16 / 48
漆黒ノ章
モチ君頑張る
しおりを挟む
「行きます!ケンネルさん!」
「来い!」
キインッと金属音の重なる音が鳴り響く。
その空間に僕、モチは盾と片手剣を持ち、クーシーであるケンネルさんに稽古を付けて貰っている。
先日の襲撃以来目を覚まさないご主人は心配ですが、何よりも僕は変わらなくては行けません。
僕はテイムされた獣です。
テイマーであるご主人の命は守らなくては、いえ、違いますね。
一緒に戦わなくてはいけません。
でも今のままでは僕はご主人の横で戦う等出来やしません。
それほど、先日の襲撃のご主人はーー強すぎました。
僕なんか役にたたず、逆に守られてしまった程に。
こんなの、テイムされた僕の意味が無いじゃないですか。
嫌です。
僕は強くなりたい。
強さを欲したい。
だから、頼みました。
ご主人みたいには今は無理でも、少しでも強くなるように。
「ケンネルさん、僕、片手剣だと巧く立ち回りしにくいみたいです」
少し手が軽く感じてしまうんですよね。
軽くていいと言えばいいのでしょうが、何か足りない気がするのですよ。
威力が足りないと言う感じでしょうか?
「確かに盾との相性はいいみたいだが、剣だと難しそうだな」
どうもこの剣と言うのは僕の体格に合って居ないようです。
先程両手剣と言う物も持たせて貰いましたが、馴染まずに両手剣の重量に振り回され、重心が巧く取れずに剣を引き摺る始末。
「片手剣で駄目ならば、うーん」
「片手斧はそこそこ良かったのですが、やはり僕には両手斧でしょうか?」
「いや、う~ん」
ケンネルさんは目の前でウンウン唸ってしまいました。
こうなってしまうと稽古もつけられません。
でも、切実なのです。
元は野生のウサギですから、体格とか小柄なクーシーのケンネルさんならば僕の悩みをわかって貰い、尚且つ稽古を付けて貰えると思ったのですが…
武器、本当に難しいですね。
いっそ魔法でも使えれば良かったのですが、僕適正低いみたいなんですよね…。
「確か、うーん確か、うーん…鍜冶師の所にあったなあ」
「いい武器があるのですか?」
「いい武器と言うか、変わり種なんだよな。飛び道具のナイフとか、フォークとか。扇とかステッキとか、仕込み針。カードなんてのもあったなぁ」
「フォーク?確か食器では無かったでしょうか?」
「うん、だから変わり種。兎に角変わった武器の中に、えーと手甲鉤と言うのがあったが、それどうだろう?」
「手甲鉤ですか?」
なんでしょう?聞いたこと無いです。
僕がキョトンとしていたからでしょうか、ケンネルさんが説明してくれました。
「私達の手って人間達みたいに指先が長くないだろ?その分爪がある者達なら攻撃力は高いのだけど、私は犬の種族だし、モチ君はウサギだからな。どうしても爪や手の威力が低い」
その分脚は強いけど、とケンネルさんが然り気無く僕たちウサギ種族のフォローを入れてくれます。
やっぱりケンネルさん優しいです。
僕はちょっと嬉しくなり、うんうん、と頷きます。
「そこの所の弱点克服ってわけじゃ無いけど、人間が腕に固定する武器をそこの鍜冶師が僕ら用に改良しててね。この間の戦闘で使ってたのは爪タイプなんだけど、モチ君は、んー…物は試しだし、とりあえず付いてきてよ」
ケンネルさんが歩き出したので慌てて着いていきます。
あれ?ケンネルさん、何だか尻尾が軽く揺れてます。何か良いことがあるのでしょうか?
「実はさ」
ケンネルさんが歩きながら腕を組み、少しばかり上機嫌に話し出します。
「ちょっとその鍜冶師に会うには特殊な条件があってね」
うん?なんでしょう?
僕がケンネルさんの方を見ると、ケンネルさんの尻尾がフリフリフリフリ仕切りに振りだしました。
上機嫌ですね、ケンネルさん。
わかりやすいです。
「その鍜冶師、先日の襲撃で薬草や素材を切らしてるって聞いたんだ。そこでちょっと街の外で一緒にお土産とかモンスター討伐とかをしに行かないか?」
こうして、モチの主人のハクが怪我をして意識が無くて寝込んでいる間、少しだけケンネルさんと一緒にモチ強化大作戦、題してケンネル流ブートキャンプが実行されることとなった。
後日、ふらふらになったモチが何とか手甲鉤を手に入れ、その武器に珍しい魔力処置を施されてモチの地力が引き上げられたのは、お土産を気に入って喜んだ鍜冶師が張り切ったせいなのか、たまたまその鍜冶師が"ケンネルの婚約者"であったのか。
どちらにしよ、ケンネルのお陰かもしれない。
「来い!」
キインッと金属音の重なる音が鳴り響く。
その空間に僕、モチは盾と片手剣を持ち、クーシーであるケンネルさんに稽古を付けて貰っている。
先日の襲撃以来目を覚まさないご主人は心配ですが、何よりも僕は変わらなくては行けません。
僕はテイムされた獣です。
テイマーであるご主人の命は守らなくては、いえ、違いますね。
一緒に戦わなくてはいけません。
でも今のままでは僕はご主人の横で戦う等出来やしません。
それほど、先日の襲撃のご主人はーー強すぎました。
僕なんか役にたたず、逆に守られてしまった程に。
こんなの、テイムされた僕の意味が無いじゃないですか。
嫌です。
僕は強くなりたい。
強さを欲したい。
だから、頼みました。
ご主人みたいには今は無理でも、少しでも強くなるように。
「ケンネルさん、僕、片手剣だと巧く立ち回りしにくいみたいです」
少し手が軽く感じてしまうんですよね。
軽くていいと言えばいいのでしょうが、何か足りない気がするのですよ。
威力が足りないと言う感じでしょうか?
