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漆黒ノ章
契約
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ガポゴポ…
ガポッ…
まるで水の中の泡の様な音が、壁にある黒い色の魔方陣から黒く盛り上がったモノから聞こえてくる。
ガボッ…
空間に真っ黒な沫を吹き出し、沢山の頭部が徐々に浮き出し塊となって盛り上り、目の無い顔のようなものが口だけを動かし蠢く。
『生理的に受け付けられぬのぅ…』
等と自身を高位の風精霊と言った蜻蛉羽根の少女は眉間に皺をよせ、引きつった顔付きで警戒を高める。
拒絶したくなる蠢くものは、動かしていた口を更に開き、個々が次々と喋りだす。
ーー敵
ーー敵来る。
ーー敵
ーー汝、同胞よ、逃げよ。
ーー汝では敵わぬ。
ーー我等
ーー防ぐこと叶わず
…ゴポリ
『何なのじゃこれは』
パキ、木々が割れたような音が鳴ったらと思ったら、沢山の頭部の中心部が風船のように膨れ、そこからニュッと人の指が飛び出して来る。
「うわ」
『奇っ怪なっ』
その指は一本、二本と増え。
やがて左右の指10本分揃うと、ずぶりと粘膜質の滑った音をたてつつ、とても長い髪の毛がずるっと床に滑り落ちてくる。
まるで日本の古式古き古典ホラー。
○子がテレビ画面から這い出て来るような場面が、今目の前にある魔方陣から沸きだしてくる。
『こ、ここここれは怖いのう』
蜻蛉羽根の少女がブルリと身体を震わす。
その際彼女の身から金の粉がブワッと溢れでる。
溢れでた粉は直ぐに空気中で散るのだが、溢れでた粉に反応するかのように、壁から這い出て来る指先がぴくりと止まる。
「…?」
金の粉が散らなくなると再度壁の指が蠢き、今度は長い髪から二つの目が此方を見ている。
"ふは、は、は"
長い髪から違和感のある野太い男の声が聞こえてくる。
『ぬ?男?女ではないのか?』
見た目長い髪の者は女だとハクも思っていた。
指先が美しく、きめ細やかに見えるからだ。
勿論そんな男性も居るのだろうが、その場合はもっと声は若々しいのでは無いだろうか?
手は年齢を表すと言う。
瑞々しく若々しい細く白い指先。
だが聞こえてくる声は野太い男の声。
"は は、み つけ た"
目がハクを見詰め、笑う。
"み、見付けた ふ、は、は"
嘲笑う声は歓喜にも聞こえ、おぞましさが募る。
ーー逃げよ
ーー逃 げヨ
ーー我等ハ
ーータイ コウ 出来 ヌ
ーー罠
ーーアビス
ーー今ハ キ テハ ナラ ヌ
"煩い虫け ら め"
ぐしゃり、と。
黒い沢山の頭部だったものが野太い声の主に指先で潰され、どろどろと溶けて液体になり床に滴る。
びしゃりと液体は鳴り、徐々に黒い色が消え、無くなって行く。
"は は 愉快 だ"
ニヤリと、声の主が嘲笑う。
その際に見えた、腕に繋がれた鎖。
間違いでなければ、先日夢で見た自身の身長よりも長い黒髪の娘の鎖だ。
何故ここに?
いや、見付けた?
『のう、少年』
蜻蛉羽根をブブブブブと振るわせ、少女はハクを見詰め、
『わらわに名をくれぬか?なるべく強い名を』
「強い?」
"無駄 其奴は 前 の 記憶ない。無駄 は、はは"
馬鹿にしたような声が聞こえてくる。
というより、何故記憶がないと知っている?
『何でも構わぬが、御主の中にある意味のある古い名前が良いのう』
「何故?」
『わらわは精霊ぞ。精霊は許した者には名を貰って強い力を得る。御主の魔力は高くとても強い力があるのじゃ。今得ねばあやつには対抗出来まい。』
名付けた者にとって強い意味のある名前には、より強い力を得るからの、と、ハクに囁く。
「名前…」
『うむ』
ここで俺記憶が、とか、センスがとか言ったら不味いのだろうな。でも困った。
本当に何も出てこない。
システム、何かない?
「【ミトラ】」
『ぬ?意味はなんじゃ?』
「【インド神話で、契約によって結ばれた「盟友」をも意味し、友情・友愛の守護神の名だ。また、インドラ神など他の神格の役割も併せ持った『リグ・ヴェーダ』ではヴァルナとは表裏一体を成すとされ、ミトラが契約を祝福し、ヴァルナが契約の履行を監視し、契約に背いた者には罰を与えるという神の名前だ。まあ、まだまだあるが此でいいだろう】」
ん?マクスウェル?
眠ってたんじゃ?
『フフ、御主では無いようだがコレもまた御主の一部じゃしの、良かろう。』
"…っ!"
