この身体俺のでは無いようです!ー異世界転生ってここは何処!?ー

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
39 / 48
焔ノ章

番外編 御姉様方の新年 3

しおりを挟む
「ピギャアアッ!!」

 ババッとハクの方に四つ足で飛び込む勢いで走り込み、あっと言う間にハクの足元にすがり付きブルブルと震える。

 "怖いです怖いです!また追い掛け回されます~!"

「あ~…モチ?」

「ごしゅじんんん~っ」

 ビエーーと泣き出したモチに慌ててハクが抱き寄せると、余計にウワーンと泣き出した。

「あらん、不味かったかしらん。先日は御免なさいね」

 ペコペコと謝り出す化粧をみっちり施した筋肉。
 目に強烈な印象を与える髪型。
 ちょっと見には頭の上に盆栽が乗っている様に見えるのだが、盆栽を知らない人が見れば[兎に角頭部が盛ってる髪型]。
 トドメはド派手な着物。
 肩を出すように着崩しているのだが、まるでミニスカートの様に丈を短くしていて、とても出はないが芽に硫酸並。
 足の筋肉が隆々としていてとても強そうだ…

 おニューな御姉様なマキシマムザホルモンちゃんは無意味にクネクネと身体を動かしつつモチに謝る。

「モチ君が可愛らしいから、つい理性が止まらなくなっちゃって」

 "つい理性が止まらなってって、もしかして僕獲物として食べられそうになってた!?"

 余計に怖くなったのか、泣き止んだのは良いがモチはますます小刻みにブルブルと震えて縮こまる。

『モチ~大丈夫かの?これ其処なる怪異、モチが怖がってるから離れるのじゃっ!』

「怪異って…」と呟いたハクに対し、

「あらん、次の源氏名は怪異ホルモンにしようかしらん?」

 クネクネと顔に手を添えて体をくねらすアヤシイ筋肉。
 どうしてそうアヤシイ源氏名にしたがるのか。
 と言うかホルモンを付けるのは必須なのか?

「やだん私ったら、今日はこれを渡しに来たのん」

 そうそうと手に持っていた包み紙を前に出す。
 ズシッと重い何てもんじゃない品を受け取り、ハクは思わず退け反る。

「うわっ!とととっ」

「ご主人っ」

『大丈夫かの?』

 慌ててミトラが風魔法を使って包み紙ごとハクを宙で支え、尻餅を付かない様に支える。

「ミトラ有り難う」

『これぐらい対した事無いのじゃ』

 エッヘンっと無い胸を反らして蝶の羽根を羽ばたかせながら、ミトラは右手をスイッと動かしてハクを立たせ、宙にハクが受け取った荷物を浮かせる。

『むう、これは重いのじゃ。怪異、これはハクには無理ぞ』

 普通にマキシマムザホルモンを怪異と呼ぶミトラ。
 それに対してマキシマムザホルモンは「ヤッパリ怪異っていいわねぇん」と考え深げに良く分からない感性を呟きつつ、

「あらん、申し訳無かったわハクちゃん。御免なさいねん」

 としおらしく謝った。

「それは先日モチちゃんを追い回してしまった私達のお詫びなのん。中身は突き立てのお餅よん。お餅って新年や御正月に頂く行事なのでしょう?イッパイ作って来たから良かったら食べてねん」

 じゃあねモチちゃん御免ねんと丁寧に御辞儀をし、ムキムキの筋肉の肢体を持つマキシマムザホルモンは去って行った。




 ***



『ほぉぉお~これが餅かの?』

「初めて見ました!白くておっきいですっ」

 ミトラとモチの目の前には白くて平たい餅がズーンと鎮座している。モチが白ウサギの桃色の鼻をひくひくさせて匂いを嗅いでみるが、嗅いだことが無いので分からない。分からないけど、なんと無く穀物の匂いがする。その穀物の匂いがする食べ物の縦横丁度50センチ、厚さ五センチ位の餅がひーふーみ…

『…二十枚とはの』

「これ、流石に食べきれなく無い?」

「ご主人~これってこのまま食べるのですか?」

「いや、違うよ。硬くなって来てるのは焼いたり茹でたりだな」

『ハク、御主の姉に持っていくとして、カーター達にも渡すのはどうじゃ?宿の物にも良いと思うがの』

「そうだな、このままじゃカビそうだし。宿の客に出しても余りそうだしな」

「あのっ!ミトラさんっ」

『どうしたのじゃモチ?』

「僕の御姉ちゃんに渡して貰えませんか?ご主人もいいですよね?」

「モチが貰ったものだからな、モチが決めたらいいよ」

「はいっ!ミトラさん良いですか?」

『構わんのじゃ。では妾の風の精霊達に頼もうかのぅ』

「有り難う御座いますっ!」

『でもの、その前にちと食べてみてからのが良いかも知れんの』

 何せ食べた事が無い物だからとミトラは提案し、それならとハクは宿の女将に許可を取りに行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜

小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。 死因は癌だった。 癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。 そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。 死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。 それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。 啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。 挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。 インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。 そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。 これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...