溺愛ゲーマー

つる

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虚構の栄華ネーレ・ガルバルリ 1

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 廃棄都市バトルロイヤル……それは廃棄された都市の建物群に潜み、戦い、生き残れば勝ちの大会である。何度だっていう。生き残れば勝ちの大会だ。
 チョウラクノドカのうちの二人が参加するというから、そこにばかり気を向けていたが、今大会の開催都市『虚構の栄華ネーレ・ガルバリ』にはアンデッドがうじゃうじゃいるということをすっかり頭の隅に追いやっていた。
 なんとか『ウサちゃんといっしょ』という無難かつ見ればわかるチーム名を決め大会に参加した現在、俺達はアンデッドに囲まれ小屋に引きこもっている。
「なんか多くない?」
 横に倒した机の天板の後ろに隠れてボソボソ嘆くと、机の上から床へと移動させたやたら重たい瓶の後ろに隠れたウサギもボソボソと答えた。
『参加者が少ない上に、最近はここで大会やってねぇって聞いた』
 参加メンバーとチーム名を運営に提出した際に小耳に挟んだらしい。ウサギの耳で聞いたことをちょっとといっていいものかわからないが、今の俺達には大事な情報だった。
「もうちょっと早く知りたかった」
『ウサちゃんといっしょはあんまりだと思って忘れていた』
「ディーの夕飯シチューよりマシかなと思って」
 大人気児童書の一つにウサギ一家の大黒柱がシチューになるという話がある。それとゲームタイトルを掛け合わせたチーム名なわけだが……ブラックジョークがあまりにきつい。
『俺主体より全然いいのに……』
 ならば『何でも屋といっしょ』ならよかったのかと問いかけて、俺は口を噤む。俺達が隠れている小屋がガタガタと揺れ始めたからである。
「骨って軽いよな?」
 俺達が大会に参加し、運営にこの都市に飛ばされ、まず最初に目にしたのは大量のスケルトンだ。急に現れた俺達に一斉に振り返った姿は壮観だった。
『腐肉ついているやつよりは』
 死者の国となって長いネーレ・ガルバリの住人は、これもまた長い間補充されていない。腐肉を持ったゾンビは腐り果てて肉を失くし骨や霊魂になったという噂だ。俺がブラック会社に勤める前からすでに骨ばかりだったので、真実はわからない。それほどこの都市のことを考えたことがなかった。
「霊魂も軽いよな?」
 骨は骨で経年で崩れてしまったり、パラマギのプレイヤーに粉々にされたりしたせいで霊魂だけが残ったりしたらしい。元々いたゴースト系のモンスターも合わせて結構な数がこの都市を彷徨っている。生き物を見つけては身体を欲しがり襲い掛かるが骨の居るところで見かけることは俺の記憶の中ではあまりなかった。
 骨に襲われてすぐ俺達は小屋に隠れてしまったため、今襲い掛かってきているのが骨か霊魂かはわからない。
『質量があるか否かも怪しい』
 そんなあるかないかもわからない軽いものが俺たちのいる小屋にぶつかっても小動もしないはずである。何故なら俺達がいる小屋はネーレ・ガルバリを調査するために作った小屋で、大会では最初の休憩所として使われているからだ。今でもこまめに手入れされていてなかなか使い勝手がいい小屋である。
  少々風に吹かれ、骨にぶつかられても小動もしない小屋が動く……とてつもない力、あるいはとんでもない数のアンデッドが小屋を襲っていると考えた方がいいだろう。
 俺はとんでもない数のアンデッドよりも強い力の一体二体と戦う方がマシかなと思いつつ、合ってほしい可能性を潰すために口を開いた。
「筋肉なんてのもないよなぁ」
『力、イズ、パワー』
 筋肉は無いと思うが力はありそうである。
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