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第13話 ダンジョンボス攻略は余裕の味
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扉を潜ると、たちまち稲妻のような咆哮が耳をつんざいた。
まさか……既に戦闘が始まっている? せっかちなボスさんじゃないか。
漂う霧を手で振り払いながら進むと、先に待っていたのは……。
立派な翼を広げた、鈍色の多頭竜! ダンジョンで出会ったドラゴンの、優に三倍は超えるだろう、その巨大な体躯。
加えて、アナコンダのように長く伸びた首の先には、これまた凶暴そうなドラゴンの頭部が、五つもある。
「グワアアアァァァ!!!」
咆哮の迫力も五倍! いや、体格の大きさが相乗して、数十、数百倍はあろうか。
するとドラゴンが、素早い身のこなしで、太い尻尾を振り下ろした。
たちまちソニックウェーブが発生し、エドワールの体がふわりと浮き上がる。
「助けてえ!」
おや。舞い上がった砂埃の中から、女性のか細い声が聞こえてくる。聖女クレナか?
いや、攻略パーティーのメンバーは、多頭竜が放つ圧倒的な強者オーラに怖気づき、口をあんぐり開けたまま、ボス部屋の隅で呆然と立ち尽くしている。
では、誰だ? 徐々に砂煙が晴れてゆくと、そこにいたのは……。
ああ、信じられないことに、エルネットと色違いのワンピースを着た華奢な女性が一人、多頭竜の前で、座り込んでしまっているではないか。
「お姉さん!」
半狂乱と化したエルネットは、女性目がけて迷わず突っ込んでゆく。
こちらの存在に気付いた女性が、ふいに顔を向ける。ああ、その美しさ! 東京のモデルにも勝る美形!
間違いない。彼女は、村の危機を救うため一人でダンジョンに潜り込んだという、エルネットの姉だ。
危ない!
すると、エドワールがそう叫ぶのと同時に、突っ立つ剣士ハンスが、多頭竜目がけて吹っ飛んでいった。
「一ノ太刀!」
ハンスが固有スキルを発動した。
ハンスの握る剣が、みるみるうちに黄金に輝き始め、多頭竜の体をズタズタに引き裂か……ない!
「アパーーーーー!?」
ハンスの剣は見事に多頭竜の鱗に弾き返され、ハンスは大の字に伸びながら、ボス部屋の隅まで吹っ飛ばされた。
リーダーの醜態を目の当たりにした攻略パーティーのメンバーは、絶望ともつかぬ色を顔に浮かべる。
「ハハハッ! 渾身の一撃を軽々と弾き返されてやんの! 無様、無様。ああ、実に愉快!」
攻略パーティーのメンバーは、今にも泣きだしそうな顔で、涎を垂らして気絶するハンスをじっと見つめることしかできなかった。
多頭竜が、エドワールの嘲笑を聞きつけ、こちらに体を向けた。
五つの頭部が、周囲の空気を深く吸い込んで、ブレスの準備を始める。
その口元から、火の粉がほとばしり始める。
「さあてと、やりますか。エルネットさん、僕の手を離さないで下さい」
エドワールは、転送魔法・上級の効果を発動させると、成す術もなく座り込むお姉さんの許へ、ゆっくりと歩きはじめた。
ブワアァァァ!!
眩い光とともに、五本の炎の柱が、エドワールめがけ一直線!
だがしかし、エドワールは何食わぬ顔で、スタスタと歩き進める。
転送魔法によって、自動的に敵の攻撃を回避できるため、炎の薄い箇所を縫って、ボス部屋の中を縦横無尽にワープしているのだ。
「なんだか体がポッカポカするなあ。多頭竜製のストーブ、寒い冬のお供ってか? エエア?」
そのスピードがあまりにも速いため、ブレスの灼熱は、エドワールとエルネットの体表に届く前に、たちまち消え去ってしまう!
多頭竜の懐に辿り着いた。感動の再開!!
エドワールは、怯え切ったお姉さんをそっと抱きかかえると、三人一緒にボス部屋の安全な隅へワープ。
「大丈夫ですよ。もうちょっとの辛抱ですからね」
お姉さんをそっと地面に降ろすと、二人を残して、ただちに特殊スキル【煉獄の超咆哮】を発動。
超範囲攻撃の燃え盛る炎を、壁のように利用して、姿をくらますと、ふたたび多頭竜の懐に入り込む。
次いで、特殊スキル【鋭爪連斬+100】を発動。
多頭竜の首元一点に狙いを定めて、ズッシャア、ズシャア!!
さすがに百連斬には耐えかねたのか、湾曲した銀の爪先は、鋼鉄よりも硬い鱗を貫き、たちまちピンク色の肉が露わになる。
今度は固有スキル〈大食い〉が発動。わずかに開いた傷口に舌をねじ込み、そのままパクリッ!!
うん、旨い! 体がデカい分、コクがあるっ!