「確かに盾との相性はいいみたいだが、剣だと難しそうだな」
どうもこの剣と言うのは僕の体格に合って居ないようです。
先程両手剣と言う物も持たせて貰いましたが、馴染まずに両手剣の重量に振り回され、重心が巧く取れずに剣を引き摺る始末。
「片手剣で駄目ならば、うーん」
「片手斧はそこそこ良かったのですが、やはり僕には両手斧でしょうか?」
「いや、う~ん」
ケンネルさんは目の前でウンウン唸ってしまいました。
こうなってしまうと稽古もつけられません。
でも、切実なのです。
元は野生のウサギですから、体格とか小柄なクーシーのケンネルさんならば僕の悩みをわかって貰い、尚且つ稽古を付けて貰えると思ったのですが…
武器、本当に難しいですね。
いっそ魔法でも使えれば良かったのですが、僕適正低いみたいなんですよね…。
「確か、うーん確か、うーん…鍜冶師の所にあったなあ」
「いい武器があるのですか?」
「いい武器と言うか、変わり種なんだよな。飛び道具のナイフとか、フォークとか。扇とかステッキとか、仕込み針。カードなんてのもあったなぁ」
「フォーク?確か食器では無かったでしょうか?」
「うん、だから変わり種。兎に角変わった武器の中に、えーと手甲鉤と言うのがあったが、それどうだろう?」
「手甲鉤ですか?」
なんでしょう?聞いたこと無いです。
僕がキョトンとしていたからでしょうか、ケンネルさんが説明してくれました。
「私達の手って人間達みたいに指先が長くないだろ?その分爪がある者達なら攻撃力は高いのだけど、私は犬の種族だし、モチ君はウサギだからな。どうしても爪や手の威力が低い」
その分脚は強いけど、とケンネルさんが然り気無く僕たちウサギ種族のフォローを入れてくれます。
やっぱりケンネルさん優しいです。
僕はちょっと嬉しくなり、うんうん、と頷きます。
「そこの所の弱点克服ってわけじゃ無いけど、人間が腕に固定する武器をそこの鍜冶師が僕ら用に改良しててね。この間の戦闘で使ってたのは爪タイプなんだけど、モチ君は、んー…物は試しだし、とりあえず付いてきてよ」
ケンネルさんが歩き出したので慌てて着いていきます。
あれ?ケンネルさん、何だか尻尾が軽く揺れてます。何か良いことがあるのでしょうか?
「実はさ」
ケンネルさんが歩きながら腕を組み、少しばかり上機嫌に話し出します。
「ちょっとその鍜冶師に会うには特殊な条件があってね」
うん?なんでしょう?
僕がケンネルさんの方を見ると、ケンネルさんの尻尾がフリフリフリフリ仕切りに振りだしました。
上機嫌ですね、ケンネルさん。
わかりやすいです。
「その鍜冶師、先日の襲撃で薬草や素材を切らしてるって聞いたんだ。そこでちょっと街の外で一緒にお土産とかモンスター討伐とかをしに行かないか?」
こうして、モチの主人のハクが怪我をして意識が無くて寝込んでいる間、少しだけケンネルさんと一緒にモチ強化大作戦、題してケンネル流ブートキャンプが実行されることとなった。
後日、ふらふらになったモチが何とか手甲鉤を手に入れ、その武器に珍しい魔力処置を施されてモチの地力が引き上げられたのは、お土産を気に入って喜んだ鍜冶師が張り切ったせいなのか、たまたまその鍜冶師が"ケンネルの婚約者"であったのか。
どちらにしよ、ケンネルのお陰かもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
俺のスキル、説明すると大体笑われるが、そんな他人からの評価なんてどうでもいいわ
ささみやき
ファンタジー
平凡に生きてたはずの俺は、ある日なぜか死んだ。
気づけば真っ白な空間で、美人のお姉さんとご対面。
「転生します? 特典はAかBね」
A:チート付き、記憶なし
B:スキルはガチャ、記憶あり
そんな博打みたいな転生があるかよ……と思いつつ、
記憶を失うのは嫌なのでBを選択。
どうやら行き先の《生界世界》と《冥界世界》は、
魂の循環でつながってるらしいが、
そのバランスが魔王たちのせいでグチャグチャに。
で、なぜか俺がその修復に駆り出されることに。
転生先では仲間ができて、
なんやかんやで魔王の幹部と戦う日々。
でも旅を続けるうちに、
「この世界、なんか裏があるぞ……?」
と気づき始める。
謎の転生、調停者のお姉さんの妙な微笑み、
そして思わせぶりな“世界の秘密”。
死んでからの人生(?)、
どうしてこうなった。
ガチャスキル、変な魔王、怪しい美人。
そんな異世界で右往左往しつつも、
世界の謎に迫っていく、ゆるコメディ転生ファンタジー!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜
小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。
死因は癌だった。
癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。
そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。
死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。
それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。
啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。
挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。
インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。
そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。
これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる