ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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ダンジョンは地下深く

配下召喚

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 アデルが『魔王の間』で一心不乱に「服幾つか作っとくな。それと簡単な寝具も」という事で製作を始めた。一角を占領して縫いあげて居る間、私は此れからのダンジョンや事柄に付いて考える。


 サボってるわけじゃないよ?

 アデルが経験上、生後二日目でダンジョンに魔物が入って来たって事はキチンと対策をした方が良いと言う忠告があったから。此れからも入って来る可能性が高いし、今はアデルが扉を閉めて来たらしいけど、今後も多少知能を持った魔物とかが扉を開けてしまうだろうしね。


 尚アデルは三千年前だけど、ダンジョンに最初入って来た魔物は小さな魔物位しか無かったそうだ。それを考えるとこの場所って結構ヤバイ地域なんだろうなぁ。数匹は室内に詰まっていたみたいだし。

 そしてそのヤバイ地域にぽつんと突っ立って居るドア。


 入口もう少し工夫しないと問題あり過ぎる。


 かと言って例のドラゴンさん対策をしなければ、無暗に地上にダンジョンを制作して広げる事も出来ない。嫌だよ?地上とか地下とかに作った早々にドラゴンさんが飛来し、豪快に業火で燃やし尽くされてしまうのは。一体何の為にダンジョンを作ったのやら。


「地下に滑るダンジョンは中々いいけど、大きな魔物だと途中でつっかえてしまう。それに私みたいな壁だろうが何だろうが何処でも渡れる能力があるモノだと途中の壁で滑らず平気で止まってしまうし、糸を出して抜け出す事が出来る」


 そう言われてしまうと確かにそうなんだろうなと思う。

 滑り台の通路は学校の廊下並みの広さを思って作ったのだけど、大きさがアデル曰く「中途半端」らしいんだよね。


「広いなら広い場所と狭い場所と言う感じで作った方が良いだろうな。今回のやり方は初めてだったし、レーベルは人族仕様を無意識に制作したのだろう」


 …ちなみに私、何も不覚は考えて居りません。

 ただ自分が途中で楽しくなっただけです。

 後は前世が人間だった記憶があるから、どうしても何年も居た場所を思い出してしまっただけなんだよね。因みに職場の廊下は学校の廊下より狭く、人が二人擦れ違える程度しか無かった。お陰でダンボールや大きな荷物を持って移動するのがつらく、会社の指導で台車を押して通行する様にしていたのだが、それでも時折擦れ違う時に引っ掛かったりした。

 特に体格の良い男性同士は変な緊張感があって擦れ違っていた様だ。

(社長と平社員ならまだ年齢差があるからそうでも無いが、擦れ違うのが社長とか部長等、役職が上に上がるにつれて平社員達には妙な緊張感があったなぁ)


 一部だけ会社の狭い廊下並みにして作って置こうか。

 大型の魔物はそれ以降入れない様に調節して…


 これってほんと、対人型っぽいよなぁ。


「言っとくが時折知能が少ない魔物とかも入り込んで来るが、基本魔王が制作したダンジョンには人型の者しか侵入して来ない」


「そうなの?」


「ああ。…人型のモノはダンジョン内に溢れる魔物達の素材を狙って居るが、同時に『魔王の間』にあるコアを狙って来るからな」


「コア…」


 言われて私は壁にある私の『コア』を見詰める。


「レーベルはまだ産まれて間もないから狙って来るのは少ないだろうが、年を得たコアはその辺にある魔石よりも価値がある。それにダンジョンのコアは『細かく砕いて』小さな欠片にしても魔石よりも魔力が高く。魔水晶並の魔力がある。下手すると魔水晶よりも価値があるって言われているよ」


