2 / 52
生れ落ちたたった一人のエルフ
前世はただのOL
しおりを挟む前世はただのOL。
現世は脅威の一端の魔王。
「ないわー」
室内をゴロゴロと転がりまわって、再度「ないわー!」と叫びたい衝動を何とか堪え、はぁぁぁと溜息を一つ。
気のせいか幸運の数値が1減った気がする。
いや、寧ろあの666って数字の羅列何だか某ーメンみたいなんで是非数字改ざんして欲しい。悪魔の数字ってなんだよ、怖いじゃないか。
溜息一つに数値1個減して欲しいぐらいだ。
為って居ないか恐る恐るチェックしてみたが、特に変化は無し。
1個減ったぐらいじゃ大した事は無いのかも知れないけど、気分的に嫌なモノだし。
と言うか多過ぎだよ幸運値。運営ポイントよりも多いって何事なんですか。
…それ言ったら筋力なんて吃驚するぐらい少ないけど。
室内を見渡してドアもチェックし、それから10分程歩いて唯一座れる王座みたいな座席に埋もれる様にして座る。
心なしかグッタリ消耗したまま猫背に為った状態で思案に暮れる。
コンビニで初めて購入した電子煙草。
前日もう思い出す事も出来ない誰かが「ちかって煙草吸わなさそう~」と散々揶揄って来たので、つい反発精神が起こり購入してしまったのだ。
ちなみにその人は友人でも友達でも何でも無いが、やたらと突っ掛かって来て居たので苦手だった人だ。何かと言うと「ちかは料理が出来無さそう。包丁なんて手にした事無いでしょ」と言って来たり、「キャンプとか行った事無いよね?肌真っ白だもの」「ファーストフードとか食べないでしょ」「針と糸とか使った事無いでしょ?雑巾も縫えないよね」とか決め付けられて来て居て益壁していた。
理由は同じ会社の男性職員達に如何に自分は優良物件かと言う、『自分アピール』をしたかったのだと言うのは分かって居たのでスルースキルを発揮して居た。だがそれが不味かったのか、徐々に悪化して来て居て近頃は何かと言うと突っ掛かって来る様になり、難癖を付けて来るので職場の男性陣所か女性陣もドン引きして居たのだが、肝心要のご当人は全く気が付いて居なかった様だ。
こう見えても料理は学生時代から普通に使えるし。
針と糸は普通に使えるし、洋服も縫った事があるし刺繍も出来る。ミシンなんて何十メートル縫ったか分からない位だわ。だって学生時代の部活動が和裁や洋裁を習う手芸部だもの。貴方が対面してぺちゃくちゃ妄想逞しく話している相手の手にして居るバック、お手製のだって分かる人は見れば分かるよ。
それにキャンプは学生時代機会があったから何度か行った事あるし、ファーストフードは学生時代も社会人になっても何度か食べたわ!
「は~…まぁ、前の事はもういいか」
今更だし。
それよりは今のこの状態だよね。
もう一度目の前に現れたステータスに意識を向けると、先程と同じく目の前にボードの様に現れる半透明の画面。
ステータス画面って奴なのかな、これ。
名前:登録して下さい。(前世:小見千夏おうみちか)
種族:エルフ
職種:魔王
レベル:1
HP:10
MP:60
筋力:14
耐久:100
機敏:25
魔力:100000
器用:1000
幸運:666
ユニークスキル:森の乙女
スキル:アイテムボックス
称号:元深窓の乙女・偽りのエルフ
ポイント:70
以前の名前は此方で転生をしてからこの世界独自の身体に構築され、その際前世の名前は受け付けられ無いのか、はたまたこの身体には別の名前を付けられますよと言いたいのか。『登録して下さい』と言う文字が何度もチカチカピカピカと光、存在をアピールして居る。
取り敢えず心を落ち着けたいので暫く待って下さい私の名前登録。
更に驚くべき事に魔力ゼロの桁が異常でしょ…
十万桁って何だそれ。チートか、その部分だけチートか。異様だろ。
器用も千言ってるけど。
しかしHPとMPは分かるんだけど、更に魔力って何だろう?魔法を使った時の威力とかかなぁ?
