商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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56 回想からコンニチハからの

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 side.嵯峨憲真


「俺ミサオなんて【まだ】嵯峨さんにあげていないし!?」

「「「「ぶほおお!!」」」」


【まだ】って、小林さん?
 これはその、脈がありって事で良いのですか!?

 今の俺の頭の中身は某有名ロールプレイングゲームのパニック系の呪文を掛けられたが如くグルグルと思考が回って、更にこんがらがって蹲って天井に張り付いて、そうして落下。
 兎にも角にも頭の中は破茶滅茶な状態。

 良いの?良いの?俺相手に良いの!?と、心臓が高鳴りながら困惑。

 更には周囲に居た人達さえ混乱しだした。


「て、ててて、店長!?」


 常連の一人がお冷を手に持って口の端から水を豪快に噴き上げたり、ダラリと垂らしたり。目を最大限に見開いて硬直していた。
 そう言えばこのαの常連達、会社の重役だったり某叩き上げの職場の脳筋だったり…年齢は中年から高齢気味だが独身αばかりだ。しかも高給取りの役職の人達。
 もしかして年甲斐もなく店長を狙って居たのか?
 あわよくば等と思っていた?

 普段ご飯を食べているだけだと思っていたが、周囲を見渡すとオロオロやら動揺するαばかり。油断ならない。


「【まだ】だなんて」

「どう考えても嵯峨のボウズに気がある様に思って、なぁ?」


 ゴチャゴチャと小林さんと俺の事を口にしているが、これでも俺口説いている途中だぞ。多少は仲良くはなったとは思うが、どうなのだろう。昨日は一緒に過ごしてくれたから友人ぐらいには思ってくれていると思いたい。

 希望だよ、コンチクショウ。
 何せ今迄恋人とか作ったことが無い。
 恋愛とか考えたことが無かったし、余裕が無かった。

 中学の頃に両親が。
 高校の頃に共に住んでいた父親の婆さんが。
 そうして大学に爺さんが亡くなり、身近に居た身内が全員居なくなって心にポッカリと穴が空いてしまった。

 αだった事で成績は高い水準を保っていられたけれど、空虚になった精神には周りの声が聞こえておらず。またαになったのは大学の入試直前だったこともあり、バース性の学園には結果的に入学出来なかった。

 元々αの様な容姿と何をしても難なく熟すことから周囲にはαだろうとは言われていたがバース性の発覚が遅く、また多感な時期に身内が次々と亡くなったり病に倒れたりと精神が疲労し、空虚になっていた。そのため自分の学歴等にはただ愕然と「大学に行ければ良い」としか思えず、高校のβの担任の先生に都内の高学歴の大学に進められるまま入学した。

 もしあの時、いいや大学に入学中でもバース性の大学にでも編入して居たら、もっと早くに小林さんに出逢えたかも知れないのに。
 そうすればもっと早くに出逢えたのだから、早くに口説けたかも知れない。

『たられば』だなんて今更言っても過ぎたこと故仕方がないのだろうが、今のこの光景を見ればそう思ってしまう。

 小林さん、中年から高齢に一歩足を掛けた高給取りの役職の独身α達に滅茶苦茶モテモテ!?

 牽制!
 威嚇牽制するべき!?
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