Game is Life

つる

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あんたがいればそれでいい

せっかちなメイプルシロップ

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 他人様の寝室を俺の住処にしてひと月たとうという頃だ。パントリーの中身も空きができ、仕方なく俺は適当に他人に声をかけ仕事をした。
 俺の仕事はプロキシゲームの助っ人で、世間様からはプロキシゲームプレイヤーと呼ばれている。やっていることといえば人数が足りないと嘆く連中に混じって刺して殴って切って奪って暴れまわるだけなのだが、ゲームに勝っても負けても意外といい金になった。しかしながら、世間様からいわせると野蛮なプレイスタイルらしいので、俺をチームに入れたがる奴はいない。プレイヤーにも観戦者にも不人気、それが俺だった。
「セディウス・グランアー少しいいか」
 だからプロキシゲームプレイヤーで俺に声をかけようなんて奴は相当困っているか、俺に汚いことをさせたい奴ばかりだ。
「仕事の話ならチームに入れっていう話じゃなけりゃあ受けるぞ」
 昼過ぎに起き出し、夕方前にいつものコーヒーショップでこれもまたいつも通りろくろく蒸らされていない紅茶にメイプルシロップを入れているときだった。紙コップの一つも持っていない男が、ゴミ箱の前で感情のない声で話しかけてきた。
「……仕事を選ばないっていうのは本当だったのか」
 男はフードで顔を隠していたが、俺を嫌悪する態度が隠し切れない。サイズの合ってない大きなコートは自らの姿を隠すために着たのだろうが、俺みたいなやつが死ぬほど嫌いなんだろうということがコートでは隠しきれなかった。
「どこできいた話か知らねぇけど、選べるような稼ぎはねぇな」
 もっとも、選べるほどの稼ぎがあったとして選んでいたかはわからない。俺がこの仕事をしているのは他人様が野蛮な行為という戦闘行為でしか稼ぐ手段を知らないことと、現在の生活スタイルを維持したいからだ。金があればあるだけ使い、食って寝たければ誰かを引っかけて一晩寝床を共にする。十五の頃に家を出てからずっとそうしてきたので、よっぽどのことがない限り変わることはない。
「そうか……ならば、今晩に行われるプロキシゲームのソロ戦に参加してもらいたい。もちろん、参加費は支払うしゲームに勝った際の賞金はそちらのものだ」
「参加するのが仕事ってんなら……仕事をする報酬は?」
 仕事は選ばないといっても報酬は選ぶ。仕事に見合った報酬を確実にもらわなければ後で痛い目に合うし、金払いの悪い依頼人はろくなことをせず、金払いが良すぎると感じるときも何かある。
 そいつは掌を俺に見せた。
「五万でどうだ」
 ゲームの参加費持ちで、ゲームの賞金は俺のもの。ただゲームに参加するだけでそれだけ貰えば色がついていると判断する。俺の評判はすこぶる悪い。初回でこの金額提示は何かある方に分類される。
「何かあるなら早めにいっておけよ。俺は暴れることしかできねぇからな。暴れること以外の働きはしねぇよ」
 早めに何かあるといってくれれば、そこを避ける程度の働きはするが、暴れる以外は期待できない。
 先に釘を刺すと、そいつは声を出して笑った。
「問題ない。参加すればそれでいい。今回は」
 次回があるようないい方だ。
 今度は俺がそいつに掌を見せる。そいつは察しよく、俺の手に金が入った袋を置いた。俺は中身を確認して数度頷くと、軽く手を振りゲーム参加登録所へと向かう。
「今回は受けるけど、次回はわかんねぇから期待すんな」
 去り際に捨て台詞を吐くのも忘れず、うっすらとメイプルシロップの味がする何かをすする。
 何かある依頼は面倒事がつきものだ。そういうとき俺みたいな使い捨て出来るタイプの人間は、早々に依頼主と縁を切る必要がある。
 俺は仕事を選ばない。けれど姿を消しておけば仕事を依頼されることもない。
「あーあー……しばらく囲っちゃくれねぇかなぁ……ロドナーク・アルディ」
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