商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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106 据え膳です

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「俺は、その」

「はい」

「眞宮さ、眞宮を大事にしたい、で、です」

「はい」


 んー…何て言うか、その、まどろっこしい。
 じれったいとか、まぁ、ね?
 その気持ちは有難い。
 大事にされているってわかるからね。
 でもそれと俺の気持ちとは別。

 嵯峨さんの気持ちは良くわかるけど、それって俺の気持ちは汲んでくれていないってこと、かな。
 とか何とか思ってしまうのだけど、そうじゃないと言うのは今の嵯峨さんの表情を見ていればわかる。

 物凄く眉間に皺がよって真剣に口に出す言葉を選んでいるのがわかるから。
 普段ならこんなに嵯峨さんの口からどもり、区切った言葉を連発するのを聞いたことが無いから。
 嵯峨さんってαだからって高慢な所なんて無いから極々普通に会話するし、他の人にも普通に接している。俺の店に危害を加えようとした人は勿論例外だけど、優しい人だ。

 ただ今回の様に考え込んでしまうと言葉が途切れがちになる。それだけ真剣に考え込んでくれているっていうことだろう。

 …なんて、最初の頃なら気が付かなかっただろうなぁ。
 ふふん、俺ってば結構成長しているよな。
 でもこのままだと平行線をたどりそう。

 それにしても俺の事眞宮だって、嬉しいっ!
 下の名前で呼んで貰えるのって恥ずかしいけど、嬉しい!!

 ええい、男は度胸だ。
 Ωだって男だしな!


「据え膳です」

「据え膳って、言い寄ってくるのを受けないのは男性の恥って…は?って、眞宮!?」


 ついつい突っ走り、暴走して変な言葉を選択してしまったけれどもう二度と引き返せないし引き返すつもりも無い。何せ今を逃したらもう二度と俺の口から言い出せないって理解しているから!
 恥ずかしくて羞恥で顔面爆発しそうだし、何より頭が沸騰して湯気が出そう!!
 覚悟!?そんなもんはもうとっくにしているよ!
 いっそうもう、どーーにでもなーーーれーーー!!

 ガシッと嵯峨さんを逃がさないように腰にホールド、じゃなかった、ええと。抱きつき、俺にしては大胆!でもやる時はやれる俺、えらい!等と無茶苦茶なことを思いつつ、逃がしません勝つまでは!と言う謎の気合を込める。
「え、勝つまで?」と吃驚した表情の嵯峨さんの口から唖然とした声が出て来たので、どうやら俺はまた口に出してしまっていたらしい。しかも「逃がしません勝つまでは!」の部分。了解、了解。こんな時にも出る俺の妙な癖は相変わらずな模様。いや様子って言い直した方が方がよいか。
 兎に角逃がさん。
 そうして譲らん。
 何に対して譲らんのだって言われたら、誰にも嵯峨さんを譲らんっていう意味だよって即答出来る。


「食わぬは男の筈ですよ」


 違った、男の恥だった。
 筈って何だ。


「それを言ったら男の恥、ですね」

「訂正有難う御座います」


 言い直す前に訂正されちゃったよ、俺のバカ。
 それにしてもこう、抱きついていると何と言うか身長差。そうして、その、ね?


「物凄い心臓が鳴っている…」


 嵯峨さんの心音が爆速です。
 いや、爆音かな。どっちでも同じ?変な方向に思考が飛ぶのは何時もの事だけど。そうして謎の言葉が嵯峨さんの口から漏れ出た。


「尊い…」


 何が?
 え?嵯峨さんの今の体制から考えると、俺が見えるのは旋毛つむじぐらいじゃ?


「可愛い…」


 そう言って嵯峨さんが抱きしめて来た。

 旋毛つむじが可愛いのだろうか?

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