この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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零の章

昼と夜の狭間2

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【あーあーあていしょんぷりーず~】

【何アホなこと言ってるのですか】

【いやーマジで私もーだめ、シヌ。たてねー】

【だらしない】

【ホントだって、力使い果たしたもんよ~伊達に二尾は最下位じゃねーわ】

【最下位は一尾です】

【ェーそれって産まれたままの数じゃん。ただの妖○じゃん、そんなんじゃ屠るなんて無理ゲー】

【そのわりには街中のモンスター一掃していますが?】

【ほら、私ってば優秀だからン♪】

【…気色悪いのでその女言葉止めて下さい】

【えー】

【えーではありません。大体貴方男なんですか女なんですか、そんな絶世の美女みたいな顔をして】

【それ、褒めてるんだか貶してるんだかわからんっ】


 何だか随分と賑やかな声?が聞こえて来る。
 ただ悪のりしているのか、時々男の声で「イヤン」とか聞こえて気持ちが悪い。
 しかもその声が「ハク」としての自分の声だ。
 正直オゾマシイにも程がある…。


【マスターが聞いてますね】

【お~!やーと起きたか。3日ぶりじゃね?】


 朧気だった意識がはっきりしてくると、自分ハクは真っ白だが何処か懐かしいような空間に、上空から"足を降ろして"立ち上がった。

 瞬間、変わる景色。

 一面板の間が広がり、三十畳以上ある和室部屋に変わる。
 襖、そして床より一段高くなった床の間、床脇棚…


【やっぱハク来ないと出て来ないんだな、この空間】


 床にゴロゴロ転がる美女、もとい美女と間違う程見目麗しい細身、艶やかな腰まである銀髪を結い上げもせずに放置した美青年が、着崩れした紺色の浴衣を下に着、その上から豪華な刺繍を施した女性物の着物を羽織っている。
 その青年のすぐ側に、全身何もかも黒一色、黒しか色が無い人のようなものが突っ立っている。
 おそらくシステムであろう。
 口調が素っ気ないのでそれとわかる。

 何故こんなに違うんだろう?

 片方は"生前の自分"の姿、もう片方は"色が黒しかない"ヒトガタ。


【んー落ち着く…】


 生前の自分の姿のマクスウェルは床に転がり、ヒトガタのシステムは立ったままマクスウェルを見下ろしている。
 羨ましそうに見えるのは気のせいであろうか?


【お早うございますマスター、この空間はマスターの好みですか?】

【生前棲んでたとこに似てるな】


 こくんと頷くと、青年マクスウェルはニマッと笑う。


【声出ねーだろ?】


 こくんと再度頷く。


【ここはマスター達の心の空間ですからね、マスターは話さなくても大丈夫ですよ、心の声は私達には聞こえてきますので】

【ハクがメインだからな、私だと間借りしてるようなもんだから、この空間真っ白のままで飽きてたんだよ。床の間サイコー!】


 ゴロゴロ転がっていたマクスウェルが急に腹部を抑え、蹲る。
 顔色が急激に青ざめていくようだ。


【…動くからですよ】

【………面目無い。】

【マスター、マクスウェルは今力が全く出す事が出来ません】

【この間の戦闘で消費しちまって、回復するのにもう少しかかる、悪いな】

【しかも馬鹿だから、マスターの怪我の負荷を請け負っているのです】

【あ、てめえ!言うなっていったろ!】

【言わなければ不審過ぎるでしょう?大怪我を居っていたのに傷みが何も無いなんて】


 傷みがない?


【マスターの怪我の傷みを一切請け負っているのですよ、このマクスウェルは】


 マクスウェル…


【マクスウェルはこう言う奴なんです、"昔から"無茶苦茶ばかりする】

【むぅ】


 ん?昔から?

 しまったと言った感じで舌打ちが聴こえたが、どちらが舌打ちしたのかわからない。
 チラリとマクスウェルを見ると目線を合わせないし、システムはそもそも何処を向いているのかわからない。
 俺生前こんなんだったっけ?


【【こんなんです(だ)】】


 ハモらないで欲しい…


【ま、そろそろ起きた方がいい。】

【そうですよマスター、モチも皆も心配してます】


 あ、モチ。
 怪我してないかな?それに彼女、えーと名前なんだったかな?

 …けっこう可愛かったな。


【お?ハクの好みか?私はもーちょっとこー…】


 そこ、流線を手でやらないように。
 言いたいことはわかるから!
 両手で形作るな!


【…むっつりめ】


 システムさん、何か恐いです…。




 A snake came crawling it bit a man
 Then Woden took nine glory twigs
 Smote the serpent so that it flew into nine parts
 There apple brought this pass against poison
 That she nevermore would enter her house…


 ん?
 何?
 何語?英語??


【薬草の呪文か、奴がきたな】

【これでやっとマスターが目を覚ましてもよくなりましたね】

【私も少しはましになるか。暫くは力出ないだろうがな】

【マスター】


 うん?


【暫くマクスウェルは穀潰しのヒモ、つまり役立たずになりますから、くれぐれも自重して下さい】


 穀潰しのヒモっで役立たず…
 それ、俺の生前の姿…


【酷!システムちゃん酷!!】

【ワタクシ、女誑しは好きではありません。マスターは別ですが】

【システムちゃん、冷たいっ!】

【煩い○○】


 ○○?
 よく聞き取れないけど。


【それ、言う!?】


 ○○って何?


【【マスターお前は早く起きろ!!】】









 遠くで【ミサには気をつけろよ?】と聴こえた気がするが、一気に浮上する意識に気が遠くなっていった。

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