ピーーーンッと耳鳴りが響き、蜻蛉羽根の少女が徐々に姿が変わる。
蛹から蝶にと。
羽根が蜻蛉から揚羽蝶にかわり、髪の色が変化しーー…
水色の髪が深みのある色濃い蒼い色に変わる。
金の粉は一層耀きを増し、少女の瞳の色が髪と同じく深い蒼へ。
『ふむ、わらわはミトラ。成る程、此れはーー』
ミトラは不敵に笑う。
『盟友、ハクの友ぞ』
恋人でもいいがの、と聞こえた様な気がしたが、今はそんな場ではないのだ。
きっと幻聴だろう…
ガポッ…
まるで水の中の泡の様な音が、壁にある黒い色の魔方陣から黒く盛り上がったモノから聞こえてくる。
ガボッ…
空間に真っ黒な沫を吹き出し、沢山の頭部が徐々に浮き出し塊となって盛り上り、目の無い顔のようなものが口だけを動かし蠢く。
『生理的に受け付けられぬのぅ…』
等と自身を高位の風精霊と言った蜻蛉羽根の少女は眉間に皺をよせ、引きつった顔付きで警戒を高める。
拒絶したくなる蠢くものは、動かしていた口を更に開き、個々が次々と喋りだす。
ーー敵
ーー敵来る。
ーー敵
ーー汝、同胞よ、逃げよ。
ーー汝では敵わぬ。
ーー我等
ーー防ぐこと叶わず
…ゴポリ
『何なのじゃこれは』
パキ、木々が割れたような音が鳴ったらと思ったら、沢山の頭部の中心部が風船のように膨れ、そこからニュッと人の指が飛び出して来る。
「うわ」
『奇っ怪なっ』
その指は一本、二本と増え。
やがて左右の指10本分揃うと、ずぶりと粘膜質の滑った音をたてつつ、とても長い髪の毛がずるっと床に滑り落ちてくる。
まるで日本の古式古き古典ホラー。
○子がテレビ画面から這い出て来るような場面が、今目の前にある魔方陣から沸きだしてくる。
『こ、ここここれは怖いのう』
蜻蛉羽根の少女がブルリと身体を震わす。
その際彼女の身から金の粉がブワッと溢れでる。
溢れでた粉は直ぐに空気中で散るのだが、溢れでた粉に反応するかのように、壁から這い出て来る指先がぴくりと止まる。
「…?」
金の粉が散らなくなると再度壁の指が蠢き、今度は長い髪から二つの目が此方を見ている。
"ふは、は、は"
長い髪から違和感のある野太い男の声が聞こえてくる。
『ぬ?男?女ではないのか?』
見た目長い髪の者は女だとハクも思っていた。
指先が美しく、きめ細やかに見えるからだ。
勿論そんな男性も居るのだろうが、その場合はもっと声は若々しいのでは無いだろうか?
手は年齢を表すと言う。
瑞々しく若々しい細く白い指先。
だが聞こえてくる声は野太い男の声。
"は は、み つけ た"
目がハクを見詰め、笑う。
"み、見付けた ふ、は、は"
嘲笑う声は歓喜にも聞こえ、おぞましさが募る。
ーー逃げよ
ーー逃 げヨ
ーー我等ハ
ーータイ コウ 出来 ヌ
ーー罠
ーーアビス
ーー今ハ キ テハ ナラ ヌ
"煩い虫け ら め"
ぐしゃり、と。
黒い沢山の頭部だったものが野太い声の主に指先で潰され、どろどろと溶けて液体になり床に滴る。
びしゃりと液体は鳴り、徐々に黒い色が消え、無くなって行く。
"は は 愉快 だ"
ニヤリと、声の主が嘲笑う。
その際に見えた、腕に繋がれた鎖。
間違いでなければ、先日夢で見た自身の身長よりも長い黒髪の娘の鎖だ。
何故ここに?
いや、見付けた?
『のう、少年』
蜻蛉羽根をブブブブブと振るわせ、少女はハクを見詰め、
『わらわに名をくれぬか?なるべく強い名を』
「強い?」
"無駄 其奴は 前 の 記憶ない。無駄 は、はは"
馬鹿にしたような声が聞こえてくる。
というより、何故記憶がないと知っている?
『何でも構わぬが、御主の中にある意味のある古い名前が良いのう』
「何故?」
『わらわは精霊ぞ。精霊は許した者には名を貰って強い力を得る。御主の魔力は高くとても強い力があるのじゃ。今得ねばあやつには対抗出来まい。』
名付けた者にとって強い意味のある名前には、より強い力を得るからの、と、ハクに囁く。
「名前…」
『うむ』
ここで俺記憶が、とか、センスがとか言ったら不味いのだろうな。でも困った。
本当に何も出てこない。
システム、何かない?
「【ミトラ】」
『ぬ?意味はなんじゃ?』
「【インド神話で、契約によって結ばれた「盟友」をも意味し、友情・友愛の守護神の名だ。また、インドラ神など他の神格の役割も併せ持った『リグ・ヴェーダ』ではヴァルナとは表裏一体を成すとされ、ミトラが契約を祝福し、ヴァルナが契約の履行を監視し、契約に背いた者には罰を与えるという神の名前だ。まあ、まだまだあるが此でいいだろう】」
ん?マクスウェル?
眠ってたんじゃ?
『フフ、御主では無いようだがコレもまた御主の一部じゃしの、良かろう。』
"…っ!"
ピーーーンッと耳鳴りが響き、蜻蛉羽根の少女が徐々に姿が変わる。
蛹から蝶にと。
羽根が蜻蛉から揚羽蝶にかわり、髪の色が変化しーー…
水色の髪が深みのある色濃い蒼い色に変わる。
金の粉は一層耀きを増し、少女の瞳の色が髪と同じく深い蒼へ。
『ふむ、わらわはミトラ。成る程、此れはーー』
ミトラは不敵に笑う。
『盟友、ハクの友ぞ』
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きっと幻聴だろう…
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