きていこうとしていたが、謎の男との出会いが全てを変えていく……。 ◇ハッピーエンドを迎えた世界で、悪役令息だった主人公のその後のお話。 ◇謎のイケメン神父様×恋に後ろ向きな元悪役令息 ◇他サイトで投稿あり。

どこにでもあるBL小説の悪役になったけど、BLする気なかったのにBLになった。

了承
BL
どこにでもある内容のビー小説に入った20歳フリーターがいつのまにかBLしてしまった短編です。

恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした

水瀬かずか
BL
仕事をクビになった。住んでいるところも追い出された。そしたら恋人に捨てられた。最後のお給料も全部奪われた。「役立たず」と蹴られて。 好きって言ってくれたのに。かわいいって言ってくれたのに。やっぱり、僕は駄目な子なんだ。 行き場をなくした僕を見つけてくれたのは、優しい騎士様だった。 強面騎士×不憫美青年

処理中です...