この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
10 / 48
零の章

轟音を轟かす者

しおりを挟む
 轟音を轟かし、ディーネさんの大砲が上空に向け吼える。

 続いて矢と魔法が上空にいる敵へと向かい、一斉に黒く染めた色を貫き塗り替えて行く。

 敵の黒色から火魔法の赤。

 または水魔法?なのか、白っぽい色へ。

 多種多様な魔法や弓矢等が炸裂するなか、一人、いや二人、いやいや三人程異様な者が戦場を無双する。


 一人目はクーシー。

 見た目は茶色いラブラドールだが、全身無駄な筋肉等無い肉質をもち、両腕に手甲鉤(手の甲に三つの爪形が)をつけ、撃ち落とされて落下したモンスター達に素早い動きで確実にとどめを刺していく。
 よく見ると動きを阻害しないように、着込んでいる鎧は革製で軽装だ。


 二人目は言わずもなが宿屋の女将ディーネさん。

 もうね、この人は化け物の一言でいい。

 自身の事を剣聖と言うだけの腕前は確かなのだろう。

 手にした武器は大砲だけど。

 そのディーネさん、旦那のキアフさんと組んで奇抜な空中戦をしている。

 アレフが勝手口に置いた木箱を支援部隊が魔術師に渡し、魔術師が箱に重量軽量化魔法を施し、それをキアフさんが次々と空中に投げ付ける。

 空中に投げ付けた箱をディーネさんが足場にしたり、はたまた敵が集結している場所に空中で蹴りつけてから大砲を発泡し、箱を爆破させて木っ端微塵に粉砕している。

 しかも合間にキアフさんは弩で空中のリンドブルムの幼生を射ぬいている。

 …この夫婦無双とクーシー無双のお加減で他の兵士達は連携が上手いせいかあまり目立たない。


だがもう一人、誰の目にもわかる程の異才がいる。

 小柄な肢体を包み隠すようにローブを身に纏い、左手には身長よりも長い、先端に水晶の原石だろうか?ゴツゴツとした透明度の高い石英が嵌め込まれたロッドを手にし、右肩には小さな生き物を乗せ、民家の屋根の上で魔法を次々と繰り出している。

 火、水魔法が主なようだが、風魔法だろうか?時々小さな竜巻のような物がモンスター達に突っ込んで行く。

 顔は見れないが、恐らくハクよりも身長は低いか同じくらいだろう。


「相変わらず飛ばすなぁ」


 ハクが見ていたせいか、アレフが片手に弩の弦をひきつつ空中の鳥形モンスターを貫いていく。


「あの人は?」


 ハクが問と、「後でな」と歯切れの悪い返事が返ってくる。

 疑問に思うがとりあえず、今は戦場だ。

 気になるものはなるけどそれどころ出はない。

 和弓に良く似た長弓を装着し、両足を自分の肩幅の幅まで開き、左手に弓、右手に弦を持ち、背筋をピンとそらして右手腕を真っ直ぐ垂直に後ろへ。

 両手を上段から徐々に下ろし、その際耳に弦が反り返った時に当たって怪我しないように注意しつつ……


 何だかしっくりくるな…
 懐かしい感じがする。
 おかしいな、こっちに来てから武器なんて厨房の包丁くらいしか持ったこと無いのに。


 上体を反らし、空中の鳥形モンスターへ。


 ーー逝け。


 手を離し、まあ初めてだしろくに飛ぶ筈など無いだろうと思っていたが…


 ン?
 ンンン?


「「「オオオオッ?!」」」


 戦場にいた者達から一斉に驚きを現す声が上がる。

 あるものは口だけを呆気に開き、あるものは刮目し、あるものはその場で腰を抜かす。

 それはそうだろう。

 この中で一番素性が知れない少年、下手をすると子供にも見える小さな子が放った矢は軌道の土地から急に発光し、周囲にいた鳥形モンスター数匹を巻き込み。

 ドゴォオンッと轟音を立てて空中爆発したからだ。


 ナニコレ?ナニコレ?
 どういうこと???


