異世界の勇者に逮捕されました!?

krm

文字の大きさ
上 下
12 / 24

12 初めての異世界

しおりを挟む
次の日の朝。達したまま寝てしまったので、朝から二人でシャワーを浴びた。最近はこのパターンが多い。
「じゃあ、行こうか」
「ああ!」
身支度を整えて、俺たちは出発した。向かうのは、二人が最初に出会った森のような場所だ。
この場所は、本来はちょっとした雑木林なのだが、魔力によって空間を歪められており、アルクにしか分からない抜け道があるらしい。
「真尋、こっちに来てくれ」
アルクに促され、歪みの中に足を踏み入れる。すると、一瞬にして景色が変わった。
森の中にいたはずなのに、目の前には大きな門がある。街の入り口のようだ。後ろを振り向くと、見渡す限りの大草原が広がっている。
「うわぁ……」
まるでファンタジー映画の世界に飛び込んだような感覚だった。風が吹き抜けると草花が揺れ、空を見上げれば鳥が飛んでいる。
「すごいな!アルクの世界はこんなに綺麗なんだな!」
俺は感動して、思わず歓喜に満ちた声を上げた。
「ここは王都の近くだから安全なんだ。少し離れると狂暴化した魔獣のせいで危険な地域ばかりだけどね……」
アルクはそう言うと、少し寂しそうな表情になる。
「そうなんだ……早く平和になると良いな」
「ああ……そのために僕は戦っているんだ」
真剣な眼差しで前を見る姿にドキッとした。世界のために戦うという彼の決意は本物だ。こういうところが好きなんだよな……。

「さあ、街に入ろう。ここに、神の祠があるんだ」
「へぇ……」
神の祠と聞いて、ゲームを連想してしまう。この世界にはそういうものがあるんだな。
「さあ、真尋、行こう」
アルクに手を引かれて歩き出す。周りを見ると、レンガ造りの家が立ち並んでおり、道行く人々はカラフルな髪色をしていた。まさにRPGの街といった雰囲気である。お店屋さんの看板のようなものもあり、書かれている文字は読めなかった。異世界にやって来たんだな、と実感する。

しばらく歩くと、アルクが立ち止まった。
そこには、こじんまりとしているが、手入れが行き届いている綺麗な建物があった。大切にされていることが見て取れる。ここが神の祠なのだろう。
中に入ると、祭壇のような場所に小さな像が置かれていた。女神なのだろうか、中性的で美しく、優しそうな表情をしている。
「この像が神様なのか?」
「そうだよ」
アルクによると、この神は世界を司る神であり、すべての人々を導いてくれる存在だという。
「じゃあ、この像に祈りを捧げれば……」
「ああ、きっと願いを聞いてくれるはずだ」
「そうか……」
アルクは膝をつくと、両手を組んで目を閉じた。
「神よ。真尋は悪い人間ではありませんでした。どうか、恋人になることを許してください」
「ん!?」
想定と違った発言に驚いてしまう。俺の魔力の謎を解明してもらうんじゃなかったのか……。
「な、なあ、アルク……それ、今お願いすることじゃないような……」
「うん?ああ、そうだけど、その前にまず神に報告しないとね」
「そういうものなのか……?」
アルクの中では筋が通っているらしい。確かに、俺もお世話になった人がいたら、その人に報告するだろう。そういう感じなのかもしれない。相手、神様だけど……。
「さあ、次は君の番だよ」
「えっ……」
よく分からないままアルクに倣って祈ることにする。
「えーっと……、俺はこれからもアルクと一緒にいたいと思っています。よろしくお願いします」
こういうことでいいのか不安だったが、とりあえず口に出してみた。
俺の言葉を聞いたアルクが、嬉しそうな表情を浮かべている。こういう時は本当に無邪気な子供のようだ。
『その願い、聞き届けましょう』
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。驚いてアルクを見ると、小さく頷く。どうやらアルクにも同じように聞こえたようだ。
「今のは……?」
「ああ、神の声だよ」
「神と会話が出来るのか!?」
俺は思わず叫んでしまった。いったいどういう仕組みになっているのだろう。
「ああ。勇者である僕は神の使途として認められているからなんだ」
「なるほど……」
神と会話ができるとは、アルクはこの世界でも特別な存在のようだ。それにしても、ただの像だと思っていたのに、本当に神様だったとは……。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:11,077pt お気に入り:1,962

ダークエルフと触手と

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:44

天狗の花嫁

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:442

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,657pt お気に入り:179

[ R-18 ]息子に女の悦びを教え込まれた母の日常

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:3,727pt お気に入り:75

さみだれの初恋が晴れるまで

BL / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:506

処理中です...