溺愛ゲーマー

つる

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気まぐれマジシャン 6

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 俺が素直すぎるばかりにウサギがピョンと跳ね、こちらをソロソロと振り返った。驚きに見開かれた目が俺を見つけた後、ノロノロと瞼に半分隠れる。そして伏し目がちに足元を見つめ、耳が全体的に大人しいウサギを裏切るようにソワソワと動き始めた。
 純粋な好意に弱いのだろうか。ツーシーも堂々と俺の話を配信に垂れ流しているのになぁと思ってすぐ、本人がその場にいるかいないかを勘定に入れてないことに気づく。
「あ、いや、純粋に好きで。好きといっても恋とか愛とかではなく……いや、愛ではあるのか? ファンが一番近いような……違うような?」
 気づいてしまうとじんわり俺も恥ずかしくなってきた。誤魔化そうと思い、ことばを重ねてみたもののうまくいかない。
 俺は顔を片手で隠し小さく『あー……』と呟き、気を取り直し口を開く。
「まぁ、俺がツーシーのこと好きなのは置いておいて……本当に止めませんか?」
 顔が少し熱いがいいたいことはいえたし、ちゃんと話も変わったはずだ。
「参加?」
 俺に止めろといわれている事柄がなんであるかを問い返しながらノドさんがニヤニヤしているけれど、いつものことだと今度は自分を誤魔化し俺は首を振った。
「いえ、特別絡んでくるのを」
 参加自体は好きにすればいいのだが、俺は特別に絡まれるのをご遠慮したかったのだ。
 今回大会に参加するのはあくまで俺とツーシーの実力や相性を知るためであって、優勝する必要はない。俺達がツーシーと俺がお互いのことを確認できればいいのだ。
 だからといって勝ちを譲って負けたくもない。俺は負けず嫌いなので勝負事なら一つでも多く勝ちたい気持ちがある。できる限り勝つ努力はするつもりだ。
 もちろん、何度もいうようであるが優勝にこだわらなくてもよい。重々承知している。もっというならば、企業が関わっているわけではなく、現在の俺達がプロゲーマーになるために課せられたことでもない。もし企業にこっそり様子を見られていたとしても俺達が力を発揮できていればいいわけで、実力者に少し絡まれても問題はないだろう。
 それでも執拗に絡まれてろくろく何もできずに終わってしまうのだけは避けたかった。
 実力も相性も、良し悪しがはっきりわかるレベルではない限りちょっと触っただけではわかるものではない。大会に参加して早々に絡まれすぎて敗退となるのは本当にごめん被りたいものだ。
 こんなことを悶々と考えていると俺の実力でねじ伏せてやるぜ、ワクワクするぜですべて終わったらいいのにと思わなくない。
「なら、普通に参加して出会う。無理じゃない可能」
 俺のすっきりしない考えなんかよりよほどすっきりした答えが返ってきて、俺はラークさんの手を取って踊りながらありがとうといいたくなった。なんていいひとなのだろう。
「そうだねぇ、ディーならねぇ……それにそのウサちゃんが『ツーシー』なら序盤でいなくなるなんてまずないよ、ね?」
 すぐにノドさんのねちっこくて厭らしい声が聞こえ、俺は脳内ダンスパーティーを止めた。含みを持たせるのは止めてほしいものだ。
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