【答 マスターがスキルを放ったからです】


 いや、何もしてないけど。

 …この話し方はマクスウェルではないな。


【マスターのスキル、天啓と光魔法の複合です】


 そんなこと出来るの!?

 いや、出来たの!?


【ハイ、マスターですから】


 それってどういう意味?


【…】


「ハク」


 アレフがハクを驚いた顔で見詰め、急に声を出して笑い出す。


「やべーわ、両親だけでなくハクまで異常だわ」


 クスクスっと愉快そうに笑いだす。
 それってどー言う意味だよ。


【答 ハイスペックだと言う意味です】


 いやいや、言わなくていいからっ予想つくからっ!


【…】


「こりゃーおちおちしてらんねーなっ!」


 ザンッと音を立て、アレフも次々とモンスターに矢を射ぬいて行く。

 その少し先で「僕も頑張ります!」と、白ウサギこと元ウサキチ、現在の名前が"モチ"は、宿に泊まっていた俺と然程変わらぬ身長の白髭を生やした白髪のドワーフ(ドワーフ男はこれでも若いほうらしい)と共に、落下した鳥形モンスターに斧をぶちこんでいる。


「ほっほっほっ、そーかい、モチって名付けて貰ったか~」

「はい!」

「可愛らしい名前だの~良かったの」

「はい!有難うございますっ」


 と、会話じたいは縁側でお茶でも飲みながら孫と爺さんが会話を楽しんでいるようだが、実際は流血滴る斧を手にし、ほのぼのとした会話とは対照的に、モンスターを次々と斬ったり殴ったりぼこったりと凶悪な現場と化している。

 ちょっと恐い。
 モチってあんなに力強かったっけ?


【答 名付けとlevelアップとレア個体であったせいです】


 そんなに貴重だったのか。


【マスター、アレフも貴重ですよ】


 そうなの?


【彼はこの世界で稀なクラフトマスターです】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺のスキル、説明すると大体笑われるが、そんな他人からの評価なんてどうでもいいわ

ささみやき
ファンタジー
平凡に生きてたはずの俺は、ある日なぜか死んだ。 気づけば真っ白な空間で、美人のお姉さんとご対面。 「転生します? 特典はAかBね」 A:チート付き、記憶なし B:スキルはガチャ、記憶あり そんな博打みたいな転生があるかよ……と思いつつ、 記憶を失うのは嫌なのでBを選択。 どうやら行き先の《生界世界》と《冥界世界》は、 魂の循環でつながってるらしいが、 そのバランスが魔王たちのせいでグチャグチャに。 で、なぜか俺がその修復に駆り出されることに。 転生先では仲間ができて、 なんやかんやで魔王の幹部と戦う日々。 でも旅を続けるうちに、 「この世界、なんか裏があるぞ……?」 と気づき始める。 謎の転生、調停者のお姉さんの妙な微笑み、 そして思わせぶりな“世界の秘密”。 死んでからの人生(?)、 どうしてこうなった。 ガチャスキル、変な魔王、怪しい美人。 そんな異世界で右往左往しつつも、 世界の謎に迫っていく、ゆるコメディ転生ファンタジー!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓
ファンタジー
「…ここは、どこ?」  …私、そうだ。そういえば… 「貴女、ここで何をしておる」 「わっ」  シュバッ 「…!?」  しまった、つい癖で回り込んで首に手刀を当ててしまった。 「あっ、ごめんなさい、敵意は無くて…その…」  急いで手を離す。  私が手刀をかけた相手は老人で、人…であはるが、人じゃない…? 「ふははは! よかろう、気に入ったぞ!」 「…え?」  これは暗殺者として頂点を飾る暗殺者が転生し、四大精霊に好かれ、冒険者として日銭を稼ぎ、時に人を守り、時に殺め、時に世界をも救う…。そんな物語である…!

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜

小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。 死因は癌だった。 癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。 そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。 死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。 それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。 啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。 挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。 インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。 そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。 これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。

処理中です...