 ―――魔水晶。


 この大陸では魔石に次いで価値があると言われている石であり、魔力の塊とも言われている。


「…アデル、幾つか持ってるの?」


「欲しいか?」


「要らない。自分のだけで充分よ」


「そうか。ちなみに私は『今は』持って居ない。自身のダンジョンには『幾つかある』がな」


 やっぱりあるのか。

 何度か狙われたらしいし、もしかしたらって思ったのだけど。


「一応言っとくが進化して敵対した奴は大抵力を熱望する。で、私と敵対する羽目に為る。何でも私のコアは他の魔王のコアより濃度が濃いらしいな」


 成程なるほど。という事は、


「もしかしてあのドラゴンさん。最初アデルのコアを狙って来たとか?」


「あの身の程知らずに其処までの知能は無いだろうな。どっちかって言うと『最強戦』って喚いてやたらと拘って来たし」


 脳筋か、あのドラゴンさん。

 今はストーカー活動に勤しんでいるみたいだけど。


「それが何故か今では『嫁の座』を狙って居ると?」


「油断した所を寝首掻くつもりだけじゃないか」


 あ~…

 ドラゴンさんの話題を出したらアデルの機嫌が低下。

 これは相当アデルに嫌われて居るなぁドラゴンさん。

 私もごはんの恨みは強いけど。


「兎に角レーベルは配下を増やすのが先だな。後あの滑り台だけのダンジョンだと配下を置けないだろう?魔物とか勝手に増えるダンジョンも作れるが、ある程度配下を自身で呼び出した方が良いぞ」


「靴下片方出来た」とか言って着々と蜘蛛の足で器用に編上げるアデルに言われ、ステータス画面を出して思案する。


 一応今回アデルに服とか諸々制作して貰っているけど、この恩は返さないとならない。今うっかり言うと「なら嫁に」とか言い出しそうだから黙って置くけど。


 更にアデル曰く、「ここに俺が来てしまったからあの大蜥蜴に燃やされてしまったんだし、俺が動くとアイツが来る可能性が高いのを失念していたからな。責任の一部は俺にもある」と言ってほぼ無料奉仕してくれている。

 そんなことは無いとは思うんだけど、アデルが自身のダンジョンから移動するとどう言う訳か嗅ぎつけて来る率が高いらしい。一体どんな嗅覚をしているのやら。

 あれかな?恋するオトメの何とやらかな。

 大型のコモドオオトカゲに蝙蝠の羽根付きだけど。

 そしてやって来ると破壊活動が漏れなくついて来ると。

 ほんと、厄介なドラゴンさんだなぁ。


 兎に角貸し一つと思っておこう。

 そして何時かちゃんと返そうと思う。

 今はアデルの御厚意におんぶに抱っこ状態で御厄介になって居るだけで返済が出来ず、大変申し訳無く思うけど。


 ポイント交換出来る中には幾つか配下の種族が並んで居て、現在私のレベルは14。交換出来るポイントは728だ。


 その中で如何にもな、ファンタジー小説ならではの文字を見付ける。



『ゴブリン』



 おお、王道発見。

 やっぱり最初は王道を攻めて行った方が良いよね、何せ初心者だし。召喚の仕方も良く分からなく…あ、ポチって名前押せばいいのか。


 空中にあるステータス画面は残念ながら私にしか見えないみたいだから、他所の人が見たら一人で何やってるんだ?って感じだろうなって思う。これ、絶対アデルとか配下意外では見せない方が良いな。一人遊びを未だにしている変な子だって思われそう。


 そう言えば私って未だ鏡見て無いから何歳位なんだろ?

 そう思いながら『ゴブリン』の文字をぽちっと押すと、部屋中に明かりが広がり、アデルが「お?私の初回時の召喚の時より嫌に明るいな」とボソっと呟き――…


「召喚して頂き有難う御座いますマイマスター。以後何なりと仰って下さい」


 と。

 小さな、とても小さな幼稚園児並みの身長の、サラッサラな金髪に大きな潤みを帯びた青い瞳に桃色の頬、そして同じく桃色の小さな唇。そのどうやっても一見するとただの人間の幼稚園児な子供にしか見えない、美が付いちゃう愛らしい幼女が土下座していた。




 …うん、何で土下座?


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