多頭竜は、まさか戦闘中に自分の肉を喰われるとは、思いもよらなかったのだろう。
目をパチパチさせて、キョトンと棒立ちしている。
「ステータスオープン」
エドワール・ルフレン
レベル:65
体力:540
攻撃力:170
防御力:170
素早さ:170
【固有スキル】
大食い
【特殊スキル】
鋭爪連斬+100
煉獄の超咆哮
転送魔法・上級
豪雨風ノ手裏剣
効果
堅牢な城をも打ち崩す突風を巻き起こし、鋭利な鱗の手裏剣を四散させる。
食したのは、わずかな肉片のみであったから、レベル自体はさほど上がっていない。
それにしても、意外な特殊スキルを獲得したものだ。
おそらく多頭竜の、最後の切り札、的な技なのだろう。外界から身を守る鱗を捨ててまで放つ技は、さぞ強力に違いない。
エドワールは試しに、多頭竜からコピーした技を放ってみた。
まさか……既に戦闘が始まっている? せっかちなボスさんじゃないか。
漂う霧を手で振り払いながら進むと、先に待っていたのは……。
立派な翼を広げた、鈍色の多頭竜! ダンジョンで出会ったドラゴンの、優に三倍は超えるだろう、その巨大な体躯。
加えて、アナコンダのように長く伸びた首の先には、これまた凶暴そうなドラゴンの頭部が、五つもある。
「グワアアアァァァ!!!」
咆哮の迫力も五倍! いや、体格の大きさが相乗して、数十、数百倍はあろうか。
するとドラゴンが、素早い身のこなしで、太い尻尾を振り下ろした。
たちまちソニックウェーブが発生し、エドワールの体がふわりと浮き上がる。
「助けてえ!」
おや。舞い上がった砂埃の中から、女性のか細い声が聞こえてくる。聖女クレナか?
いや、攻略パーティーのメンバーは、多頭竜が放つ圧倒的な強者オーラに怖気づき、口をあんぐり開けたまま、ボス部屋の隅で呆然と立ち尽くしている。
では、誰だ? 徐々に砂煙が晴れてゆくと、そこにいたのは……。
ああ、信じられないことに、エルネットと色違いのワンピースを着た華奢な女性が一人、多頭竜の前で、座り込んでしまっているではないか。
「お姉さん!」
半狂乱と化したエルネットは、女性目がけて迷わず突っ込んでゆく。
こちらの存在に気付いた女性が、ふいに顔を向ける。ああ、その美しさ! 東京のモデルにも勝る美形!
間違いない。彼女は、村の危機を救うため一人でダンジョンに潜り込んだという、エルネットの姉だ。
危ない!
すると、エドワールがそう叫ぶのと同時に、突っ立つ剣士ハンスが、多頭竜目がけて吹っ飛んでいった。
「一ノ太刀!」
ハンスが固有スキルを発動した。
ハンスの握る剣が、みるみるうちに黄金に輝き始め、多頭竜の体をズタズタに引き裂か……ない!
「アパーーーーー!?」
ハンスの剣は見事に多頭竜の鱗に弾き返され、ハンスは大の字に伸びながら、ボス部屋の隅まで吹っ飛ばされた。
リーダーの醜態を目の当たりにした攻略パーティーのメンバーは、絶望ともつかぬ色を顔に浮かべる。
「ハハハッ! 渾身の一撃を軽々と弾き返されてやんの! 無様、無様。ああ、実に愉快!」
攻略パーティーのメンバーは、今にも泣きだしそうな顔で、涎を垂らして気絶するハンスをじっと見つめることしかできなかった。
多頭竜が、エドワールの嘲笑を聞きつけ、こちらに体を向けた。
五つの頭部が、周囲の空気を深く吸い込んで、ブレスの準備を始める。
その口元から、火の粉がほとばしり始める。
「さあてと、やりますか。エルネットさん、僕の手を離さないで下さい」
エドワールは、転送魔法・上級の効果を発動させると、成す術もなく座り込むお姉さんの許へ、ゆっくりと歩きはじめた。
ブワアァァァ!!
眩い光とともに、五本の炎の柱が、エドワールめがけ一直線!
だがしかし、エドワールは何食わぬ顔で、スタスタと歩き進める。
転送魔法によって、自動的に敵の攻撃を回避できるため、炎の薄い箇所を縫って、ボス部屋の中を縦横無尽にワープしているのだ。
「なんだか体がポッカポカするなあ。多頭竜製のストーブ、寒い冬のお供ってか? エエア?」
そのスピードがあまりにも速いため、ブレスの灼熱は、エドワールとエルネットの体表に届く前に、たちまち消え去ってしまう!
多頭竜の懐に辿り着いた。感動の再開!!
エドワールは、怯え切ったお姉さんをそっと抱きかかえると、三人一緒にボス部屋の安全な隅へワープ。
「大丈夫ですよ。もうちょっとの辛抱ですからね」
お姉さんをそっと地面に降ろすと、二人を残して、ただちに特殊スキル【煉獄の超咆哮】を発動。
超範囲攻撃の燃え盛る炎を、壁のように利用して、姿をくらますと、ふたたび多頭竜の懐に入り込む。
次いで、特殊スキル【鋭爪連斬+100】を発動。
多頭竜の首元一点に狙いを定めて、ズッシャア、ズシャア!!
さすがに百連斬には耐えかねたのか、湾曲した銀の爪先は、鋼鉄よりも硬い鱗を貫き、たちまちピンク色の肉が露わになる。
今度は固有スキル〈大食い〉が発動。わずかに開いた傷口に舌をねじ込み、そのままパクリッ!!
うん、旨い! 体がデカい分、コクがあるっ!
多頭竜は、まさか戦闘中に自分の肉を喰われるとは、思いもよらなかったのだろう。
目をパチパチさせて、キョトンと棒立ちしている。
「ステータスオープン」
エドワール・ルフレン
レベル:65
体力:540
攻撃力:170
防御力:170
素早さ:170
【固有スキル】
大食い
【特殊スキル】
鋭爪連斬+100
煉獄の超咆哮
転送魔法・上級
豪雨風ノ手裏剣
効果
堅牢な城をも打ち崩す突風を巻き起こし、鋭利な鱗の手裏剣を四散させる。
食したのは、わずかな肉片のみであったから、レベル自体はさほど上がっていない。
それにしても、意外な特殊スキルを獲得したものだ。
おそらく多頭竜の、最後の切り札、的な技なのだろう。外界から身を守る鱗を捨ててまで放つ技は、さぞ強力に違いない。
エドワールは試しに、多頭竜からコピーした技を放ってみた。
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