そして種族はエルフ。
「はい?」
人間では無くエルフなの?周囲をもう一度見渡して、この身体を見るような鏡の様なモノを探してみたがどう見ても無い。仕方なく小説や漫画にゲームの設定からもしかしてと思い、両手で左右の耳を触って見る。
「うわ、うわわわ、先端が長い」
耳の上部が長く尖って居る。
恐る恐る両手で両耳の先端部分を触ってみると、どう考えてみても人間の耳の形では無い。
「うっかりすると何処かにぶつけそうだね、これ」
姿見で見て居ないから分からないが、凡そ人間の耳の長さ+人差し指分ぐらいの長さがある様に思える。
そして先程から鬱陶しいなぁと思っていた髪。
耳を触ると同時に触れてしまうらしく、サラサラと音を立てて時折指に絡む。
「うーん」
意外と長い。
腰よりも少しした、ギリギリ座っても髪の毛を下敷きにしなくて済む位の長さ程もある。
前世の頃は肩より少し下に切り揃えて居たのでこの長さは鬱陶しい。
そしてやはり黒髪では無く薄い色素のプラチナブロンド。
一瞬銀髪かと思うぐらいな感じだ。
金髪じゃなかったのかエルフはと一瞬思ったけど、この色彩は魔王だからかも知れない。
何処かのMMOとかで銀髪のエルフとかって居たっけ?と思い出し其処でダークエルフと言う種族を思い出す。
もしかしてダークエルフっぽい、限りなくソッチ系のエルフだからとかかな。
魔王だし。でもただのエルフだよね。
と言うか何でエルフが魔王だし。
普通エルフって神聖な種族って感じがするんだけど、普通ココは魔族とか言う種族じゃないの?それともエルフは魔族の括りに入って居ると言うのだろうか?
先程入って来た知識らしき物を総動員して見るが、その件と言うかエルフ種族の情報がほぼ無い。と言うより皆無と言った方が早い。てっきりダンジョンに沸いて来る魔物とかでもエルフって言う種類が居るのかと思ったけど、それもどうやら違うらしい。
もしかしてこの世界ってエルフ他に居ない?
職種、魔王。
……ヤメテイイデスカ?え、駄目?
何だか知識を贈られた時に感じた様なモノから「ダメ」って言う圧が掛かって来る。
だって魔だよ。しかも王だよ。
性別女で魔王ってこれ如何に。こういう場合は女王じゃないの?魔王だから魔をつけて魔女王。何だか駄目な気がする、このネーミング。
いっそ女帝とか?魔女帝。なんだろ、鞭もってそうだ…
それ言ったら女王も女帝もそんなアブノーマルな気配がプンプンするけど。
そして職種の部分を何となく指先で触れてみたら、「鑑定」スキルが発動したのか詳細らしき項目が出て来た。
魔王。
この世界に呼び出された魔素が集合して出来た生命体。時折異界から出て来る者も居る。
多分私が異界から出て来た者だよね。
『異』なる世『界』って意味だよね。
嬉しくないよっ
そしてレベルとか諸々のはほぼゲーム画面と同じだから放置するとして、筋力14って何だ。もしかしてアレかな、前世で言う握力……
14だったんだよね。
どうみてもその数字そのままです。どうしましょう、有難う御座います。ええ、感謝するの違うけども絶賛混乱中です。そしてまるで混乱して居る私を煽る様に、
『警告。筋力が14。職種「魔王」の最低値以下です』
サイレンの音と共に警告が再度目の前に現れる。
そう言われてもどうにも出来ないでしょこれは。
少なくとも現時点ではどうにも出来ないし、それにエルフって何となく非力なイメージがあるから筋力が少ないのでは?と思った途端納得したかのように警告画面が消え失せた。
…納得するんかい。
0
あなたにおすすめの小説
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる