俺が聖女なわけがない!

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【01】運命!?王子と俺と聖女選定の儀

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「お、俺が聖女なわけがない! 俺は男だぞ!?」
大勢の人々の前で聖女と宣言された俺は、思わず大声で叫んでいた。

「これは一体……どういうことなんだ!?」
「聖女が男だなんて……前代未聞だぞ!」
ざわめきが広がり、人々が驚きの声を次々に上げていく。
俺はどうすればいいのか分からず、ただ呆然とそこに立ち尽くしていた……。

***

――この国では、古くから一定の周期で聖女が現れると言い伝えられてきた。聖女に選ばれた者は、王子と結ばれ、共に王国を支える重要な存在になるという。
代々、王子が成人する時期になると、必ず新たな聖女が国民の中から選ばれ、二人は結婚する。そして、その子供が成人する頃、また新たな聖女が現れる。この聖女と王子の結びつきが、長きにわたって王国の繁栄を支えてきたのだ。

今日のお昼頃、パンをかじりながら王宮近くの広場をぶらぶらしていた俺は、ふと周りの女性たちがそわそわしながら王宮に向かっていることに気が付いた。ああ、新しい聖女が選ばれる日なのか、と理解する。そういえば最近「王子の結婚適齢期が到来した」という話を耳にしたのを思い出したのだ。

せっかくだから俺も見学してみようと、興味本位で王宮へ向かうことにした。
俺は王子と同い年だから、前回の聖女が選ばれた時はまだ生まれていなかった。つまり、聖女誕生の瞬間に立ち会うのは今回が初めてだ。
聞いた話では、聖女の選出はおめでたいことなので、たくさんの人々が王宮に集まるらしい。特に女性たちは、自分が選ばれるかもしれないと期待してやって来るとか。そして、選出の儀式自体も神秘的で美しいから、その瞬間を見たいという理由でも人が集まるそうだ。

広場を抜け、王宮の大門に近づくと、周りはますます賑やかになってきた。人々の話し声や笑い声が交じり合い、その中に少しの緊張感と期待感が漂っている。
俺は混雑した道を縫うように進みながら、自分と同じように興奮した面持ちの人々を見渡した。
その辺りにはすでに多くの者が集まり、着飾った女性たちが期待に満ちた表情で今か今かと待ちわびている。
聖女は全国民の中から、一切の偏りなく選ばれるので、身分や背景に関係なく全ての女性が候補者となり得るのだ。この公平さが、聖女の選出の神秘さをさらに際立たせていると思う。貴族だからといって有利になるわけでもなく、平民だからといって不利になるわけでもない。ただ、純粋に選ばれる運命を持った者が聖女として光を受ける。

中心部に到着すると、特設の大きな祭壇が設置されていた。その周りは色とりどりの花や布で美しく飾られている。これが聖女選出の舞台か思うと、自然と胸が高鳴った。俺は感心しながら、その壮大な舞台を見上げる。
「いよいよ始まるのか……」
小さく呟きながら、俺は少しでも良い位置で見ようと、さらに前方に進んだ。その途中、周りの人々からは「誰が選ばれると思う?」「やっぱり騎士団長のご息女じゃないか?」「いやいや、最近は平民にも魔力があるものがいるらしいぞ」などと、様々な意見が聞こえてくる。
俺も、どんな人が聖女に選ばれるのか楽しみになってきた。

みんなが注目する中、神官たちがゆっくりと祭壇に登り、儀式の準備を始める。
そこへ、この国の王子――アルティス王子が静かに姿を現した。俺も含め、周囲の視線が一斉に彼に釘付けになる。彼は美しく、その美しさには、息を飲むほどの輝きがあった。金色の髪が太陽の光を反射してまるでオーラのように輝いていて、深い青の瞳は穏やかな湖のようでありながら、その奥には無限の深さを感じさせる。その一挙手一投足はまさに高貴で、周りの人々の視線を一瞬で奪い去った。

「聖女に選ばれる子は、あんな素敵な王子と結婚できるんだなぁ」
誰かがつぶやいた言葉が、俺の耳に届く。確かに、その通りだ。
男の俺だって憧れるほど、王子はかっこいい。正直、見惚れていた。

王子の視線が広場をゆっくりと巡る。その瞳が向けられるたびに、人々に緊張が走るのが分かる気がした。誰が選ばれるのか。この瞬間、多くの人々がその答えを心待ちにしている。この中で本当に選ばれるのはたった一人。その一人が王子の伴侶となり、聖女として王国を支える存在になるのだ。

――こんな世界、俺には縁のないものだな、と心の中でそっと思った。彼のような魅力的で特別な存在と結ばれる未来など、俺には想像もつかない。彼の存在そのものが、俺たちの平凡な生活と隔てられた別世界にあるように感じられるのだ。

まるで慈悲深い神のように、王子の瞳は一人一人をじっくりと見つめていた。どんな人が集まっているのか、この中の誰が聖女になるのか、という思いで見ているのだろう。王子自身も、きっと不安と期待で胸がいっぱいなのではないか。大勢の前で、自分の伴侶となる重要な選定が行われるプレッシャーは、計り知れないものがあるはずだ。

そのうちに、王子の瞳が少しずつ俺のいる方へと移動してきた。
周りの女性たちが息を潜める。俺はそれを他人事のように眺めていた、その時。

突然、俺と王子の目が合った。

王子の深い青の瞳がまっすぐ俺を見つめている。
その瞬間、世界が一瞬止まったかのように感じられた。心臓が早鐘を打ち始め、寒気が背筋を駆け抜けていく。
数秒しか経っていないのに、その一瞬が永遠に続くような感覚に陥った。吸い込まれるような王子の眼差しに抗うことができず、しまいには息も止まりそうだった。
(いやいや、いくら美しいとはいえ、相手は男だぞ……! 何でこんなにドキドキしてるんだ、俺)
そう思っても、まるで身体が別の意思を持っているかのように、俺はその場に凍りつき、王子に視線を固定され続けている。
不思議なことに、王子もまた俺から目を離せない様子だった。まるで何かに引き寄せられるかのように、俺たちはお互いを見つめ合っていた。
永遠とも思えるような長い時間――実際には数秒の後、王子の視線は再びゆっくりと他の人々へと移っていった。
「ふぅ……」
ようやく息を吐き出し、何事もなかったかのように平静を装う。だが、胸の内ではまだ心臓がバクバクしていた。
ほんの一瞬の出来事が頭から離れない。俺は無意識に深呼吸をして、再び平静を装おうとするが、その眼差しの余韻が胸に残り続けていた。

この時、俺の運命の歯車が動き出していたなんて、その時は全く予想もしていなかった――。
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