商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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92 寮に帰ってからにしてね

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 男性としてそれってどうなの?
 と、一人己にツッコミを入れる。
 虚しいのは第二次性がΩへと変わり、住んでいたご近所の道端に捨てたので今更だ。そうしてもっと身体を鍛えておけば良かったと思うのも何度目かのことなので止めておく。
 え、何十回目か何百回目ですが何か?

 うん、俺は俺だ。学生時代からずっと何度も鍛えておけばと思ったが、思うだけでそれ以上はして来なかった。
 実に俺らしい言い訳。

 さて、くだらない事柄を考えるのはこの辺りで終了。
 もっと前向きな事柄を考えるべきだよね。


「それじゃーさ、俺等二人で店長ちゃんのお店、警護しちゃうとか」

「出来る訳無いだろう」


 速攻で京夏君の提案を一刀両断にするのは何時の間にか帰って来た落合君。カウンター席へ移動して来ていた京夏君の隣の席に何食わぬ顔でスルリと座り、平然としている。
 この二人、自由だな。


「席移動で良いかな?」


 不破さんが確認を取っている。


「はい。不破さんすいません」


 と返事をする落合君。それに対し「不破さんごめーん、てへぺろ~」とお茶目に返事をする京夏君。
 ほんと、マイペース。店内も落ち着いて来て常連さん位しか居ないから出来るという感じだな。
 うちの店である小林茶坊だと席が少ないから移動なんて出来ない。
 するほど席も無いけど。
 少し羨ましい。

 店のレイアウト変えてもう少し席増やそうかな…う~ん、そうすると通路が狭くなるから無理そうだ。商品の参列も減らさないと無理だろうし。よし、諦めた。


「出来る訳無いなんて、なんでさ」


 ムスッと膨れた京夏君の頬をツンツンと突く落合君。
 その指をパクンと口で咥え、「あ…」と思わず赤面する京夏君。咄嗟ですね、もしかして家、いや寮だったっけ。確か学生寮に二人で同棲して居るとか何とか言っていたし。

 そう言えば学生寮ってα同士でも同棲できるんだったっけ?
 我が母校でもあるバース性の学園はちょっとそこの所が普通の学校よりもかなり緩い傾向がある。俺が通って居た当時もαとΩの同棲カップルが住める寮が普通に敷地内にあったし、お金持ちが支援している学園のためか寮の生活で不自由したことが無い。
 衣食住ほぼ無料だったもんなぁ、あの学園。
 俺等みたいな地方から来るΩの子達なんて実家が普通の家庭から貧乏な家庭迄色々あったけど、皆学園から支援されてほぼ均一化しちゃっていた。精々初期の頃位かな?あ、この子俺と同じ田舎から来たのかな~?なんて装いや話し方から地方色が出ていたのは。
 貧乏な家庭の出らしき子も最初のうちだけで卒業する頃にはほぼ見た目は垢抜ける。

 性格はまぁお察しくださいってものだけど。人それぞれ、色々だしな。

 だからこそΩの子が生まれたら大抵の家庭は学園に放り投げる。
 貧乏な家の子や田舎に住む子、更には子沢山の家の子程その傾向が強い。ちなみにαはほぼ通っていたバース性の学園に入る事が多いが、彼等は大抵金持ちの子が多いので選択肢が多い。中には海外留学をしてしまう子も居るし、番が欲しいαはもっとΩが居る学園へと通うαも居るらしい。特に昨年は隣町のバース性の学園へと何故かΩが殺到したため、αも何人か追い掛けて入学した。


 閑話休題。

 …なんだろう。
 俺は一体今、落合君と京夏君から何を見せられているのだろうか。


「そう言うのは寮に帰ってからにしてね」


 等と言って不破さんが苦笑している。
 ほんと、目の前で見せ付けないで下さい。
 少なくとも俺の前では。

 一部店内の常連さんらしきお客様達(多分β)が、落合君と京夏君の二人のやり取りを見て「ふわぁぁ」とか「ほぅ…」とかウットリとして溜息を吐いて居る。だけど俺は心がムズムズしてしまう。
 ムズムズと言うか、むず痒いと言うか。そんな感じだ。


「小林さんはついさっき両思いになったばかりのΩだ。穏やかな人とは言え、小林さんが居る空間にαの俺達が小林さんと三人で居たりしたら、しかも店内ではなく自宅の方に居ると知られたら、嵯峨さんに嫉妬で焼き尽くされるぞ」
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